読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

佐野の桃を描く

2022年07月30日 | 水彩画

◇ 夏の果物の王者桃を描く

    
      clester  F6 (中目)

   妻の親友Kさんが地元(と言っても近くの佐野市)の桃を1箱送って下さった。
  普段こんなに大量も桃を手②することはないので、折しも帰省中の娘家族と一緒
  にいただく前にセザンヌのリンゴ程ではないものの5個の桃を皿に盛って描いた。
  何といっても特別に配慮された枝葉付の桃はなかなか得難いモチーフで、急いで
  描き上げた。
   桃独特の柔毛は白色のガッシュを加えるとそれらしくなるのであるが、今回は
  省略した。
   盛った皿の文様や色は省略した。背景色はセルリアンブルーとサップグリーン
  の混色である。

                           (以上この項終わり)

 

 

 

 

 

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弘中惇一郎の『生涯弁護人・事件ファイルⅠ』

2022年07月23日 | 読書

◇『生涯弁護人・事件ファイルⅠ

                            著者:弘中惇一郎 2021.11 講談社 刊

 
  作者は著名な弁護士である。世間の注目を浴びた事件の裁判で弁護人に名を連ねていた。
今回の事件ファイルⅠは彼が弁護人として担当したそれら大型事件
をグループ分けし、事件の
特性と共通点などを整理し、問題点を指摘している。

 村木厚子事件、小沢一郎事件、ロス疑惑事件などを手掛け「無罪請負人」と呼ばれた
著者が、
日本の検察庁の特性を厳しく指弾し、衆愚におもねるマスメディアを叩き、真実に迫る弁護活動
の姿が詳述される。現場百遍、情報は足でかせぐなど警察の刑事と同じ理屈で真相に迫るのが
弁護人が勝利する近道だということが良く分かる。そして裁判の成功か否かは、被告人と信頼
関係が築けるか否かにかかっているとする。

第一章 国策捜査との闘い
<村木厚子事件>
  代表的な冤罪事件。 無理やり郵便法違反という軽罪を手がかりに女性官僚の星と注目され
ている村木氏を陥れようとした大阪地検特捜本部の謀略。
  検察官が証拠改竄と証拠隠匿
を図るという犯罪が行われ前代未聞の検察不祥事事件となり
大阪地検は大打撃を受けた。 164日間にわたる長期の身柄拘束の中でマスメディア情が報の
膨張し推測情報が跋扈するなかで検察のストーリーが崩壊しかかり、物的証拠(フロッピーディ
スク)の捏造がなされ 作文された供述調書と検察調書が審理過程で矛盾が迷走し公判維持が
出来なくなった。
 国策捜査とは政治的な目的で刑事事件を作り上げ、ターゲットとした個人を逮捕・起訴して強
引に犯罪人を作り上げることを言う。 
<小沢一郎事件>
  当時対立関係にあった自民党と民主党の権力側の暴走である。こうした事件では検察のスト
ーリーに沿った情報が意図的にリークされ、マスコミは読者や視聴者の満足させるバッシング対
象の「悪人」を都合よく仕立て上げる。
 小沢氏の争点は政治資金収支報告書の不実記載容疑であったがここでも検察が巧みな作文
で供述調書が作られたものの、法廷で否定された。検察審査会で強制起訴にまで至ったが控訴
審で控訴は棄却された。  
<鈴木宗男事件>
 小泉内閣の郵政民営化に反対する党内抵抗勢力の一人鈴木代議士を追い落とす策謀の一環
であった。鈴木代議士が北方領土に関わる諸疑惑の中心人物であったため、格好のバッシング対
象とな
ったが、検察は偽計業務妨害容疑で秘書ら7人を逮捕した。この事件ではついでに外務省
職員であった佐藤優氏も逮捕され有罪となった。

第二章 政治の季節
<マクリーン事件>
 在留期間更新を申請したマクリーン氏に対する不許可処分について最高裁大法廷は入国管理
政策に対する非難行動、日米安保条約に関する抗議行動などは日本国にって好ましいも
のでな
いので、入管局のとった期間延長を認めないのは妥当とする判決は外国特派記者などにとって
大問題で反響が大きかった。日本人に保証されている基本的人権は気に食わない外国人には認
められないということだからだ。
  ただここでは当時若手だった著者弘中弁護士は①在留許可更新不許可の取り消しを求める、
②不許可処分の効力停止を求める申請を行い、東京地裁は基本的人権は外国人にも及ぶ。と
不許可処分取り消しの判決を出した。だが控訴審では東京高裁、最高裁とも後退した判決とな
った。
 マクリーン氏は在留更新申請から最高裁の訴訟判決までの8年間収容されることもなかった。
<刑事公安事件>
 学園紛争多発時代に東大事件(建造物侵入、不退去罪、凶器準備集合罪、公務執行妨害
)を
扱っている。被告人にも弁護団にも同期やっ先輩、後輩がいた。学生らの主張に共感を持つ弘
中弁護士は東大事件、大菩薩峠事件(赤軍派による爆発物取締罰則違反、殺人予備、凶器準
備集合罪など
)も扱った。
この時期日本赤軍、連合赤軍事件としては「よど号ハイジャック」、「テルアビブ空港爆破」、「あさ
ま山荘事件」、「リンチ大量殺人事件
」などがあって世間を震撼させた。

第三章 医療事故と向き合う
 公害・薬害と言った社会のひずみが生み出した健康被害に関わる訴訟ではクロマイ・クロロ
キン薬害事件とクロロキン薬害事件が挙げられている。医療事故訴訟と違って集団訴訟となる
とが多い。
<クロマイ薬害事件>
  日本では万能薬のように扱われたが副作用が続いたため1982年米国FDAは軽い疾病に
は使用しないよう規制がなされた。訴訟では国と製薬会社、病院と医者が被告であったが、因
果関係の証明がむつかしく、当然のごとく製薬会社は猛然と抵抗し決着まで14年かかった。
<クロロキン薬害事件>
 腎炎などの治療でクロロキン製剤を投与されて視力障碍を発症した患者の訴訟である。最高
裁迄争われ、解決までに20年かかった。この裁判では民法第709条の不法
行為責任を問うた。
当時の厚生省担当課長にクロロキンの薬害を知りながら黙認放置したことを認めさせたのである。
しかし最高裁も国の責任は認めなかった。
<医療過誤事件>
 医療過誤事件では原告の勝訴率は17%という。専門的かつ高度な医学知識・知験が必要な
ため。

第四章 「悪人」を弁護する
<三浦知義事件>
 いわゆる「三浦和義事件」は、ロスのホテルでの殴打事件と銃撃事件を週刊誌・TVが度を越し
た疑惑報道を流し、警察は逮捕時以降人権侵害が問題となった「市中引き回し」的取扱いをし、
これら530件に及ぶ名誉棄損損害賠償事件、無罪判決確定後の万引き冤罪事件な
どがあった。
これら事件の訴訟では一事不再理や共謀罪を巡る議論など多くのテーマを内包する。
 この事件では三浦氏に接見し事情聴いた著者は「この人はやっていない」と思うようになり一
貫して彼の訴訟弁護に当たった。そしてロスのホテル・駐車場等の実況見分も行った。
 ところが一審では氏名不詳の第三者と共謀して一美さんを殺害したと有罪・無期懲役を言い渡
した。控訴審では証拠・証言の薄弱さが証明され4年後の東京高裁判決は「無罪」だった。
 事件から27年後、身柄が拘束された米国ロス市警で三浦氏が死亡。自殺とされた。

512ページ、大部ながらサスペンスもあり、読みごたえがある。
                                          (以上この項終わり)

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福田和代の『怪物』

2022年07月13日 | 読書

◇『怪物

     著者:福田 和代  2011.6 集英社 刊

   

   人間を骨ごと溶かす身もよだつような怪物を追い詰めた刑事。ミイラ取
  りがミイラになったというか、自らが怪物と化してしまった物語。
   何かしらホラーっぽい不思議な小説である。

   定年まであと1か月という老刑事香西武雄。死の匂いを嗅ぐという異能を
  持ち何度も事件解決のきっかけを作ってきたが、自分の特異な能力は未だ
  に同僚にも明かしたことはない。
   定年退職を目前に控えて未解決事件が気がかりである。一つは15年前に
  起きた「くるみちゃん誘拐殺害事件」。もう一つは10日前から行方不明に
  なっている橋爪という男の失踪届の事案。

   香西は幼い女児を殺し焼いた残虐な犯人と目する男堂島昭の部屋で”死の   
  匂い”を嗅いだ。間違いなくこの部屋でくるみちゃんは殺害された。
   この男は警察官僚の子弟ということで早くに捜査対象から外れ、決定的証
  拠も見つからなかった。あるのは香西が嗅いだ人には言えない”死の匂い”だ
  け。
   事件は時効を迎えたが、あろうことか政治家に立候補したその男を追い詰
  めようと執念深く追い続ける。

   橋爪という男の失踪届に片手間に首を突っ込んだ香西は足取りを追ってい
  るうちに「日本循環環境ラボラトリ」という会社にたどり着き真崎という研
  究員を識る。そこでは亜臨界水で有機物を溶かす装置でごみ処理を請け負っ
  ているが、橋爪はここで真崎に溶かされたのではと疑う。

   一方ある日「15年前のくるみちゃん事件の犯人を知っている」という女性
  藤井寺沙織が現れた。自分もその男の被害に遭ったという。
   ここいらからやや唐突でご都合主義的なのだが、香西と沙織は堂島を罠に
  かけて自供を録音しようとするが争っているうちに香西は誤って堂島を殺し
  てしまう。
   沙織を事件に関わらせたくないと思った香西は殺人者に間違いない真崎に
  堂島の遺体を溶融させる。沙織も真崎の手に落ちる。
   こうして香西は怪物真崎と同じレベルまで落ち、自ら怪物となって街をさ
  まようことになる。
   リアルと荒唐無稽の際物っぽい筋書きではあるが、話がテンポよく展開さ
  れ一気読みしてしまう作品である。
                        (以上この項終わり) 
 


   
    

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上田秀人の『崩落』禁裏付雅帳<三>

2022年07月08日 | 読書

◇ 『崩落 禁裏付雅帳<三>

   著者:上田 秀人  2016.10 徳間書店 刊(徳間文庫) 

  
     禁裏付雅帳シリーズ(全12巻)の一冊。
     江戸時代の時代小説では朝廷と幕府の駆け引きは大政奉還前後の時期以
外なかなかお目にかからない。
 禁裏付というのは朝廷(禁裏)の内証監査と公家の非違監察のために置か
れた役職である。
 朝廷の位置する京都という地には京都所司代と東西町奉行所が置かれ朝廷
内部の事件の捜査などは禁裏付が処理した。

 禁裏付雅帳シリーズの主役は五百石の旗本である東城鷹矢が若輩ながら役
高千石の禁裏付に任じられ、格上の町奉行所、京都所司代、異質の文化に満
ちた公家社会に翻弄されながら役目を果たしていく物語。
 背景には九代将軍家重、十代将軍家治の寵臣として権威を手中にした田沼
意次が第十一代将軍家斉によって放逐され、代わって権力を手にした松平定
信が田沼の引きで栄進していた戸田忠寛京都所司代を失脚させようとする策
謀がある。東城はこの先兵として送り込まれたわけであるが、東城を朝廷側
に引きずり込もうとする武家伝奏役広橋中納言から東城篭絡のため送り込ま
れた公家南条家の次女温子、何かと東城の面倒を見る光格天皇の子供時代か
ら仕えている仕丁土岐、江戸から送られてきた妻女弓江などが物語に彩りを
添える。

 松平定信と公家のそれぞれの深謀遠慮、駆け引きが目まぐるしい。
    目下の老中松平定信の抱える問題は、光格天皇から要求されている太政天
皇問題。 今上天皇は父親の閑院宮典仁親王を差し置いて天皇の即位した負い
目から父親に太政天皇号を与えよと難題を要求してきた。幕府は太政天皇号
は天皇位経験者の身に与えられるものと拒否した。
 一方将軍家斉が父一ツ橋治済を大御所位につけたいと注文を出した難問が
ある。大御所は将軍経験者がなるもの、定信はこれをもって家斉の注文を拒
むが朝廷から勅許を得よとごねられている。太政天皇を拒まれている朝廷が
これを受け入れるわけがない。何とか朝廷の弱点を作り出し取り引きするし
かないと 定信が東城鷹矢を送り込んだわけである。
 また田沼派である京都所司代の用人佐々木伝蔵は戸田忠寛は東城を亡きも
のにしようと浜田藩士を使って付け狙う。

 東城の監視役として役宅に送られ鷹矢の面倒を見てきた温子の前に突然現
れた弓江という女性。東城の上司安藤信成の江戸留守居役布施孫左衛門の娘
である。松平定信が東城をしっかり幕府側につなぎ留めておくための重しと
して勝手に縁組を決めて京に送り込んできたのである。本人は既に東城の妻
と思い込んでいるが、東城家はしっかりと温子に仕切られているので何かと
軋轢が起こる。武家の姫と公家の姫の軋轢も面白い。
                       (以上この項終わり)

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水彩画教室でドクダミとクリスマスローズの花を

2022年07月06日 | 水彩画

◇ 籐の籠に盛ったドクダミとクリスマスローズの花

  
     clester F4 中目


     
     clester F4 中目

      先週の水彩画教室では籐の籠に盛った花を描くことがテーマでした。
   花はこの時期いろいろありますが主たる狙いは籐の籠ということで、花は
  二の次という感じで、いろんな種類がありましたが、私はドクダミとクリス
 マスローズを選び ました。
  いずれも白か淡い緑色のために背景色をどうするかが決め手で、花はマス
 キングで白を生かすことにしました。背景色をあまり濃くするわけにもいか
 ず、花を浮き上がらせるつもりが何となく中途半端な仕上がりとなってしま
 いました。
                         (以上この項終わり)

  

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