前回まで5回にわたり書いてきた土地の評価についてですが、実は表題の本がそのネタ本の一つです。
もちろん、私自身の土地評価の経験をベースにしておりますが、この本及び著者の森田税理士には大きく影響を受けています。ただ、その全ての意見を肯定している訳ではありません。
本来なら、一読をお薦めしたいと書きたいのですが、この本に関しては止めます。
理由は簡単で、専門知識がないと、ほとんど理解できない内容だからです。少なくても相続税法が分っていて、なおかつ財産評価通達による財産評価の実務経験がないと、7割がた理解不可能な内容なのです。
いささか残念な気もします。戦後の日本政府による土地政策は、間違いと歪みが無視しえぬほど課題だらけ。ただ、一般の消費者、国民が土地の問題を我が身のものとする機会は限られる。
それゆえに、政策の歪みが放置されてきた。
ほとんどの場合、土地の相続や、売買で困難に直面して、そこで初めておかしなことに気がつく。金額が大きな問題でもあるので、知らずに直面した人々は、困惑し、怒り、絶望に打ちのめされる。
本当は、もっと多くの方に、この土地の問題は知ってほしい。著者の森田先生もそう思って筆を執ったのでしょう。しかし、問題が専門的に過ぎて、専門知識がないと理解が難しい。
なるべく私も、専門知識がない方にも分りやすくと思って、5回も書いてきたのですが、まだまだ不十分みたいです。
民主主義を標榜する以上、有権者がある程度の見識をもつことは必要不可欠。しかし、この土地評価の問題ともなると、どうしても高度な専門知識が必要になる。
難しいことを難しく説明するのは簡単。難しいことを、優しく説明することこそ難しい。つくづく、自分の力量のなさを感じてしまいますね。
この本を読んで感じる怒りを、ほとんどの方と共有できないのは、とても残念です。