日本人にとってなじみ深い秋の風物詩である秋刀魚の塩焼も、やがて過去の遺物と化すかもしれない。
ここ数年、秋刀魚の水揚げ量が激減しているが、原因はシナと台湾による大型漁船によるサンマ漁だと言う。長い間、日本人の生活に馴染んだ味覚を奪われることに憤る方は多いと思う。
しかし、これは歴史の必然である。既に世界人口は60億人を超えている。冷蔵技術の発達により魚などの流通経路が拡大した結果、これまで魚をあまり食べなかった人たちが、これまで以上に食べだすのは当然である。
特に日本への旅行、留学などを通じて、日本の食生活を覚えたシナ人、台湾人が、あの美味しい秋刀魚に目を付けるのは無理もない。既にマグロがシナを始めとして東南アジアで大人気となっている。まして、比較的値段の安い秋刀魚がアジアで人気が出てしまうのも致し方ない。
秋刀魚は日本人だけが独占していいものではない。
本音を言えば、少し悔しい。でも、日本人がインド洋、大西洋、地中海に出向いて漁業をしていることを思えば、甘受すべきことだと思っている。
ところで、既に秋刀魚の水揚げは始まっているようだが、まだ今年の初物が店頭に並ぶのは、少し早いようだ。つまり、現在店頭に並んでいるのは、昨年の冷凍ものである。
冷凍といっても、現在の冷凍技術の発達は凄まじい。凍結時に細胞を破壊しないように工夫し、事。が逃げないように改良を重ねてきた昨年の秋刀魚である。解凍して日が浅いものなら、塩焼を十分満喫できる。
ただ、やはり日持ちがしない。鮮魚店などは、その点を考慮してか、痛み易い内蔵などを抜いた秋刀魚を店頭に並べている。あの秋刀魚の内蔵の苦みが美味いと思うので、少し残念だが、ならば内臓を使わない秋刀魚のパスタを作ればいい。値段もお手頃だから嬉しい。
作り方は簡単だ。まず秋刀魚を塩焼してから、冷まして皮をむいて骨を抜き、身をほぐしておく。その間、パスタを茹でておく。同時に、大蒜を一片みじん切りにしてオリーブオイルで炒める。次にミニトマトを半分に切って、大蒜の香り豊かなオリーブオイルで炒める。刻んだパセリを追加して火を止める。
ゆで上がったパスタと、ほぐした秋刀魚、上記のオリーブオイルで炒めた大蒜、トマトと合わせて出来上がりである。隠し味に少しだけ醤油を垂らしておくのを忘れずに。
和風秋刀魚パスタは手軽に作れて、美味しくて、しかも安い。昨年の秋刀魚なんてと馬鹿にしないで、一度試してみてください。