院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

医師当直室の居住性は最高でなくてはならない

2013-10-27 06:00:42 | 医療
 病院を建設するとき、患者スペースを最優先にして設計する。スタッフの居場所は二の次になる。それはよいのだが、当直室だけは豪華でなければいけない。

 私が一番最初に努めた病院は、今でも尊敬している院長(故人)が、院内で医者の居場所はもっとも貧弱でなくけれらばならないという考えだった。よって、医局も医師当直室もみすぼらしく、エアコンはもちろん冷蔵庫さえなかった。院長は病院内で医者ばかりがふんぞりかえっていてはいけないという考えだった。その病院で、私は月に12回も当直をすることがあった。綿のように疲れた。当時はひどい医師不足だったのだ。

 代が次の院長(これも故人)に代わったら、即座に医局と当直室をまともな部屋に取り替えた。当直の疲れが格段に減少したことを覚えている。

 現在でも当直室に心を砕く病院は少ない。私が最後までいた病院の当直室は、木賃宿みたいだった。そこで横になろうとは思わない、物置きのような部屋だった。そのため、ただでさえきつい当直業務がいっそうつらくなった。

 当直室は、医者が自宅よりもこちらのほうが居住性がよく、当直が楽しみだと感じるほどの造りでなくてはならない。バストイレ・テレビ付で一流ホテル並みにするべきだ。冷蔵庫には缶ジュースや缶コーヒーで常に満たされていなくてはならない。最初の院長は、この点だけは失敗したと思う。

 そして、現在新築中の病院でさえ、患者福祉にせいいっぱいで、医師当直室の設計にはぜんぜん心が配られていない。つい先日まで勤めていた病院の当直室は、倉庫を流用したような狭い部屋で、バストイレ冷蔵庫はもちろん、なんと窓がなかった。当直はろくろく寝られないから、寝床はいい加減でよいという発想は間違いだ。

 医者を大事にしないから医者が疲弊し、回り回って患者の福祉がおろそかになる。患者の居住スペースだけを広く立派にして、医者のスペースを削ることは、本当は正しくないのである。


(現状の当直室のイメージ)


(当直室はこうありたい)

参考:夜は眠るものである