大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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東京23区大田区における保育園待機児対策の論点~進まない待機児対策、本当の理由~

2013年05月20日 | ├子ども

大田区では、認可保育所に入れなかった区民が、区長に対し、行政不服審査法にもとづく、異議申し立てを行ないました。

大田区の回答は公表されていませんが、回答に先立ち、大田区長として、国に対する要望を出した と平成25年第一回定例会での閉会の区長挨拶で報告がありました。

区長は、待機児対策について、どのような要望を国に出しているのでしょうか。

区長は、

都市部において保育需要が大きくなっていて多様化しているため、解消するのが難しい。23区では、認可保育所ではない(東京都や区が独自で作った基準を緩くした)認証保育所や認可外保育所などで対応しているけれど、国の財政的支援が十分でない。

だから、大田区長の発案で区長会を取りまとめ国に緊急要望「待機児解消対策の強化を求める国への緊急要望」出すことにした。

と言っています。

区長は国に要望していますが、私は、23区の保育園機児対策における財源の問題は、まず、東京都に要望すべき 考えています。

【23区民が稼ぎ出す財源を23区民のために使えないしくみ】

23区の問題を考えるとき、発想を変えて、横浜市や川崎市のように、23区全域は東京市であると考えるとすっきりします。

東京市は、(横浜市や川崎市と同じように、県として行わなければならない役割と市として行わなければならない役割があるのですが、)そのうちの市として行わなければならない役割のほとんどを、区に委託しています。

横浜市や川崎市であれば、市の財源全額を市の役割に使えるわけですが、23区の場合には、23区が稼ぎ出した約半分、8,000億円もの財源を、東京都が、23区の「大都市事務」のために使っています。
そのため、この8,000億円は、23区が稼いだ財源にも関わらず、23区として使うことができません。

しかも、横浜市は、交付団体。23区の方が財政的には豊かなのに、横浜市の方が先に待機児対策に取り組むことができたのも、この財政的なしくみの違いから考えると分かりやすいと思います。(必ずしもそればかりとは言えませんが)

【23区民が稼ぎ出す財源はどこに使われているのか】

それでは、東京都は、この8,000億円を、23区のために使っているのでしょうか。

東京都は新銀行東京で、400億円という莫大な公的資金を投入しています。また、臨海副都心開発の破たんによる損失補てんは1兆8,000億円にも上ります。

これらは、23区が稼ぎ出した財源から捻出されてはいないでしょうか。

オリンピックの基金として東京都は平成18年から4年間にわたり毎年1000億円ずつ4000億円積み立てました。これは、23区稼ぎ出した財源の東京都分8000億円から積み立てられています。

もし、23区からの財源が無くても、東京都はオリンピック招致を決めたでしょうか。(そもそも、オリンピック招致は東京都が東京市だった名残で、「東京都」が招致できているので仮定が正確ではありませんが・・・。)
23区が8000億円の財源を使い、東京都に行ってもらっている事務をすべて23区で行うとしたら、保育園や特別養護老人ホームの待機者対策はもっと進まないでしょうか。(たとえば、上下水道や消防等は一部事務組合などの仕組みにすることなども含め)

【都区で23区の財源を配分する仕組みを見直す時期】

私は、東京都分45%8,000億円は見直すべきであると考えています。


東京都が日本で一番財政が豊かな自治体の一つであることは誰もが認めることです。
東京と言っても、東京の中の、23区(つまりは東京市の部分)が特に財政的に豊かな地域です。

ところが、財政が豊かなはずなのに、保育園の待機児が多いのも23区です。

確かに23区の豊かな税収をどこに使ったのかという23区の税金の使いみちにも問題があります

しかし、東京都が23区の財源を8,000億円も、明細なく使っていれば、23区側に生まれた新たな課題に対応しにくいのは当然です。

23区長会が要望すべきは、国ではなく、まず、東京都だったのではないでしょうか。

【東京一極集中政策の破たん?を国が認める?】

国が、この区長会の要望を受けたからなのかどうかは不明ですが、5月9日の東京新聞に厚生労働省が「都市の保育所補助拡充」という記事が新聞に掲載されていました。

私は、この補助を行うことを国が決めたという時点で、日本の現在の東京一極集中の政策が機能していないことを国が自ら認めてしまったのだという意味で、非常に重く受け止めています。

日本の政策は、東京一極集中。東京にヒト・モノ・カネを集中させ、東京を経済のけん引役と位置づけるものです。その東京が税収の稼ぎ頭となれば、地方が少しくらい疲弊していていても、ヨシとしています。今や国の財政的支援を必要としない(地方交付税の不交付団体)は東京都と23区を除けばほんのわずかです。

その東京23区が、保育を自らの財源でできなくなっているこ とを国が認めたとなると、東京はすでに、日本の経済のけん引役にもならなくなっているということを意味します。
しかも、財政的に自立していると国が認めている東京都と23区が、その半分を借金でまかなっている国に補助をたのんでいるのです。

しかも、財政的に自立していると国が認めている東京都が、その半分を借金でまかなっている国に補助をたのんでいるのです。

豊かな固定資産税は、税収が豊かなだけではなく、そこから得られる賃料も多く、銀行からの融資も高額です。地価が高いことは、経済が豊かなことの代償です。

私たち東京23区に住む都民は、地価が高いことにより、家賃も高く、固定資産税の負担は大きく、住宅ローンも高額になります。
あらゆる物価には、これらのコストが上乗せされるため、可処分所得も少なくなるのです。

【待機児問題の論点をすり替えた国・東京都・23区の責任転嫁の構造】

にもかかわらず、土地が高いから賃料が高いからと先送りする保育園や特別養護老人ホーム。行政の説明は矛盾しています。

土地が高いから「保育園の整備ができないので」国に補助金を求めることを認めるなら、国と地方における交付金の算定基準も見直す必要がある でしょう。


ところが、私が、議会質問において、大田区に対し、不交付団体である大田区の待機児対策が進まないのは、東京都との財政配分割合の問題か、国の交付金算定が時代に合わなくなっているのではないか聞きましたが、どちらも問題ないと言っています。

にもかかわらず、国に補助を求め、新聞によれば、国もそれにこたえ、補助をすることを決めています。

今回の23区長会と国の対応は、待機児問題の論点をすり替えています。
大田区長の発議で要望書を提出したわけですが、大田区長は、財政的なしくみを知らずに国に要望と考えたのでしょうか。それに合意した23区長会も、ご存じないのでしょうか。
それとも、東京都に要望したかったけれど、東京都に言うと、財政調整の際に不利になるので要望できなかったのでしょうか。

保育園待機児対策における、様々な新しい保育のしくみは、常に東京都から出されています。

認証保育所
グループ保育ママ
スマート保育園

しかし、そのどれもが、国基準の認可保育園より基準を甘くした制度、言いかえれば公的負担を軽くした制度ばかりです。
東京都の豊かな財源を背景に、全国に先駆け、国基準を上回るしくみは発信できないのでしょうか。

しかも、東京都は、保育が基礎的自治体の事務に変わった平成16年以降も新たな保育園のしくみを提示しているところに、保育について東京都が東京市としての役割があることを認めていることが表れています。どこの道府県が、自治体の自治事務に口を出すでしょう。

【23区に必要なのはまず東京都からの分権】

地方分権と言われますが、23区に必要なのは国からの分権ではなく、東京都からの分権です。




区長挨拶の一部抜粋:


特に、待機児童の問題に関しましては、本定例会を通じて様々なご意見・ご提案を頂戴いたしました。
本区に限らず、都市部における保育需要は、社会経済状況の変化や女性の社会進出の本格化等を背景に増大化・多様化しており、待機児童の解消は依然として厳い状況にございます。

本区をはじめとした特別区においては、認可保育所のみならず、東京都の認証保育所、区独自の認可外保育所など、都市部の実態に応じた保育施設の英日に精力的に取組んでいるところでございますが、これに対する国の財政的支援は十分なものではございません

このような状況を踏まえ、特別区長会として国への積極的な働きかけが必要と考え、このたび、私の発議によりまして、「待機児解消対策の強化を求める国への緊急要望」をとりまとめた ところでございます。

これは、国に対して、「安心子ども基金の継続と補助対象の拡充」、「認可外保育施設への財政支援」、「国有地の活用の促進」の3つの方策を講じるよう、緊急要望するものでございます。

このように、国に対する働きかけを強め、効果的な支援策を引き出しながら、都市部共通の課題である待機児童解消対策を図ってまいりたいと考えております。




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