読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

陶器の人形・貴婦人像を描く

2018年05月28日 | 水彩画

◇ 陶器の貴婦人像

  
    WATSON F4(Muse Cubi)

  今回は人形を描くことに。
  いろんな人形が集まった中で陶器の貴婦人像を選んで描いて見ました。
  古色蒼然というより元からこのようにセピア色の像だったようです。貴婦人は、よほど若
 くなければ派手な、明るい色は着なったのか。わずかに髪飾りが薄いダークグリーンになっ
 ていました。
  ペチコートで腰が張っているスカートで中世の貴婦人であることが分かります。
  上半身だけという手もありましたが、やはりこの姿は全身でしょうということになりました。
 友人はもう一体の貴婦人像の後ろ姿と2体を描いていました。

                                (以上この項終わり)

 

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トマス・H・クック『夏草の記憶』

2018年05月24日 | 読書

◇『夏草の記憶』(原題:BREAKHEART HILL)
                                 著者:トマス・H・クック(Thomas H.Cook)
                                 訳者:芹澤 恵  1999.10 文芸春秋社 刊(文春文庫)

   
   クックの記憶三部作(ほかに『緋色の記憶』、『死の記憶』)の一つ。
     アメリカ南部アラバマ州北部の田舎町、チョクトーに生まれ育ったベン・ウェイドは
 北部からの転校生ケリー・トロイに出会い初めて恋に陥る。そして高校2年生の夏、郊
 外のブレイク・ハート・ヒルに悲劇が起こる。ケリーが何者かに襲われて大怪我を負っ
 た。ベンは生涯付きまとう暗い記憶に悩まされる。

 ケリーの現場を発見したのはベンの
同級生であった幼なじみのルーク・デュシャン。
 なぜ彼女はあそこに行ったのだろう。二人は会うごとに不可解なケリーの足取りを繰り
 返し回想する。
 本作の前半はベンの甘酸っぱい初恋の記憶。ベンは眼鏡をかけた内気で人付き合いの苦
 手な少年、医師を目指している優等生である。事あるごとに浮かぶ記憶はケリーと過ご
 した二人だけの時間。互いに学校新聞編集委員として、次第に親しさを増して高揚して
 いた日々、将来は開業医としてケリーを妻とし子供を成し、平凡でしかし幸せな日々を
 送る二人を夢想していたのだが、しかし学年末の学習発表会でケリーと学内一の人気者
 トッドが、「ロメオとジュリエット」で共演することで二人が急速に親しくなり、自分
 から離れていった頃の懊悩の回想は青春時代の深い傷痕として身につまされるところだ。

  その意味では15・6歳の少年が初恋の相手の一挙手一投足に慄き一喜一憂し、幾多の
 感情的行き違いがあったりして次第にぎくしゃくとした時を経て、ケリーがトッド
と眼
 差しを絡ませてキスする場面を目撃し、最後までケリーの愛を勝ち得なかったベンが
 「自分のものにならないのならケリーなどこの世から抹殺してやりたい」とまで思わせ
 るのも恋がなさせる一時の激情として共感できる。

「忘れられちゃったかと思ったわ」
「まさか、忘れたりするもんか」生涯守り続けることになる約束の言葉を口にしたのは、
 招かれて初めて二人でダンスパーティーに出かけるときのことだった。晩熟のベンは、
 パーティの後ケリーを家の前まで車で送っていきながらも、キスひとつできなかった。
  ベンの初恋は、「ロメオとジュリエット」と忌まわしいケリー襲撃事件が決定打と
 なり、敢えなく潰えた。ただ切ない記憶を残して。

 一番悩ましいのはルークが聞いたという「まさか、あなたが…」というケリーの言葉。

 第二・三部では事件の真相に迫る。そして第四部。事件から30年経って年老いたケリーの
 母シャーリーから家に招かれたとき、忘れようと封印していたベンの記憶(悪魔のさ
 さやき)が浮かび上がる。そして驚愕の場面が目の前に繰り広げられる。


 イメージ豊かな情景描写、人間への鋭い洞察や利己への内省、細やかな登場人物たち
 の心情への心配り、穏かなテンポで進む精妙な筆致。学園青春ものを思わせながら、
 独特の緊迫感を常に抱かせつつストーリーを展開させていく稀有なサスペンスである。 

                             (以上この項終わり)
 

  

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霞ヶ浦ヨットハーバーの風景を写生

2018年05月22日 | 水彩画

土浦市霞ヶ浦ヨットハーバーの風景を写生

 
  clester F8
  先週の木曜日(17日)に土浦市にある「霞ヶ浦ヨットハーバー」11人の仲間と一緒に写生に出かけました。
 やや暑い日だったものの、いつもの教室での静物写生から解放されのびのびと夏空の下、海とも見紛うヨット
 ハーバーの風景が描けました。
  「霞ヶ浦ヨットハーバー」はJR土浦駅から歩いても10分ほどで到着します。平日のためか出入りするヨット
 はほとんどありませんでした。

  これまで神奈川県の三浦海岸「シーボニアマリーナ」や東京の「夢の島マリーナ」でもヨットなど描きまし
 たが、水面の表情やヨットの的確なとらえ方など、なかなか上達しません。

  
遠景にある建物はブライダルホールの「フラン・ベル・アムール」です。
                                       (以上この項終わり)

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マイクル・コナリーの「罪責の神々(上・下)』

2018年05月20日 | 読書

『罪責の神々』リンカーン弁護士(原題:THE GOODS OF GUILT)
                      著 者 : マイクル・コ ナリー(MICHAELCONNELLY)
      
     訳 者 : 古沢 嘉道   2017.10 講談社 刊(講談社文庫)


      

  当代最高のハードボイルドと言われる「ハリー・ボッシュ・シリーズ」。久々に
米国法廷物の面白さを堪能した。
 本書ではGODS OF GUILT(罪責の神々)とは陪審員を指す。有罪か無罪かを決め
る存在であるから(本書40p)。
 副題の「リンカーン弁護士」はハリーが高級車リンカーンの後部座席を事務所代
わりに仕事をしていることからついた異名である。

 ハリー・ボッシュは法廷弁護士。ハーラー&アソシエイツ法律事務所を経営して
いる。
 ある日弁護の依頼があった。ある女の勧めでハリーに殺人事件の弁護を頼みたい
という。そのラコースというポン引きはジゼル・デリンジャーという娼婦を殺し、
証拠隠滅のために放火した容疑者として拘束されていた。
 ハリーは刑事弁護士である。殺人事件はたいてい実入りもよく望むところである。
ところが殺人被害者はなんとかつてハリーの依頼人で、何度も窮地を救ってやり更
生の道筋を立ててやったグロリア・デイトンという元娼婦だった。かつての依頼人
デイトンが名前を変え、ロスに戻り、娼婦に復帰し、殺されたとは意外だった。
 ハリーは、ラコースの弁護を引き受ける。事件を独自に調査した結果、ラコース
は本人の言うように無実であり、何者かにはめられたのだと確信する。


 悪徳麻薬捜査官マルコは違法な捜査方法で、実績をあげることを平気でやっての
ける人間だった。マルコはディトンを使って麻薬密売人の大物ヘクター・モイアに
終身刑の罪をでっち上げたが、このモイヤーが人身保護令状を申し立てたことから、
デイトンを証人として召喚しようという動きを知ったマルコが先手を打って、デイ
トンの口封じをさせたのが真相ではないかとハリーは証言・証拠固めに奔走する。

 当局側の人間として事前に情報を知る有利な立場から、マルコはハラーの先回り
をして、証拠や証人潰しをつづけていく。ハリーとそのスタッフは麻薬捜査官マル
コとこの手先元警官ランクフォードが悪辣なでっち上げの張本人と確信し、裁判に
臨む。

 後半(下巻)は検察陣と弁護側の緊迫した応酬で丁々発止の法廷審尋場面が続
く。陪審員のターゲット(どの陪審員を弁護側につければ無罪評決に導くことが
できるか)を見定めること、証人や物証をどの順番で出していくか、どこで休憩
をとるか、検察の異議申し立てを承知でどこまで証人を追い詰めるか等々、法廷
作戦のやり取りのこもごもが興味尽きない。
 徹底した調査でマルコらのでっち上げの証拠をつかんだハリーは、巧みな証人
尋問などでランクフォードを罠にかけ偽証と真相告白を得る。劇的な裁判終結場
面が秀逸。
 学校で習った人身保護律(ヘイビアス・コーパス)にも久々に出会った。


 ハリーはラコースの無罪を勝ち取り、市と郡に対する損害賠償訴訟などで2億
4千万円の賠償金を勝ち取った。もちろんハリーの事務所も過去最大の額の小切
手を受け取った。
 ハリーは
最近できた愛人ケンドールとの3週間のハワイ旅行、新しいリンカー
ン2台、さらにうれしいことに最愛の娘との関係改善が最大の贈り物となった。
離婚した
妻と同居している娘のヘイリーは父親がならず者など弁護していること
を嫌って父と断絶関係にあったのだが、依頼人の無実を信じて彼の自由を得るた
めに尽力した優秀な弁護士という新聞等の評価がありコミュニケーションが再開
されることになったのである。

 下巻の冒頭にハリーがケンドールを食事に誘う場面があり、そこが鮨屋だという
ことで、米国ではやはり寿司は相当浸透しているなと思ったが、店の名が「カツ
ヤ」だと聞いておやおやと思った。ハリーは「日本酒が好きか」と聞いたうえで
「冷か燗か」などと訊いており、しかもつまみにきゅうりの酢の物をとるなどな
かなかどうしていっぱしの日本食通である。
                           (以上この項終わり)

 

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黒川博行『二度のお別れ』

2018年05月13日 | 読書

◇『二度のお別れ』 著者: 黒川 博行 2017.10 角川書店 刊(角川文庫)

  
 
  本の題名を見て思わずチャンドラーの名作『長いお別れ』を連想してしまった。同作とは全く
 関係はない。
  黒川博行作品『雨に殺せば』、『八号古墳に消えた』と黒豆コンビ登場のシリーズ最初の作品。
  このころ(1979.1)悲惨な三菱銀行人質事件があった。ヒントになったのだろうか。
  作中事件は、黒田刑事が自嘲気味につぶやいた、偉い人の戒名のような「三協銀行強盗誘拐殺
 人事件」。1億円の身代金をただ盗りされ、人質は殺され、犯人も特定できず迷宮入りとなった。
 大阪府警捜査1課の無能ぶりをあざ笑うような作品であるが、そこは捜査陣の若手チーム、黒豆
 コンビ(黒田憲造刑事とマメちゃんこと亀田淳也刑事)の軽妙にして洒脱な関西弁のやり取りが
 リアル感をもって捜査の空転ぶりの虚しさを埋めてくれる。

  本書の事件はと言えば、新大阪駅近くのある銀行支店にピストルを持った男が押し入って現金
 400万円を奪う。ところが店内の客の一人が犯人に立ち向かい銃撃され、人質として囚われてし
 まう。犯人は人質とともに車で逃走する。男は400万円では足りないと1億円の身代金を要求して
 きた。誘拐事件で最も重要な身代金授受をめぐって巧妙な方法の指示と警察との攻防が展開され
 るが、見事犯人の方が勝ちを納める。

  犯人は3年後に意外な形で明らかになるが、マメちゃんがかつて指摘した疑念が的を得ていた
 ことが明らかになり黒田は悔しがる。

  題名の『二度の別れ』の由来は終幕段階で明らかになる。

                                 (以上この項終わり)

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