ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

どうして僕はここに ブルース・チャトウィン

2017-05-01 13:46:00 | 

たまに旅行に行くのは楽しい。でも、人生の大半を旅して過ごすのは、多分嫌だと思う。

私が山登りの傾唐オた理由の一つは、家族から離れてみたかったからだ。別に嫌っていた訳ではない。ただ、思春期ど真ん中の妹たちと母との間に、私の居場所はなかったように思っていた。

決して疎外されていた訳ではないが、家庭から離れることで、一つ大人になっていく気がしていたことが、最大の要因であったと思う。でも、今だから認められるが、旅に出ようが、山へ登ろうが、いつだって私は喜んで帰宅していた。

山を下りて、温泉地で一風呂浴びて、その後は麓の繁華街で安い居酒屋で食べて飲む。20時前後に甲府を発つ各駅列車で帰京すると、21時過ぎには大月を通り過ぎて、高尾山地を抜けると、関東平野の夜景が出迎えてくれる。

次第にネオンの数が増え、東京に帰ってきたことを実感する。人混みの新宿に降り、乗り換えて家の扉を開けるのは23時前後である。広くもなく、家具と衣服だらけの我が家だが、私が一番安堵できる場でもあった。

旅の思い出と、山での記憶を枕に私は幸せな夜を堪能しつつ眠りに就いた。物語がハッピーエンドで終わるのが一番嬉しいように、旅の終わりも自宅での安眠こそがハッピーエンドであると思っていた。

もしかしたら、私はそれほど旅行が好きな訳ではないのかもしれない。

表題の作品は、紀行作家であるブルース・チャトウィンの代表作の一つ。世界各地を飛び回り、歴史に名を残す著名人たちと語り合い、世界各地をその目で見てわまった彼の人生は、旅そのものである。

若い頃は、そのような生き方に憧れていたが、今は違う。やはり旅はたまにするからいい。帰る家があってこその旅だとも思う。

コメント (2)
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