読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ディーン・クーンツの『ヴェロシティ(上)』

2023年05月27日 | 読書

◇『ヴェロシティ(上)』(原題:VEROCITY)

    著者:ディーン・クーンツ(DEAN KOONTZ)
    訳者:田中 一江  2010.10 講談社 刊(講談社文庫)



 モダンホラーの旗手とされるディーン・クンツの傑作ミステリー。
 
 今はさっぱり書いていない元作家ビリー。今はバーテンダーとして平凡な日々を送って
いたが、ある日車に一通のメモを見つける。それからメモの予告通りビリーを犯罪者に仕
立てあげる事件が正確に実行されていく。
 覆面連続殺人犯がターゲットのビリーをいろんな手管で追い詰めていくテンポはもちろ
ん巧みな比喩と、ビリーと登場人物との切れ味のいい洒脱な会話が楽しい。
  
 メモは「これを警察に届ければ慈善家のばあさんを殺す、届けなければ美人の教師を
殺す。6時間以内に選べ。どちらを選ぶかは、お前次第だ」という。ビリーは警察には行
かなかった。そしたら翌日ビリーはジゼル・ウィンズロウという女教師が殺されるという事件
が起きたことを知った。
 そして第二第三のメモが届く。それにしても一体誰がなぜビリーを対象に連続殺人を
仕組 んでいるのか。ビリーは友人の警官ラリーにメモの話をした。そのラリーはまもなく
自宅で殺された。

 ビリーは車の中で麻酔薬を嗅がされて
瞼に釣り針を刺されるという攻撃を受ける。
 犯人からの「脅しの言葉」を伝えに現れたコトル
という男は、伝言を伝えて後誰かに殺
された。
「脅しの言葉」は「お前の知り合いを殺せ、だれを選ぶかはお前次第。選ばなければ俺
が選ぶ」という。


 ビリーにはバーバラという4年間にわたって植物人間状態で入院している婚約者がいる。
時折脈絡のない意味不明の言葉を口にする。
 ビリーはバーバラがこん睡状態から抜け出す日がいつか来ると信じている。バーバラだ
けは守らなければならない。

 犯人から電話で指示が来た。「赤毛で美人の女を殺す。雌犬を殺せと言えばあっさり
と殺すが、さもなくば女は酷い拷問を受けて苦しむだろう。選ぶのはお前だ」
 これぞノンストップサスペンス。

                                        (以上上巻は終わり)

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タナ・フレンチの『捜索者』

2023年05月18日 | 読書

 ◇『捜索者』(原題:the searcher)

     ・著者:タナ・フレンチ (Tana French)
     ・訳者:北野 壽美枝 
   2022.4  早川書房 刊 (ハヤカワ・ミステリー文庫)


 題名の「捜索者」の通り、プロットの本筋はカルというシカゴの元警官が定年後移住先
で知り合ったトレイという少年の、失踪した兄を探し求めて奔走する話であるが、加えて
牧羊が連続して何者かに惨殺される事件を解明するという付随事件が混じるものの、こ
れが失踪事件と深いかかわりがあったことは後で分かる。
 シカゴというアメリカの大都会で警官をしていたというハンディを持ったカルが、
アイル
ランドの片田舎の住人達になじもうといじらしいほど苦労する一部始終がしっかり伝わっ
てくる。
 隣人のマート、雑貨屋のマリーンとその妹ヘレナなどとは直ぐに気心が通じ合った。
居酒屋ではバカ話や強力な密造酒の飲み比べにも付き合った。

 何といっても感嘆するのは移住したアイルランドの田舎町(といってもほとんど村)の自
然描写のうまさである。
 低く連なる山々の上に朝日が昇る前の、森と高原に広がる草地に漂うさわやと漂う靄、
朝に夕に現れる小鳥や小動物の姿、無数の星が瞬く空の下で営まれる人々と動物らの
営み、バーチの釣れる小川のせせらぎ。カルが移住の成功を確信するこの地のすべ
ての環境を礼賛する描写。これが私がこの作品をお勧めする最大の魅力である。

 カルはこの村で5万㎡の土地と築70年以上の古い家を手に入れた。壁や家具の塗替
え作業を手伝うトレイは元警官であるカルに失踪した兄ブレンダンの捜索を頼み込むの
だが、カルにはまた警官のような仕事をする気はない。ないが、トレイの健気さのほださ
れて、調べを進める。
 こんな田舎町にも若者相手に違法薬物を
売買するダブリンの組織が入り込んでいて、
どうやらブレンダンはこの組織の勘気に触れるようなことをしでかして
消されたのではな
いかという推測までたどり着く。何とこの失踪事件には今や親友となった隣人のマートが
絡んでいる様子が感じられる。

 ある日トレイが事件にこれ以上首を突っ込むなと言わんばかりの大怪我を負わせられる。
 そして今度は或る夜
カルが数人の男らに襲われ大怪我を負う。カルが扱い方を教えて
いた小銃を放ちカルの助けたのはトレイだった。
 カルは事態の深刻さを知り、トレイも兄が死んでいるとしてもその証拠があれば納得し
これ以上追及しないと言った。

 小さな子供トレイのひたむきさにほだされて人生の指針となるようなことまで教え諭し、ト
レイが次第のこれを受け入れて成長していく様は、引退してのんびり暮らしたいガンマン
が老骨にムチ打って最後のひと仕事を成し遂げるといった西部劇のようなスタイルの作
品である。
   本当の悪人は一人も出てこない。
                                       (以上この項終わり)


 


 文庫本で670ページの大半は

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令和5年のトマト栽培=3=

2023年05月13日 | 畑の作物

◇ トマトに支柱立て
 第1回目の苗を植えたのが4月25日。第2回目が4月28日。それから2週間ほどたって、
随分大きくなりました。気が早い木はもう実をつけ始めています。
 支柱を立て木を誘引(支柱にトマトの木を紐で結わく)しました。ついでにすでに
出始めた脇芽を欠きました。 

 手前右手の鉢にはミニトマト苗を植えてあります。

 奥にある小松菜は2度の間引きを終えて順調に育っています。

 

   
 
   
    
                  (以上この項終わり)

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中山七里の『鑑定人氏家京太郎』を読む

2023年05月03日 | 読書

◇『鑑定人氏家京太郎

         著者:中山 七里  2022.2 双葉社 刊

  
        今を時めく中山七里の「鑑定人氏家京太郎」シリーズ第1弾。
  鑑定をテーマにしたサスペンスは珍しい。事件そのものもプロットもさして特徴はないも
 のの検察(警察)と鑑定人(弁護士)との丁々発止の攻防が魅力。最終章で驚愕の真相が明
 かされる。とにかくエスプリの効いた辛辣なやり取りが小気味よい。

    「氏家鑑定センター」の所長氏家京太郎は常連客の吉田士童弁護士から連続通り魔殺人事
 件として世間の耳目を集めた裁判での鑑定を依頼された。事件の容疑者那智貴彦ご指名で弁
 護人となったというのである。医師である那智は3人の若い女性を扼殺したうえ子宮を摘出
 するという残虐な殺人を犯した容疑者として逮捕されたのであるが、当人は最初の二人につ
 いては犯行を認めたものの第三の殺人は身に覚えがないと主張しているという。
  吉田弁護士によると那智が否定する第三の殺人の物証の一つ加害者の体液について鑑定を
 頼みたいというのである。
  吉田弁護士によれば依頼人那智は至極まともな意思疎通能力を持ち水準以上の知能の持ち
 主で客観性を持ち合わせているという。

  実は氏家は20年前に科捜研(警視庁科学捜査研究所)の一員であった。鑑定案件を巡り
 あわや冤罪者を生む同僚の不始末を指摘したことが原因で組織内で白眼視されたことから科
 捜研を自ら追ん出て民間の鑑定業を立ち上げたた経緯がある。
  那智案件では東京地検の公判担当検事は谷端一級検事、ヤメ検と呼ばれる吉田弁護士にと
 ってかつての同僚でありライバルだった。
  この事案を担当する増田判事の下で3回にわたって公判前整理手続きが進められた。

  鑑定の焦点は第三の殺人事件で被害者に残された体液が那智のものとされたDNA鑑定結果
 が別人のものではないかという疑問である。
  氏家の鑑定センターには警視庁科捜研出身者など優秀な鑑定士がそろっていて、氏家らは
 事件の証拠収集に当たった所轄の刑事らの協力を得て、鑑定試料が途中ですり替わっていた
 に違いないという結論をうる。
  科捜研の鑑定結果を否定することは元科捜研鑑定士の氏家にとって忸怩たるものがある。

     そんな中氏家鑑定センターでは鑑定結果保管庫が荒らされたり、DNA鑑定の担当鑑定士が
 襲われ暴行を受けるなど不審事に見舞われる。新たな鑑定結果を恐れるのは誰なのか。
 
  那智事件 第二回公判で氏家はDNA鑑定結果について所見を証言する。
        あまつさえ氏家は残されていた試料から第三の事件被害者が妊娠していたという検査結果
 が出たことを明らかにした。
  谷脇検事は呆然とし、科捜研は蜂の巣をひっくり返したような騒ぎとなる。マスコミから
 は当然の如く科捜研への非難が集中する。
   
  では一体だれが鑑定試料を入れ替えたのか。そして第三の事件の真犯人は誰なのか。
       
  氏家は公判の結審前にある人物を訪ね、自首を勧める。
                               (以上この項終わり)
  
 




 

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