メロンパン専門店もまだ開いていない朝の九時台、指定された十時に間に合うように歯医者へ向かった。春の診察から約半年過ぎたので、言われたとおりに予約を取り「歯科検診」と要件を伝えた。幸い春の「ここ虫歯になりかけですね」という予言に見合う異常はなく、つつがなくものを食べて過ごせているものの、何を言われるかは口を調べていただかない限りは素人判断できない。
幼い頃は母親の足で体を拘束され開いた口に鏡を突っ込まれる自宅検査と、学校の健康診断で歯の異常は見つけやすい環境にあったが、仕事に出てからは歯科検診だけ自腹になった。周囲も「つい忘れてしまう」と、休日を消費してまで行きたくはないらしい。もちろん虫歯治療が苦手な人は昼食時に持参のコップと歯ブラシでメンテナンスを欠かさない。欠かさなくてもなる時はなるそうだが、やらないよりはやるほうが良いらしい。
朝一番の客だったのか、診察券と保険証を出してすぐに診察室へ通された。一軒家を改装した歯医者は、椅子に座ると正面に灯篭のある日本庭園が見える。雨あがりの緑鮮やかな庭を鑑賞する間もなく、紙の前掛けをつけさせられ「はーい、倒しまーす」と若い助手の声と共に椅子は倒されて仰向けになり見えなくなる。気休め程度すらならない。
そして頭の左の方から「お願いしまーす」の声と共に気配がやってくる。髪に白いものが大分混ざった歯医者が頭の右わきに鎮座した。今日はどうされましたか、左側の上下がまだ染みる感じがします、と適当に会話して診察が始まった。
歯石を取って簡単な噛み合わせの矯正を行い、歯と歯の間を甲高い回転音と共にドリルがじわじわ削る音が骨を通して頭全体に響きだした時、見上げているライトがふらりと左右に揺れた。わずかだが椅子も揺れる。私が暴れたせいではない。地震だった。
だが歯医者はその手を止める様子もなく、次々抵抗できない患者の口中に金属の棒状の機械をとっかえひっかえして作業を続ける。拘束器具こそないものの、下手をすれば舌を切り取られそうな器具を口の中に入れられている状態で動こうとする度胸はない。キシリトールのクリームをつけた業務用電動歯ブラシで歯を磨き終える最後の手順まで、歯医者が手を止める様子はなかった。
幼い頃は母親の足で体を拘束され開いた口に鏡を突っ込まれる自宅検査と、学校の健康診断で歯の異常は見つけやすい環境にあったが、仕事に出てからは歯科検診だけ自腹になった。周囲も「つい忘れてしまう」と、休日を消費してまで行きたくはないらしい。もちろん虫歯治療が苦手な人は昼食時に持参のコップと歯ブラシでメンテナンスを欠かさない。欠かさなくてもなる時はなるそうだが、やらないよりはやるほうが良いらしい。
朝一番の客だったのか、診察券と保険証を出してすぐに診察室へ通された。一軒家を改装した歯医者は、椅子に座ると正面に灯篭のある日本庭園が見える。雨あがりの緑鮮やかな庭を鑑賞する間もなく、紙の前掛けをつけさせられ「はーい、倒しまーす」と若い助手の声と共に椅子は倒されて仰向けになり見えなくなる。気休め程度すらならない。
そして頭の左の方から「お願いしまーす」の声と共に気配がやってくる。髪に白いものが大分混ざった歯医者が頭の右わきに鎮座した。今日はどうされましたか、左側の上下がまだ染みる感じがします、と適当に会話して診察が始まった。
歯石を取って簡単な噛み合わせの矯正を行い、歯と歯の間を甲高い回転音と共にドリルがじわじわ削る音が骨を通して頭全体に響きだした時、見上げているライトがふらりと左右に揺れた。わずかだが椅子も揺れる。私が暴れたせいではない。地震だった。
だが歯医者はその手を止める様子もなく、次々抵抗できない患者の口中に金属の棒状の機械をとっかえひっかえして作業を続ける。拘束器具こそないものの、下手をすれば舌を切り取られそうな器具を口の中に入れられている状態で動こうとする度胸はない。キシリトールのクリームをつけた業務用電動歯ブラシで歯を磨き終える最後の手順まで、歯医者が手を止める様子はなかった。
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