今や原付バイクは風前の灯だという。
ちなみに原付とは50CCエンジン搭載のオートバイの総称であり、かつて大人気であったスクーターや、出前ご用達のスーパーカブ、ロードタイプ、オフロードタイプと様々な種類を誇った。
しかし、かつては年間200万台販売された原付も、現在では十分の一に満たないの惨状である。
原因の一つは、欧米の排ガス規制である。ガソリンエンジンは4ストローク型、2ストローク型、ロータリー型とあるが、自動車などに搭載されるエンジンは、圧倒的に4ストである。このタイプは排ガス規制に沿って改良されているが、後者二つはあまり改良がされていない。
そして原付バイクは圧涛Iに2スト型のエンジンを搭載しているため、欧米の規制に適合することが難しい。
また、規制の緩いアジア市場では、コストの安いシナ製品が数多く出回っており、ブランド力がある日本製といえども厳しいのが実情だ。
そして国内だが、これは交通規制が原付に対して厳しい。なにせ、交差点を普通に右折することが出来ず、一度降りて横断報道で迂回して右折しなければならない。これでは人気が出ないのも必然だ。まァ、原付バイクの交差点事故が多いのが原因なのだが、正直不自然な規制だと私は考えている。
この規制のせいで、私は原付バイクに乗る気が失せているのは確かだ。日本の道路行政は、オートバイに対して不当に厳しいと感じている。
そんな訳で、今や原付どころか、普通のオートバイ自体、日本ではあまり売れていないのが実情だ。唯一の例外は、大型スクーターと、ハーレイダビッドソンのような超大型タイプのオートバイだ。
これは趣味の世界のバイクであり、値段もかなりお高い。暴走族のような若者に手が出せる値段ではない。いずれも経済的に余裕のある中高年が乗って楽しんでいる。
しかし・・・だ。これでいいのか?
原付バイクは、出前バイクとして著名なスーパーカブに代表されるように、利便性が極めて高い。郵便局でも長年愛用されている。電動自転車での完全な代替は、現実的には無理だ。
この状況下にあって、国内バイクメーカーの二強であるホンダとヤマハが、電動スクーターの共同開発に乗り出した。かつては、原付スクーターにおいて、苛烈な販売競争をしていたこの二社であるが、排ガス規制強化の荒波を超えるには、力を結集する必要性を感じたのだろう。
この方向性は間違っていないと思う。でも、かつて十代の頃、バイクに憧れた私が初めて乗ったのが原付バイクであった。友人のホンダMBにまたがり、クラッチを慎重につないで走り出した時の感動は、今も忘れがたく覚えている。
今日日の若者は、バイクに憧れないのだろうか。やっぱり欲しいのはスマホなのか?懐古趣味だとは思いますが、いささか寂しさを禁じ得ません。