

Photo by MST氏(2枚とも)
ここ幾日か、夕焼け空の名残りの中に溶暗していく空と大地を、心行くまで眺めることができている。快い疲労感が触媒となって、平安、満足、感謝、そんな気持ちが一体となるのを感じ、存分に味わうのだ。
北方には霧ヶ峰、さらにその背後には台形の美ヶ原が控え、かろうじて夕闇の中に空との境を画している。北西方向の後立山から西へと北アの峰々が連なって見え、槍や穂高も含めてその多くはすでに雪を抱いているのが分かる。
東は入笠と権兵衛山が視界を塞ぎ、南もやはり雷電さまの森に隠れてしまっているが、それでも目に入る範囲は広大かつ壮観で、それに音のない時間が加わる。一日の労働に対し初冬の自然が支払ってくれる報酬は過分と言ってもいいくらいだ。
きょうの終わることを素直に受け入れ、それからゆっくりと薄暗くなった山道を、車の灯を点けてここへ帰ってくる。
11月の20日までは山小屋及びキャンプ場の営業を続けると言っておきながら、営業案内の掲載をこの呟きから削ってしまい、どういうことかと問われた。最近の夜間の気温を考えれば、どうぞお出掛けくださいと言うのも気が引けて、それでしたことだと言い訳した。
予約があれば、正しくは20日ではなく19日までは牧を閉じずにいるし、その後の牧場との雇用契約が終わった冬季であっても自主的に受けることはあり、すでに1月は予約が入っている。
越年も例年通りここですると決めていて、それ以外の時にも何度か、牧場や小屋の点検を兼ねて雪の法華道を上がってくるのはこれまでの冬と変わらない。
厳冬期の粉雪はスノーシュズであれ、山スキーであれ、かなり潜る。それでも一人あの森閑とした林の中の、雪に埋もれた古道を歩けたらと思うと心が騒ぐ。いつも一緒だったHALがいなくなって3年目の冬になるのか。
また、いつも法華道の様子を知りたがった北原のお師匠には、これからは心でお伝えするしかない。
かんとさんの通信に関しては、撮影者本人にも伝えます。一昨夜の月蝕や天王星による惑星食も、感服するばかりの写真がiPhoneに届きました。
本日はこの辺で。