
多くの樹々が葉を散らした今、また野鳥が目に付くようになってきた。モズ、ツグミ、ルリビタキ・・・、と言って、それらの鳥を言い当てることができるわけではない。冬空を忙し気に飛んでいく姿を眺めて、それで終わる。
これだけ長い間山の中に暮らしていても、鳥の名前ばかりか草花の名前も、樹木の名前もろくに知らずに過ぎてしまった。今はもう、余程のことでもない限り図鑑を開くこともなく、諦めている。
鹿の捕獲も同じくほぼ諦めていたところ、今朝外に出てみると意外や意外、罠の中に数頭の鹿が入っている。囲いの中の一段高い所にある平地に、例の白い毛を臀部に見せながら熱心に草を食んでいるのが遠くからでも分かる。その様子からは、もしかすればあの鹿たちはまだ囚われの身であることに気付いていないかも知れない。双眼鏡を使って10頭までは確認できた。
山にも食べる物が減ってきた証拠だろう、相当腹を空かしているらしく、いつもなら脱出口を探してウロウロするはずにもかかわらず、まだそういった動きを見せていない。囲い罠の中のまだ緑の残る牧草は鹿たちにとっては大ご馳走に違いなく、しかしそれが命取りだったことをやがて知ることになる。
いや、何たることだ。てっきり捕獲に成功したと思ったら、そうではなかった。ゲートが落ちていないのだ。あれだけの鹿が、仕掛けには触れないまま草を食べるだけ食べ終えると、さっさと姿を消したということになる。ムー。
しかし、落胆することはない。恐らく今夜も来る、それも、もっと大きな群れになってご馳走を食べに来る可能性だってある。それを期待することにする。
それにしてもこの時季、牛にもそういった傾向があるように、鹿は緑の草が目当てだったようで、仕掛けの傍に置いた誘引用の塩については、春や夏のころよりも欲していないのかも知れない。それと、前から気になっていたゲートから仕掛けの場所までの距離についても、問題があるようだ。
来春に延期するつもりでいた追い上げ坂の牧柵設置も、何とか50本ほどの支柱をごぼう抜きにして予定場所まで運び、その打ち込み作業もきょうで終える予定でいる。あの急な斜面を鉄の支柱を担ぎ、一体何往復したことだろう。
その間の、初冬の穏やかな陽射しと、日毎に渋さを深める周囲の森や林、そして夕暮れの大きな空に感謝。
本日はこの辺で。