今やサッカー日本代表の不動のエースは、岡崎慎司であろう。
イングランドのプレミヤリーグは、世界でもトップクラスのリーグであり、今期は開幕前の予想をひっくり返して、レスターが優勝した。チェルシーや、マンチェスターなどの強豪がこけたせいでもあるが、最下位争いをするとみられていたレスターの優勝は、歴史に残る珍事であり、大どんでん返しでもあった。
それこそ、100年に一度の珍事だと言っていいほどではあるが、その優勝メンバーの一人に、あの岡崎が名を連ねているのだから、驚きを禁じ得ない。
私が岡崎選手のプレーを見たのは、彼がまだ20才頃の清水エスパルスの若手選手であったころだ。長身の大型FWヨンセンのサポート役との印象が強い。よく動く選手で、密集した場所でも頭から突っ込んでいく突貫小僧であったと記憶している。
実際、インタビューでヘディングでの得点こそ、自分の長所で、足より頭ですと答えて、取材陣を笑わせていた。実際、足元のテクニックは下手に近く、その動きと、ダイビングヘッドが特徴の選手であった。憧れる選手は、ゴン中山との言に、そうだろうなと納得した。
その後、日本代表になり、アジア杯で活躍し、南ア大会でも活躍して、ドイツ・ブンデスリーガーに移籍した。正直、上手い選手ではなく、むしろ執拗で、機敏な動きで、隙間からねじ込むようなシュートをする選手であったから、果たして通用するのか疑問に思っていた。
案の定、最初のチームではベンチ入りさえ難しく、たまに出てもあまり期待されていなかったように見えた。ドイツの屈強なDF陣に跳ねかえされているように見えてしまい、これは早々に帰国かと思っていた。
その後、弱小チームのマインツに移籍したことで、彼の才能が開花した。エースFWを高額な移籍金で奪われたばかりのマインツにあって、岡崎は得点を重ねてチームに大きく貢献した。体つきが一回り大きく、太くなっていた。
いや、それだけではない。トラップ(ボールを受ける技術)が抜群に上手になっていた。小柄な彼は、敵選手に取られない位置にボールを置いて、素早く動いてシュート体勢に入るようになっていた。
なんとなくだが、ゴン中山を彷彿とさせた。中山もサッカー選手としては、決して上手い選手ではなかった。しかし、年々進化する選手で、後にジュビロでチームメイトとなったブラジル代表のドゥンガが、「後、10年早くプロになっていれば、世界に通じるFWになれた」と言っている。
岡崎も、憧れる中山に似たのか、年々そのサッカースキルを磨いて進化してきた。マインツからイギリスのプレミヤリーグに移籍して以降は、当初は控え選手であった。マインツではエースFWであったのに、彼はその屈辱に耐え、下部リーグで実績を挙げてのベンチ入り。
その後は、チームのみならず、サポーター、サッカーメディア、そして相手チームからも讃美される抜群の運動量で、チームを支え、二人のFW選手の影に隠れながらも、必要不可欠なレギュラー選手となった。
あの激しいプレミアリーグで、相手選手3人に囲まれながらも、ボールを奪われない位置に着実にトラップし、ゴールに向かってシュート体勢に入る姿勢は、かつての突貫小僧とは別人であった。
今年始まるワールドカップの最終予選においては、この岡崎選手の活躍なくして、突破はありえないでしょう。是非とも、その頑張りに期待したいものです。