住民税均等割り世帯への給付10万円と、住民税非課税世帯・均等割り世帯の子への現金給付5万円の補正予算が上程され、可決しました。
私は、現金給付というポピュリズム的な事業の陰で、給与所得者の給与を上げるどころか、外国人労働者受け入れ規制の緩和で賃金を抑制し、一部の大企業等の利益を増大させるものの、中小企業等を廃業へ誘導するため、、物価高へ誘導し、一部の大企業等への利益誘導する閣議決定なので、反対しました。
政治家の中には、「今だけ、金だけ、自分だけ」と批判する人もいますが、結局、大田区議会の全ての政党が賛成しました。
今お金を配って喜んでもらえたら良い、というのは、あまりにも無責任だと思います。
と言っても、現金給付に反対するのは理解を得られないでしょうか。
そこを乗りこえない限り、日本の政治は、良くならないと思います。
議案に反対した理由は以下の通りです。
フェアな民主主義奈須りえです。
補正予算(第5次)住民税均等割り世帯と住民税非課税世帯・均等割り世帯の子への現金給付について反対の立場から討論いたします。
この給付は、閣議決定「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき執行されるもので、閣議決定には「高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、低物価・低賃金・低成長に象徴される『コストカット型経済』から、30年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えている。」と書かれています。
これを、雇われ働き賃金を得る人などの立場で読めば、高水準の賃上げが行われるように思えます。
中堅中小企業経営者からみれば、コストカット型経済から、30年前のバブルとは言わないまでも、企業の高い投資意欲が喚起され好景気になるのではないかという期待を持たせます。
ところが、この閣議決定には、低賃金・低成長だけでなく、30年続いた低物価も変革すると書かれています。
デフレ完全脱却のタイトルの通り巨額な財政出動を同時に決め物価高へ誘導するのです。
国同様、大田区も、去年2023年、公共施設整備計画を変更し、今後6年集中して約900億円もインフラへの財政投入額を増額し、物価高を誘導する要因を作りましたから、ひとごととは言えません。
それで賃金が上がり好景気になればまだいいのですが、外国人労働者の受け入れ規制のさらなる緩和で、賃金は抑制される可能性が高いです。
議会視察でも外国人材をテーマにしていましたから、大田区議会も区もそこは承知しているはずです。
投資家の視点で閣議決定を読めば、「賃金と物価の好循環」は、財政出動で物価高へ誘導し、政策で賃金というコストを抑制し、投資利益を拡大させる経済政策だということです。
しかも、物価高を利益にできるのは、過去最高益が報じられるなど、一部の大資本を中心とした事業者です。
東京商工リサーチは、1月の負債額1千万円以上の全国企業倒産、前年同月比23.0%増の701件すべてが中小企業だったと報じていますし、物価高や人手不足が重荷となり、中小企業の倒産予備軍も増えているという報道もあります。
この経済政策は、主に大資本やグローバル資本などのための経済政策なのです。
現金給付のどこが問題かと言えば、
たとえば今回、低所得者と位置付ける対象者が増えています。
給付するこどもの数約9千人は、0~18歳の給付対象者10万人の9%にもあたります。
現金給付対象の非課税、均等割り世帯を人数でみると合計約18万人。
この2年現金給付を4回も繰り返しながら、対象となる低所得者が人口の1/4、18万人にもなっていることからも、現金給付だけの物価高対策が対症療法でしかないのは明らかです。
一方、生活保護受給者は、そのうちわずか1万3千692人。
物価高騰に伴い、生保受給対象者や年金児童手当等給付額を拡大し、社会保障施策で救うべき人を救わず、現金給付で誤魔化しているのです。
行うべきは、
・生活保護給付の対象を広げる、
・年金給付額を拡大する、
・児童手当の給付額を引き上げるなど、
政策制度上の対応ですが、質疑の答弁から大田区は、そこは、国まかせで現実を見ていません。
しかも、物価があがるのに、収入が増えないことへの対策で現金給付しながら、
国は、外国人労働者の受け入れ緩和で賃金を抑制し、賃金を上げる気が感じられません。
そのうえ、これから、物価高対策で、減税という名前で、課税世帯員全員に一人4万円の給付を行います。
そうなれば、企業は、賃金の抑制をするのではないでしょうか。
実際、国の資料を見ると、
https://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/906634d95f87a4b5ce60748ab3d9da06
特別定額給付金給付の翌年、対前年比で、給与所得者の上位2割の給与所得は前年よりも大きく下がっています。
給与所得者の高額所得者の山が低くなったのです。
給付を良いコトに企業がベースアップを抑制したと言えないでしょうか。
同様に公務員給与改定でも、2年続けて初任給など若年層のベースアップを厚くし、相対的に高額所得者の山を小さくしています。
大田区は、賃金は経営者があげると答弁しましたが、少なくとも、国や大田区などが、
・派遣労働はじめ労働規制の緩和をやめ、
・行き過ぎた民営化や、
・官民格差是正に偏重した公務員給与改定をやめ、公務員給与を民間給与の指標として守らなければ、
賃金は上がりません。
今の現金給付は、企業が支払うべき賃金を税が補填しているようなものなのです。
現金給付を繰り返せば、企業の給与所得者の賃金は、相対的にさらに低所得化するでしょう。
恒久的に高負担になる生活保護や児童手当や年金は拡充せず、社会保障費を抑制してきていますから、生活保護や児童手当を廃止し全員に7万円を給付する竹中平蔵氏のベーシックインカムに誘導しているかのようです。
投資家から見た賃金と社会保障費の最小化=ベーシックインカムは、私たちに幸せをもたらすでしょうか。
根本的な政策的対応無き対症療法の給付は、状況をさらに悪化させますから反対です。