ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

腹が立つこと

2011-08-05 12:45:00 | 日記
「失礼」

なぜ、その一言が口から出ない。

最近、すれ違いざまに人と当たることが増えた。当たるのは手とか腕の一部が、相手の鞄や手に当たるだけだ。別に悪意があるわけでもない、何気ない接触に過ぎない。

ところがだ、明らかに先方からぶつかってきたにも関らず、無言で立ち去る輩が少なくない。ガキの頃なら、相手次第だが喧嘩になっている。

私も丸くなったものだと思うが、慎重というより臆病になった感も否めない。相手が一方的にぶつかってきたのか、自分に非はないのか、に迷っているからでもある。

おかげで怒鳴りつけるタイミングを失して、憮然として後姿を見送る情けなさには、自分でもうんざりする。ガキの頃なら、とりあえず殴っておいて、それから怒鳴っていたこともあったが、さすがにそれはもうやらない。

まずは交渉を考えてしまう。おまけに有利に進ませようと思案してしまうので、なお更行動が遅くなる。おまけに、自分に不利な点がないかまでも考えるから、余計に時間がかかる。

私も年々怠惰になり、無雑作に手や足を放り出していることがあるので、一概に相手が一方的に悪いと断言できないことが分る。しかし、私が止まっている状態で、当たるのだから、やはり相手に非があると思う。

相手の非を確信した時には、既に相手は遠方へと姿を消している。かくして、私は憮然として忸怩たる気持ちを抱えたまま、立ち竦む羽目に陥る。

私の内面の葛藤はさておいても、なぜに一言「失礼」と言えない。その一言だけで、その場は丸く収まるはずだ。

先日も、私の目の前で、男性が女性に軽くぶつかっておきながら、無言で立ち去る場面に出くわした。通路のはじでお喋りをしていた女性も、当たった手を押さえながら、無言で立ち去る後姿に唖然としていた。

私が驚いたのは、そのぶつかった中年男性は、本当に何も無かったかのごとく立ち去ったことだ。気がつかなかったとは思えない。多分、その男性の手も痛かったはずだ。それなのに、何も言わずに立ち去っていく。

まるで何事からか逃げるが如き後ろ姿は、人と人との関わりを避けているかのように思えた。孤独というよりも孤立に近い。足早に、軽く下を見ながら、でも人の姿は眼に入らない。そんな後姿であった。

ほんの一言、失礼でもいいから言葉があればいい。ただ、それだけだ。

その、それだけが出来ない人が増えている気がする。おそらくは、心にゆとりがない。心が貧しいと言っていい。これって、金がないより情けないと思うね。
コメント (2)
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