1920年代の頃から安価なパルプ紙を使って製本された雑誌が、アメリカで大量に売られていました。カーボーイものや、SF小説、そして剣と魔法の物語などが中心の若者向けの雑誌でした。通称「パルプ・マガジン」、そのなかで人気を博したのが表題の野蛮人コナンの冒険譚でした。
筋肉ムキムキのアーノルド・シュワルツネッガーが主演の映画のほうが、現在では有名かもしれません。悪くないですよ、シュワツルネッガーのコナン役も、でも原作の雰囲気からすると、もう少し暗い野蛮さと、狡猾さが欲しかった。やっぱり、私は小説のほうが好き。
なかでも気に入っているのが、小説のなかでコナンが信仰している「クロムの神」様。この神様は、人間が祈ろうと、寄付をしようと、生贄を差し出そうと意に留めない。あくまで、その人間の行いを看ているだけ。人間が死んだ後で、その行いを計り、審判を下すだけ。
だからコナンは、苦しい時も、危ない時も神に祈ったりしない。自分を助けるは、あくまで自分のみの徹底したリアリスト。そんな不遜な野蛮人であるから、敵役の神官やら魔術師やらが駆使する魔人だろうと、神の眷属であろうと戦う時は、ためらうことなく戦い抜く。そして勝ち目がなければ、さっさと逃げ出す。
私は神が、あるいは神を騙る宗教組織の人間が、人間の世界に干渉することが嫌。神は神の世界で君臨していれば良し。いちいち人間のすることに口出すな。人間も安易に神にすがるな。人として生き、人として死んでいけばいい。矛盾だらけの世の中で、限りある命のあるままに、己が正しいと信じた人生を歩めばいい。そして、死という避けられぬ到達点に達したならば、後は神に己を委ねればいい。そう思っている。
真摯に宗教活動に勤しむ人からすれば、傲慢不遜と言われても仕方のない私の考えの原点は、実のところコナンの生き方に影響されてます。良いか悪いか分かりませんが、いずれ死ねば分かること。それで十分です。
なお、コナンの日本語版は早川書房と創元推理文庫と題名、組合せ等バラバラで刊行されてます。訳者も違うため微妙に表現が異なります。またイラストも違うため、ことなる雰囲気が楽しめます・・・まあ、好いのだけれど、版権どうなってるんだ? 例によって早川版は古本屋でしか手に入りません。創元版も似たようなものですが、最近ダイジェスト版を刊行したようです。
ハワードはかなり歴史に詳しかったとされていますが、自費出版なとをの研究書に書かれた、粗筋一覧を見ると、かなり無茶苦茶です。
古代ブリテン人とローマの戦いにバイキングが出てきたり、バイキングと戦うケルト系の戦士が、オスマン朝と戦うスペイン艦隊に参加するところで話が終えたり、やはりパルプ雑誌なせいか時代認識が…
だからこそ、ハイボリア時代という架空の古代を考え付き、自由に筆を走らせようとしたのでせう。
その結果がコナン創造になったのですから、何が吉となるか解りません。
私はバローズの金星とコナンを小学6年で知り、どちらも武部画伯の絵なことから熱中したのですが、
やはりコナンの持つ狡猾でリアリストで、弱い者に寛大だが、敵が悪党なら平気で罠にかける、文明のフェアなど屁とも思わぬ野性児ぶりが好きでした。
まあ、カーターらが風とともに去りぬの南部人で、
コナンがハックルベリーの南部人てとこでしょうか?
キング・カルというシリーズの未訳作品をすごい苦労して原文で読んだことがあるのですが、アメリカからの留学生に音読してもらった所が、カル王が馬に乗って登場するシーンが、アメリカ英語で発音すると、全文が馬蹄のリズムになるよう工夫されていました。こんな離れ業を使える人が、粗野な無学の人であったはずはないです。
で、彼らは神の法が人の法にまさると言います。
まあ、建前上はそうですね。
アメリカ人も法廷で聖書に手を当てて証言しますから。しかしねぇ…
あんたら中世の人間か?
法も国も現実には人が作ったもので、我が国は法治国家。法の上に人以外が君臨することは、法を形骸化することであり、んなものは認められる訳がなかろう思います。
何のために政教分離があると思っているのだろう。
そもそも神との契約とは、神と個人の間であるもので、生きるために必要な国家、社会、組織には関係ないのではありませんか?
現実の世界を神が統治をしてくれるならいざしらず、人の世は、人が治めるしかなあのですから。
そこで法の上に神とのうんたらがあると言われましても…。
まあ、輸血問題の話なんてすが。
信仰がどうだろうが、国に児童福祉の法がある限り、子供の輸血を親が拒否するなど論外です。
人の世を支配するのは人の法であり、神の御国の決め事は、法の下位にある!
宗教にハマる人って、善意の善人が多いのですが、
しばしば善意の人ほど始末に終えない者ものい。
殺人も盗みも拒わないコナンを見習って欲しいものです。
貴兄らの教義を否定するわけでないことはご承知ください。
私は元自衛官つまり兵士であり、ハンターであり、格闘技とプロレスが大好き人間であり、また鍼灸師という時に出血を伴う医療の従事者です。特に私は刺絡という欧米で言う冩血を是とする流派の人間で、根本的に貴殿らの教義とそぐわない者です。
反対はしませんが、同意はしかねます。
また、これらは全て私個人の見解であり、責はブログ主催者のヌマンタさんには一切ありませんので、
その点はご承知おきください。
シャバに生きている者には、血も肉も必要だし、時には暴力も軍事も謀略も必要だわな。
良心的徴兵拒否は今の世で認められつつあるといえ、皆が拒否したら、国が戦争に巻き込まれたらどうする?
銃後のケアは大切ですが、あんたらが拒否している間に、他の誰かが銃を取り、戦うのだろ?
自分の手を汚さずに綺麗事を言うんじゃねーよ。
それにしても未訳のキング・カルのことは知りませんでした。後書きに書いてあった気もするのですが、はっきり覚えていません。原書かァ・・・今流行の電子書籍で自動末ウれないかななどと怠惰な夢を抱いてしまします。
コナンとクロムの神に対するヌマンタさんの言葉は、最も愛する作家であるハワードも承認してくれると思います。
彼が人種差別主義者であったという話には、異論があります。ヌマンタさんの挙げた創元版には、
コナンの親友の黒人戦士が出てくるし、末訳の彼の作品には、白人と対等なライバル・キャラが出てきます。むしろ師匠のラグクラフトの方がナチスに賛同したり、人種偏見が甚だしい。
ラグクラフトに比べて、末訳が多いために、差別主義者の汚名を浴びせられているハワードが不憫でなりません。