子供の頃、母が作ってくれたカレーには具がゴロゴロと入っていた。
ジャガイモと人参は必ず入っていたし、豚肉の塊が一口サイズに切って入っていた。時には牛肉であったこともある。でも主役は野菜であったと思う。
もっとも私と母は甘口で、妹たちは辛口志向であったから、母はあまりカレーを作らなかった。妹たちが家を出て、私が長期の自宅療養になると、夕食だけは私が実家に出向いて食べていた。
その頃から、母は再びカレーを作るようになった。もちろん甘口であるが、しっかりと煮込んであり、野菜は食べやすいサイズにカットしてあったから、食べやすくて、食べ応えのあるカレーであったと記憶している。
そんなカレーを食べ続けてきたせいで、カレーには具が入っていると思い込んでいた。そんな私を驚愕させたのが、事務所の近くに開店したフレンチ・カレーの店であった。まだバブルの残り香が色濃く残る1990年代のことである。
代々木上原の著名なフレンチ・レストランの賄い飯だとの売り込みで開店したのだが、基本メニューはカレー2種類のみ。フレンチカレーと海鮮カレーだけであった。ちなみに一皿、1200円であった。
物は試しだと行ってみたが、驚いたことに具が一切入っていなかった。私が初めて食べたプレーン・カレーであった。もっともその店では、ソースキュリーと表示してあった。要はカレースープなのだろう。
牛骨からたっぷり煮込んだカレーは、呆れるほどに味が豊潤で、ちょっと癖になるほどであった。ただ、カレーとライスだけで1200円は高く感じたのも確かだ。まだバブルの弾けた残り香が濃厚な時期ではあったが、この値段はちょっと高く感じた。
でも、今だから分るが、このカレーは多くの野菜と骨付き牛肉を長時間煮込んだ手間のかかるものだったんだろう。ちなみに代々木上原の本店では、たしかコース料理の一部なのだが、一番安くても3000円のコースだから、この店ではこれでも安くしていたのだろう。
しかし、いくらトッピングが出来るとはいえ、カレーのみで、しかもこの値段でランチ激戦区の銀座で生き残るのは難しい。美味しいカレーだとは思うが、残念ながら5年と持たずに閉店してしまった。
具がゴロゴロのカレーを当たり前だと思っていた私にとっては、ちょっと革命的なカレーであったのは確かだ。この時の経験から、私はカレー屋の技量を、具の入っていないプレーンなカレーで判断するようになった。ちなみに本格的なインドカレーは別物です。
カレーのチェーン店といえば、COCO一番が有名だ。ここのカレーは私も納得の味だと思っている。余談だが横須賀のCOCO一番といえば、米軍基地勤務のアメリカ人がはまる店として有名で、ここで日本のカレーを覚えて噂が広がり、今ではアメリカでも数店舗展開している。
でも、カレー屋は他にも沢山ある。最近だとゴーゴーカレーなんかが元気が良い。若いサラリーマンがはまるのも分かる味だと思っている。数年前まで関東を中心に展開していたバルチック・カレーも悪くないと思っていた。
ただ、ここは親会社が不正をやらかして倒産している。カレー自体は悪くないだけに、少し残念に思っていた。新橋駅を降りて外堀通りと国道15号との交差点に、バルチックカレーの店があったので、事務所から近いここが潰れたのは残念であった。
ところが、ここの従業員の方が独立したようで、カレー屋さんを始めた。それが伽哩屋DEWである。カウンター6席だけの小さなお店であることは、以前と変わりがない。
だが、中身が変わった。基本のカレーは400円。安いのだが、福神漬けやラッキョウは別料金。トンカツなどもトッピングできるので、料金設定はかなり自由だ。私は中辛、大盛りで550円を頼む。カレーとライスだけのシンプルさが好ましい。このカレー、よく煮込んであるし、味もこの料金ならば納得である。お財布が寂しい時は、実に嬉しい。
はっきり言って古い建物ながら、一等地である。ここでお店をやるからには、相当な工夫が必要だ。なにせ、新橋はサラリーマンの聖地と言われるだけに、安い店は数多ある。そのなかでも、この400円カレーは突出している安さだ。若い店主、相当に考えたメニューと値段なのだろうと思ている。
是非とも続いて欲しいお店です。わざわざ遠くから行く店だとは思わないけど、こんなお店が近所にあるのは、とっても嬉しいのです。
この写真の伽哩屋DEWさんは、銀座?新橋ですか?もし、見つけたら入ってみます。
以前、職場の近くにバルチックカレーがあって大好きだったのですが、なくなってしまって本当に残念でした。美味しかったですよね。
ココ壱もまあまあ好きです。
あ~、カレーが食べたくなってきた~~。(*'ω'*)
あまりきれいな店舗ではなく、カウンターのみ。なのですが、空いている時間だと女性が一人で食べていることもあります。きっと、好きなのだろうなァと思います。うろ覚えですけど、バルチックカレーの味を引き継いでいるみたいなんですよね。