リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュート組曲第1番

2011年12月07日 21時01分39秒 | 音楽系
以前から気になっていましたが、いまだによく見かけるのが、バッハのリュート組曲1番という呼び方。リュート組曲第1番というのは、BWV996のホ短調組曲です。この曲をなぜ第1番と呼ぶのかを探ってみますと、たぶん大もとは、1921年発行のハンス・ブルーガーの著書に行き着くのではないかと思います。この本は、バッハのリュートのための曲を当時のギター式リュートで弾けるようにした実用的楽譜集で、1970年に大橋敏成先生の監修で日本語版も出ていました。

この日本語版はなつかしいですね。この版には「修正レポート」という注がついていまして、オリジナルと実用版との比較ができます。これをもとにBWV1000のフーガをギター用に編曲し、それをひっさげて若い頃名古屋の新人ギター演奏会というのに出演したことがありました。

それはさておき、このブルーガーの著書によれば、パルティータハ短調BWV997がリュート組曲第2番、組曲ト短調BWV995が第3番、そしてBWV1006aが第4番になっています。なぜ995が3番で996が1番なのかはよくわかりませんが。

ギターを弾く人はいまだにこの番号でバッハのリュート用の作品を呼んでいる人が多いようですが、もういくらなんでもこの呼び方を止めませんか。90年も前のまだリュートの復興研究が未成熟の時代に付けられた番号です。もともとリュートのための作品は、イギリス組曲やフランス組曲などと違い、セットで作られたわけではないので、リュート組曲何番というのはそもそもおかしな言い方です。70年に日本語版が出たとき、一部の人はなんでいまさらこんな古い本を翻訳?って言っていた人もいましたが、それからでも40年経っています。

それにギターで弾くのになんで「リュート」組曲なんでしょうか?「ギター」組曲っていっちゃえばいいのに。私は自分で編曲した無伴奏チェロ組曲を演奏するときは、単に「組曲」第何番BWVナニナニって言うことにしています。注として括弧で原曲は無伴奏チェロのための組曲第何番とか無伴奏チェロ組曲からの編曲とか書いておきます。リュートで弾くのに、チェロ組曲は変でしょ?

いやいやギターの愛好家(ひょっとしてプロの方も?)をせめたてるようなことを言って申し訳ありません。ま、余計なお世話かも知れませんが、せめてこのブログを呼んでらっしゃるギターの方からでもリュート組曲第1番~4番というの止めませんか?