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多摩川源流の木で作る家「聖フランシスコ子供寮自立の家と修道院」

2009年01月17日 | ├.まちづくり・都市計画

 多摩川の源流「小菅村」の木で作った家が久が原に完成しました。
 源流の木で家を作ることにより、森林を再生し、村の林業を支えると共に、再生した森林が豊かな水を創り下流域に豊かに流れていきます。
 
 源流の木をふんだんに使った久が原の家を、設計した神谷博さんにご案内いただきました。


〓「聖フランシスコ子供寮自立の家」とは〓

 死別・離別や経済的理由などに加え、虐待や育児放棄など様々な背景から親と別れて暮らす必要のあることどもたちは少なくありません。
 こうした、何らかの理由で保護者と生活することのできない18歳までの子どもたちが入所する東京都の児童養護施設が久が原にあります。
 
 児童養護施設は18才までと定められていて、18才を過ぎると寮を出ていかなければなりません。
 現実には、18才になるとすぐに自立するのは困難で、「聖フランシスコ子供寮」の子どもたちは、18才になると、周辺にアパートをかりて生活してきました。
 これらの子どもたちのために作られたのが「聖フランシスコ子供寮自立の家」です。

〓源流の木で作る〓
 国内の林業は、外国からの安い木材需要におされ衰退してきました。
 経済的に成り立たなければ、従事する人も減り、人が減れば、山林を維持することもできず、森は荒れていきます。
 森は、木材の供給だけでなく、水をつくり、水を保ち、人や生き物の命を支えています。

 今回、この「聖フランシスコ子供寮自立の家」を設計した、㈱設計計画水系デザイン研究室の神谷博さんは、多摩川源流小菅村の木材を使うことで、森林の荒廃を止め、水を創りだし、過疎化の進む小菅村の再生に努めています。
 
 施設は、小菅村の桧や杉、栗などをできる限り使用しています(クリックすると写真へ)
 また、壁は漆喰、壁の上部や天井は安価な自然素材の粘土塗料を使用(クリックすると写真へ)し、和紙や再生色ガラスによってステンドグラスの風合いを出すなどの工夫もされています。


〓省エネ・省資源〓
 また、太陽光パネルを設置し、昼間電力の消費をまかなうとともに、雨水を利用(クリックすると写真へ)したビオトープの水を循環(クリックすると写真へ)させる電源としても活用しています。
 屋上に設置した太陽熱温水器(クリックすると写真へ)は、これまで使用していた国産メーカーが製造を中止したため、中国製を使用したそうです。日本の環境対策や、環境関係産業への取り組みの遅れがこうした事態をまねいていると思うと大変残念です。
 (余談ですが。ようやく、国や都が太陽光発電への助成を復活させました。化石燃料からの脱却は、資源を持たない日本にこそ課せられた政策課題と言えます。自動車産業や建設・不動業を中心にしてきた日本の、産業構造の転換が不況・経済対策のひとつの鍵であると言えるでしょう。)

 地下に設置した雨水貯留タンクは、屋上緑化した植物への水やり(クリックすると写真へ)などに活用しています。
 家のほぼ中央には、小菅村の薪を燃料にする薪ストーブが設置されています(クリックすると写真へ)

〓木の家は気持ちが良い〓
 児童養護施設の庭には、同様に、小菅村の木材で作られた建物があります。
 ふんだんに陽のふりそそぐ洗濯物干場(クリックすると写真へ)に初めて子どもたちが入った時に、床に頬ずりしたというエピソードに大きくうなづく心地の良いスペースです。
 
 施設を運営する聖フランシスコ修道院は、18才までの児童養護施設の庭に、雨水を利用したビオトープを作るなど、以前から自然や環境に積極的に取り組んでいます。
 
 「国産の木材を利用することは、必ずしも安くは無い。しかし、倍も高いわけでは無い。今の日本にうすれつつある、良いものを使う人が増えてほしい」という神谷さんの言葉が印象に残りました。

 こうした建築が、本来、環境を保全し、地域雇用を創出する一番の主体となるべき自治体や国などの税金によるものではなく、一民間が行っている事実を重く受け止めました。


 


なかのひと


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