リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

飛行機と楽器

2005年06月16日 04時00分31秒 | 日記
少し前のインターネットニュースでエアバスの最新型A-380がパリの航空ショーでお目見えしたそうです。初飛行自体はもう少し前だったと思いますが、それにしてもすごいです。800人もの人を乗せて飛ぶんですから。食事を出すときなんか、それこそ客室乗務員の人たちはたぶん戦争状態。こっちは口を開いて待っているだけですけど、本当に舞台裏の人は大変でしょうね。
楽器を演奏する人が飛行機に乗るとき大変なのは、それをどうやって持ち込むかです。フルートとかヴァイオリンあたりは、キャビンに問題なく持ち込めるからいいでしょうし、コントラバスやチューバあたりだと最初からキャビンに持ち込もうとする人はいないでしょうね。
でもギター、リュート、ガンバあたりの人は皆苦労しているようです。
あの華奢なリュートを荷物としてあずけるなんて考えただけでも恐ろしいことですし、さりとてチケットを2枚買うようなもったいないこともできないし、悩ましいところです。ギターの人で、楽器を荷物として預けて、到着したらバラバラに壊れていたという話を聞いたことがあります。ベルトコンベアにいくつか段差があるし、扱いも相当手荒ですから、さもありなんという感じです。
私の場合、今のところ弦長75cm(長い方は100cm)のドイツテオルボまでは機内持ち込みに成功しています。航空会社はシンガポール航空です。安いのでよく使うんですけど、最初の頃はえんえんとごねまくってやっと、という感じでしたけど、最近は「またあの客か」って感じかも知れませんが、特に何も言われずに中に入れてくれます。要するに頭上のラゲッジスペースに入れば問題ないとは思うんですが、いろいろ聞いた話では、気前よく中に入れてくれるのは、このシンガポール航空と日本航空だけみたいです。今度日本に帰るときも、もちろんシンガポール航空。二人で3台の楽器を持ち込むつもりですが、まぁ何とかなるでしょう。(笑)

ラストレッスン

2005年06月15日 19時34分36秒 | 日記
6月も後半に入りつつあるとなんとなくもう夏休みって雰囲気がしてきます。ホピーのレッスンは今日が最後です。一昨年の10月からほぼ毎週レッスンをしてくれました。最初はそんな頻度でレッスンをしてくれるとは思っていなかったので、びっくりしたものでした。有名な先生でも客員で外国から来ている先生は、せいぜい月1,2回くらいらしいですから、私の場合はすごく恵まれていたと思います。
さて、記念すべき?ラストレッスンの曲はやっぱりフレンチです。ここ最近レッスンはフレンチですが、やっぱりフレンチをしっかりやらないとヴァイスやバッハが見えてこないもんです。
レッスンを受けた曲は、ドゥビューのシャコンヌです。ウィーンにある写本の一番最後の曲ですが、スタイル的にはフレンチというよりドイツ色の濃いジャーマン・フレンチって感じです。でもホピーのレッスンをうけているうちに、見る見るフレンチ・デカダンの薫り漂う曲に変身していったのには自分でも驚きました。彼はこの曲ははじめて見たそうですが、やはり洞察力はすごいですねぇ。
来週の始めでホピーの今年のクラスは終了しますが、締めのクラッセンで「ミニ・リサイタル」をさせてもらうことになりました。実は同じ日に、声楽発表コンサートでダウランドの伴奏をしなければならないんでちょっと大変ですが、まぁ、ダウランドは適当に・・・(ナイショ)いえ、もちろん気合い入れて弾きますけどね。「ミニ・リサイタル」ではゴーティエ、ガロー、ムートン、ドゥビュー、ヴァイス、バッハの作品を弾こうかなと思っています。

コンサート

2005年06月14日 19時08分26秒 | 日記
今日はスコラと、バーゼル音楽院(この二つは併設されています)の学生コンサートがなぜか目白押しです。
3時から日本人ギタリストのHさんのコンサートを聴きました。プログラムはバッハ、ソル、細川、武満、ウォルトン、ドナトーニの作品でした。彼女は現代作品にすごくいいセンスを持っているギタリストですが、今日のバッハもよかったです。バッハはBWV996のホ短調組曲でしたが、今村さんの所で何回かレッスンを受けたそうで、充分その成果が出ていたと思います。なぜか日本人ギタリストのバッハは不勉強な演奏が多くて、古楽器奏者の耳には聴くに堪えないものが多いんですが、彼女はその点しっかりした素養とセンスを感じさせました。他の日本人ギタリストの方ももっとがんばってほしいですね。
バッハを弾き終わったあともまだ少し顔がこわばっていましたが、(笑)ソルあたりからだんだんリラックスしてきました。ウォルトンの作品はソプラノとギターのためのAnon. in Loveという曲でしたが、曲の日本語訳を付けるために2週間くらい前に彼女が私のところに来たことがありました。歌詞の中にきわどいというかズバリのことばが出てくるので訳語に困っていました。いくつか訳語の候補をあげましたが、あまりズバリの日本語でもねぇーって感じで決定版は出ませんでした。最終的にそのことばの訳として、彼女は「僕の魂」ということばを使いました。(え、元の英語は何だったって?それはちょっとここでは書けません。(笑))うーん、ちょっと高級すぎる感じかなぁ。私的にはせめてカタカナを使って「僕のタマシイ」くらいはしたかったな。(笑)
それはさておき、全体としてとても音楽センスあふれるいいコンサートでした。武満、細川作品もすごくこなれていたし、ドナトーニのいわゆる70年代のアヴァンギャルド風作品もすごく魅力的に響いていました。日本での活躍が楽しみなギタリストですね。

またバッハ・カンタータ

2005年06月13日 02時27分11秒 | 日記
今日はプレディガー教会でバッハカンタータシリーズを聞くことができる最後の日。聴き納めに行ってきました。
今日のコンサートは先月ほど一杯ではなかったですが、それでもほぼ満員、人気があるんですね。聴衆はおじいちゃん、おばあちゃんから若いカップルまでいろんな世代が混じりいい感じでした。スコラの学生もちらほら。

今日のプログラムはカンタータ第21番。今日のソリスト陣は若い人中心でしたけど、ソロのあったソプラノとテナーは上手かったですよ。あ、バスとソプラノのアリアもありました。バスも良かったです。

この曲で思い出すのは、BCJの演奏。その録音ではテナーはテュルク(先月のソリスト)が歌っていますが、始めの方に来るテナーのアリアで、あるフレーズだけ音をはずしているんですね。全体的にアポジャトゥーラ(装飾音の一種)がちょっとあやしげなんですけど、その部分に来るともうダメって感じです。テュルクは、こっちでライブで聴く限りではすごく上手いので、その録音に限って調子が悪かったのかも知れません。今日のテナーの人はすごく上手に歌っていました。

終わりの方の曲で、チェロの技巧的なオブリガートが入るテナーのアリアがあるんですけど、通奏低音のオルガンとチェロが最後まで合わなかったです。二人とも技術がないわけじゃないのに、まるでわざと合わさなかったみたい。あれはいったい何だったんだろう。ひょっとして仲が悪い?割を食ったのはテナーさんで、ちょっと気の毒でした。でも全体としてはすごくいい演奏でした。そうそうオーボエのソリストも上手かったし。

毎月第2日曜日のこのカンタータシリーズ、来月はもう日本にいるので聴くことができません。(涙)バーゼルの人はうらやましいですね。日本でいうと、近くの○○寺で第2日曜日にカンタータやってるって乗りで、手軽にいい演奏が聴けるんですから。

ビーチサッカー

2005年06月12日 00時14分08秒 | 日記
駅裏の広場に突如ビーチサッカー場が出現しました。学校へ行くときにトラックがアスファルトの上に、えらい細かい砂をダンプしているのを見て、何かと思っていました。帰るときに見たら、フェンスで囲いを作り観客席までありました。
別にナントカ大会といったものものしいイベントはなく、やりたい人たちがが思い思いに入って楽しんでいる感じだなって思っていましたら、やっぱり屈強のお兄さんたちによる試合がありました。サッカーは全然分かりませんが、それでも見ていると結構面白いですよ。音楽を流して、実況のアナウンサーもいたりして。こっちの家は結構防音性能が高いからそれほどでもないかもしれないけど、それでも通りのすぐ向かいの家の人たちはうるさいでしょうね。
それにしてもビーチバレーというのは聞いたことがあるけど、ビーチサッカーは初めてですねぇ。(ひょっとして知らないのは私だけ?)
でもバレーならともかく、サッカーだから、砂場を走り回るわけだからめちゃくちゃ疲れるだろうなぁ。それと雨ふったらどうするんだろう。最近ずっと降ってないけど。おじさんはいらぬ心配をしてしまいます。(笑)

関税

2005年06月11日 21時28分38秒 | 日記
昨日ドイツのK社に頼んであった弦が届きました。同じ日にオーダーしたイタリアのA社のものはまだ届いていません。
K社はさすがドイツの会社だけあって、ほんとに出前迅速です。メイルを出して5日目くらいにはウチに届きます。その点、A社はイタリアにあるせいか(笑)、1週間から1ヶ月と波があります。A社からのメイルの返事は迅速なんですけどね。これって、たぶんA社のせいじゃなくて、イタリアの郵便局のせいかもしれません。実際「途中紛失」で物が届かなかったことが1回ありましたし。そのときは、A社がかぶってくれて、同じ物をもう一度出してくれました。
今回は運が悪く、関税をかけられてしまいました。(T_T)弦は今まで何回も注文しているのですが、今までA社からの送品に1回だけかけられました。いくつか抽出してかけているような感じですが、当たると痛いです。なんせ20%近い関税ですからね。関税って、国内産業に影響を与えるものや、贅沢品にかける税金じゃなかったっけ?確か、小学生のころそんな風に習ったような・・・
別に弦が贅沢品であるわけでもないし、スイスに弦メーカーがあるわけでもないし、何とかならんかな。ウェブで調べてみたら、日本は弦には関税がかからないようです。WTOの本部はなんとスイスのジュネーブだそうです。うーん、税金の仕組みはよーわからんです。

バッハのアリア新発見!(今度は本当)

2005年06月10日 00時19分46秒 | 日記
(今度は本当)と入れておかないといけないところがつらいところです。(笑)
多分報道されていると思いますのでもうご存じでしょうけど、やっぱりまだあるものですね。ハ長調のソプラノのアリアですよ!なんでも図書館が火事で焼けるちょっと前にその図書館から持ち出した資料の中にあったとか。危機一髪でした。
楽譜の一部はCNNのニュースサイトにありましたけど、出し惜しみしないで一気に全部と公開しちゃえばいいのにね。このネットワーク時代だから。ま、それでもないよりましかと思いまして、デスクトップの壁紙にしておきました。(笑)
これから金儲けをたくらむ人たち(レコーディング、出版関係)がいる以上は、タダでは公開しないでしょうね。でもバッハの著作権はもうとっくに消滅しているんですよ、っていうか、もともと著作権というものに守られたことは一度もないんですけどね。
ま、それはともかく秋にはべーレンライターから出版の予定、ガーディナーがCDにするらしいです。
公開してくれたら、明日にでも誰かと合わせてみるのに。(まだ未練がましい)

498年

2005年06月09日 02時39分26秒 | 日記
フランチェスコ・スピナッチーノというリュート奏者が昔イタリアにいまして、1507年に曲集を発表しています。その本は第二次世界大戦の前まではベルリンにあったらしいですが、その後行方不明になったらしいです。でもそれを写真コピーしたものが残っていて、それも元に復元版がミンコフという出版社から出ています。
ミンコフの出版物は魅力的なものが多いんですが、値段が高いのがたまにきず。ホピーなんか、あれはミンコフじゃなくてマネーコフだなんて冗談を言っていました。(笑)

彼の作品を弾いてみると妙な響きがしたり、あり得ないような不協和音の部分があったりして、これはいったい何だろうと考えさせられる部分がちょくちょくあります。

まぁ印刷ミスもあるでしょうから、どれが彼の意図したものか印刷ミスなのかを見極める必要があります。彼の作品はボブの授業の中でたびたび引き合いに出されますが、ボブに言わせると、スピナッチーノは二流で、対位法とかムジカ・フィクタなどはあんまりわかっていなかった商売上手な音楽家、だそうです。ムジカ・フィクタというのは、終止のところなどで必要に応じて半音上げることなんですけど、この判断は結構難しいです。人によって異なる見方をしますし、昔も同様に結構ゆれていたようです。地域によっても傾向が異なっていたみたいです。

今日、明日の授業のためにヴィンセン(って読むのかな→Vincenet)作曲の「過酷な運命よ」という曲の比較資料を作りました。何の資料かというと、ナカガワ(2005)とスピナッチーノ(1507)の比較表です。何と498年の時間差を超えての比較!って大げさな感じですが、私のアレンジはヴィンセンのオリジナルにほぼ忠実に沿ったもので、大したもんではありません。スピナッチーノのアレンジをフランスタブラチュアに変換してさらにそれを、私のアレンジと同じキーにするために短三度下げて、それを私のアレンジの下に貼り付けます。これらは全てコンピュータで行いますが、手作業でやっていたら1週間くらいはかかるでしょうね。コンピュータ様々です。

比較してみると意外なほど、スピナッチーノは常識的というかオリジナルをきちんと参照している感じです。以前作った比較表でも同じことが言えました。でも理解不能な響きもあるんですよね。ひょっとすると彼は二流を飛び越えて超一流なのかも?このあたりについて明日の授業でボブと議論してみるつもりです。

靴下

2005年06月08日 04時02分37秒 | 日記
もう暑くなってきて靴下なんて履く必要はないと思っていたら、ここ2,3日なんかすごく冷えて、半袖・草履履きでは外を歩くことができません。
今日レッスンに行くとき、例のホイヴァーゲの屋外寒暖計で15度。でもこの寒暖計は、少し高めに出ますから、多分よその屋外寒暖計だと12,3度と言ったところでしょう。少なくとも体感的にはそんなところでした。(なぜか、市内には屋外寒暖計が多いです)
で、靴下の話ですが、私は靴下が嫌いで、日本にいたときは一年中ほとんど履くことがありませんでした。真冬でも素足です。寒いときに素足と草履で本屋なんかに行くとみんな足下をちらっと見ていくので、なんかはずかしかったです。
さすがに、ここバーゼルの冬は素足草履はしませんでした。だって、零下5度ではさすがにねぇ。靴履いてても足冷たくなりますから。背に腹は変えられずいやいや靴下を履いていたんですが(あ、もちろん靴も)、ウチに帰るともちろん素足です。
日本から持ってきた靴下も結構古くなってきて、穴があいたりしているものもあります。何足かは現地調達したんですけど、靴下の世界でもスイスはいいものと悪いものがはっきりしていますねぇ。
写真の靴下は安物ですが、みるみる縮んでいき、今は写真のサイズです。元はふくらはぎを覆うくらいでかかったんです。いったいどこまで縮むんでしょうね。
これではいかん思って、しかるべきお金を払って買ったものは、履き心地快適、蒸れません。もちろん縮みません。
ちゃんとしたものはしかるべきお金を払えということですね。(笑)

またシェンゲン

2005年06月07日 03時43分51秒 | 日記
例のシェンゲンの投票、昨日行われて、賛成の方が多かったようですね。でも賛成が半数をちょっと上回った程度らしいので、国論は割れていたようです。(ダブリン協定も一緒に投票)
先だって行われたフランスとオランダのEU憲法条約の投票では否決されたので、なんかスイスは屋根に上がってはしごをはずされた感じじゃないかな。
スイスはEUに入っていませんので、通貨はスイス・フランのままです。ユーロは一部では使えますが基本的にはだめです。でもシェンゲン協定に賛成したことで、周りのEU諸国からはパスポート審査なしで入国できるようになるそうです。今でもイタリア、ドイツ方面へは、列車の場合パスポート審査はあまり厳密ではありません。審査官が来ないときもときどきあります。フランスも、バーゼルのフランス駅から出ていくときは今まで一度もパスポート審査にあったことはありません。ただし、フランスから帰ってくるときはものすごく厳しいです。一度、別の場所に連れて行かれ、バッグの中味全部見せろと言われたこともあります。もっともその時は私だけでしたから、多分怪しいアジア人に見られたのかも知れません。
シェンゲン協定のお陰でそういうことはなくなるんですね。いいことですねぇ、もう怪しいアジア人に見られることはなくなりますから。(笑)
76年に訪れたオランダの街が、最近行ったら様変わりしていて、すごく物騒な感じになった印象を受けました。大きな街の中心部では世界のあちこちからきた怖そうなお兄さんがうろうろ、11時頃駅のコンビニでは万引き犯と警官が大捕物・・・でした。今のバーゼル駅周辺なんか深夜でもなんとのどかなことでしょう。スイスはオランダのようになってほしくないですね。