入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「冬」(15)

2022年11月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 牧を閉じるに際し「越年も含めてここへはちょくちょく来る」と呟いた。そしてその言葉の通り翌日の20日、罠の中に捕獲中の鹿を殺処分するため6時起きして上に行った。
 処分を済ませ、それをもって本年の有害駆除はおしまいにすることに決まった、と思っていたら、昨日になって一部の猟師から雪が降るまで罠を私用で使いたいという申し出が農協の方にあったと、畜産課長から連絡が来た。どうもその猟師は農協、地方事務所などの許可を先に取り、いわゆる外堀を埋めてから、こっちの承諾を半ば強制的に得ようとしたようだった。
 その魂胆、浅ましさが不快であったが、幸い、農協のもっと責任のある立場の人が適切な判断を下してくれたようだった。

 そんなことはどうでもいいが、上に比べ、下の生活はやはり便利だ。まず、いつでも風呂に入れるのが有難い。ただ風呂といっても陋屋の一隅にある簡素なもので、五右衛門風呂よりか幾分マシな程度に過ぎないから、昭和の文明を喜ぶ明治生まれの老人のような心境、と言ってもよいかも知れない。
 食器を洗うのに温水が出るのもこれまた有難い。上にはない。食べる物に関しても、すぐ近くの田圃の中にスーパーマーケット他、各種あらかたの物が手に入る店が幾つもあって、それも歩いて行ける距離にある。
 それと、上と下との約6度の気温差、これは大きい。やがてはここも気温は零下になるはずで、刺すような信州の酷しい冬は覚悟の上だが、まだそこまではいってないから助かる。

 ないのは小屋の窓から眺める権兵衛山、樹幹の目立つ白樺や落葉松の林、葉を落としたコナシの木に見え隠れする野鳥の姿、あるいは盛況だったころの賑わいが聞こえてくる今は閑散としたキャンプ場、初冬の牧の寂寥感などなど、つい何日か前までは目の前にあった普段の風景であり、そこでの牧守としての仕事、暮らしである。
 里へと比重を移せば移すほど、この先の茫々とした時間がどうしてくれるかと訴えてくるようで、まだそれに対する答えが見付からずにいる。江戸にも幾つかの用事があるし、会わねばならない人もいるが、さてどうしたものか。

 きょう、富士見町役場の職員と会う約束があって、4日ぶりに上に行った。中央アルプスも八ヶ岳も冬枯れの野面に白い衣を纏い見えていた。
 本日はこの辺で。

 

 
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