ノイバラ山荘

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鞄と時計

2009-11-25 22:15:11 | 短歌
先月「鞄」の歌を探していて気が付いた。
「鞄」が詠み込まれた歌は少ない。

考えてみれば、鞄というのは西洋のものだから、
少なくとも明治以前に鞄の歌がないのは当然である。

国内で鞄屋さんが出来たのが明治20年頃、
庶民の手に入るようになったのは、もっとのちのことだろう。
それまでは、今で言う鞄こそなかったが、
武士たちが鎧を入れた「鎧櫃(よろいびつ)」、
医者の「薬篭(やくろう)」、床屋の道具入れとしての「台箱(だいばこ)」、
そして庶民が旅行の時に使った柳ごおりなどがあったらしい。
そういえば、風呂敷だとか布の袋も携帯の鞄と言えるだろう。

短歌で最初に「鞄」という言葉を使ったのは誰なのだろう。
珍しいものとして詠んだのか、かなり普及してから詠んだのか。
トランク、リュックサック、ショルダーバッグ、ハンドバッグなど、
何が一番よく詠まれているのだろうか。
最近では、男性歌人に鞄の歌が多いように思った。

・異国には異国の香り良き旅を終へてしばらくカバンを干せり                                         
                    大松達知『アスタリスク』

今月は「時計」の歌を探しているが、これはありそうで、ない。

最近では腕時計をしている人は少ないし、
私も携帯電話で時間を見たりする。
公共の場で時計を見ることが少なくなり、
携帯電話を忘れると時間の確認ができなくて困ることがある。

きっとそういう背景もあって、時計の存在が希薄になっているのだろう。
多分、2、30年前以前の方があるに違いない。

・四時にて止まる癖の時計はひきだしの中にていつも・いつまでも四時                          
                     齋藤史『ひたくれなゐ』