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彼女たちの場合は

2020年07月28日 | レビュー
 昨年出た江國さんの本。
女の子が二人でアメリカを旅する。
若い頃の思い切った旅というのはいいなあとつくづく思う。
人との出会いがその後の自分の人生を広げてくれる。
旅で得るものは大きい。
一方で、この二人が無事に帰れて本当によかったということも
同時に思う。
旅に出なくてもアメリカには危ない場所がいっぱいある。
私がアメリカに住んでいた頃、シッターを兼ねて日本から
やってきた若い女の子がいた。
その子の行動に毎日やきもき。
ある時は知らない人の車で送ってもらい
電話番号まで教えてしまっていて
家に何度も電話が来て大変だった。
住所は特定されているわけだから
なにかあってもおかしくない。
だけど幸い相手が(たぶん)よい人だったので
悪さをされることはなかった。
またある時は、別の日本人の留学生(女性)が、夜中に
サッカーの試合を見に来させてくれという。
日本チームの試合開始が午前3時だった。
私が嘆願したのは、
前の日の夕方来て泊まってちょうだい。
真夜中に町の中を歩いてこないで。

この本を読んで、あの頃のことを思い出した。
若い時の無謀。
無事であればラッキー。
だけど万が一があったら、最悪は命がない。
そういう危険と引き換えに、得られる体験もまた破格。

わたしは子どもがいたし
日々安全第一に暮らしていたけれど
それでもものすごい緊張感で生きていたアメリカ。
この本を読んで、ぎりぎりで張りつめていた日々が
よみがえって
なつかしく、そしてうれしかった。


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2019年を振り返る1

2019年12月27日 | レビュー
今年一番良かったのは、朝大学に出る時間を早くしたことかな。7時台に来るようにしてから、一日の時間の使い方が非常によくなりました。とはいえ、後期に入ってから時間のコントロールが効きにくくなり、最近は朝も早いけど夜も遅いという、あんまりよくないパターン。来年はとにかくもっと早く帰ること、そのために仕事を効率的に進めることを目標にします。あとは、帰宅してからのネット時間を減らすこと。疲れていると余計にだらだらとSNSを見てしまったりするので、スクリーンタイムを減らすことをもう一つの目標にします。

今年は21冊しか本を読めませんでした。年々減ってきてます。紙の本が好きなんですが、電子ブックも取り入れなきゃなかなか増えませんかねえ。重いからなあ。今年読んで特によかった本は以下の通り。


 
 
学生にも読ませたいと思っています。
ファクトフルネスは本当に驚かされましたし、ミライの授業には大事なことがたくさん書いてありました。

続いて映画。
一番はやっぱりこれかな。
そしてこれ。

天気の子はそれほど期待せずに行ったんですよね。でも本当にすばらしかったなあ。あれ以来、空がきれいだとつい見入ってしまいます。新聞記者という映画は、今の時代によくこれが作れたなと思って本当にうれしかったですね。多くの人に見てもらいたいと思っています。

大みそかまでまだ数日あるので、振り返りは少しずつ。


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マチネの終わりに

2019年10月09日 | レビュー
 
この間東京に行ったときに、新幹線の時間までちょっと余裕があり、かつ、手元に本を持ってなかったので買いました。映画が公開されるというのは知らずに買ったんです。最初の方、登場人物の書き込み方や言葉の繊細さがとても気に入って読み始めたんですが、途中で展開がすっかり嫌になり、一度放り出してしまいました。でも、我慢して少しずつ読んでいったら、最後の方はどんどんおもしろくなって一気に読んでしまいました。

*過去は変えられる。今の自分次第で。
*苦しすぎる現実を見ると、自分だけ幸せになることの苦痛に耐えられなくなり、自分が不幸であればそのことに安堵するという悲しさ。
*自分が犯した罪の重さを携えて生きていく中で、誠実とか謙虚とか限りなく正しさに近いものが生まれてくる。でもそれで罪は赦されるのか?

というようなことを考えました。著者が投げかける思考が、明確に伝わる文章でした。ラストシーンが印象的かつ映像的。映画だとどうなるのか。見に行きたいと思うけど、途中のしんどさがあるのと、文章のち密さを堪能したので、見ない方がいいかなという気もします。



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連休中に読んだ本

2019年05月07日 | レビュー
瀬尾まいこさんの本は、見つけた順番に読んでいます。この本は今までの本とかなり違いました。簡単に言うと虐待の話です。お母さんが再婚した相手、僕はその人が大好きなんだけど、切れると暴力をふるう人。でも「どうやったら切れずに、暴力を振るわないようにできるんだろう」というのを二人で一生懸命考え、実践していくんですが、最後にお母さんにばれて、お母さんは再婚相手を責め、そして追い出そうとする(当たり前です、そんなの)。だけど僕はそれまで「簡単に関係を断つ」のではなくてなんとか乗り越えられないか、と試行錯誤してきた。ちょっと簡単には感想を述べられない本だな、と思っています。ただ、こんなとらえ方、考え方があるのだということは、私には衝撃でした。アマゾンの書評もかなり揺れています。


 
もう一つは、話題の「わた定」。今、ドラマやっていますが、本も非常におもしろく、かつ参考になりました。わたしも、終わりの時間を決めずに仕事をしてはいけないと思っていて、どんな工程でも目標時間を定めて仕事を進めているのですが、この本を読んで、自分にはもっと生産性を上げられる余裕があるなと感じました。わたしは2冊のメモ帳を持っていて、一つには発生するたびにタスクをどんどん書いていきます。もう1冊は、その中で「今日つぶすタスク」を書いていき、どんどん消していって、それが終わったらその日は終わり。終わらなければ翌日の欄に加えますが、そもそも作業時間を考えて作ってますから、普段はそれほど翌日に持ち越しません。あと、工程はできるだけ細分化して、取り掛かりやすく、つぶしやすくするのも大事なポイント。とはいえ、途中でちょっとのちもりで始めたメールの返信などに、けっこう時間が割かれて、終了時間が予定胃よりずれこむこともしばしばでした。だいたい、メールの返信などはタスクリストにこまごま挙げていないので、それも「だらだら仕事」の原因になっていたと思います。今後は、メール返信も時間を決めて処理するようにしたいと思いました。また、考え方や生活スタイルが相当違う仲間で構成されているチームで仕事を進める上で考えるべきことについてもけっこう参考になりました。組織で働いていれば当たり前のことではあるんですが、私はそういう鍛錬が足りないんで、ためになりました。

連休中、音楽を聴いたり美術を鑑賞したりする時間も取れたし、何よりよく寝たのですごく元気になりました。また、ここには挙げませんでしたが専門関係で読んだ本などから新しいアイデアも得たので、やはり仕事と自分の時間のめりはりは大事だと再認識した次第です。仕事のことばかり書きましたが、それ抜きでもとてもおもしろい本でした。ドラマも楽しみです。

 
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愛なき世界

2019年01月08日 | レビュー
愛なき世界 (単行本)
三浦しをん
中央公論新社


わたしは動物系の研究者ですが、同じ学類の半分は植物系の研究室です。そこには、シロイヌナズナをモデルとして研究している先生がいて、非常にハイレベルかつおもしろい研究をされているので、この本のテーマにばっちり心をつかまれました。そうです、この本はシロイヌナズナの研究にまい進する博士課程の女子学生さんのお話です。この本を読むと研究の何がおもしろいのか、ということが、一般の方にもわかっていただけるのではないかなあと思います。つまり、大学1-2年生にもぴったりかと。講義で勧めたいと思っています。

三浦しをんさんの本では、「風が強く吹いている」も非常におもしろかったのでお勧めです。

風が強く吹いている (新潮文庫)
三浦しをん
新潮社


これを読んで箱根駅伝を見る目が変わりました。以来、毎年しっかり見ています。

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ユリゴコロ

2018年09月18日 | レビュー
ユリゴコロ (双葉文庫)
沼田まほかる
双葉社


先週、学会に行くのに道中の友に文庫本を買ったんです。
でも、行く前は発表準備をしながら移動だったので、帰りに読み始めました。
わたし、サスペンスとかミステリーとかは好きじゃないんです。でも、これはとてもよかった。
ただ、ラストはちょっとあんまり納得してないんですが、それ以外はとてもよかった。

そして、本よかったなって思ってるところでWOWOWで映画の放映があったので、喜んで見ました。
映画は、予告編を見て、見に行きたいなと思ってたのに時間がなくて行けなかったので、こんなにすぐ見れてとってもうれしかったんですが、、、、。

割と評判もよかったように聞いてたんですが、私が見た感想は「本の良さが全然ない~~~」。
映画は映画として見ないといけないと思いますが、それでもちょっと途中でげんなりしました。やっぱりもっと丁寧に描いてほしいんですねー。はしょりすぎな感じがして。まあそもそも設定が全然違うんですけれども。

そんなわけで、原作がおススメです。


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知の体力

2018年08月15日 | レビュー
知の体力 (新潮新書)
永田和宏
新潮社


現在の大学は、学生の自学自習に任せるのではなく、教員が手取り足取りていねいに学生に教え、その成果を目に見える形にしなければならないこととされています。そのため、多くの学生は大学のサービスに頼りがちになり、自主的に学ぶという場が確実に失われています。それは当たり前で、人間というのは厳しい環境に置かれ、失敗の中から自ら学ぶという状況と、失敗しないように指導を受けられる状況では同じ人でも学ぶ姿勢は一変するものです。成長というのは人それぞれですから、大学の成績などたいした物差しにはならず、成績には現れずともヒトとしての多面的な成長を果たし、実社会にぶつかっていける力を養うというのが、一昔前の大学4年間の学びだったと思います。この場合の力というのは知力でもあり体力でもあり胆力でもあったと思います。しかし少なくとも今は、大学で学ぶ「知」はかなり骨細になっている気がします。私は高校までは基礎的な知識をがっちり身に着けてきて、大学ではそれを足掛かりに個々人が自由に思考を深め、新しいことを見つけてほしいと思っていますが、まずその足掛かりとなるべき基礎的知識が大幅に足りず、自由な学問に至らずじまいというのが現状で、大変残念に思っています。この本の著者は、多くの大学の教員が残念に思っていることに大胆に切り込んでその解決について述べています。大学教員が読めば皆「そうそう」とうなづくことでしょう。しかし現実はそう簡単ではありません。大学教育は、これからますます型にはまっていくのではないかと私は危惧します。さて、私は大学で分子生物学や細胞生物学を教えていますが、その際にいつも学生に紹介する本があります。それが以下の本ですが、偶然にも同じ著者でした。

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)
永田和宏
岩波書店


私も、日々あきらめず挑戦し続けなければと思います。今年のお盆はあんまり休めず、明日も大学で学生の実験を手伝います。書かなければならないものもたくさんあり、読まなければならないものもたくさんあるので、時間を無駄にしないよう強い気持ちでやっていきたいです。
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行動しながら考えよう

2018年06月10日 | レビュー
行動しながら考えよう 研究者の問題解決術
島岡要
羊土社


これから独り立ちをめざす若手研究者向けの本かな、、、と思いましたが、そうでもなかったようです。私にも役に立つことがいろいろありました。わたしも、日々学生から将来の進路の相談を受ける身なのですが、わたしが通ってきた道が今の学生にそのままあてはまるわけではないので、どう助言したらいいか考えることが多いです。そういうときにも参考になる本だと思いました。わたしも、若い人たちが進む道に悩んでいるときに「立ち止まってしまわないで」というのですが、悩んだときはとにかくいろんなことをやってみて、しっくりくる道を見つけるしかなくて、部屋にこもって考え続けても新しい道など開けないということは、よく覚えておいてほしいなと思います。

私に直接ストレートに役に立ったなという点は、「計画がうまくいかなかったときのリカバリー」の考え方です。新しいプロジェクトはまず最初は失敗する。失敗から始まるのだと断言されてかなり勇気が出ました。明日からも、がんばります。
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断片的なものの社会学

2018年06月04日 | レビュー
断片的なものの社会学
岸政彦
朝日出版社


普段あまり手に取らない類の本ですが、書評を読んで、買ってみました。

いろんな生き方が許容されるつながり方ができる社会がいいんだなと思いました。著者が最後に書いていたように、相手を尊重するということが相手と距離を持つということと同義だということになってしまうと、人として生きる意味がなくなってしまうと思う。相手を真に理解するということはできないけれども、理解したいと考え努力するということがとても大事だと思います。そのために重要なことが、一人一人のもつ小さな物語、言葉を聞くということではないかと思いました。聞いたからといって何かが劇的に起こるわけではないけど、言葉を聞くということはその存在を大事に思っているということの行動ではないかと思うのです。相手を尊重するということは、相手と距離を保ってそっとしておくのではなく、能動的な「行動」でありたいと私は思いました。また、心を留めないで見ていたら過ぎてしまうことの一つ一つを留めてみたとき、その意味や意義が明確になる。意識をもって味わいながら日常を見ていくということを忘れずにいたいと思いました。
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北里柴三郎

2018年05月21日 | レビュー
北里柴三郎(上)―雷と呼ばれた男 (中公文庫 や 32-2)
山崎光夫
中央公論新社


GW前に疲れる仕事をしていて、息抜きに図書館に行き、軽い本でも借りようかと思ったんですが、手に取ったのがこれ。
科学者の伝記もの、大好きなんです。自分にカツを入れるためにも非常に有効。

北里柴三郎は誰でも知ってる通り、明治の時代にドイツでコッホに師事し、細菌学者として多大な業績を残した人です。この本は明治の活気が伝わってきて、それだけでもやる気を促されるのですが、留学していく日本人がみんな「語学に長けている」ことが本当にすごいと思いました。この時代にドイツ語が堪能って、、、。今の時代に生きる私たちなら、ネイティブ並に英語がしゃべれないとおかしいんじゃないの?というくらいの気持ちになります。つまりそれだけ真剣みが足りないんですね>わたし 本気で反省しています。北里の学ぶ意欲と努力がすさまじいです。しかし政治的な苦労と言うのは昔も今も変わりませんね。よい仕事をしている、優秀だ、というだけで難なく道が開けるのではないんです。北里が福沢諭吉の大きな支援を受けていたということも印象的です。そういう人の存在があってこそ、伝染病研究所の設立がなったわけで、人のつながりというのは昔も今も大事なことだなと思いました。もちろん北里の才能を見込んでの支援だったのですから実力をもって達成したことに違いはありませんが、その力を埋もれさせず開花させるには一人ではやはりできないことなのですよね。
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