■当会は、平成20年8月3日(日)早朝に発生した多胡運輸(群馬県高崎市箕郷町)所有の大型タンクローリーによる横転炎上事故で、同年10月14日に記者会見した佐々木克己社長(当時)は「損害が経営に与える影響は小さくない。賠償請求をきちんとやりたい」と述べた件に関して、これまでに首都高が多胡運輸やその元請、或いはガソリン等の運搬を依頼した荷主らに対して為した賠償請求にかかる一切の情報を、平成23年7月27日に首都高に開示請求しました。
↑何事もなかったように業務を続けている多胡運輸。首都高は本当に多胡運輸と交渉しているのだろうか。(6月18日撮影)↑
当会は多胡運輸の経営者の実兄が関与した1995年5月18日に安中市土地開発公社を舞台にした地方自治体としては史上最大の51億円事件の真相追究と再発防止に取り組んでいます。多胡運輸の経営者もこの事件に係っていることから、この大事故の推移を見守ってきました。
そのため、首都高が記者会見で、復旧工事費や本事故による通行料金の減収額を試算した結果、総額45億円に上る可能性のある損害について、原因者に請求をするという明確な方針を打ち出していたことに関心を寄せてきました。
■ところが、安中市の51億円事件の真相が解明されないまま、元職員だけが14年の実刑判決を受けました。警察の捜査も途中から腰が引けてしまい、51億円の行方のうち、14億円以上が不明となりました。そのうえ、事件の当事者の市役所や公社、そして群馬銀行の関係者らは事件の真相を語ろうとしませんでした。挙句の果てには、市の公金24億5千万円を103年間かけて、市が群馬銀行に和解金と言う名目で支払うという異常な決着で幕引きが図られてしまいました。
このため、元職員の実兄が経営する多胡運輸が起こした首都高史上最大の物損事故の行方がどうなるのか、当会のみならず、元職員とその関係先の懐に消えた巨額横領金の尻拭いをさせられている安中市民としては、非常に気がかりだったからです。
■ところがこの事件の経過を見ると、事件当初から多胡運輸の名前がマスコミの間でなかなか報道されず、さらには多胡運輸に仕事を請負わせていた元請のホクブトランスポートが、事故発生直後にホームページを突如として消去したり、さらには荷主の出光興産がこの事件について全くコメントを出さなかったり、当初から異常な滑り出しを見せたのです。
平成20年8月の事故発生から2ヵ月後の復旧工事完了後は、マスコミは全くこの事件を取り上げなくなり、被害者の首都高でさえも業務報告書にこの事件のことを記載しなくなりました。明らかにへんです。
■そこで、現状をきちんと認識するために、首都高にこの事故の損害賠償についてどうなっているのか、事故発生から3年が経過する平成23年8月3日が迫った7月27日に、首都高に情報開示を求めたものです。
ところが、今回も「不開示」という通知がきました。それでも、前回は「存否を言うことができない」という理由の「不開示」でしたが、今回は、「契約、交渉または争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれがある」という理由の「不開示」でした。
■いずれも「不開示」ですが、理由のニュアンスが全く異なる為、当会は8月30日付けで「再検討の求め」という形で、首都高に次のとおり説明を求めることにしました。3年の民事時効前に、首都高が対策を講じていることを期待したからです。
**********
平成23年8月30日
首都高速道路株式会社 御中
氏名 市政をひらく安中市民の会 事務局長 小川賢
住所 〒379-0114群馬県安中市野殿980番地
連絡先電話番号 ※電話番号は日中連絡のとれる番号
再検討の求め
下記のとおり貴社の保有情報について再検討を求めます。
記
1 債権等を求める保有情報の内容と再検討を求める理由
再検討を求める内容
今回、貴社から示された「首都高高速道路会社が保有する情報の開示に開する規則」(以下「規則」という。)第5条の但し書きである第四号「会社が行う事務または事業に開する情報であって、公にすることにより次に掲げるおそれその他当該事務または事業の性質上、当該事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼす恐れのあるもの」のニ「契約、交渉または争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」という不開示理由は、昨年同時期に当会が行った情報開示の求めに対する不開示理由である規則第6条に定めた「開示の求めに対し、当該開示の求めに係る保有情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、会社は、当該保有情報の存否を明らかにしないで、当該開示の求めを拒否することができる」と異なっており、実際に、貴社が多胡運輸やその関係者に対して、契約、交渉または争訟を行っていることをうかがわせる不開示理由となっています。
そうであれば、開示すると貴社の財産上の利益や当事者としての立場を阻害となるような情報はともかく、それ以外の情報のなかには、開示の求めに応じて開示できるものがあると思われますので、ぜひ再検討をお願いします。
例えば、横転炎上事故を起こした原因者側である、多胡運輸もしくはその関係者から貴社への自発的な連絡内容、事故発生に開しての貴社に対する連絡、通知あるいは謝罪などを目的に行われた何等かのコンタクトがあったのであれば、それらは開示情報として取り扱われるべきであると考えます。
あるいは、もし、原因者側からこれまで、そうした連絡がない場合には、今度は貴社から、事故による損害について、請求をする旨の意思表示がなされているはずです。なぜなら、実際に交渉または争訟を行っていることをうかがわせるからです。
そのような、単に事故発生の事実関係を確認したり、請求の意思を示したりする程度の情報であれば、開示しても、社会的に貴社の地位を高めることに資することこそあれ、多胡運輸やその関係者らに対して帰社の地位を害することにはならない、と考えられます。
そうした情報は、具体的な損害賠償請求にかかる金額や責任の所在の認否にかかるものではない限り、貴社の立場を害するおそれはないし、もし、貴社の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼす恐れのある箇所が含まれていても、その箇所のみを黒塗りにしたうえで開示するなど、原則開示に少しでも近づくための努力や工夫がもう少しあってしかるべきだと考えます。
再検討を求める理由
当会の情報開示の求めに対して「不開示」とした理由は、貴社の「首都高速道路株式会社が保有する情報の開示に関する規則」に基づくとしておりますが、貴社のホームページを見ても、その規則の全文はどこにも掲載されていません。ホームページに掲載されているのは、次の記述のみです。
開示・不開示の検討
開示の求めがあった保有情報について、不開示情報にあたるかどうかの検討を当社で行います。
〔不開示となる情報〕
保有情報に次の情報が含まれる場合は不開示となります。
【1】特定の個人を識別できる情報や個人の権利利益を害するおそれがある情報。
ただし、次の(1)から(3)に該当する場合は開示します。
(1) 法令の規定や慣行により公にされる情報。
(2) 生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報。
(3) 公務員、独立行政法人等の役職員の職務遂行に係る情報。
【2】当社以外の法人、団体、個人事業主の権利等を害するおそれがある情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【3】当社以外の法人、団体、個人事業主から公にしないとの条件で任意に提供された情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【4】国の機関、地方公共団体、独立行政法人等の情報で次の(1)から(3)に該当するもの。
(1) 公にすると率直な意見交換や意思決定などの中立性を損なうおそれのある情報。
(2) 公にすると国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報。
(3) 公にすると特定の者に不当に利益や不利益を及ぼすおそれがある情報。
【5】当社が行う事務・事業に関する情報で公にすると当該事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報。
今回、同封された通知書には、「参考」として、当該規則の該当条項の「第5条」の但し書きの「第四号 会社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」の「二 契約、交渉又は争訟に係る事務に開し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が引用されています。上記のホームページ上にある「開示・不開示の検討」の【5】に該当していることになります。
つまり、「当該事務事業の性質上、適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」「会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が貴社の不開示の理由であることが判ります。
貴社にとっておそらく今回史上最大と位置付けられるローリー横転炎上による物損事故の損害賠償に関して、当会が「請求に係る情報」を請求した件を開示することは、「適正な事務事業の遂行に支障を及ぼすおそれがある」のかどうか、考えてみました。
貴社自身はもとより、首都高を利用しようとした不特定多数の国民が2ヵ月もの間、不便を強いられたわけですから、貴社としては原因者に対して適正な損害賠償請求という事務事業を行う責務が当然あるはずであり、貴社もそのように認識していると思います。だから、「当会を含めて首都高の利用者に、原因者の多胡運輸への損賠請求額を示すと、多胡運輸に対する交渉又は争訟に支障を及ぼす」ということはないと思います。
それでは、もうひとつの理由である「二 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害する恐れがある」と貴社が判断しているのかどうか、検討する必要があります。貴社が具体的な条項として「ニ」を示したことから、これが不開示の理由だということになるからです。
今回、当会は、貴社が民事時効の到来以前に、多胡運輸等への損害賠償をしたかどうかを確認したかどうかを知りたいわけです。多胡運輸等への損害賠償請求は「交渉」に該当すると考えます。また、多胡運輸等が支払いを拒否すれば裁判沙汰になり、この場合は「争訟」に該当することになります。
そうすると、「会社の財産上の利益を害するおそれ」または「当事者としての地位を害するおそれ」があると貴社は主張しているわけですから、貴社は多胡運輸等と交渉中あるいは争訟中ということになります。
貴社がそのような状況にあると仮定すると、当会が請求した「原因者の多胡運輸やその関係者らに対する賠償請求にかかる一切の情報」のうち、「会社の財産上の利害を害する」、つまり貴社の賠償請求が減額されたり、取りはぐれたりするおそれがあるということになります。あるいは、「交渉当事者としての地位を害する」、つまり、交渉先の多胡運輸等に対して貴社の立場が弱くなるおそれがあるということになります。
ということは、貴社の回答から推察すると、決して多胡運輸に対して損害賠償請求を放棄しているわけではないことをうかがわせます。つまり、多胡運輸に対して、何らかの形で交渉申だということになります。
もしそうであれば、当会が請求した一切の情報を、全部「不開示」とするのも不自然です。なかには、貴社の地位に影響を与えないものもあるはずです。開示することにより賠償請求額が減額されたり取りはぐれたりするおそれのある情報というのは、もっと限られてくると思います。
開示しても首都高の立場に影響を及ぼさないという情報は、多胡運輸など原因者への請求書或は請求書を送った証拠となる送り状ないし請求することを社内的に秦議して決めた際の起案書などが考えられます。
請求の内訳の細部にわたっては、多胡運輸等との交渉で、値切られる恐れがあるかもしれませんが、全体として例えば45億円という賠償請求額を開示してもなんら問題にはならないはずです。 45億円のうち、たとえば通行止めによる通行料の減収分をあきらめて20億円の復旧工事費だけを請求したという情報を開示しても、開示規則に反することはないはずです。
むしろ、貴社が多胡運輸などに対してきちんと損害賠償請求をしていることを公表したほうが、利用者への信頼の観点から、メリットが大きいはすです。いや、むしろそうすることが、利用者に対する責務ではないでしょうか。
貴社のホームページには、「ETC利用照会・残高照会/通行料金が「未払い」となってしまったお客様へ」と題して、首都高の利用者が料金所を通過する際、ETCカードを挿入し忘れた状態で通行したり、または誤って一般レーンを通過してしまった等により、通行料金が「未払い」となった場合は、そのまま目的地まで走行後、あとで事後申告したうえでETCカードもしくは現金で、未払い分の通行料金の支払いを利用者に求める手順が詳しく掲載されています。
そして、未払いのまま連絡のない場合には、不正通行として取り扱い、レーンに設置してある不正通行対策監視カメラ等を活用し、割増金も含めた通行料金を請求させていただくことがある、と警告しています。
このように貴社は利用者に対しては、数百円単位の未払いについて、利用者の責任の自覚にうったえて、もし責任の自覚がない場合には、厳しく取り立てるとしています。
しかし、3年前の横転炎上事故は首都高史上最大の物損事故で、十億円単位という損害額は、ETCの取り扱いミスという故意又は過失とは比べ物にならない桁違いのケースです。
本来であれば、事故を起こした多胡運輸からの自主的な連絡、つまり事故に問する通知なり謝罪なり、上述のように、なんらかのコンタクトが貴社に対して行われるはずです。もし、それが一定の期間為されない場合には、今度は貴社から事故による損害について、請求をする旨の意思表示があってしかるべきです。
当会は、そのような、基本的なやり取りを示す情報もあると考えて、今回の情報開示の求めに踏み切りました。
それにもかかわらず、当会から請求された一切の情報を少しでも開示することは、貴社にとって、耐え難いと判断しているのであれば、そのような説明をしてほしいのです。
既に調査をされてご承知だと思いますが、問題を起こした多胡運輸は、安中市土地開発公社を舞台にした総額51億円余りの巨額の公金が横領され、しかも、警察の懸命な捜査にもかかわらず14億円以上が使途不明となっています。
この事件にはさまざまな政治家、役人、業者、暴力団などがかかわっていますが、今回の事故ではっきりしたのは、多胡運輸に仕事を回していたのは、元中曽根泰宏事務所の運転手をしていた人物が創業した高崎北部運送、現在のホクブトランスポートという元請の運輸会社です。多胡運輸の社長は、51億円余の公金をネコババしたとされる安中市土地開発公社元職員の実弟であり、この事件にも関係のあった人物のひとりです。
この事件の発覚直後から事件の真相解明と責任の所在の明確化及び再発防止を目的に活動してきた当会としては、貴社の不開示通知に捜するたびに、政治的な圧力を感じざるを得ません。
その点では、前回の当会の請求で、貴社が存否さえ示せないため、開示請求に対して不開示としたのは、まだ理解できる余地があります。
しかし、今回は、実際に多胡運輸等と交渉或いは争訟という可能性が伺えるだけに、全面的に不開示扱いとするのは、問題だと思います。せめて部分開示という形でも、開示が可能かどうか、ぜひ再検討願います。 以上
2 首都高速道路株式会社から開示等の連絡があった日及び最初に開示を受けた日
開示等の連絡があった日 平成23年8月24日
3 希望する開示の実施の方法の変更
(開示方法の変更を希望する場合のみ、ア又はイに○印を付けてください。)
以上
**********
■果たして「再検討の求め」に対して、首都高がきちんと説明責任を果たしてくれるのかどうか、期待したいと思います。なお、開示手数料315円は、9月27日の期限前に首都高に支払う予定です。
【ひらく会事務局】
↑何事もなかったように業務を続けている多胡運輸。首都高は本当に多胡運輸と交渉しているのだろうか。(6月18日撮影)↑
当会は多胡運輸の経営者の実兄が関与した1995年5月18日に安中市土地開発公社を舞台にした地方自治体としては史上最大の51億円事件の真相追究と再発防止に取り組んでいます。多胡運輸の経営者もこの事件に係っていることから、この大事故の推移を見守ってきました。
そのため、首都高が記者会見で、復旧工事費や本事故による通行料金の減収額を試算した結果、総額45億円に上る可能性のある損害について、原因者に請求をするという明確な方針を打ち出していたことに関心を寄せてきました。
■ところが、安中市の51億円事件の真相が解明されないまま、元職員だけが14年の実刑判決を受けました。警察の捜査も途中から腰が引けてしまい、51億円の行方のうち、14億円以上が不明となりました。そのうえ、事件の当事者の市役所や公社、そして群馬銀行の関係者らは事件の真相を語ろうとしませんでした。挙句の果てには、市の公金24億5千万円を103年間かけて、市が群馬銀行に和解金と言う名目で支払うという異常な決着で幕引きが図られてしまいました。
このため、元職員の実兄が経営する多胡運輸が起こした首都高史上最大の物損事故の行方がどうなるのか、当会のみならず、元職員とその関係先の懐に消えた巨額横領金の尻拭いをさせられている安中市民としては、非常に気がかりだったからです。
■ところがこの事件の経過を見ると、事件当初から多胡運輸の名前がマスコミの間でなかなか報道されず、さらには多胡運輸に仕事を請負わせていた元請のホクブトランスポートが、事故発生直後にホームページを突如として消去したり、さらには荷主の出光興産がこの事件について全くコメントを出さなかったり、当初から異常な滑り出しを見せたのです。
平成20年8月の事故発生から2ヵ月後の復旧工事完了後は、マスコミは全くこの事件を取り上げなくなり、被害者の首都高でさえも業務報告書にこの事件のことを記載しなくなりました。明らかにへんです。
■そこで、現状をきちんと認識するために、首都高にこの事故の損害賠償についてどうなっているのか、事故発生から3年が経過する平成23年8月3日が迫った7月27日に、首都高に情報開示を求めたものです。
ところが、今回も「不開示」という通知がきました。それでも、前回は「存否を言うことができない」という理由の「不開示」でしたが、今回は、「契約、交渉または争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれがある」という理由の「不開示」でした。
■いずれも「不開示」ですが、理由のニュアンスが全く異なる為、当会は8月30日付けで「再検討の求め」という形で、首都高に次のとおり説明を求めることにしました。3年の民事時効前に、首都高が対策を講じていることを期待したからです。
**********
平成23年8月30日
首都高速道路株式会社 御中
氏名 市政をひらく安中市民の会 事務局長 小川賢
住所 〒379-0114群馬県安中市野殿980番地
連絡先電話番号 ※電話番号は日中連絡のとれる番号
再検討の求め
下記のとおり貴社の保有情報について再検討を求めます。
記
1 債権等を求める保有情報の内容と再検討を求める理由
再検討を求める内容
今回、貴社から示された「首都高高速道路会社が保有する情報の開示に開する規則」(以下「規則」という。)第5条の但し書きである第四号「会社が行う事務または事業に開する情報であって、公にすることにより次に掲げるおそれその他当該事務または事業の性質上、当該事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼす恐れのあるもの」のニ「契約、交渉または争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」という不開示理由は、昨年同時期に当会が行った情報開示の求めに対する不開示理由である規則第6条に定めた「開示の求めに対し、当該開示の求めに係る保有情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、会社は、当該保有情報の存否を明らかにしないで、当該開示の求めを拒否することができる」と異なっており、実際に、貴社が多胡運輸やその関係者に対して、契約、交渉または争訟を行っていることをうかがわせる不開示理由となっています。
そうであれば、開示すると貴社の財産上の利益や当事者としての立場を阻害となるような情報はともかく、それ以外の情報のなかには、開示の求めに応じて開示できるものがあると思われますので、ぜひ再検討をお願いします。
例えば、横転炎上事故を起こした原因者側である、多胡運輸もしくはその関係者から貴社への自発的な連絡内容、事故発生に開しての貴社に対する連絡、通知あるいは謝罪などを目的に行われた何等かのコンタクトがあったのであれば、それらは開示情報として取り扱われるべきであると考えます。
あるいは、もし、原因者側からこれまで、そうした連絡がない場合には、今度は貴社から、事故による損害について、請求をする旨の意思表示がなされているはずです。なぜなら、実際に交渉または争訟を行っていることをうかがわせるからです。
そのような、単に事故発生の事実関係を確認したり、請求の意思を示したりする程度の情報であれば、開示しても、社会的に貴社の地位を高めることに資することこそあれ、多胡運輸やその関係者らに対して帰社の地位を害することにはならない、と考えられます。
そうした情報は、具体的な損害賠償請求にかかる金額や責任の所在の認否にかかるものではない限り、貴社の立場を害するおそれはないし、もし、貴社の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼす恐れのある箇所が含まれていても、その箇所のみを黒塗りにしたうえで開示するなど、原則開示に少しでも近づくための努力や工夫がもう少しあってしかるべきだと考えます。
再検討を求める理由
当会の情報開示の求めに対して「不開示」とした理由は、貴社の「首都高速道路株式会社が保有する情報の開示に関する規則」に基づくとしておりますが、貴社のホームページを見ても、その規則の全文はどこにも掲載されていません。ホームページに掲載されているのは、次の記述のみです。
開示・不開示の検討
開示の求めがあった保有情報について、不開示情報にあたるかどうかの検討を当社で行います。
〔不開示となる情報〕
保有情報に次の情報が含まれる場合は不開示となります。
【1】特定の個人を識別できる情報や個人の権利利益を害するおそれがある情報。
ただし、次の(1)から(3)に該当する場合は開示します。
(1) 法令の規定や慣行により公にされる情報。
(2) 生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報。
(3) 公務員、独立行政法人等の役職員の職務遂行に係る情報。
【2】当社以外の法人、団体、個人事業主の権利等を害するおそれがある情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【3】当社以外の法人、団体、個人事業主から公にしないとの条件で任意に提供された情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【4】国の機関、地方公共団体、独立行政法人等の情報で次の(1)から(3)に該当するもの。
(1) 公にすると率直な意見交換や意思決定などの中立性を損なうおそれのある情報。
(2) 公にすると国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報。
(3) 公にすると特定の者に不当に利益や不利益を及ぼすおそれがある情報。
【5】当社が行う事務・事業に関する情報で公にすると当該事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報。
今回、同封された通知書には、「参考」として、当該規則の該当条項の「第5条」の但し書きの「第四号 会社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」の「二 契約、交渉又は争訟に係る事務に開し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が引用されています。上記のホームページ上にある「開示・不開示の検討」の【5】に該当していることになります。
つまり、「当該事務事業の性質上、適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」「会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が貴社の不開示の理由であることが判ります。
貴社にとっておそらく今回史上最大と位置付けられるローリー横転炎上による物損事故の損害賠償に関して、当会が「請求に係る情報」を請求した件を開示することは、「適正な事務事業の遂行に支障を及ぼすおそれがある」のかどうか、考えてみました。
貴社自身はもとより、首都高を利用しようとした不特定多数の国民が2ヵ月もの間、不便を強いられたわけですから、貴社としては原因者に対して適正な損害賠償請求という事務事業を行う責務が当然あるはずであり、貴社もそのように認識していると思います。だから、「当会を含めて首都高の利用者に、原因者の多胡運輸への損賠請求額を示すと、多胡運輸に対する交渉又は争訟に支障を及ぼす」ということはないと思います。
それでは、もうひとつの理由である「二 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害する恐れがある」と貴社が判断しているのかどうか、検討する必要があります。貴社が具体的な条項として「ニ」を示したことから、これが不開示の理由だということになるからです。
今回、当会は、貴社が民事時効の到来以前に、多胡運輸等への損害賠償をしたかどうかを確認したかどうかを知りたいわけです。多胡運輸等への損害賠償請求は「交渉」に該当すると考えます。また、多胡運輸等が支払いを拒否すれば裁判沙汰になり、この場合は「争訟」に該当することになります。
そうすると、「会社の財産上の利益を害するおそれ」または「当事者としての地位を害するおそれ」があると貴社は主張しているわけですから、貴社は多胡運輸等と交渉中あるいは争訟中ということになります。
貴社がそのような状況にあると仮定すると、当会が請求した「原因者の多胡運輸やその関係者らに対する賠償請求にかかる一切の情報」のうち、「会社の財産上の利害を害する」、つまり貴社の賠償請求が減額されたり、取りはぐれたりするおそれがあるということになります。あるいは、「交渉当事者としての地位を害する」、つまり、交渉先の多胡運輸等に対して貴社の立場が弱くなるおそれがあるということになります。
ということは、貴社の回答から推察すると、決して多胡運輸に対して損害賠償請求を放棄しているわけではないことをうかがわせます。つまり、多胡運輸に対して、何らかの形で交渉申だということになります。
もしそうであれば、当会が請求した一切の情報を、全部「不開示」とするのも不自然です。なかには、貴社の地位に影響を与えないものもあるはずです。開示することにより賠償請求額が減額されたり取りはぐれたりするおそれのある情報というのは、もっと限られてくると思います。
開示しても首都高の立場に影響を及ぼさないという情報は、多胡運輸など原因者への請求書或は請求書を送った証拠となる送り状ないし請求することを社内的に秦議して決めた際の起案書などが考えられます。
請求の内訳の細部にわたっては、多胡運輸等との交渉で、値切られる恐れがあるかもしれませんが、全体として例えば45億円という賠償請求額を開示してもなんら問題にはならないはずです。 45億円のうち、たとえば通行止めによる通行料の減収分をあきらめて20億円の復旧工事費だけを請求したという情報を開示しても、開示規則に反することはないはずです。
むしろ、貴社が多胡運輸などに対してきちんと損害賠償請求をしていることを公表したほうが、利用者への信頼の観点から、メリットが大きいはすです。いや、むしろそうすることが、利用者に対する責務ではないでしょうか。
貴社のホームページには、「ETC利用照会・残高照会/通行料金が「未払い」となってしまったお客様へ」と題して、首都高の利用者が料金所を通過する際、ETCカードを挿入し忘れた状態で通行したり、または誤って一般レーンを通過してしまった等により、通行料金が「未払い」となった場合は、そのまま目的地まで走行後、あとで事後申告したうえでETCカードもしくは現金で、未払い分の通行料金の支払いを利用者に求める手順が詳しく掲載されています。
そして、未払いのまま連絡のない場合には、不正通行として取り扱い、レーンに設置してある不正通行対策監視カメラ等を活用し、割増金も含めた通行料金を請求させていただくことがある、と警告しています。
このように貴社は利用者に対しては、数百円単位の未払いについて、利用者の責任の自覚にうったえて、もし責任の自覚がない場合には、厳しく取り立てるとしています。
しかし、3年前の横転炎上事故は首都高史上最大の物損事故で、十億円単位という損害額は、ETCの取り扱いミスという故意又は過失とは比べ物にならない桁違いのケースです。
本来であれば、事故を起こした多胡運輸からの自主的な連絡、つまり事故に問する通知なり謝罪なり、上述のように、なんらかのコンタクトが貴社に対して行われるはずです。もし、それが一定の期間為されない場合には、今度は貴社から事故による損害について、請求をする旨の意思表示があってしかるべきです。
当会は、そのような、基本的なやり取りを示す情報もあると考えて、今回の情報開示の求めに踏み切りました。
それにもかかわらず、当会から請求された一切の情報を少しでも開示することは、貴社にとって、耐え難いと判断しているのであれば、そのような説明をしてほしいのです。
既に調査をされてご承知だと思いますが、問題を起こした多胡運輸は、安中市土地開発公社を舞台にした総額51億円余りの巨額の公金が横領され、しかも、警察の懸命な捜査にもかかわらず14億円以上が使途不明となっています。
この事件にはさまざまな政治家、役人、業者、暴力団などがかかわっていますが、今回の事故ではっきりしたのは、多胡運輸に仕事を回していたのは、元中曽根泰宏事務所の運転手をしていた人物が創業した高崎北部運送、現在のホクブトランスポートという元請の運輸会社です。多胡運輸の社長は、51億円余の公金をネコババしたとされる安中市土地開発公社元職員の実弟であり、この事件にも関係のあった人物のひとりです。
この事件の発覚直後から事件の真相解明と責任の所在の明確化及び再発防止を目的に活動してきた当会としては、貴社の不開示通知に捜するたびに、政治的な圧力を感じざるを得ません。
その点では、前回の当会の請求で、貴社が存否さえ示せないため、開示請求に対して不開示としたのは、まだ理解できる余地があります。
しかし、今回は、実際に多胡運輸等と交渉或いは争訟という可能性が伺えるだけに、全面的に不開示扱いとするのは、問題だと思います。せめて部分開示という形でも、開示が可能かどうか、ぜひ再検討願います。 以上
2 首都高速道路株式会社から開示等の連絡があった日及び最初に開示を受けた日
開示等の連絡があった日 平成23年8月24日
3 希望する開示の実施の方法の変更
(開示方法の変更を希望する場合のみ、ア又はイに○印を付けてください。)
以上
**********
■果たして「再検討の求め」に対して、首都高がきちんと説明責任を果たしてくれるのかどうか、期待したいと思います。なお、開示手数料315円は、9月27日の期限前に首都高に支払う予定です。
【ひらく会事務局】