入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「冬」(16)

2022年11月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 上にあって、ここにないものに加えてもいいのが夕焼けだろう。もちろん里でもそれを見られないわけではないが、あそこで見る息をのむような夕焼けはやはり別格と言っていい。
 牛たちが山を去り急に牧が寂しくなるころから、周囲の景色が次第に色付き、さらにそれも落葉して冬の気配が日を追って強まる間、よく夕焼けを目にした。何かをやり終えた後の満足感と快い疲労感に、暮れかけた淡い水色の空を焦がす夕焼けはいい労いとなってくれた。
 いま炬燵に入ってそんなころの自分を思い出していると、まるで他人を見ているような気がする。いや、あれはもう他人だろう。帰らない日々に残してきた残像だ。

 牧を閉じるのに合わせてFMZ君が帰郷し、また昨日江戸へ帰っていった。その間には安曇野へ遠出したり連日連夜の大宴、小宴を繰り返したりと、TDS君も含め幾人もの知人友人と忙しく交友し、いい酒を飲み、美味い物をたくさん食べた。
 この年齢になれば、どうしても話題は身体の不調のことになる。それゆえに酒を飲まなくなった者もいる。にもかかわらずガブガブと酒を飲み、万のことに口をはさみ、詮もない武勇伝までも語り、彼ら彼女らはそれらを一体どう聞いただろうか。「宴の後」の汗顔止まず。

 行ってみたい土地がある。重い腰を上げて、今年こそはと思いながらまだ果たせていない。そういう土地が幾つもある。
 山も旅も、終わってみれば無理しても行って良かったという思いに浸れると分かっていながら、錆び付いた歯車のようにすんなりと身体が動かない。上でも下でも一人暮らしには慣れているし、HALはいなくなったが雪の法華道は毎年欠かさずに何度か登っている。山も後半は単独が多かったというのに、あの旅以来すっかり腰が重くなってしまった。
 もしかしたら、金の工面があって、周囲の反対があって、それが逆に背中を押してくれていたのかも分からない。今も変わらず貧しいが、そのことよりか、背中の20㌔の荷が40㌔にも、60㌔にも感じられ、行くのを渋らせるようだ。

 本日はこの辺で。


コメント
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