大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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不明瞭な土地売買事例からみる大田区政の透明化・コンプライアンスの確立について/決算特別委員会より

2008年10月04日 | ├行政システム・公共調達

◆決算特別委員会質問準備原稿全文◆ 
説明は、今後、追って行います。


 決算特別委員会で大田区のコンプライアンスについて、最近の土地売買事例から検証しました。

 質問のために準備した原稿をご紹介します。(質問は、一問一答のため、実際の質問とは一部異なります)


【不明瞭な土地売買事例からみる大田区政の透明化・コンプライアンスの確立について】

コンプライアンスは「法令順守」とか「ルールに従って公正・公平に業務を遂行すること」などと説明されています。

カビや農薬などに汚染された事故米を食用として転用していた問題や、鶏肉・ウナギ・牛肉など、次々に発覚する食品の産地偽装・賞味期限の改ざん・偽装派遣・介護保険不正請求など、企業の不祥事は後を絶ちません。
法令を守ること、そして、それを一歩進めた消費者からの信頼の構築が、企業の存続に大きな影響を与える時代になっています。
2004年に、公益通報者保護法が成立したことがきっかけとなり、関係者からの通報により企業内の不祥事が明らかになる事例が増えています。
「新会社法」や「J-SOX法=金融商品取引法」など、コンプライアンスを確立させるための法整備も進んできています。
こうした一連の法律の流れの根底には、手続きを適正化し、かつ透明化するという流れがあります。

企業のコンプライアンスが重要視され、未然防止のための取り組みが進む一方で、国や自治体など「公」の分野におけるコンプライアンスの取り組みはどうなっているのでしょうか。

自治体運営においても、法令や条例・規則に従った行為が求められることは言うまでも無く、「コンプライアンス」という視点で自治体運営を検証する必要があります。



新潟大学 南眞二教授は、自治体学第21号「自治体のコンプライアンス」と題された論文の中で、
国・自治体でも、食料費・使用料・旅費などで違法或いは不適切な会計処理が行われ、裏金作りが行われたが、本来、これらの解明に一定の役割を果たすべき議会はほとんど機能せず、民間オンブズマン組織による追求・解明に頼らざるを得なかった。公共事業について、談合がかなり頻繁に行われ官製談合防止法に該当する事件が発生している・・・
と「公」の分野においても、法令が遵守されていない自治体が存在することを指摘しています。



足立区では、平成17年、区民保養所の業務委託契約の業者選定にかかわり、元区議会議員と事業者があっせん収賄及び贈賄などの容疑で逮捕される事件をきっかけに「コンプライアンス推進委員会」を立ち上げ、再発防止として「コンプライアンス推進計画」を策定しています。
 足立区は、この計画の中で、事件発生に至る問題点として、次の4つをあげています。
1.事業者の選定基準や手続きの決定に裁量の余地が大きく透明性に欠けた
2.担当職員が、外部からの強力な圧力により、守秘すべき情報を提供するなど、法令遵守意識に欠ける行為を行った。また、このような行為に気づき是正するといった組織としての法令遵守機能が働かなかった。
3. 区民、議員などからの要望、提案、意見(などに対し)は、区民サービスを向上させるために有益なものが多い。しかし、例外的には、不正行為につながる恐れもありうる。職員が負担を抱え込むことなく、職場や上司と情報を共有し、組織的に対応する仕組みがなかった。
4. 契約事務の手続きや基準に関する規定やその運用状況の客観的な監視の仕組みが十分でなかった。

こうした問題意識を持つことなく、区政を執行してきた足立区は、最悪の結果を招いてしいましたが、大田区はどうでしょうか。









10月30日に、大田体育館隣接の土地と建物を購入する議案、そして、大田西行政センターの土地を売却する議案が議決されました。

公有財産の売却や税金を使い不動産を購入する際に、自治体に求められるコンプライアンスとは何でしょうか。

(不動産鑑定と財価審)
そこで、これらの、不動産の売買を事例に見てみましょう。
不動産売買の際、区は対象不動産を、不動産鑑定にかけます。
国土交通省では、複数の不動産鑑定を行うことが好ましいとしていますが、大田区の不動産の鑑定は、複数社で鑑定することもあれば、1社の時もあり、その基準が定められておらず不透明です。

そこで、うかがいます。
不動産鑑定は、予算が無いなどという問題ではなく、鑑定士選定基準を明確にするとともに、特に大口の不動産売買は複数の鑑定にかけるべきと考えますがいかがですか。①


区は、不動産鑑定結果をもとに売買価格を定め、それを専門家と区職員で構成される財産価格審議会(財価審)にかけて決定していますが、大田区では、不動産鑑定報告書も財価審の議事録も非公開です。
私たち議会や区民は、財価審にかかった価格を適正な価格であるとしてきましたが、決定過程や根拠は、区民に明らかにされていないのです。

平成15年の不動産鑑定基準の改定に伴い、説明責任を強化する観点から、決定した鑑定評価額の「算定過程」に加えて「判断の理由」や「分析内容」、「前提条件」等について具体的に記載することになりました。
民間の売買の際には、当事者は、見ることができますが、区民の財産である公有財産の売買になると、不動産鑑定結果は非公開で、価格の「判断の理由」「分析内容」「前提条件」について当事者である区民は知ることができません。

そこで伺います。23区を調べたところ、必ずしも、全ての区が財価審の議事録を非開示にしているわけでは無く開示している区もあります。
不動産の鑑定記録などの提出資料を含め公示する、少なくとも財価審の議事録は、当然、開示するべきと考えますがいかがでしょうか。

経理管財課副参事のいらした東京都では開示しています。東京都では行えて。大田区では開示できない理由が何かあるのでしょうか。違いについてお答えください。



(大田体育館隣接マンションの評価)
今回の体育館隣地の土地と建物の売買価格の㎡あたりの単価は41万円。周辺の取引平均は42万円で、ほぼ同じ価格であると区は説明しています。
このマンションは旧耐震基準で建てられています。友人の不動産鑑定士に教えてもらい、周辺取引事例を調べてみましたが築年数が5年ほど浅い新耐震基準の建物が多い平均取引事例をとっても㎡単価は34万円でした。
 区は、築年数どのくらいのどのような建物をもって周辺の㎡あたり平均単価を42万円としたのですか?平均単価で購入価格が決まるのですしょうか?

  体育館隣地についてうかがいます。
この土地は体育館の基本計画では、取得の予定がありませんでした。又、体育館の建てかえにも必要な土地ではなく、区がこの土地を取得しなくても体育館を建設することができます。
区は、取得することで歩道を拡幅することができる、駐輪場として活用すると説明していて、建物はすぐに解体することからも、取得目的が「土地」であることがわかります。

土地が取得目的であれば、建物は評価せず、土地の価格から解体費用を差し引くのが通常ですが、解体費用も区が負担します。そのうえ、通常、売主が負担する土壌汚染の調査費用も区が負担するのです。
そこでうかがいます。
行政目的は、明らかに土地であり、建物は活用しないにもかかわらず解体費用や土壌汚染費用を区で負担し建物を有償で取得するのは何故ですか?
今後の用地取得の原則、基準とともにその理由を明らかにしてください。



不動産鑑定委託仕様書を確認したところ、昨年の10月1日付で最初の土地の鑑定を行っています。
ところが、今年の6月1日に、新たに、土地に加え建物も含めた鑑定をしなおしています。
当初は、行政目的である土地だけを鑑定にかけたにもかかわらず、建物も評価することにしたのは何故ですか?何がかわりましたか?




体育館隣接土地・建物は、設計終了後も住民からの申し出にしたがい価格交渉しています。住民が区に昨年8月に出した買い取り提案の中に次のような条件が記載されています。
① 駅から徒歩5分程度の建築年数の浅い建物の評価とすること
② 新たな経済的負担なしに周辺地域で新生活を始められる金額とすること
③ 解体・更地費用は大田区が持つこと
④ 土壌汚染などは大田区が負担すること

こうした住民などからの要望が影響していないでしょうか。

足立区では、議員や業者など外部からの提言・要望を記録し公開することにしています。こうした要望は、口頭・文書を問わず、決定過程書類として、時系列で記録すべきと考えます。

区の計画に無い土地に加え建物まで、買って欲しいという要望に応じて恣意的に購入するのであれば、行政の公正性に欠け、区の財源はいくらあっても足りません。
そこでうかがいます。文化の森、産業プラザなど区施設に隣接していて、区が購入すれば、利便性の向上する土地は、他にもあるでしょう。
今後、区民からの要望があれば、これらを全てこのような条件で購入するというのでしょうか。
一般に、使わない建物がある場合、更地で引き渡すのは、建物を借りている人との権利関係が残る可能性があるからではないでしょうか。このマンションも約半数は、賃貸しているのではないかと推測されます。賃借人が退去しなければ、区は更に退去費用まで負担しなければなりません。

 (大田西行政センター売却)
 次に大田西行政センターについて質問します。西行政センターは、隣地企業の社屋建て替えに伴い、用地購入の申し入れがあり、区にとっても雪谷大塚という地域核のまちづくりに資することから合意に至ったと説明されています。
しかし、その数年前に西センターに、改修や増築・補修など4億円近くもかけてきたことからも、区が、西センターを長期にわたり使用する予定であり移転売却する計画が全くなかったもので、まちづくりが後付けの理由であることが分かります。
 
 今回この建物を、区は、面積が大幅に狭い体育館隣地建物とほぼ同じ約1億円で売却しています。この1億円の根拠についても不透明です。委員会での、「居住用は高く評価されオフィス用は安く評価されます」という説明は、購入や売却に至った経緯を度外視していて、単なる、不動産売買契約でしかありません。まちづくりという目的で合意し売却することは決めましたが、単なる売却で良いのでしょうか。
西行政センターは、移転のために、土地・設計に約10億円。建物に約10億円もかけています。移転のための経費も支出しなければなりません。住民からの購入依頼により、行政目的の無い建物にさえ、「住んでいるので」という理由で価格をつけて購入している一方で、依頼を受けて売却するため、移転しなければならない区が、単なる建物の評価だけで売却するのでよいのでしょうか。
移転補償を含め、同程度の施設を購入できるだけの価格で売却されるべきではないでしょうか。どのように財産を評価されたのかお尋ねします。



一方で、この売却を区が決めたのは、地域核である雪谷大塚のまちづくりに資するという理由からでした。
 売却することで、雪谷大塚のまちはどのようにかわるのでしょう。
合意書に記された「緑化」や「防音」、「道路の拡幅」は、どうなるのでしょう。開発指導要綱や都市計画法に基づき定められている義務の枠内に留っているのでは、区が売却の理由としていた「まちづくり」にはなりません。合意書に記された緑化や防音対策についてどこまで実現できたのか雪谷大塚の地域がどのように変わるのか具体的にお示しください。





大田区は、区民が主役の区政実現とのために「地域力」を全面にかかげた基本構想を策定しました。
基本構想の区政体制にも示されている通り、これからの大田区は、更に、区政の透明性を高め、区民に対する説明責任を徹底していきます。その仕組みを具体的に作ることこそが、コンプライアンスを確立することに他なりません。



安心だから、安全だから、大丈夫だからという言葉のもとで、偽装や不祥事が発覚し多くの信頼が裏切られてきました。
今日、とりあげた大田区政でおきているほんの数例の問題に対する区の説明に、どれだけの区民が納得したでしょうか。

地方分権とは、首長・議会に権限が拡大するということです。
分権時代には、リスクを最小限にとどめる様々な工夫が必要になるのです。

足立区では、
・ 職員の倫理規定を明確にする。
・ 議員や業者など外部からの要望を記録し公開する
・ 公益通報制度により自浄作用を働かせると共に通報者の保護をはかる。
・ 「公益監査員」と「コンプライアンス推進室」などの第三者機関を設置する
・ 条件付一般競争入札の導入による入札・契約制度を改革する
・ 「結果情報のみの公開」から「過程情報も含めた公表」など区政透明化を図る

などに取り組んでいます。

こうして、土地の売買を一例にコンプライアンスの視点で検証しても、様々な、不透明、不明瞭な区政運営の実態がみえてきます。
法令・条例・規則に従い区政を執行すること。そして、執行にあたり適正であることを示すための基準を設けること。また、それが区民に見えるよう記録し、原則全て公開の視点で透明化に努めることを要望し質問を終わります。


なかのひと



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