リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

フェルメールの誤解(1)

2019年02月10日 13時46分22秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】
フェルメールの誤解、といってもフェルメール自身が誤解していたという訳ではありません。彼の作品にまつわる解説中で、ときたま誤解を招くような内容(ウソの内容、テキトーに言っている)があります。(特に楽器系の話で)でホントはこうですというような形で紹介していきたいと思います。まぁ、フェルメールにまつわる誤解といった感じです。もっとも音楽系のことしか知りませんので、音楽系限定です。

さてまず「紳士とワインを飲む女」です。この絵は1658年から1660年頃に描かれた絵で、現在はベルリン絵画館の所蔵です。先日某テレビ局の某番組でこの作品が紹介されていました。なんかビール会社がスポンサーになっていた番組だったような、でも年のせいではっきり覚えていません。



私はこの椅子にのっかている楽器に注目して番組を見ていましたが、こともあろうに「椅子に乗せてある楽器はリュートという楽器で・・・」というナレーションが流れました。私は思わずつっこみました。

ウソゆうたらアカンやろ!


40数年前の古楽黎明期ならいざ知らず、今時こういうことがあろうとは、ある意味ショックでした。まだリュートという楽器はこんな程度の認識なんですねぇ。

ナレーションの台本を書いた人が一番いけないんでしょうけど、それを読んだナレーターやディレクター、編集した人など、放映前にかなりの人がこの部分を見ている筈ですが、一人も知らなかったわけです。これがもし「椅子に乗せてある楽器は三味線という楽器で・・・」になっていたら、いくらなんでも誰かが気づくはずです。

フェルメールが描いた楽器はシターン(Cittern, Citten)という楽器です。この楽器のことを音楽事典で調べて見ますと、いろんなバリエーションがあるらしいですが、このフェルメールの絵に描かれているのは、イギリスのトマス・モーリーのコンソート・レッスン(1599年にロンドンで出版、1611年に改訂版)で使われている楽器が地理的にも時代的にも一番近いと思います。最近届いたばかりのイギリス・リュート協会の機関誌にシターンの写真が出ていました。



リュートの胴体は球体ですが、この時代のシターンは平面です。後ろからみてぺったんこの胴体の楽器をリュートです、はないですねぇ。