読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

冬の花「シクラメン」を描く

2020年01月29日 | 水彩画

 シクラメン(ビクトリア)を描く

  
     clester     F6

        令和2年の一月第2回目の水彩画教室は「花 Pert4 シクラメン」です。
 今頃の花と言えば代表的なのはシクラメンです。種類はたくさんあって、
 今回は「ビクトリア」。白い花弁で縁がしわしわで、ピンクのフリルがあり
 ます。実は花弁はもっと白かったのですが、少しピンクが濃くなってしまい
 ました。失敗といっても良いのですが、こういう種類と思ってください。
  シクラメンは葉が独特の斑が入っています。種類によって少しずつ斑の形
 が違います。
  背景色に悩みました。やや寒色にということで薄いセルリアンブルーにし
 ました。 
                         (以上この項終わり)
  

 

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法月綸太郎の『赤い部屋異聞』

2020年01月28日 | 読書

◇ 『赤い部屋異聞

    著者:法月綸太郎        2019.12 ㈱KADOKA 刊

     

  著者は本格推理小説家を標榜するグループの一員。心酔するエラリー・クインを初め
 江戸川乱歩、ウールリッチなどの作家へのオマージュ作品を取り上げた「オマージュ連
 作集」である。表題作『赤い部屋異聞』は江戸川乱歩の『赤い部屋』に因む。

  全9篇の作品末尾には「細断されたあとがき」と称して作品の出自やモデル、ヒント
 の出どころなどを明かす。この「細断されたあとがき」は恐怖小説ばかり集めた『十七
 年目の死神』にある都築道夫氏の「寸断されたあとがき」に倣ったとある。作品自体は
 もちろん、このあとがきを併せて読むことによって各作品の味わいが一段と深まる。
  9作品のうち表題作「赤い部屋異聞」がやはり抜群に面白い。 

 ◇赤い部屋異聞
   江戸川乱歩『赤い部屋』へのオマージュ。異聞好き仲間の会合に新人が呼ばれ、「九十
 九人の命を退屈しのぎのために奪ってきた」と豪語した。しばらく身内の不幸で参加し
 ていなかった私がそのあと引き起こした事件は、結末まで二転三転する。
  「日頃から事故の多い中央線」などとリアル感のあるくだりが重要なヒントになって
 いる。

 ◇砂時計の伝言
  体外離脱がテーマ。ウールリッチの『一滴の血』を下敷きにしたという。殺された男が
 今わの際に砂時計に犯人を示唆する証拠を残す。砂時計のダイイングメッセージの呼び水
 になったのは榊林銘氏の『十五秒』とのこと。

 ◇続・夢判断
  ジョン・コリアの『夢判断』をモチーフにした作品。毎日連続物の夢を見るという設定で、
 窓の外に眼を向けるたびに落ちてくる人物が変わるという奇想天外な物語。

 ◇対位法
  仲が冷え切ったた夫婦が、別々の部屋で二人とも内容がよく似た本を読んでいる。物語が
 クライマックスを迎えるとき、ことはリアルの世界と交差し、まさに殺人が行われようとす
 るのであるが…。作中の作品がリアルの世界に被さってくる面白さがいい。
  アルゼンチンの作家フリオ・コリタサルの『続いている公園』を下敷きにしている。

 ◇まよいネコ
  迷子のペット探しが仕事の探偵社。今週初めての依頼人が来た。依頼主は飼い主の人間と
 種が入れ替わったネコ。セリフ回しも軽快でわかりやすい。落語の「元犬」が着想の許。
 
 ◇葬式がえり
  出だしは「小泉八雲の『小豆とぎ橋』という怪談を知っているか」で始まる。松江の「小
 豆とぎ橋」で謡曲「杜若」を謡うと女の幽霊の祟りがあるという言い伝え。その時は何事も
 ないが、後刻とんでもない凶事が起こる。そんな話を、知人の葬式帰りの精進落としで酩酊
 した二人の男が交わす。
  タクシーでの帰路、友人を送り届けた男は運転手が漏らした言葉に怖気だつ。「さっきの
 お客さんは幽霊か物の怪にとりつかれているのじゃないですか」。実は、男は葬式に出る前、
 闘病中の妻が発作で倒れたのをそのまま放置して家を出た。未必の故意。実は幽霊は私に取
 り憑いていたのではないか。
 『奇想天外21世紀版アンソロジー』に寄稿したもの。
  
 ◇最後の一撃
  不倫関係にある女ざかりの夫人と若い精神科医が催眠療法による記憶操作(あるキーワー
 ドでそれまで読んでいた本の内容を全部忘れてしまう)で夫を自殺に誘導する。探偵小説マ
 ニアの夫を(出口のない迷宮、精神的な拷問という悪魔的罠)(ママ)に陥れたキーワードは
 ≪読者への挑 戦≫だった。
    作者は「この短篇は会心のアイディア」とする。最後の一行はアントニー・バウチャーの
 『決め手』へのオマージュ。

 ◇だまし舟
      作家仲間の汐見から相談があると電話で呼び出された。自費出版と思しき私家本を見せら
 れる。素晴らしい出来栄えだが、汐見はある個所から先に読み進めないので、君が読んで
 後半がどんなふうか聞かせてくれという。ところが自宅に帰り読んでいると、汐見が来て
 さっきの本を返してくれという。双方強引に取り合っているうちに本は半分に破けてしま
 う。その夜汐見は電車に轢かれ死んだ。葬式で彼の兄に会うと、あれは汐見の初期の習作
 だという。手持ちの本の半分と、自殺遺体のそばにあった半分にちぎれた本を合わせてみ
 ると見事に一体化した。まるで七福神を乗せた宝船の「だまし舟」の如く。
  都築道夫氏の『阿蘭陀すてれん』へのオマージュであるというが、残念ながら小生には
 この短篇のストーリーの怖さがよくわからない。なぜ本の途中から読むのが怖くなるのか。
 なぜ汐見は自殺したのか。天地逆さまにして合わせた本の背表紙が見事に一致した意味が
 不明。
 
 ◇迷探偵誕生
  <ディープ・ブルー探偵社>の多岐川深青という探偵の話。
  絶対誤りのない名探偵であるはずの自分が、手がけた事件の解決に失敗する夢をかつて
 しばしば見た。誤った推論に導かれた可能性の分岐が夢に現れるのである。
  保険調査員をしていたころカスパロフというロシア人と出遇った。絶対誤りのない名探
 偵になるという夢を叶えてあげる。ただし失敗したら魂と引き換えにという彼と血盟を結
 ぶ。
  そして20年。業界一の解決率を誇る実績を上げたある日、カスパロフに再会し契約解約
 を告げられる。そこで多岐川は新しい契約を提案する。常に推理を間違えることがないと
 いうのは刺激がなく退屈である。誤りのない推理をして正しく事件を解決したら私の魂を
 あげることにしよう。
  カスパロフは見積もり計算をしてこの申し出を受ける。「迷探偵の誕生」である。

  ここでは量子力学の多世界解釈とか、人間の魂の分岐した並行世界での量子的ふるまい
 といった理論が展開されるが、単に煙に巻くためで、それなしでも十分楽しい。
 
                              (以上この項終わり) 

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お正月グッズ「羽子板」

2020年01月26日 | 水彩画

◇ お正月グッズ「羽子板」を描く

  
     clester F6

     令和二年の初めての水彩画教室。お正月なので「お正月グッズを描こう」ということで
 お正月グッズがいくつか持ち込まれました。私は羽子板にしました。昔幼い頃に姉たちの
 羽子板で衝 いたことはありましたが、長じては専ら凧あげで、自分で作った凧で遊びまし
た。
 この羽子板はもちろん遊び用ではなくて飾り用です。「藤娘」の木目込みというのでしょ
うか、混み入った衣装の図柄をどこまで丁寧に描くか。どの程度省略するかが勝負です。
 併せて百人一首の札や、手毬なども添えてありますが、主役はなんといっても羽子板。
 遠近感に多少不安がありますが、お許しを。
                                (以上この項終わり)
 
 

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C.J.ボックス 『フリーファイア』

2020年01月21日 | 読書


◇『フリーファイア』(原題:FREE FIRE)


   著者:C.J.ボックス(C.J.BOX)

      訳者:野口 百合子    2013.6講談社(講談社文庫)

   


 猟区管理官ジョーピケットシリーズ第1作は『沈黙の森』。その後『凍れる森』、
『神の獲物』、『震える山』、『裁きの荒野』、『狼の領域』が邦訳されている。
 テーマは絶滅危惧種の保護、反政府主義者の暗躍、資源開発にからむ不正・汚職
などであるが、本作はシリーズ第7弾でテーマは資源開発に絡む不正である。

 本作も
内容的にはこっこうサスペンスにも満ちていて、3件・6人の殺人事件を伴
うが、
舞台がほぼ一貫して自然豊かなイエローストーン国立公園の、しかも有名な
オールドフェイスフル間欠泉周辺である。イエローストーン公園の丁寧な自然描写
と地質構造学的な説明が楽しい。また、殺人事件の動機も、事件関係者、捜査関係
者もこの間欠泉に収斂されて
いく流れになっており、かつて読んだ『沈黙の森』、
『狼の領域』と同様、自然公園において独特な役割
を担う狩猟管理官という法執行
官としての活躍と舞台背景が興味の中心となる。

   イエローストーン国立公園は米国で初めて自然公園の管理が法制化された公園で
ある(1972年)。
 日本の鹿児島県の面積に匹敵する9千平方キロの広がりを有し、アイダホ、モ
ンタナ、ワイオミングの4州にまたがる。エルクやバッファローなど野生動物が生
息している。中でもスティームボート・ガイザー間欠泉は熱水が100mも吹き上が
る、世界最大規模の間欠泉である。
 また周辺のサンバースト・ガイザー地域には地ガスが噴出している(フリーフ
ァイアー)。

 主人公のジョー・ピケットはある事件で職を解かれ、義父の牧場で牧童頭をやっ
ていたが、州知事に呼び出され、イエローストーン国立公園で起きた殺人事件の再
調査を頼まれる。3人の若者を殺した犯人の弁護士クレイ・マッキャンは、公園法
の抜け穴を使い釈放されていた。

 ジョーが事件の隠された背景を探るうちに殺人被害者であるパークレンジャーの
上司カーターが何者かに殺害される。間欠泉地域に噴出するフリーファイアー中の
好熱性細菌が、石炭層のガス化などバイオプロスペクティング力を持つことが確認
され、某大企業が事業化に暗躍していることを知る。
 ネイティブ・インディアンの親友ネイトや女性パークレンジャーのデミングの協
力を得ながら悪徳グループを追い詰める。
 終段のスピード感あふれる活劇場面がなかなかスリリングである。

 ジョーは猟区管理官復帰によって、子供の頃親しんだイエローストーン国立公園
妻メアリーベスと二人の娘シェリダンとルーシーを連れていくことができた。

して根深い確執があった父ジョージとの再会があった。今回はの家族にまつわ
るエピソードは少ない。

                         (以上この項終わり)

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夏川草介『神様のカルテ』

2020年01月15日 | 読書

  ◇『神様のカルテ
  
           著者: 夏川 草介  2011.6 小学館 刊
  
  

 
   とにかく心がほっこりする作品である。
  
主人公の栗原一止は信濃大学医学部を出た内科医師で純粋無垢な働き者の好青年(本
 人申告)。
夏目漱石を敬愛し、愛読書が『草枕』なので、話し方もつい古風な物言いに
 なって周囲からは変人扱いされている。

  勤務先の信州松本市の中規模の総合病院「本庄病院」と栗原医師夫妻の住むアパート
 
「御嶽荘」が物語の主たる舞台であるが、御嶽荘に住む二人の変人(栗原医師も変人の
 一人)との日常の交流が綴られる。

  いずれにしても栗原医師はもちろん、その妻榛名、同僚の外科医師砂山、アパートの住
 人学士殿と男爵殿、看護師の東西さん、外村さん、水無さん。患者の安曇さん、田川さん
 など登場する人物の誰も彼もがいい人なのである。悪意のある人物が一人もでてこない。

  学士殿は抜群の博覧強記を示すが、実は大学受験に失敗し高卒のままであった。郷里の
 母を悲しませないために、大学院博士課程で勉強中としたまま8年
になった。その母が先
 頃亡くなってしまった。自責の念に沈み慟哭する学士殿を「学問を行うのに必要なものは、
 気概であって学歴ではない。熱意であって体裁ではない」と気合を入れる栗原医師。
  男爵殿と榛名さんは御嶽荘に桜の絵を描きつくし学士殿を郷里に送り出す。
  こんな話で心和むのである。

  また、胆のう癌の安曇さんが語った亡き夫へのオマージュに満ちたエピソード「小さな
 天狗」さんの話がいい。ひじょーに良い。

  もちろん地方病院とはいえ、というかだからこそ医師不足のせいで不眠不休の連続勤務
 を強いられ、使命感だけを頼りに働いている勤務医の実態を訴えること、重篤患者への思
 い、快方に向かった患者を見る喜びなど、医師、看護師の在りようを訴えることも忘れて
 はいない。

  末期がんの安曇さんが亡くなった。死亡診断書を書いた栗原医師は慟哭する。自分の判
 断は果たして正しかったのか。去来するこの数日間の自分の下した判断。
  ベッド上安静の患者なのに極寒の屋上に連れ出して雪の山並みを見せたこと、消化器出
 血なのに本人が食べたいといったカステラを食べさせたこと、急変時に輸血をせず見守っ
 たこと。
  単に命を長らえさせることだけが医療なのか、生きる命の意味を問う選択の瞬間である。
  おそらく延命治療の選択の場に立ち会う医師は、患者の一生に思いをいたし、人間とし
 ての尊厳を念頭に究極の選択をしなければならないというのが、おそらく
医師でもある作
 者の真意ではなかろうか。

  「川をせき止め山を切り崩して新邁進するだけが人生ではない。そこかしこに埋もれる
  大切なものどもを丁寧に丁寧に掘り起こしてゆくその積み重ねもまた人生なのだ。」
  巻末の栗原医師の人生訓である。

  作者の作家デビュー作。『新章 神様のカルテ』、『神様のカルテ 2』などシリーズ化。

                               
                                (以上この項終わり)
  
 
  

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