台詞は人を選ぶ。
どんなに美しく、どんなに哲学的で、どんなに素晴らしい台詞であっても、語る人の血と肉が伴ってこそ生きてくる。
ただ語るだけなら、それはただの意味のない言葉。
世界中で愛されたラ・マンチャの男、ドン・キホーテの数々の名台詞たち。
どんなに気高い台詞であっても、今の白鸚さんの生き様には勝てなかったようだ。
白鸚さんの生き様こそ生きたメッセージ。
この俺の生き様を見ろ!
そんなちっぽけなことで悩むな!
与えられた役目があるなら全うしろ!
挑戦したいことがあるなら怯むな!
生かされた命、その命ある限り挑戦し続けろ!
そして、
生き抜け!
白鸚さんとドン・キホーテが心身共に一体化されこれ以上のリアリティーを伴ったラ・マンチャの男はない。
私の想像を遥かに超える力強い歌声だった、ラ・マンチャの男と見果てぬ夢。
最初から最後まで涙涙涙。
私の両隣りの方も涙涙涙。
たくさんの勇気を頂きました。
白鸚さん、ありがとうございます。
念願の松っちゃんのアルドンサ。今までの松っちゃんの演技からは想像しえない、見たことがないほどの荒々しく激しいアルドンサ。レイプシーンの、もはやミュージカルの域を越えた表現に胸を打たれました。
そして、まるでマグダラのマリアのようにドン・キホーテに寄り添う姿に、そこには父と娘の関係性はなかった。最初から最後までドン・キホーテとアルドンサだった。
役者魂を感じる素晴らしいアルドンサでした。
白鸚さんと同士でもある上條恒彦さんにも、その生き様にも胸を打たれました。
最初、誰だか分からなかったくらい痩せられており、それなのに力強い台詞と力強い歌声は以前のまま。
荒井洸子さんもまた長年作品に携わられており、白鸚さんも上條さんも荒井さんも、その生き様こそメッセージです。これ以上のメッセージはない。
ドン・キホーテの相棒サンチョを演じた駒田一さん。最初から最後まで、カーテンコールで袖にはけるまで白鸚さんを支え寄り添われている姿に、これ以上のリアルドン・キホーテとリアルサンチョは存在しない。
團十郎襲名の口上で、休演された白鸚さんに代わり口上を務められた左團次さんが、まるで初日が開くのを待つかのように翌日に旅立たれました。
白鸚さんの背中には、吉右衛門も含めたくさんの方の想いを背負われている。これ以上のお役目はありません。
吉右衛門さんと左團次さんのご冥福をお祈りすると共に、お二人の分も無事に大千秋楽を迎えられることを心から祈っています。
白鸚さん、本当にありがとうございました。
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