◇『ヴェロシティ(上)』(原題:VEROCITY)
著者:ディーン・クーンツ(DEAN KOONTZ)
訳者:田中 一江 2010.10 講談社 刊(講談社文庫)
モダンホラーの旗手とされるディーン・クンツの傑作ミステリー。
今はさっぱり書いていない元作家ビリー。今はバーテンダーとして平凡な日々を送って
いたが、ある日車に一通のメモを見つける。それからメモの予告通りビリーを犯罪者に仕
立てあげる事件が正確に実行されていく。
覆面連続殺人犯がターゲットのビリーをいろんな手管で追い詰めていくテンポはもちろ
ん巧みな比喩と、ビリーと登場人物との切れ味のいい洒脱な会話が楽しい。
メモは「これを警察に届ければ慈善家のばあさんを殺す、届けなければ美人の教師を
殺す。6時間以内に選べ。どちらを選ぶかは、お前次第だ」という。ビリーは警察には行
かなかった。そしたら翌日ビリーはジゼル・ウィンズロウという女教師が殺されるという事件
が起きたことを知った。
そして第二第三のメモが届く。それにしても一体誰がなぜビリーを対象に連続殺人を
仕組 んでいるのか。ビリーは友人の警官ラリーにメモの話をした。そのラリーはまもなく
自宅で殺された。
ビリーは車の中で麻酔薬を嗅がされて瞼に釣り針を刺されるという攻撃を受ける。
犯人からの「脅しの言葉」を伝えに現れたコトルという男は、伝言を伝えて後誰かに殺
された。
「脅しの言葉」は「お前の知り合いを殺せ、だれを選ぶかはお前次第。選ばなければ俺
が選ぶ」という。
ビリーにはバーバラという4年間にわたって植物人間状態で入院している婚約者がいる。
時折脈絡のない意味不明の言葉を口にする。
ビリーはバーバラがこん睡状態から抜け出す日がいつか来ると信じている。バーバラだ
けは守らなければならない。
犯人から電話で指示が来た。「赤毛で美人の女を殺す。雌犬を殺せと言えばあっさり
と殺すが、さもなくば女は酷い拷問を受けて苦しむだろう。選ぶのはお前だ」
これぞノンストップサスペンス。
(以上上巻は終わり)