読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

梅雨時の写生

2007年07月05日 | 水彩画

◇布施弁天(紅竜山東海寺)の写生会

 先々週の6月24日(日)は写生会。
 わが水彩画教室の先生はどちらかというと雨男。写生会を企画するたびに雨
 催いとなり、中止や途中でやめることが少なくない。最も梅雨時は雨男のせい
 にはできない。雨覚悟の写生であったが。案の定予報どおり昼過ぎに雨が落
 ち始め、1/3ほど色をつけた段階でギブアップした。
 布施弁天は浅草弁天山、江ノ島弁財天と並ぶ関東三大弁天のひとつ。壮麗な
 本堂、三重塔、多宝塔式鐘楼、楼門などはいずれも享保2年(1717年)創建
 の歴史の重みと風格を示す。
 各メンバーは風車のある風景や東海寺の楼門など思い思いの場所でスケッチ
 に入る。スピードはそれぞれ。とくに今日のように雨もよいの日は早めに描か
 ないといけない。しかしいかに急ごうと基本である「緻密な観察と大胆な省略」
 が、大胆な省略だけになっては作品が台無しである。私は歴史を感じさせる楼
 門のどっしりとした佇まいとそれを取り囲む緑濃き樹立を表現したいと取り組ん
 だが残念ながら時間切れ。彩色の大半は自宅で、しかもカメラを忘れたため、
 記憶が薄れないうちにと、その日のうちに仕上げた。ただ楼門の扁額の文字が
 思い出せない。文字を正確に入れる気はないものの、字体がそれらしくなって
 いる必要があるため、おろそかには出来ない。いインターネットで探したものの
 中々分からず、知人の助けを借りてようやく「最勝閣」であることが判明した。
 由来は分からない。
  先生のご指導は、「描く主題」、「全体の構図」、「遠景と近景」、「色彩の調和」
 「主題と焦点」、「丁寧に、しかものびのびとしたタッチと濁らない透明感を大切
 にしよう」でした。これだけ留意点があると、どれかが抜けたりする反面、どれ
 かにはあてはまる部分があったりして助かります。

    

    ついでにいまひとつの小品をご覧ください。麗澤大学構内の一隅です。
    (ナンジャモンジャの木、20分くらいで描きました。)

        

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「再起」(原題UNDER ORDERS)

2007年07月04日 | 読書

◇待望の新作登場 ディック・フランシス

  ようやく本を読む時間が出来た。
 今日ご紹介するのは競馬サスペンス。 
  かつて自らも障害競馬の騎手として第一線で活躍したディック・フランシス
 は、引退後1962年小説「本命」刊行を皮切りに、ほぼ年1冊のペースで
 競馬シリーズを発表(これまで日本語訳で39冊刊行されており、私はそ
 の全てを読んだ。)してきたが、6年前愛妻メアリィをなくして筆を擱いた。
 熱烈なファンは久しく著作再開を願っていたが、その熱い期待に応えて
 先頃「再起」(原題はUNDER ORDERS) を発表した。日本語訳の本書に
 俳優児玉清が解説を書いている。「1年1作の至福の時を享受してきた
 フランシス・ファンとして、もはや再起は難しいのではという諦めが徐々に定着
 していた」ところ、「パブリッシャーズ・ウィークリー」にディック・フランシスの名を発見し、
 「声にならない驚きと喜びに目を剥き」、「”えっ、ほんとう”と絶叫する思
 いで狂喜した。」という。かくいう私めも、児玉清ほどの感動ではないま
 でも、ようやく再びあの独特の懐かしい語り口に出会えて誠に至福の時
 をすごした。
 作品を読み終わって、86歳にしてなおこれまでの作品に決して劣らない
 熱のこもった中身の濃い作品を物する実力に敬服する。
 今回はシッド・ハレーという四回目の登場となる元障害レース騎手の調査員
 が主人公である。
 毎度のことながら彼の作品は競馬シリーズと呼ばれるように、競馬のレース
 はもとより、厩舎、馬房の日常など部外者にはなかなかうかがい知るこ
 との少ない競馬業界の様子が随所に描かれ興味を掻き立てる。また、
 すでに日本では語り草に過ぎない貴族の実態がストーリーの重要な幹にな
 っていたりして面白さを倍加する。今回はこれにインターネットギャンブルのい
 かがわしさが加わり現代性をもたらしている。
 今回は隻腕となったハレーが、八百長にまつわる殺人事件をさばく話。
 騎手、調教師、厩務員、馬主らが綾なす人間模様が巧みに描かれ、人
 物像が定まってくる中で事件が急展開したりする。一気に読み進むしか
 ない。
  これまで日本語訳を一手に担ってきた菊池光氏が2006年6月他界さ
 れ、北野寿美枝氏が本書を翻訳しているが雰囲気を損なわず安心して
 読める。
  早く次作を発表することを期待したい。

 「再起」北野寿美枝訳 早川書房刊(2006.12)1,900円

◇コップとコッペパンとペン
 
作者:福永信 河出書房新社刊(2007.4)1,400円
 新聞広告の出版惹句に惹かれて市の図書館に購入リクエストを出した。
 ちょっと風変わりな小説という触れ込みであった。読み始めて納得。
  「文学界」 などに発表された短編4編であるが、どこ連作っぽいがそう
  でもないらしい。
 意識の流れに沿って・・・という小説スタイルがあるが、それとも違う。「一
  行先でなにが起こるかわかんないっていうスリルが・・・(大森望)」という
  不思議さがこの本、この作家の魅力なのかもしれない。私がたいした作
  家だと秘かに評価している阿部和重氏が「これはじつにおもしろい文学
  の本だ」という評価をしていて、私の読み方が悪いのかと思って何度か
  読み返したがやはりよく分からなかった。意識の流れが突然どこかに飛
  ぶのだ。それが作家自身もよく分からない勝手な方向に飛んでいるので
 すらすらは読めない。ただふしぎな小説なのだ。多分これを読んだ志賀
 直哉は横を向くと思う。こふした小説は私はあまり好きでない。
                                                                


  

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