毛皮のマリー

2009-06-19 20:40:14 | 舞台
大阪公演最終日、5月24日に観劇してきた時のものです。

2001年度版を名古屋の大きな劇場で観劇しました。とても衝撃的で内容美輪さんの演技共に感動したので今回の再演を非常に楽しみにしていました。

8年も経つと好みや見方が変わり、偏見が多くなってきたので、今回は全日程が終了するまではアップしないことにしました。観に行かれる方に私なりに配慮しました。

カーテンコールの「マリー」と「欣也」の白で統一されたシンプルで洗練されたシーンがとても印象的でした。前回はこんなに凝ったカーテンコールはなかったように思います。

ラストの展開も、2001年度版より大きく変更されており、太刀のシーンはとても迫力がありとても母の強い愛を感じました。

若松さん、菊地さんは前回よりも魅力が増し、特に若松さんの「紋白」は増々ギャルに近づかれて大変楽しませて頂きました。足か細いのがとても印象的で、前回より8年も経つのに若さに磨きがかかっていたので驚きました。

菊地さんは熟練した男の色香が漂っており、美輪さんが絶賛する気持ちがよく分かります。

ただ、私が見た日の麿さんの「醜女のマリー」に元気がなかったように思えました。醜女でなく普通に見えたのは私だけでしょうか。それに大勢のダンサーズで陰に隠れてしまった感も否めません。

今回特筆すべきは「欣也」を演じた吉村さんです。

前回は及川光博さんが演じられてました。当時大人気のスターさんが演じるとあって、テレビに映る彼独特のオーラも完全に「欣也」のオーラへと変貌されており、大変共感、感動しました。演技の上手さは本当に驚きました。

そして、今回抜擢された吉村さんは私にとっては無名の役者さんではありますが、動きがとても機敏で感受性も豊かで、何より新鮮で初々しさがありました。それでいて、二幕目の自暴自棄になるシーンはとても胸を打たれるくらいいい演技をされてました。今後とても楽しみな役者さんですね。

そして、舞台上のマリーの欣也に対する眼差しや声かけは、始終母子恋人以上の愛を感じました。美輪さんの吉村さんへの愛なのでしょう。2001年度版はラスト以外は欣也に対して冷たかったように思えたんですけど…。

いずれにしても、吉村さんの今後の活躍を期待してます。

美輪さんの「マリー」に関しては言うまでもなく、マリーを演じられるのは美輪さんしかいません。

そう、今回の作品を鑑賞して気になることがありました。

マリーが欣也の産みの母に対して恨みつらみを語る台詞です。2001年度版と変更されていたように思えたので、出版されている戯曲をもう一度読み直してみました。

記憶が不確かなので、断言出来ませんが、前回の公演ではマリーが欣也の産みの母を犯したことを愛憎たっぷり皮肉たっぷりに語っていたように思えます。今回は戯曲通り、水夫がマリーが犯したんだと悟る台詞になっていました。個人的には前回の方がとてもインパクトがあって好きでしたので、今回はそれがなくて残念でした。

それから、美輪さんには失礼ですが、紋白の登場シーンで使われた曲「Love_Machine」はいかがなものでしょうか?パヒュームの曲であのロボットダンスをしている若松さんを見たかったな…なんて思ってしまいました。

それと、一幕終わりの美女の亡霊達もは多いように思えました。アップテンポな派手なダンスよりダークでエロチックなタンゴも良かったのでは…なんて思ったりもしました。

演劇ド素人が演出に口を出しやがってって怒られそう…失礼極まりないですね。申し訳ありません。

この大勢の役者さんを配したのは、かつて寺山修司氏の作品に出てきたキャラクターをラストに登場させるために必要だったということが分かりました。寺山氏へのオマージュを望んだので登場人物が増えたんでしょうね。それでも…。また言いそうになった…すみません。

パンフレットを読む限りでは今回のマリーが美輪さんにとってラストになるかもしれないというではありませんか。今回の演出が集大成っていうのは、上記の理由もあって正直腑に落ちません。

これはまだ美輪さんにとって集大成ではないと思います。まだまだ未完の作品です。美輪さんが一生演じ続ける価値のある作品です。ちょっとした手直しで感じ方が180度変わるんですから、また新しいマリーが見たいです。

それに、「毛皮のマリー」は美輪さんのために書かれた作品です。美輪さんにしかマリーの複雑な心情を表現できるの役者さんはいません。やはり、美輪さんの意志だけで終わらせてはいけないと思います。天国の寺山氏だって彼のお母様だって同じことを思っているはずです。美輪さんが生きているかぎり演じ続けることが宿命ではないでしょうか。森光子さんの「放浪記」のように。

この公演を最後にせず、命あるかぎり演じ続けて欲しいですね。マリーが90歳になっても、進化するマリーが見たいです。

それから、まだこの世に生を授からぬ未来の子供達に、普遍的なテーマである母子の絆、愛、そして寺山修司氏の魂を伝えるためにも演じ続けて欲しいです。

こんな上から物を言うような人間の話を実際に美輪さんの耳に入ったら本当に怒られそうですが、美輪さんと寺山氏のファンを代表して言わせて頂きました。実際に耳に入ったところで、美輪さんなら、「ほっときなさい、レベルの低い人間の相手をしてはダメよ」ってなじられそうですが…。

最後に、くれぐれもお身体を大事にして、女優美輪明宏の舞台をこれからも楽しみにしてます。

今日のまとめ:ねっ、偏見だらけだったでしょ!?
そう、十年前に購入した「青森県のせむし男」のビデオ、引越しの際に捨てなくてよかった。なぜかこの作品だけは再演がないので今では私の宝物です。