えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

おとなの上質

2008年08月22日 | 映画
映画:「ザ・マジックアワー

微妙にネタばれ注意報。

途中で何度席をたとうと思ったことでしょうか。
終始どきどきしっぱなしで次の役者の表情がこわくて、
おとなの笑いを導くためのプロセスが、
どうにも恥ずかしくてたまらなかった。
出来のよいショートショートのページを繰るように、
ユーモア小説のテンポを最大限につかっている映画です。

セリフのはずし方がコメディーのセオリーに則っていて、
掛け合いはほんとうに「掛け合い!!」と呼びたくなるほど
丁寧に計算された上で作られています。

たとえば、序盤のシーンで
佐藤浩市が、ホンモノのマフィアを映画の撮影と間違え、
部屋に入るたびに机に座って「オレはデラ・富樫だ…」といい
ペーパーナイフをれろっと舐めてそのたびに西田敏幸が
「……おいしいの?」
「そんなに気に入ったのなら、持って行きなさい」
と、三回とも同じ表情で、声色だけ変えて返す。
繰り返しを演じる時、佐藤浩市だけはしっかりと同じ演技を繰り返し、
他の役者も一見同様なのですが、二回目三回目ともなると声が
わずかに動揺していると、変化は微妙ですがセリフと合っている
ので差異は際立ちます。

無理に笑わせようと怒鳴ったり、わざと変なことをしでかすなど、
映画の中でのみ成立するファンタジーで現実と差異をつけることが
全くないので、人間関係の中で緊張はしますがその笑いは
品が良くて、軽快です。
ただ笑う頻度は結構多かったりします。周囲にご注意あれ。

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