リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ナイジェル・ノースの新録音

2011年12月01日 11時59分14秒 | 音楽系
さて、ナイジェル・ノースの新版です。彼とは2004年にホピーのクラスに来て貰ったときから会っていませんが、その時の印象は、えらくお腹が出てきてるなぁ、でした。お顔もムーンフェイスっぽくて。ま、人のことは言えませんが。もう20年くらい前になるのでしょうか、日本に来たときの印象よりは相当恰幅がよくなっていました。

新盤のアルバム写真を見てみましたら、失礼ながらなんか細くなってジジくさくなっていましたので、なんかあったのかなと解説を見てみましたら、録音の1年前、2009年に彼の周りにいろいろな不幸が襲ったとありました。母親が亡くなり、自身も心臓発作にみまわれ、また前妻とその連れ合いを癌で亡くなったそうです。これらが1年間に起こったわけですから、相当つらい1年だったんでしょう。

そこからの再起ということで、制作されたのがこのアルバム、The Heart Trembles with Pleasure---Music for lute by Sylvius Leopold Weiss でした。The Heart Trembles with Pleasure なんて、何枚もCDを出しているナイジェルらしからぬクサイ文句が書いてあるなぁなんて最初は思ったんですが、事情を知ると納得がいきます。

収録曲は全てヴァイスの作品。ヴァイスはバッハと同年代のリュート奏者で、ドレスデンの宮廷リュート奏者として活躍した人です。おびただしい作品群が幸いにも現代に伝えられており、バロックリュート界の至宝的存在。ヴァイスの作品を伝える最大にして最高の写本がドレスデンにありますが、第二次世界大戦のドレスデン空襲でよくぞ生き残ったものです。アルバムに収められているのは比較的に初期に書かれた11コースの楽器用の作品で、序曲変ロ長調、パルティータト短調、ソナタヘ長調、組曲ハ短調、チャコーナ変ホ長調が収録されています。

The Heart Trembles with Pleasure
Music for lute by Sylvius Leopold Weiss (1687- 1750)
Nigel North, Lute BGS119