リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

竹内まりやとユーミン(下)

2024年10月27日 11時33分15秒 | 音楽系

ユーミンの最新アルバム、と言っても2020年でしたからもう4年前ですが、私はアレンジも含めて近年のアルバムの中では最高の出来だと思います。楽曲構成は竹内と少し異なり一般大衆狙いより少し右(左?)寄りの感じがします。このアルバムの世界観はとても好きです。どちらかというと一般大衆を引っ張って行くという感じでしょうか。

ただボーカルに声の衰えを感じてしまう(とても音程は正確で上手ではあるのですが)のが少しつらいところです。竹内の方がひとつ年下ですが、声はプラスティック・ラヴの頃に比べれば少しキーは下がっているものの、あまり衰えを感じさせません。

ユーミンの創作力、そして松任谷正隆のアレンジ力は全く衰えがなく、それどころかますます冴え渡っています。ユーミンもこのアルバムで「まだ伸びしろがあると感じた」と言っていました。前回のアルバムから4年経っていますので、そろそろ新しいアルバムを聴きたいところですが、アルバムを出す度に衰えていく声が心配です。

個人的にはユーミンの立ち位置の方がずっと好きです。「人生の扉」とかビールのCMで使われている「元気を出して」(お疲れ生!)なんか説教臭くて聴いていてすぐ飽きてしまいますから。お前はジジイのくせに人生のことやら歳を重ねる意味がわからんのだな、と言われてしまいそうですが、私は歌を歌詞だけで聴いているのではありません。でも世の中歌を聴いているといっても実は歌詞だけの人多いですよ、世界的に見ても。ボブ・ディランがノーベル「文学賞」だしユーミンも菊池寛賞ですからね。彼らはミュージシャンですよ。もっともお二人とも音楽に関する賞ももらってはいますが。


竹内まりやとユーミン(中)

2024年10月26日 20時04分12秒 | 音楽系

同年代のアーチストにユーミンがいますが、結構異なる道を歩んでいます。お二人とも裕福な家庭に生まれて結婚していますが、竹内は旧姓で通してますし、ユーミンは松任谷に変えています。

活動の過程も竹内は子育てをしながらのアーチスト活動で自称「シンガーソング主婦」ですが、ユーミンはずっとライブ活動を続けアルバム製作も多数多岐にわたっています。

竹内と異なりユーミンは若いうちからその才能を見込んだ多くのアーチストに「惚れ込まれた」いわば女王様みたいな存在です。

番組でも言っていましたが竹内は「中道」を行く作品作りを目指しているようで、思う存分高度な作品を作ってみてもいいが、それだと大衆が求めている竹内まりやではなくなる、というようなことを言っていました。

まぁこういった事情はユーミンでも多かれ少なかれあると思いますが、竹内の方がそういった意識は強いようです。番組のタイトルにもある「人生の扉」という曲なんかまさにそういうコンセプトドンピシャの曲です。

シンプルなメロディーライン、ハーモニーといい胸にぐっとくるストレートで分かりやすい歌詞といい、明らかにど真ん中を狙いにいっていますね。竹内はもっと複雑な構成の曲も作っていますが、こういうど真ん中狙いの曲も作れるという、これも素晴らしい才能だと思います。ど真ん中を狙うと大体はつまらない曲だったりクサイ曲になりがちのですが、このあたりはさすがです。


竹内まりやとユーミン(上)

2024年10月25日 14時28分09秒 | 音楽系

昨日のNHKで「竹内まりや Music&Life ~人生の扉~」という番組をやっていました。番組はアイドル時代から現在にいたるライブ映像で始まり、ふるさと出雲でのインタビューに続きました。

出雲大社にお参りする様子がとても印象的で、彼女の人生の中で出雲の大社が通奏低音のような役割を果たしているような感じを受けました。

AFS交換留学の話も出て来ました。AFSでアメリカに行くことを報じた新聞記事も紹介されました。いつぞやの竹内まりやに関するエントリーでも書きましたが、当時AFS交換留学生になるのは大変なことで相当優秀でないと行けません。私の高校時代の同級生もAFS交換留学生をめざしていましたが、全く歯が立ちませんでした。もっともヤツのレベルでは受かるわけないとは思っていましたが。(笑)

番組を通して少し残念だったのは、山下達郎が果たした役割の大きさにはほとんど触れられていなかったことです。そのことを知らない人は、いくつか出ていたライブ映像で、少し下向き加減でギターを弾いている人がいつもいるなくらいにしか思わなかったかも知れません。

有名なエピソードですが、竹内が作ったプラスティック・ラブのデモテープを聴いて山下がそのできばえに驚き、アイドル歌手からアーチストへの道を開いたことはよく知られていると思います。山下はその後のアルバムのアレンジ、プロデュース、場合によってはバックコーラスを担当しています。

 


BWV1006a(28)

2024年10月24日 15時30分24秒 | 音楽系

ルーレの8-16小節です。

前半の終り4小節と、後半の4小節になります。

ヴァイオリン版の1006と異なり1006aには沢山の装飾音や装飾記号がつけられていますが、全てリュート式の装飾記号に書き直しています。ただリュートの装飾記号 ) はとても自由度が高く多義的です。(詳細はゴーティエなどの曲集中の解題を参照)リュートの流儀に従って自由にやってもいいのですが、バッハがトリルを指定している箇所には tr. と書いておきました。

この曲はスローテンポで一見易しそうに見えますが左手のエクステンションや確実なグリップが要求されるなど結構な難物です。


下剋上!?イヤホン比較レビュー(3)

2024年10月23日 20時16分07秒 | 音楽系

TechnicsとShureはどちらもとてもいいサウンドですが、ではお値段が3倍以上するShureの立つ瀬はあるのか?実ははっきりその実力を示している箇所がありました。それは曲のイントロ最後の分数和音G/Aの鳴りです。Shureで聴くとその和音がきれいにバランスよく鳴っているのです。XiaomiもTechnicsもG/Aだろうという判断はできますが、キーボードの右手の音がボーっとしていて上手く聴き取れません。Xiaomiだとバスもボーっとしています。それがShureではクリアに響くのです。

この和音が識別できない人にとってはどうでもいいことかも知れませんが、こういった差を埋めるのに3倍のお金をつぎ込まなければならないというのはオーディオの世界ではよくあることです。自分の耳にはShureはオーバースペックだと思う方はTechnicsで充分満足できます。

Xiaomiについてはそれだけで聴いている分だと充分満足できるレベルだと思いますが、より上級のものを聴いてしますとたちまち満足できなくなります。ですから1380円のXiaomiを買ったら決して上級機種を聴いてはなりません。必ず欲しくなりますから。でもそういうことさえしなければ、充分満足できるレベルです。

CasiopeaのDAILY BREADを3機種で聴いた結論:

実際には多くの方にとってXiaomiで充分でしょう。ただし禁断の果実をかじってしまった方はTechnicsくらいでないと満足できないかも。もっといいものをという方はShureがいいでしょうけど、こっちは有線で少々面倒です。多くの方にとってTechnicsで充分満足できるサウンドです。

音楽ソースが変わるとこの判断は変わってきます。次回はクラシック曲で比較してみましょう。


下剋上!?イヤホン比較レビュー(2)

2024年10月22日 12時35分56秒 | 音楽系


機能面のレビューは基本的にはせず音を中心に具体的な比較していきたいと思います。プレーヤーは iPhone 14です。各機種に設定できるトーンコントロールは使わずフラットなままでのリスニングになります。曲は4曲の予定です。1曲ずつそれぞれの機種で聴きながらレビューしていきましょう。

まず1曲目として選んだのが Casiopea P4 のアルバムNEW TOPICS(2022)よりDAILY BREADです。この曲は比較的オーガニックなサウンドということで選んでみました。Casiopeaはもう40年以上の歴史を持つフュージョン・バンドです。途中メンバーチェンジもあり本アルバムが第4期の第1作になります。

まずXiaomi(Bluetooth)で聴いてみましたが、これがなかなかいけます。1380円とはとても思えないサウンドですが100倍近いお値段のShure(有線)だとどうなるか?お値段に比例した100倍いい音とはどんなものか興味がありましたが、比べてみると音の次元が全く異なっていました。

Xiaomiだけで聴いていると気がつきませんが、Shureで聞いて見るとXiaomiのときに音源にかけられていた何枚かの薄いベールが取り払われたような感じがします。全ての楽器がクリアに聞こえ、クリアであっても特定の楽器が目立つようなことはなく、録音エンジニアが意図したであろうバランスで鳴っています。あとXiaomiの音はベールがかかっているだけではなく、全体のトーンが薄いことにも気がつきます。Shureでは高いノイズ成分を持っているハイハットの音も強調された音ではないのにはっきりと通る音です。これがXiaomiだとドンシャリ的傾向があるので少し耳に刺さります。

Technics(Bluetooth)だとどうでしょうか。こちらもXiaomiにかかっていた薄いベールが取り除かれていますが、Shureよりは取り除いたベールが少ない感じです。低音部は他の機種よりふっくらした感じのサウンドですが、多少輪郭がぼやけており音程が聴き取りにくいところもあります。


下剋上!?イヤホン比較レビュー

2024年10月21日 12時08分44秒 | 音楽系

レビューするのは次の3機種です。

(1) Xiaomi Redmi buds 6 Play
(2) Technics EAH-AZ80
(3) Shure SE846 Gen2

これらの機種は全体的な機能につては共通項が少なく値段も異なりすぎますので、普通こんな無茶振りレビューをすることはないと思います。ここでは主に音質に絞ってレビューしていきたいと思います。ではまずそれぞれの機種について簡単に説明していきます。

(1) Xiaomi Redmi buds 6 Play
以前当ブログでもご紹介致しました格安Bluetoothイヤホンです。Bluetooth接続できるのは1台のみです。アマゾンでの価格は1380円、私はこれを全額ポイントで購入しましたのでタダでした。(笑)ノイキャンはついていません。

(2) Technics EAH-AZ80
最近購入したノイキャン付きのBluetoothイヤホンです。3台までBluethooth接続できます。アマゾンでの価格は35400円。

(3) Shure SE846 Gen2
10年以上前に発売されたSE846の第二世代です。この機種は有線接続で、ノイキャンはついていません。アマゾン価格は114055円です。

さてこの3機種、ノイキャンがついていたりいなかったり、Bluetoothもあれば有線接続もあり、さらに価格差100倍!近くありますが、果たしてレビューできるのでしょうか。


ノイキャン・イヤホンを買う

2024年10月20日 15時26分01秒 | 音楽系

少し前Xiaomiの格安Bluetoothイヤホン( Xiaomi Redmibuds 6 Play )のレビューをしましたが、ノイズキャンセル(ノイキャン)・イヤホンが欲しくなったのでいろいろ調べてみました。 Xiaomi Redmibuds 6 Playはノイキャンはついていません。

ネットの記事とかYou Tuberのビデオ・クリップをいろいろ見てみたのですが、なんか歯切れが悪いのばかりです。あなたのお好みしだいみたいな言い方ばかりです。

レビューは、最近のノイキャンイヤホンの機能が多岐にわたっているのでとても幅広いものになりがちです。まぁきちんと性能評価をすればそうなるのはいたしかたないところですが、私としてはまず音質です。ところがこれに関する評価はみなさんとても曖昧です。

例えば「低音がダイナミックに広がっている」とか「高音が伸びやかだ」という表現。これって低音がもこもこ曇っていてもそう言えるし、高音がシャーンと聞こえたらそういう表現になりますよね。その性能が音楽的にどんな意味を持つのかという評価がほとんどないのにがっかりしました。レビューを読んでも、ビデオ・クリップを視聴してもこんなのばかりです。

そんな中ひとつだけちゃんとしたレビューがありました。ミュージシャンやっている人のYou Tube ビデオ・クリップでしたが、「・・・影に隠れがちな楽器が唯一きれいに分離して聞こえてきたのが・・・」という表現を使っていました。そう、そういうことを知りたかったのです。これって多分音楽がよくわかっている人の表現だと思います。その機種がTechnics EAH-AZ80でした。SONY WF-1000XM5, Apple Air Pods Pro2など3万~5万クラスの比較レビューです。

ということでそのレビュワーを信用してTechnicsを購入して聴いてみましたが、まさに彼のおっしゃることは正しかったです。ウチにあるShure SE846, SE535, Xiaomi Redmibuds 6 Playと聴き比べての感想です。

音楽の本質が分かっていない人はぜったいに核心をついた表現はできません。出ている音が音響としてしかわからないオーディオ評論家ではなくその音の意味もちゃんとわかるオーディオ評論家がどのくらいいるのでしょうか。いくら低音が豊かに出ていても意味のわからない(=ハーモニーが形成されない出音とか分離の悪い出音など)出方ではだめなのです。

次回別連載で音楽のことをまぁ人よりは分かっているつもりの私がイヤホンの音質重視レビューをしてみたいと思います。


BWV1006a(27)

2024年10月14日 21時25分11秒 | 音楽系

少し間があいてしまいましたが、BWV1006aのアレンジの続きです。

今回から Loure です。ヴァイオリン用のBWV1006にはほとんど装飾の記号はついていませんが、BWV1006aには装飾音がいろいろ書かれています。Preludeでは終わりの方にトリルがあるだけでしたが、Loureでは沢山出て来ます。

自筆譜のLoureの冒頭です。ここでは装飾音としては、上からのアポジャトゥーラ、トリル、アポジャトゥーラ付きのトリルが見られます。他にモルデント、下からのアポジャトゥーラが出て来ます。リュートのタブではこれらに完全に対応している装飾記号がありませんので、タブで記述する際はリュート式に )と )を時計回りに90度回転した記号そして(  の3つを使うことにします。この場合自筆譜に書かれているトリルとアポジャトゥーラは区別できませんが、もともと )は多義的な記号なので奏者の判断でいろんな形で自由に装飾した方がいいと思います。ひとつの記号で即興的にいろんな装飾をすることこそ当時のスタイルだと思います。

1-7小節です。

装飾記号の種類が少ないと楽譜がとてもスッキリしますね。


バロック音楽の旅17第2回レクチャー

2024年10月13日 22時24分09秒 | 音楽系

今日はバロック音楽の旅17の第2回で「秀吉の聴いた西洋音楽」というタイトルでレクチャーをしました。

とても天気がよかったので行楽に出かけるのを優先してしまうのではと危惧しましたが、今年の応募者89名の内の大半の方にお越し頂き大盛況でした。きっと午前中にどこかに出かけてランチをして、そのあとでレクチャーに来られた方も多かったのでは。帰りはちょっと早めの夕食をとり温泉に立ち寄って帰宅するという一日コースの方もいらっしゃったかもしれません。

秀吉の聴いた西洋音楽については皆川達夫説の「皇帝の歌」が定説化しているという困った状況にありますので、まず皆川説を紹介して、それの矛盾点を指摘しつつ歴史的事実を立脚点にして可能性を推測するという流れでプレゼンを進めて行きました。

まず天正少年使節団の足取りを地図と年代を見ながら辿ってみました。途中の流れは省略しますが秀吉が聴いた音楽はパレストリーナ、アルカデルト、ゲレーロあたりが順当ではないかという推測をレクチャーでは示しました。いろんなファクトを積み上げていった上で可能性を提示したわけです。いきなり「皇帝の歌」だと決めつけてあとでその理由をつけていくという乱暴なことは致しません。

それから秀吉に聴いてもらった音楽は宗教曲ではなく世俗曲だったろうという推測も致しました。それは秀吉の御前演奏(1591)から遡ること4年前、少年使節の一団が日本に向けてリスボンを出帆した1年後、に伴天連追放令が秀吉から出されていたからです。伴天連追放令が出されているさなかに、異教徒である「『暴君』秀吉」(ルイス・フロイスの記述による)の前で宗教曲を演奏するほどイエズス会の面々は愚かではなかったでしょう。

こうして可能性を積み上げて推測を試みたわけですが、これはあくまで中川による推測、具体的にどういう曲なのかについてはもう手がかりはないし、求める必要もないでしょう。この先はファンタジーの世界ですから自由に想像すれば楽しいのではないでしょうか。

さて、次回の講座からはコンサートシリーズです。初陣の第3回講座は私がつとめます。11月17日です。興味のある方は是非ご参加下さい。詳細は私のHPをご覧下さい。