ヌマンタの書斎

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土地の評価方法 その二

2011-08-12 13:00:00 | 経済・金融・税制
お代官様には逆らえない。

日本人の性根に叩き込まれたものなのかもしれない。もっとも、如何にお上といえども、あまりに非道ならば一揆だってやっちゃう。

その点は、お代官様も分っている。だから、ほどほどに年貢を取り立てる。まァ、生かさぬよう殺さぬようにではあるが。

そのあたりの感覚は、近代になってもあまり変わらなかった。年貢こそなくなったが、儲けに対する課税(法人税、所得税)や、流通税(関税、消費税、印税)、そして所有に対する税(自動車税や固定資産税)と、いささか複雑になってはいるが、ほどほどであることが基本となっている。

税という奴は、誰だって払いたい訳はない。一揆こそ起さないが、高すぎると必ず脱税が横行する。昔から庶民はもちろん、金満家といえども脱税節税には頭を絞る。

税法の隙間をついての節税は、税務署も頭を痛める。裁判に持っていっても勝てない場合だってある。だから税務署は、税法を厳格にして隙間を埋める。

つまり税法には後追いの性格が強い。時代の変化に追いついていないことがよくある。土地の評価についても、同様なことが伺える。

もともと不動産の所有にかかる税金は、それほど高いものではなかった。なにせ、戦前は大地主と農家を除けば、借家住まいのほうが多い。大土地所有者ともなれば、当然に政治的発言力も強い。税金もそれほど高くなかった。

多少の差はあれど、だいだい時価(土地の更地価格)の1割から2割程度が公的な評価額であった。それは戦後になってもそう変わらず、公的評価額は時価の1~2割程度であり、固定資産税はその1,7%だから微々たるものであった。だから、支払う側もそう高額だとは思っていなかった。

しかし、戦後になり農地解放と高度成長が土地神話を産んだ。土地の価格は右肩あがりで上昇しっぱなし。公的な評価は、それに追いつかず、実勢価格との差は開くばかり。

いったい公的な評価とはなんなんなのだ?

そこで公示価格の評価が飛躍的に上昇した。ほぼ倍近いアップに驚いたが、たしかに実勢価格との差は近づいたのは確かだ。もともと、公示価格制度自体が、不動産に詳しくない一般の人が、土地の売買をする際の目安にする目的を持っていたので、それはそれで評価していい。

だが、ここで困ったことが生じた。固定資産税の課税の基準となる固定資産税評価額と、相続税の財産評価基準となる路線価が、この公示価格の急上昇に引っ張られてしまったのだ。

どうも、どこかのお勉強は出来るが、世間を知らないエリートが勘違いをしたらしい。おおかた、一つのものに二つ以上の価格がつくのはおかしいとでも思ったのだろう。

まず、固定資産税の急騰に根を上げた地主連中が抗議の声を上げた。いくら負担調整措置をとっても、数年間で4倍近い税の高騰は高すぎた。

なにしろ固定資産税評価額なんて、実勢価格の1割~2割程度だったのだから、それを8割近くに再評価されたら、たまったものではない。

これは、土地の売買相場を示す指標としての公示価格と、不動産を所有することで生じる固定資産税の課税の算定基礎となる固定資産税評価額を、同じ水準にしようとした行政判断ミスだと私は考えている。

だが、固定資産税の税率は、1、7%に過ぎない。それでも行政訴訟が相次いだ。大半が原告(納税者)敗訴となったようだが、役所が神経質になったのは間違いない。

しかし、もっと問題になったのが相続税の世界であった。
コメント
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