読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

2019年も終わり

2019年12月31日 | その他

◇ 年の瀬のご挨拶

  いろいろなことがあった2019年(令和元年)も今日で終わり、明日から2020年(令和2年)
 が始まります。この一年間つたない絵や読書感想文をご覧いただきましてありがとうございま
 した。
  当方ついに80歳代に突入し、まぎれもないく老人グループに属することになりました。当節
 80歳以上の老人など掃いて捨てるほどいて、未だに「生涯現役」などと、若手の足手まとい
 になっている御仁もいるし、若手の健康保険料のお世話になっている健康でない人たちもいま
 すが、小生もできるだけ若い諸君に迷惑をかけないように専心行動しようと心に決めました。

  我が国の世相、事件、天変地異、政治、国際問題、近隣遠国を問わず、外国の首領や国民の
 性格・言動などなど、実は言いたいことが山ほどあって、ツイッターではなくこのブログに書
 こうかという衝動に駆られることが一度ならずありますが、どうせ老いぼれ爺の愚痴や戯言、
 果ては妄言と受け取られるのは必定と、じっと堪えこれまで通り絵と読書感想に専念すること
 にいたしました。
  明年もこれまで通りよろしくお願いいたします。
 

  

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ミシェル・ウェルベックの『セロトニン』

2019年12月27日 | 読書

セロトニン』(原題:Serotonine )

    著者:ミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq)
      訳者:関口 涼子   2019.9 河出書房新社 刊

  

  フロランという46歳のフランス人男性。肉付きが良くずんぐりしている。ちょっとアル中気味。
  いわゆるスノッブ。アッパーミドルに属すると信じている。その証拠に、<庶民階級出身の読者
のために説明を付け加えると、ペアレンタル・スイートルームとは、寝室のすぐ脇にドレッシングル
ームと浴室が付いているものだ>などと宣う。環境科学生命工学学院を出て、巨大化学会社モンサン
トに就職するが農業食糧省に転職し、契約調査員として農業森林地方局に在籍している。結構高給を
得ているらしい。

 フロランはこのところセロトニンの分泌が不調らしく抗鬱剤のキャプトリクスを常用している。
(脳内セロトニンとは神経伝達物質の一つで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深くかか
 って
いるとされる。)
 最新の同棲者
のユズ(日本人)の性的放縦さに嫌気がさして蒸発、ホテル暮らしの生活を始める。
心には過去に愛した女性との思い出と深い絶望が渦巻く。売れない女優のクレール、最高の知性を
持った弁護士のケイト、双極性障害のエレーヌ、結婚も考えた獣医専攻の研修生カミーユなど女遍
歴の数々。中でも弁護士のケイトと研修生カミーユへとの別れへの悔悛の念は強い。

 放浪の旅に出たフロランはクレールやエレーヌに会ってみたものの、あまりの変容に尻込みする
だけ。カミーユの下を訪ねるが会うだけの勇気がない。結局大学時代の友人エムリックを訪ねる。

 環境科学生命工学学院における無二の親友であったエムリックはフランス・ノルマンディーの有
力な貴族の出で、城と広大な農地を持つ。彼は酪農経営を決断する。5年後に遭った時は二人の子
をもうけたものの経営がうまくいかず疲労困憊していた。その妻エセルも疲れ切っていた。
 そして15年ぶりに訪ねてみれば、エセルは著名ピアニストとロンドンに駆け落ちし、落ち込んだ
エムリックは荒んだ生活に沈んでいた。
 フロランはフランスの酪農は数が多すぎるから事業からて手を引いた方が良いと忠告したが、既
に危機感を抱いていたエムリックを含む酪農家グループは、銃を手に抗議行動に走り、その最中に
エリックは自殺してしまう。

 フロランは思う。自分が亡くなる前に自分の人生で何らかの役割を果たした人たちにもう一度会
いたい。
 どうにも忘れ難いカミーユにもう一度会いたい。しかし手紙も電話も掛ける勇気が出ない。彼女
が住む町を訪れ、カミーユが営む動物病院診療所の前にあるバーで彼女が現れるのを時間も待つ。
カミーユは15年前の姿と少しも変わっていなかった。
 結局声も掛けることもなく、思い出だけが通り過ぎていく。夜中に頻拍が高まり、多汗と吐き気
が襲ってきた。自分の行動をコントロールできなくなった。最早完璧に立ち直ることはないと確信
する。

 翌日も彼女を見張っていると5歳くらいの男児がいることが分かった。車の後をつけると二人は湖
畔のロッヂに入った。フロランは近くにある冬季閉鎖中のレストランに押し入り、3週間にわたって
親子を見張る。そしてあの息子がいなくなれば、またカミーユが自分を愛するようになる筈だと、カ
ミーユが診療所の出かけた留守を狙って、手持ちの銃で男児を狙う。しかし突如指が震え始めて銃弾
は外れてしまう。

  名実ともに狙いが外れたフロランはすっかり落ち込んでついに終の棲家を探し始めた。隣人と顔を
合わせなくてよい高層マンションの一室を手に入れる。トーマス・マンの『魔の山』を読もうと思っ
ていたが結局コナン・ドイルに替えた。そして部屋から飛び降り自殺する状況を想像したりする。
 (考えてみれば僕の人生は奇妙な風に過ぎていった。カミーユと別れてから何年もの間、僕は、遅
かれ早かれ二人はまた出会い直すだろう、それは不可避なことだ、だって僕たちは愛し合っているの
だからと自分に言い聞かせていた…。)

 読み終えてみれば、華やかな人生遍歴
を経て、46歳にして世の中の辛酸を嘗め尽くしたような気持
ちになってしまったあげく、普通の社会生活と人間関係から遊離してしまい、絶望の中、思い出に
「引きこもり状態」に陥った、個人主義のフランスの中年男が辿った緩慢な死の物語である

                                   (以上この項終わり)



 

 


 

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思わぬクリスマスプレゼント

2019年12月24日 | その他

栃木からジャンボ梨(にっこり)が届いた

   

 「ピンポーン!」ドアフォンに映っているのは宅配のお兄さん。
 「ん、あれかな?」ネットで注文しているマウスを待っていた。でもあれは
  レターパックで送られてくるはずだから…。?

  送り主は栃木県野木町にお住いのKさん。妻の親友である。
 「果物・菓子」とある。もしかして吾輩の好物のあれ(十八里最中)かな。
  意地汚く貰い物の中身を想像していたら案の定菓子は十八里最中だった。
  そして、果物とは大きな梨.栃木生まれのブランド梨<にっこり>とある。
  日光に掛けたのかな、と思ったがイメージがにっこりとした雰囲気だから
 かもしれない。
  なんと重さは824g(1個・風袋込み)隣の大きな信州リンゴが445gなの
 でほぼ倍の大きさである。
  生産量が少なく沢山は出回っていない果物らしい。貴重な品である。

  思いがけないクリスマスプレゼント。新年の祝い膳に加えよう。


 


                         (以上この項終わり)
 

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ジャン・クリストフ・グランジェの『死者の国』

2019年12月22日 | 読書

◇『死者の国』(原題:La Terre des Mort)

  著者:ジャン・クリストフ・グランジェ(JeanーChristoph Grannge
  翻訳監修:高野 優  訳者:伊禮 規与美  
           2019.6 早川書房 刊(ハヤカワポケットミステリー)

 

 ポケット版ながら772ページのしかも2段組みの大作である。英米や北欧のミステリーや
警察ものは多く読むが、フランスの作品はの『悲しみのイレーヌ』のピエール・ルメートル
以外ほとんど読むことがなかった。しかしこの作品は面白い。
ノンストップサスペンスといって良いくらい、ページを繰るの手が忙しい。

 先ず主役のパリ警視庁コルソ警視の人物造形が卓抜である。コルソはそもそも施設育ちで
荒れた少年時代を送っていた。高層マンションの地下室でホモの麻薬売人に監禁・陵虐され
殺人を犯し茫然自失状態でいたところ、今は犯罪捜査部長になっているボンパールに助けら
れて警察の道に入った。
 元来人づきあいが苦手なのであるがバカロレアに合格、捜査に抜群の力を発揮し捜査第
一課長にまで栄進している。しかし互いに気に入って結婚した才媛の妻サマンサとは離婚調
停の真っ最中。息子のタデの親権を巡って争いが続いている。

 パリの路地裏で発生したストリッパーの猟奇殺人事件。捜査に行き詰まった捜査第三課か
ら引き継いだものの、手掛かりがなく五里霧中。事件捜査と離婚抗争の股裂き状態にある。
 そんな中、第二の殺人事件が発生。被害者はまたもストリッパーであり手口が第一の事件
酷似していることから同一犯人の犯行と断定、捜査を進めるうちに被害者の共通項から
ビエスキ
という元服役囚が重要容疑者として浮かび上
がる。ところがこの人物なかなかの狡
猾なところがあり事ごとに、コルソを翻弄する。
 実はソビ
エスキは刑務所で絵の才能が開花し、出所後も美術界の有名人になっている。し
かも多くの
女性にもてもてもで、アリバイ証言でも彼女らは偽証している疑いがある。

 重要参考人として捉えたものの物証に乏しく釈放したところ、ソビエスキはユーロスター
でロンドンに逃亡する。コルソはこれを追うがその夜第三の事件が発生。海中で発見された
遺体は先の猟奇事件と全く同じ手口で殺されていた。ただ今度の被害者は男。
 コルソは有能な部下の一人バルバラの手を借りてソビエスキの第二のアトリエを発見する。
指紋等から殺人現場と断定ソビエスキを犯人と断定し逮捕する。これで犯人は予審判事の手
にわたった。
 コルソはようやく事件捜査から解放され離婚調停に取り組む。
ここまでが第二部。この後とんでもないことがコルソを待ち構えていた。

 いい話と悪い話があって、いい話からすると、コルソはサマンサを脅して共同親権を勝ち
取った。サマンサには過激なSM嗜好があり、コルソは息子に母親のこうした実態を知られ
ることを恐れ、協議離婚に追い込むために、部下のバルバラ
に頼んで証拠写真を撮りマスコ
ミへの公表をちらつかせたのである。
 さて悪い話。コルソはその後薬物密輸取締本部の幹部に栄進し、穏やかな日を得たのであ
るが、ある日予審判事に呼び出されて「ソビエスキが犯人とどれだけ確信があるのか」と聞
かれた。裁判における彼の弁護士クローディア・チュレージュは名うての法律家で、心して
かからないと危ういというのである。

  さて事件から1年半もたってようやく予審法廷が始まった。コルソは怜悧で美人のクロー
ディアによって完璧な捜査との自負を完膚なきまでに打ち砕かれるのである。
 法廷審理の進行、クローディアの死、二転三転の末に悪夢のような真相にたどり着く驚愕
の結末
はどうぞ読んでのお楽しみ。

  この作品を読むと犯罪捜査で最も重要なのは「動機」であることがわかる。
 次作が待たれる。

                               (以上この項終わり)

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秋の夜長は読書で

2019年12月19日 | 水彩画

◇ 秋物語は定番のスタンド

 
      clester F6

   先月に描いた作品が仕掛品のまま放置されているのを見つけました。
  秋のイメージの一番は読書。とすると電気スタンドが登場します。近頃はLED仕様で
 機能優先のスマートなスタンドが主流ですが、幹事のS氏が持参するレトロなスタンド
 が絵心を刺激します。

  鋳造性の重厚なスタンドですが、点灯した姿で描きました。(なのに電源コードが見
 当たらない…)
  背景色はスタンドを浮き上がらせるために昏い寒色にしました。もっと暗い方がよか
 ったかもしれません。
                             (以上この項終わり)
  

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