羽田空港で海上保安庁の航空機とJALの航空機との衝突事故があり、両機とも炎上しました。死者も出した重大な事故であり、事故の詳細と原因解明が待たれます。実は、昨年、大田区議会羽田空港対策特別委員会では、航空機火災の訓練施設に視察に訪れています。あらためて、視察の報告書を読み返しましたので、ここに再度掲載させていただきます。
今回の火災の原因が、エンジンからの出火なのか、わかりませんが、
視察でも、出火から90秒~3分が生死を分けると言われており、
BBCニュースにもそのことが触れられていました。
羽田空港で日本航空機が炎上、海保機と衝突 乗客乗員379人全員脱出と - BBCニュース
「奇跡だ、助からないと思った」 日航機炎上事故で乗客らが見たもの - BBCニュース
17時47分の事故と同時に炎上した機体から、全員が脱出したのが、18分後の18時5分。
どのような火災だったのか、どういった脱出の仕方をしたのか、報告が待たれるところです。
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羽田空港対策特別委員会で国交省の空港保安防災教育訓練センターに視察に行きましたのでご報告いたします。
視察先では、エンジンからの出火を想定した消火訓練などを見せていただきました。
出火から90秒が生死を分けるとも言われており、初期消火や訓練の重要性とともに、発生抑制が何よりもリスクの軽減につながるとあらためて思いました。
危険回避のための着陸復航=ゴーアラウンドが空港の離発着数の増とともに増えているなど、昨今の空港の機能強化はリスクと背中あわせです。
区民の命や環境を守るための大田区議会 羽田空港対策特別委員会ですが、全国の議会の中で唯一の空港専門委員会として、区民・市民の立場で、発生抑制の視点で、委員会審議していくことの重要性をあらためて感じました。
以下、視察報告書をもとに少し長めの視察報告です。
視察報告書は800字以内なのです。
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国交省航空局の空港保安防災教育訓練センターは、1994年に名古屋空港で起きた284名が亡くなった中華航空機墜落事故を契機に2002年に開設した、全国唯一の空港を対象にした火災防災のための施設です。
民間航空機火災等の専門的な知識を習得するために、教育訓練指導などを行う訓練設備を持っています。
ボーイング767型航空機と同寸の模型(モックアップというそうです)をガスコンロ状の設備の上に置き、LPGガスで炎を出し消防車等で消火したり、その後、乗客の救助を行う設備を使った訓練や、シュミレーター装置などを使った操作等の訓練などを、全国97空港の職員を対象に行っています。
こうした施設は米国、韓国、英国、独など、海外に10か所ありますが、日本の施設は、水の再利用や黒煙が出ないようにするなど環境に配慮しているという特徴があるそうです。
航空機火災等の事故は発生頻度が低いため、職員のモチベーションの維持が重要で、技能を習得・保持するための資格を設けるなど受講体制も工夫し、モチベーション維持にも努めているそうです。
実際の火災において、炎を見て動揺しないためにも炎を使った訓練は重要で、炎を使っての訓練は、効果的だそうです。
実態的な連携には至っていない部分もあるそうですが、地域の消防、警察や医療機関との協定締結など関係機関との連携につとめ、座学での訓練も重ねていそうです。
航空機火災に対応する特殊な機能を持つ消防車両HRET等は、オーストリア製でローゼンバーク社から購入していると聞きました。
1台2億円程度と高額な車両ですから、国産は無いものかと思いましたが、国産は無く輸入に頼っている現状だそうです。
技術的な問題化と伺ったところ、技術的にというよりは、特殊車両ということで、国内の空港97か所に配備するとしても、需要に限りがあり、開発費用などを考えると採算性などの問題もあるようです。
ローゼンバーク社は、世界の消防車両の市場を押さえているようでした。
私は、現在進んでいる過度な貿易の自由化には、否定的な考えを持っていますが、自由化されているなら、アジア市場を念頭に国産できる体制を作るのも一つの戦略ではないかと思います。
こうした命にかかわる部分こそ、国内製造できるようにしなければならないと思います。
最後に、モックアップを使った炎上を想定した実際の消化訓練の様子を見せていただきました。
うかがったとっころ、消防車両の薬液・水の放出時間はおよそ2分間で、非常に短いと感じましたが、航空機火災は、発生から90秒が生死を分けると言われているそうで、発火から2分の間に消火しなければ、乗客の命を救えないということなのだと知りました。
また、機体が溶けだす前の発火から3分以内に乗客を救出する訓練をするそうですが、3分で救出することは容易ではないそうです。
発生すれば、極めて厳しい環境の中で消火、救出しなければ、大惨事になる可能性が高いのが、航空機火災だということです。
エンジンルームには、熱の上昇を感知すると機長が操作し消化できるシステムが搭載されているそうですが、客室内には、重量の関係もあり、スプリンクラーなどの消火設備はついていないそうです。
訓練、初期消火の重要性を教えていただくとともに、火災などを起こさない予防が何より重要だとあらためて、思い知らされました。
火災をはじめ、航空機事故が離陸後3分と着陸前8分に集中していると言われていることからも、空港立地自治体大田区周辺のリスクが高いことは言うまでもありません。
危険回避のためのゴーアラウンドは、便数が増えるにつれて増えてきていることなど、単純に考えても、便数増など、空港の機能強化は、リスクと背中合わせです
区民の安全や環境を守るために設置された大田区議会の羽田空港対策特別委員会ですが、区民を守ることが、空の安全を守ることに直結する大変に重要な役割を持っているのだと改めて感じました。
全国議会の中でも空港に係る特別委員会を唯一持っている大田区議会の当委員会の役割の重要性に身が引き締まりました。