院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

PTSDを語るなら精神科医はもっと勉強せよ

2011-09-10 11:58:38 | Weblog
 PTSD(心的外傷後ストレス障害)にかんする誤った情報が流布されている。先日のNHKの「今日の健康」でも精神科医が間違ったことを言っていた。

 どこが誤りかというと、戦争や災害が「原因」となってPTSDが起きるという部分である。トラウマのない人なんていない。肉親の死、失恋、不慮の事故、事業の失敗などすべてトラウマとなる。

 テレビに出た精神科医の論理で行けば、これらの人々すべてがPTSDにならなくてはおかしい。だが、実際はそんなことはない。

 実はPTSDは、トラウマを労(ねぎら)われないときに起こる。だから、ベトナム帰還兵に起こった。ベトナム帰還兵は、過酷な戦いをしてきたのに、アメリカ本国の人々は彼らを賞賛しなかった。むしろ、蔑視する人さえいた。それがPTSDの本来の「原因」である。

 PTSDがなぜ遅れて生じるかと言うと、自分が賞賛されていないことを理解するまでに時間がかかるからである。

 精神科医たちは、これしきのことを言わない。あまりに不勉強なのに驚く。

 自衛隊、警察、消防、原発作業員にPTSDが起こりうるというのは本当である。だから、彼らを思いっきり賞賛し、労ってあげなければならない。そうすればPTSDは防げる。勲章や総理大臣の感謝の言葉だけでも防げる。

 被災者は全国から注目され、たくさんの義捐金がよせられている。それだけで随分PTSDは防げている。何度も言うが大事なのは「労い」である。

 本当は、PTSD概念がアメリカで不当に拡張されたスキャンダルがあるのだが、それを言うと読者が混乱するので、言わないでおく。

 精神科医はテレビや新聞で発言するなら、もっと勉強してからにせよと市井の一精神科医は思う。