驚いた。朝起きたら雪が降っている。昼になっても止みそうにない。花には雪も悪くはないが、この時季まで来て冬の執念は痛々しくさえある。つい、「介錯」という言葉が浮かんだ。
昨日の続きになる。楽ではない4キロほどの雪道を、とにかく管理棟まで行く気になったのは水だった。取水場まで行って、ゴボゴボと流れ出るあの小気味のいい音を聞けるかどうか、それが知りたかった。
その思いで行ってみたのだが、結果はやはり駄目だった。水は充分に来ていたが、あれだけの落差と距離を流れてくるにしてはやはり、力強さがが足りないと感じた。しばらくその場にいてみたが、いつまで経っても期待の快音は聞えてこなかった。どこかで漏水しているに違いない。今年の仕事始めは水回りになりそうだ。
小屋に立ち寄り、ちょうどかかってきた予約の電話に対応し、留守電、FAXの確認をして外に出た。HALがいるかと思い呼んでみたが、反応はなかった。帰路もずっと、あの気の小さなHALが、どうして離れてしまったのかと気を揉んだ。4年前、牧場へ行く途中、HALとキクが夜の雪道に倒れていた鹿に夢中になり、その結果、可哀想にキクは置いてきぼりを食い消息を絶ってしまった。だが、その時もHALはすぐに後を追ってきた。
途中、何度も名前を呼びながら下っていくうちに、次第に不安が湧いてきた。もしもHALまでもとなれば、入笠は愛犬3頭の命を奪ったことになる。北門を出てしばらく行くと、登山靴の足跡の上に犬の足跡らしきが・・・、登りではいつもHALが先行していたから、その足跡があるということは下る際に付けたものとしか考えられない。もしそうなら、HALは車に戻っている可能性が高かった。
ド日陰を過ぎ、車を停めておいた場所が見えるところまで下ると、何となく小さな茶色のかたまりのような物体が枯れ草の上に見えた。目の錯覚かと思ったが、やはり、間違いなくそれはHALだった。
海老名出丸さん、北原のお師匠、わざわざご心配下さりありがとうございました。
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