気に入った場所はできるだけそっとしておきたいという思いは、誰にでもある。観光化が進めば、人がたくさん押しかけ、混雑して、その土地の自然環境や雰囲気が変わってしまうことを心配するからだ。それに対して、「この発言は、あまりにも贅沢すぎ」ると言い、「自分たちが独占できなくなることに対する不満でしょうが、その独占の金銭的な責任を果たすつもりがないなら、産業化していくしかないでしょう」と書く人がいる。日本をさらなる観光立国にするために、金持ちの訪日外国人を増やすための様々な提案を述べる中での、著者の主張だ。「新・観光立国論 世界一訪れたい日本のつくりかた」を著したデービッド・アトキンソン氏である。
観光産業が注目されるようになり、来日外国人観光客の数を増やすためにとカジノを含む超巨大リゾート施設を始め、あれこれのことがこの本では検討され、提言されている。高級ホテル、国際会議場、ショッピングモール、劇場、演奏会場、公園などなど、と。結構なことで、世界中の金持がそういう場所を訪れ、大金を落とすことに特段異を唱えるつもりはない。ただ、興味がないだけだ。
何でも、金銭的な価値でしか考えられない人は、自然もそういった対象や、尺度でしか見ないのかも知れない。「その独占の金銭的な責任を果たせ」と言われても、当たり前の話だが、自然界がどこでもそういう価値で測れるわけではない。観光を優先したくなる場所もあるだろうが、そうでない場所だっていくらでもある。
ある時、ある山の中で、ずぶ濡れのまま道に迷い、流れ落ちるいくつもの沢を渡渉し、ふと出くわした小さな沼と、その周囲に咲いていた小さな白い花の群生を見付けたことがあった。あんな場所には誰でも行けるわけではないから、観光的には無価値だろう。しかし、その沼の周囲だけでなく、珠玉のような場所を密かにしていたその広大な原生林の森全体に、感動させられた。
愛することは、まま独占を伴うと認めないわけではないが、そんな場所にまで、血眼になって、泥足で、経済至上主義を実践しに来てほしくはないと思う。
光の明度が上がる、3月の入笠牧場が待っています。"Rancher Bar"は、管理人の酒類の在庫、いよいよ僅小につき、当面は各自持ち込みにてお楽しみください。
営業については以下をクリックしてください。「冬季営業の案内(’17年度」は、前年のものを流用している部分もあって、段落や改行がおかしく、見苦しいかも知れませんが何卒ご容赦を