院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

もうちょいな雑誌「サライ」(小学館)

2013-10-30 05:09:57 | 読書
 「ハイカルチャー」というのは、元来ヨーロッパのエリート男性が担ってきた文化らしい。他の文化を一段低く見なした一定の支配階層の文化をいう。

 わが国でハイカルチャーというと、源氏物語などの古典文学、仏教美術、和歌、能、歌舞伎、茶道などを指すようだ。海外から移入された文化としてはクラシック音楽、バレエ、オペラなどがある。

 それに対して戯作、俳諧、狂歌、浮世絵、落語は大衆文化と呼ばれる。歌舞伎がハイカルチャーに入るのはどうしてか?歌舞伎役者の大首絵は江戸庶民に大いに受けた。私が幼いころ、近所の仕立て屋のおじさんが歌舞伎の声色(こわいろ)をやっていた。

 私が好きなモダンジャズはどちらだろうか?もともと黒人の音楽だから、被支配層のものである。だが、一定の耳がないとモダンジャズの父・チャーリーパーカーの音楽を理解できないから、日本ではハイカルチャーに入るのかもしれない。

 俳句は俳諧から出てきたから大衆文化だろう。私が所属する俳句結社も、平凡なおじいさんおばあさんで構成されている。俳句から見ると、和歌はややしきいが高い。

 ここに「サライ」というシニア向けの雑誌がある。クリニックで待合室に置くためにとっている。


(「サライ」ホームページより。)

 この雑誌は月ごとにテーマがあり、これまで「大人の自然観察」、「温泉の極意」、「日本ワインの教科書」、「和の極意」など、もう一息でハイカルチャーになりそうな対象を取り扱う。上の号の特集は「奈良の仏教美術」である。

 「古典落語の昔の名人」や「桜の名所探訪」や「ジャスの名盤」などが特集されたこともある。宣伝のコーナーには、高級腕時計や高級革財布などが出ている。

 ハイカルチャーに届こうとして、どうしても届かない、また大衆文化を極めようとして、今一つ掘り下げが足りないという、「サライ」はトホホな雑誌である。スノッブな雑誌と呼んでは気の毒なので、もうちょいな雑誌というくらいにしておこうか。

 私たち「サライ」の読者層に持てるのはせいぜい高級腕時計か高級革財布までで、別荘までは無理だろう。さすがに別荘の特集は行われたことがない。

参考:歌舞伎考
   :ヰタ能アリス