えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

指を動かすこと

2008年12月21日 | 読書
コントローラを握る楽しみのほかにも、
ページをめくるたのしみというものがあります。
めくるたびにサロメの七枚のヴェールをはぐようにどきどきする、
この本は、そういう本の一冊です。
あ、「そういう本」の意味がちがいます、意味が違います。

:山村修『「狐」が選んだ入門書』 ちくま新書

手引書、と入門書、の違いってわかりますか?
そこからはじめる、入門書の入門書です。
ブックガイドと言うとたぶん失礼に当たる本です。
じゃ、どういう紹介をしているのか。
ちょっとだけ、抜いて見ます。

「不意を打たれるといえば、岡田英弘による一般向けの本には、
歴史的な常識にまっこうから歯向かい、とどめをさすような論断が、
あたかもするどい剣先のように、きまっていくつか潜んでいます。」

ひらがなの柔らかみを使いこなした、みごとな文章だと思います。
むずかしいことをやさしくいえる文章は、本の紹介をしながらも、
一本のまとまりある作品ともいえるくらいハイレベル。
ただ文がうまいだけではなく、論旨がしっかりしていて、説明を
怠らない。
そしてなにより、思ったことを押し付けない。
基本的にこの人は思ったことははっきりと書く人です。
好きなものは好き、といえる人ですが、そこに余分なあいじょうとか
へんけんとかいったものを出来る限り抑えて書いてあるので、
読むかどうかの判断を読者に押し付けることはないのです。
入門書、だと固いなあ、と思われる方は、

『狐の読書快然』(洋泉社)
『狐の書評』 (本の雑誌社)

など読まれるといいと思います。

なにかモノを書くとき参考にしてるものは、と聞かれれば、
「狐」と答えると思うくらい、この人の文は大好きなのです。
コメント
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