私がSF小説に目覚めたのは中学生の頃だ。
既に星新一、小松左京、筒井康隆という世間的にも知られた御三家が日本のSF界をけん引していたが、その下で活躍していた若手SF作家の一人が、先月に亡くなった豊田有恒であった。
率直に申し上げて、あまり高い評価はできないSF作家であった。一番記憶に残ったのは「モンゴルの残光」くらいで、他の作品は私の心には響かなかった。どちらかといえば多才な人で、TVのアニメーション制作に大きく関与していたと思う。
多分、「宇宙戦艦ヤマト」での裏方での活躍が一番有名だと思う。ところがSF作家という枠を外れると実に興味深い人で、古代日本史に関する著作も多い。「ヤマトタケル」シリーズが有名だが、騎馬民族や邪馬台国に関する著作は、私もずいぶんと熱心に読んだ覚えがある。
古代日本史に造詣が深いだけに、必然的にコリア半島にも興味が沸いたようで、コリア通として知られている。当初は「漢口の奇跡」として知られる南コリアの急成長を好意的に捉えていたと思う。しかし、次第にコリアに対する批判的な言動が目立つようになった。
私からすると、知れば知るほど、関われば関わるほど嫌になるのがコリアであることを実証してみせた代表的言論人であった。その代表作の一つが表題の書。もう書店の書棚に並ぶことはないと思うが、図書館などで見かけたら是非ご一読のほどをどうぞ。