■東電グループの関電工を事業主体とする前橋バイオマス発電施設は、群馬県が定めた環境アセスメントを行わないまま、昨年末迄に事実上竣工し、本年2月から本格運転が開始され、4月24日には行政関係者を招いて完成披露式=開所式まで開かれてしまいました。この暴挙を食い止めようと、当会は地元住民団体とともに、発電施設に隣接する木質チップ製造施設に対する補助金交付の「差止」もしくは「処分の取消」を求める訴訟を2016年7月15日に提起しました。先日4月25日(水)午後4時30分に開かれた第8回弁論準備で、裁判長から原告・被告の双方に対して訴訟指揮がなされました。当会はその指揮に基づき、6月5日にこれまでの主張をまとめた原告準備書面(7)を提出しました。一方、被告から6月6日付で第6準備書面と乙12及び13号証が6月8日に送られてきました。ここで初めて関電工が作成した排ガス量の計算根拠が示されたため、原告としてその内容に疑問が噴出したため、急遽、原告準備書面(8)として6月13日付で提出しました。内容は次の通りです。
↑地裁と被告に原告準備書面(8)を郵送したことを示す送付票。↑
*****送付書・受領書*****
〒371-0026
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護士 関 夕 三 郎 殿
FAX:027-230-9622
平成30年6月13日
〒371-0244
前橋市鼻毛石町1991-42
原 告 羽 鳥 昌 行
TEL 027-283-4150 / FAX 027-224-6624(鈴木庸)
送 付 書
事件の表示 : 前橋地裁 平成28年(行ウ)第27号
当 事 者 : 原 告 小 川 賢 外1名
被 告 群 馬 県 大澤正明
次回期日 : 平成30年6月20日(水)10時20分(口頭弁論)
下記書類を送付致します。
1 原告準備書面(8) 1通
以 上
--------------------切らずにこのままでお送り下さい--------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
平成30年 月 日
被 告 群 馬 県
被告訴訟代理人
弁護士
前橋地方裁判所民事1部合議係(森山書記官殿)御中 :FAX 027-233-0901
羽鳥昌行あて(市民オンブズマン群馬事務局鈴木)あて:FAX 027-224-6624
*****原告準備書面(8)*****
事件番号 平成28年(行ウ)第27号 補助金返還履行請求事件
原告 小 川 賢 外1名
被告 群馬県知事 大澤正明
平成30年6月13日
前橋地方裁判所民事1部合議係 御中
原告準備書面(8)
原告 小 川 賢 ㊞
原告 羽 鳥 昌 行 ㊞
平成30年6月6日付の被告第6準備書面および乙12号証と乙13号証に関して、原告らは次のとおり反論する。
はじめに排ガス量に関する被告の主張およびその裏付けとしている関電工作成の算定式(乙12)に示されている排ガス量に関する不整合性について指摘するとともに、求釈明を行い、次に被告の第6準備書面への反論を述べる。
第1 求釈明
乙12号証の排ガス量の計算式等について、明らかに整合性が欠けているため、原告らは次の求釈明を行う。
1 含水率の前提条件の疑義
関電工が作成した環境配慮計画には、使用燃料として、低位発熱量9,278kJ/㎏、2,216kcal/㎏との説明がある。しかし、全国木材チップ工業連合会が示している方程式に基づき、今回の乙12号証で示された含水率43.125%を用いて再計算してみると、低位発熱量7,669kJ/㎏、1,833kcal/㎏となり、メガジュール値もカロリー値も、含水率を計算すると36%となる。このことにより、関電工は、排ガス量の計算の際に、含水率を数%上乗せし、燃料となる木材の重量を減少させ、環境アセスメントの実施基準である、40,000㎥/h以下になるように偽装した疑いがある。
(参考)低位発熱量の方程式(全国木材チップ工業連合会報告資料より)
低位発熱量(Q)の計算式(カロリー値:kcal/kg)
Q = -55.75M + 4238 = -55.75*43.125+4238 = 1,833 kcal/kg
M : 湿量基準含水率(%):43.125%【乙12号証より】
低位発熱量(Q)の計算式(メガジュール値:MJ/kg)
Q = -0.2326M + 17.7 = -0.2326*43.125+17.7 = 7,669 kJ/kg
M : 湿量基準含水率(%):43.125%【乙12号証より】
上記の方程式から関電工がいう含水率を再計算すると、
① カロリー値計算 2,216=-55.75*X+4238
X=(2,216-4238)/55.75=36.3%(含水率)
② メガジュール値計算9,278=-232.6*X+17.7
X=(9,278-17,700)/232.6=36.2%(含水率)
したがって、関電工の環境配慮計画書に書かれている使用燃料は、低位発熱量をカロリー値及びメガジュール値で分析すると、木質バイオマス発電に使用する木質バイオマスチップの含水率は、両者ともほぼ36%未満を示すことから、排ガス量の計算値で使用した含水率43.125%は、明らかに排ガス量を40,000㎥/h以下にするために偽装した数値の疑いがある。
求釈明1:上記の計算結果が示す含水率の相違による低位発熱量の矛盾について、被告の見解を求めたい。
2 使用燃料の使用量の疑義
(参考:前橋バイオマス 環境配慮計画より)
上記の関電工作成の環境配慮計画書によると、使用燃料の資料量は9,770㎏/hとある。一方、排ガス量の計算値(乙12)で使用した燃料使用量は9,300㎏/hとある。これは排ガス量を減らそうとした偽装値である疑いが濃厚である。
求釈明2:上記の使用燃料の使用量の矛盾について、被告の見解を求めたい。
3 前橋バイオマス燃料の木質燃料製造施設で取り扱う木質燃料の使用量と性状の疑義
前記(2)の疑義に関連して、前橋バイオマス燃料が隣接の前橋バイオマス発電に供給する木質燃料について、被告に提出された木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)(次ページ参照)(甲25-1)を見ると、次のことが分かる。
被告が原告に開示した表は黒塗りだらけのため、分かりやすく表にまとめてみる。
なお、含水率は湿量基準である。また、数字の下線部は黒塗り箇所を原告が連立方程式等を使って得た推定値である。
<購入>
含水率 取扱量(トン) 乾燥重量(トン)
未利用材原木 50% 18,000 ⇒↓ 9,000
未利用材チップ 50% 45,100 ⇒63,100 22,550
製材チップ 60% 21,000 ⇒21,000 8,400
合計 84,100 =84,100 39,950
<販売>
含水率 取扱量(トン) 乾燥重量(トン)
未利用材原木 45% 15,000 ⇒↓ 9,000
未利用材チップ 40% 41,000 ⇒56,000 22,550
製材チップ 40% 14,000 ⇒14,000 8,400
合計 70,000 =70,000 39,950
求釈明3:上記の表、とくに原告の推定値に誤りはないか、被告の確認を求めたい。
求釈明4:関電工は乙12号証で「使用する木質バイオマス燃料の中の全水分量(43.125%:計画値)」であるとしているが、上記の<販売>表では、
湿量基準含水率=(取扱量合計-乾燥重量合計)/取扱量合計
=(70,000-39,950)/70,000
=42.928%
となり、関電工の示す計画値と異なる。この理由について被告の見解を求めたい。
求釈明5:関電工は乙12号証で「燃料消費量(kg/h)」について、「9,300(kg/h)」をベースとして排ガス量を計算している。一方、前橋バイオマス燃料が前橋バイオマス発電に販売する木質燃料は湿量基準含水率平均が42.938%の場合、70,000トンであると計画している。
70,000トンの木質燃料を毎時9,300㎏(=9.3トン)した場合、
70,000/9.3=約7,527時間
約7,527時間/24時間=約314日
約314日/30日=約10.45カ月
となり、年間稼働日数からすると、ほぼ平均週6日稼働という計算になる。一方で、関電工は地元住民説明会において、発電設備は24時間運転を行うとしている。
毎年の定期点検のため1か月の運転休止期間を見込んでも、さらに半月間のアイドル期間が生じる。この矛盾について、被告の見解を求めたい。
求釈明6:仮に、関電工のいう「使用する木質バイオマス燃料の中の全水分量(43.125%:計画値)」が正しい場合、前橋バイオマス燃料の計画する木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)との整合性が問われるが、被告の見解を求めたい。
求釈明7:同じく、前橋バイオマス燃料の計画する木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)では、未利用材原木という分類が為されている。これは、購入の場合には、含水率50%の丸太状の状態の「未利用材原木」を指すとみられる。一方、販売の場合は、「未利用材原木」とは、どのような形態をしめすのか、理解に苦しむ。なぜなら、関電工が導入したBFBバブリング流動層(床)ボイラーは、乙13号証48ページの表Ⅲ.2-10に記されているように「燃料形状はコンベヤにて搬送するため、サイズは最大100㎜以下程度にする必要あり」とされているからである。この観点から、全量チップでなければならないはずの<販売>木質燃料に、なぜ「未利用材原木」という記述があるのか、この矛盾について被告の見解を求めたい。
求釈明8:前橋バイオマス燃料は、被告の斡旋により、群馬県議らが有権者の住民を伴い6月12日午前10時に施設見学会の開催を現地で予定していた。ところが、当日の朝になって突然キャンセルを県議団や被告に通告してきた。その理由は、前橋バイオマス燃料が、見学予定者名簿の提出を県議団に求めたところ、「提出された名簿に県議でない者がいる」ということだったという。このように住民の代表である県議らの要請に対して、平然と直前に視察を拒否するような不誠実な事業者について、多額の補助金を受け取る資格があるのかどうか、被告の見解を求めたい。
求釈明9:また、空気比を1.3と仮定して計算している点にも不審が募る。これほど水分量の多いチップを燃焼させるのだから、燃焼に必要な空気量は、1.5を遥かに超える可能性がある。この空気比が最大の争点の一つであり、被告や事業者は、明確な根拠と実測した空気比を示す必要がある。
第2 平成30年6月6日付の被告第6準備書面への反論
第2-1 争点整理に関する原告らの主張について
1 被告による争点のへの指摘について」
(1)被告は、「ア 争点1-(1)-ア」との部分について、本件発電事業と燃料製造事業とを分離したがっているが、乙第13号証の48ページの「表Ⅲ.2-10 ボイラーの燃焼方式の種類と特徴」の「BFBバブリング流動層ボイラ」に示されているとおり、このボイラに投入される燃料の形状は「コンベアにて搬送するため、サイズは最大100㎜程度にする必要がある」ので、間伐材や廃材などは必ずチッパーで全量粉砕して、最大100㎜以下の木質チップとして加工(製造)する必要がある。そのため、放射能汚染された廃材などが県内外から燃料製造施設内に搬入されれば、それらは全量、発電施設で使用されることになるのであり、被告の主張は失当である。
(2)被告は、「イ 争点1-(1)-イ」との部分について、本件事業とは木質バイオマス燃料製造施設等整備事業であり、環境アセスメント実施の問題は生じない」として、本件発電事業と燃料製造事業を分離したがっているが、前項のとおり、BFBバブリング流動層(流動床ともよばれる)ボイラという特殊な燃焼装置に適した木質チップを製造する必要があるため、発電事業と燃料製造事業は不可分であり、被告の主張は失当である。
(3)被告は、「ウ 争点1-(1)-イ-(ア)及び同(イ)」との部分について、排ガス量が問題となるのは、本件発電事業であり、燃料製造事業ではないなどとして、発電事業と燃料製造事業を分離したがっているが、前述の通り、木質チップのみを燃料とする発電事業においては、製造された木質チップの形状(最大100㎜以下)や含水率(湿量基準)(油圧プレス機により40%まで脱水。しかし今回乙12号証で事業者から初めて燃料中の全水分量(湿量基準)の計画値が43.125%であることが明らかにされた)を厳格に制御する必要があり、さもないと燃焼効率が設計どおりに行われず、排ガスの性状や量にただちに影響をあたえるため、バイオマス発電事業にとって、燃料製造事業は切っても切り離せないものである。したがって、被告の主張は失当である。
2 原告らの主張について
(1)「ア 争点1-(1)-ア、同イ、同イ-(ア)及び同(イ)の4箇所における「本件事業で製造された木質チップのみを使用する」との文言の挿入について、被告は「本件事業とはバイオマス燃料製造施設等整備事業であるから、同事業自体において木質チップを製造することはない」とか、「本件事業という単一の用語を複数の意味(発電と燃料のことらしい)で使用するものであり、適切ではない」と言っているが、前述の通り、本件発電施設で使用されるBFBバブリング流動層ボイラは、丸太をそのまま投入できるストーカ(格子炉)式ボイラと異なり、まさに木質チップ専焼で設計されている。したがって、発電事業と燃料製造事業は不可分であり、一体的な事業であり、被告の主張は不適切である。
第2-2 争点に関する主張
1 「(1)本件発電事業が放射能汚染された廃材などを用いて製造された燃料を使用するおそれがないこと」への反論
(1)被告はアの説明で、廃材を使用することはできないと断定するが、事業者のトーセンは定款に廃材も扱えると明記しており、被告が燃料製造事業で用いる木質原料の由来をすべて事業者の責任にゆだねている限り、放射能汚染された廃材を事業者が絶対に受け入れないなどと断言することはできない。
前述の求釈明8にも述べた通り、トーセンは不誠実な会社であることから、そうした懸念が払拭できないことは、被告にも分かるはずだ。
(2)被告はイの説明で、「この点につき,原告らは,環境省ガイドラインでは,『バックグラウンド測定値の平均値+バックグラウンド測定値の標準偏差の3倍以内とする。』とされており(甲67),本件環境配慮計画(「空間線量率がバックグラウンド値の3倍」)の欠陥を主張するが,同ガイドライン引用部分は,放射性廃棄物の保管揚所における敷地の境界線の測定結果に関する基準であるから,比較する対象として不適当であり,主張は失当である。」などと主張しているが、何を根拠にバックグラウンド測定値の平均値+バックグラウンド測定値の標準偏差の3倍以内を空間線量率がバックグラウンド値の3倍に設定したのか、その根拠を示さない限り40ベクレル/㎏以上の間伐材が持ち込まれないよう事業者による受入検査が万全に機能するなどとは断言できないはず。被告はその根拠を明確にする必要がある。
(3)物理学的に測定できるはずもないことは明白の事実である。それでは、被告が言うように、空間線量率がバックグラウンド値の3倍になるためには、どのくらいの放射性物質が持ち込まれた状態なのか、被告は物理学的に証明する必要がある。
(4)また被告は、環境配慮計画で、都合のよいところだけ、環境省ガイドラインの基準値を踏襲し、都合が悪くなると、放射性廃棄物の保管場所における敷地境界線の測定基準にすり替えて、言い逃れをしている。原子力発電所や放射性廃棄物の保管場所等に比べ、前橋バイオマス燃料や発電は、放射性物質が付着した間伐材を扱っているに過ぎず、どうして、環境省ガイドラインの管理基準を逆に緩めているのは全く理解できない。し、受入における40ベクレル/㎏を担保しておらず、これでは、放射能に対する住民の不安は募るばかりである。
2 「(2)放射性物質の拡散防止、土壌及び地下水の汚染防止のための対策等について」への反論
(1)被告は「さらに,本件発電事業及び本件燃料製造事業では,飛灰・燃焼灰の放射能自主管理基準を定め,排ガス及び排水について,同環境配慮計画(甲52)10頁及び11頁で,その管理基準,防止施設を設け,放射性物質の拡散防止を行うものとしている。」などと主張しているが、放射能に汚染されたチップを脱水し、その汚染水は浄化槽を経て、地下浸透されることになるにもかかわらず、浄化槽から排出された汚泥の放射能測定や、地下浸透された土壌や地下水など、事業者には全く測定しようとするつもりも、管理しようとする意図も全く有していない。
(2)それにもかかわらず、あたかも事業者らが放射能物質の拡散防止を図れるかのような妄想を軽々しく述べることは、きわめて遺憾である。
3 「2 争点1及び2-(1)-イ(「本件発電事業か群馬県環境影響評価条例所定に環境アセスメントを実施していない違法があるか」)について」への反論
(1)本件運用が有効でないこと
これまでにも原告らが主張したように、環境アセスメントの免除ありきで、手続きが進められており、およそ行政にあるまじき特定の事業者に対する独自の判断で、本来は設備そのものの定格能力で判断すべき排ガス量を、行政の一部署による勝手な理屈で議会にも諮らず、条例を捻じ曲げて特例措置を与えるという暴挙を行ったものであり、本件運用は無効であることは明らかである。
(2)本件発電事業における排ガス量の算定についての疑義
被告は「同計算書では,『水分』を43.125%として計算しており,これは前橋バイオマス発電所が用いる木質バイオマス燃料について,人工乾燥される燃料と天然乾燥される燃料とを利用量に応じて平均した水分量(計画値)である。また,同計算書では,『空気比』(「m」)を1.3と仮定して計算している。この値は,ボイラーのメーカーがその性能に基づいて示した値である。」などと述べているが、そもそも湿量基準含水率が43.125%ということは乾量基準含水率は約77%に相当し、木質チップとしては水分が多く、燃焼の際に空気が必要になり、また、発熱量が悪すぎる。
前橋バイオマス燃料らが被告に提出した事業計画によると、間伐後、9か月間、貯木すると説明している(甲25-1)。間伐材を9か月間貯木すれば、含水率は、10%以上下がるのは一般的であるにも関わらず、当該事業者や被告は、もともとの含水率を上げ、排ガス量の計算の際に間引きされる排ガス量を計算するためにかさ上げしている。事業者や被告は、貯木期間、木材の種類、木材の状態など、実際に使用する種類や量を具体的に示し、その配合量などを明確にしなければ、主張していることの根拠が全く分からない。
一般的に、2~3カ月の自然乾燥により水分は30~35%w.bまで低下し、9カ月間貯木する前橋バイオマス燃料においては、さらに低下することが予想されるにも関わらず、計画値で43.125%なんてことは物理的にも、木質バイオマス燃料的にもあり得ない数字である。
また、空気比を1.3と仮定して計算している点にも不審が募る。あれだけ水分量の多いチップを燃焼させるのだから、燃焼に必要な空気量は、1.5を遥かに超える可能性がある。この空気比が最大の争点の一つであり、被告や事業者は、明確な根拠と実測した空気比を示す必要がある。
4 その他
このほかにも被告は「3 争点1及び2-(1)-ウ(「前橋バイオマス燃料が,バイオマス燃料の乾燥方式として一般的でなく,実績もない大型プレス椴による脱水方式を採用し,意図的に過剰な事業費を見積もり,過大な補助金を不正に取得したか」)について」や、「ウ 契約方法について,群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金事務取扱要領では,原則一般競争入札としているが,それが困難な場合は,指名競争入札及び随意契約も可能とされている(乙3)。そして,本件事業では,事業主体の体制及び導入設備の特殊性から一般競争入札が困難であるため,随意契約とすることが可能である。」などと主張するが、いずれもこれまでの主張の繰り返しなので、原告側としても既に反論済みであることから、敢えてこれ以上の陳述を控える。
以上
**********
■当会ではは2016年4月7日に、関電工に対して「出資比率」「排ガスの量」「排水の量」について質問しました。
○2016年4月18日:東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…前橋バイオマス発電所に係る当会の公開質問に関電工が回答拒否!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1965.html
*****関電工への公開質問状(1)*****
平成28年4月7日
〒108-8533 東京都港区芝浦四丁目8番33号
株式会社関電工
取締役社長 水江 博 様
TEL(03)5476-2111 FAX(03)5476-3946
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
公 開 質 問 状 (1)
件名:前橋バイオマス発電事業に係る手続、計画内容、工事及び維持管理計画等について
拝啓 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
当会は税金の非効率的な使い方や行政の不当な処分で不利益を被った事例を正してゆくことを目的としている群馬県を拠点とする市民団体です。
さて、貴社が2016年3月26日及び同27日の午前10時から前橋市鼻毛石町にある前橋東部商工会で開催した質問への回答説明会及び第3回地元説明会で、説明者の福本雅邦氏らから、貴社が主体となって進めている表件事業について、主に工事の流れ等について、説明をいただきました。
このことに関して、次の質問があります。
質問1「出資比率について」
説明会の席上、前橋バイオマス燃料㈱と前橋バイオマス発電㈱の2つの法人における、出資各社の資本比率について質問を差し上げましたが、「自分で調査するように」として、とりあっていただけませんでした。
標記事業の出資比率は、この事業で裨益する者は誰かを特定するために重要な情報です。とりわけ前橋バイオマス燃料㈱には、群馬県から4億8000万円もの補助金が交付される予定になっています。この事業に関与する者とその関与度合いを正確に把握する必要があるため、次の情報をご教示ください。
① 前橋バイオマス燃料株式会社
㈱トーセン ___%
㈱関電工 ___%
群馬県森林連合組合 ___%
群馬県素材生産流通協同組合 ___%(※群馬県森林連合組合と同じ)
② 前橋バイオマス発電株式会社
㈱関電工 ___%
㈱トーセン ___%
質問2「排ガス量について」
第3回説明会の前日に、宮城公民館で開かれた地元市民団体からの質問項目に対する回答説明の席上、貴社は、木質バイオマス発電施設からの排ガス量について、毎時4万ノルマル立方メートル未満であると述べました。この根拠となる排ガス量の計算式と、それに用いた各種パラメーター(木質燃料の形状(破砕チップなのか、切削チップなのか、などなど)とそれらの投入量と比率、それぞれの燃料ごとの水分量、空気比(1次空気と2次空気のそれぞれの数値)の情報を含む)についてご教示ください。
質問3「木質燃料の計画サイトへの搬入量、燃焼施設への投入量、燃焼灰及び脱水プレスから出る排水の量について」
今回、群馬県では、前橋バイオマス燃料にかかる木材破砕・脱水・保管施設と、前橋バイオマス発電にかかる燃焼・発電・付帯施設は同一場所にあることから一体施設と見做しているようです。
しかし、前橋バイオマス燃料㈱に搬入される燃料の種類と量、および脱水され排出される水分量、それに前橋バイオマス発電㈱に供給される燃料の種類と量、および焼却残渣の種類と量が不明です。
群馬県の補助金申請書に記載の数値としては、次のとおりとなっているようです。
○未利用剤由来木質バイオマス63,100トン
○製材端材由来木質バイオマス21,000トン
他方、燃料供給事業体のデータとして、購入量=搬入量が「林地残材8.2万㎥/年(原木5.9万㎥、チップ2.3万㎥)+製材工場残材2.1万㎥/年」で、販売量=燃焼施設投入量が「燃料用木質チップ7.0万t/年(林地残材5.6万t、製材工場残材1.4万t)という数値もあります。
実際には、それぞれどうなっているのでしょうか?次の項目につき、最新の確定値をご教示ください。
○購入量:林地残材 __t/年(内訳:原木__t、チップ__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(原木__%、チップ__%)
製材工場残材 __t/年(内訳:材木__t、チップ__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(原木__%、チップ__%)
○販売量:燃料木質チップ __t/年(内訳:林地残材__t、製材工場端材__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(林地残材__%、製材工場端材__%)
○焼却灰:合計____t/年(内訳:主灰___t、飛灰___t)
○脱水プレスからの排水量:合計____㎥/年
当会は、本質問状について貴社に提出する際に記者会見で明らかにし、また貴社のご回答を得た上で、あるいは得られなかったときに、再度記者会見で回答の有無及び内容を明らかにしてまいりたいと考えます。同時にその経過を含めて当市民オンブズマン群馬のホームページ上でも明らかにし広く群馬県民に広報してまいる所存です。
つきましては、平成28年4月13日(水)限り、下記に郵送又はFAXにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。
記
市民オンブズマン群馬 事務局長 鈴木 庸
〒371-0801 群馬県前橋市文京町1-15-10
電話 027-224-8567 FAX 027-224-6624
以上
**********
■関電工には4月13日までの回答期限を要請していましたが、当日までになしのつぶてでした。ところが、先週末に4月15日付で次の回答書が郵送されてきたのです。その回答がこれです。
*****関電工からの回答書***** PDF ⇒ 20160415dh.pdf
平成28年4月15日
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
株式会社関電工 戦略事業本部
木質バイオマス・プロジェクト
回 答 書
冠省
平成28年4月7日付文書「公開質問状(1)」にてご質問頂いた事項につき、以下のとおり回答致します。
記
質問1「出資比率について」
前橋バイオマス発電株式会社と前橋バイオマス燃料株式会社は、いずれも非上場の事業会社であるため、各社の出資比率の開示は控えさせていただきます。
質問2「排ガス量について」
前橋バイオマス発電所から排出される排気ガス量算出に関する具体的な計算式につきましては、発電プラント設備の設計ノウハウ等に関わる要素が含まれるため、開示は控えさせていただきます。
質問3「木質燃料の計画サイトへの搬入量、燃焼施設への投入量、燃焼灰及び脱水プレスから出る排水の量について」
本件バイオマス発電事業における搬入・供給燃料の種類・量、脱水・排水水分量、焼却残渣の種類・量などは、適時適切に見直していく事業計画によって常に変動するものであて正確な確定値を算出できる性質のものではなく、また、事業上の重要機密事項にもかかわる情報であるため、開示は控えさせていただきます。
ご質問に対する回答は以上でございますが、当社といたしましては、各種法令等を遵守することはもとより、地域のみなさまや行政機関とともに歩むバイオマス発電所を目指し、全社一丸となってまい進いたしてまいる所存であります。今後ともご支援ご理解のほど衷心よりお願い申し上げます。
早々
**********
■今回、2年2か月ぶりに関電工から「排ガス量」の計算式が提出されました。もう、実際に発電所が稼働したから、排ガス量の計算式を出してもかまわないだろうという判断のようです。だったら次は「使用燃料の量と含水率」についても、明らかにしてもらわなければなりません。
来たる6月20日の第9回弁論準備における裁判所の訴訟指揮が注目されます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑地裁と被告に原告準備書面(8)を郵送したことを示す送付票。↑
*****送付書・受領書*****
〒371-0026
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護士 関 夕 三 郎 殿
FAX:027-230-9622
平成30年6月13日
〒371-0244
前橋市鼻毛石町1991-42
原 告 羽 鳥 昌 行
TEL 027-283-4150 / FAX 027-224-6624(鈴木庸)
送 付 書
事件の表示 : 前橋地裁 平成28年(行ウ)第27号
当 事 者 : 原 告 小 川 賢 外1名
被 告 群 馬 県 大澤正明
次回期日 : 平成30年6月20日(水)10時20分(口頭弁論)
下記書類を送付致します。
1 原告準備書面(8) 1通
以 上
--------------------切らずにこのままでお送り下さい--------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
平成30年 月 日
被 告 群 馬 県
被告訴訟代理人
弁護士
前橋地方裁判所民事1部合議係(森山書記官殿)御中 :FAX 027-233-0901
羽鳥昌行あて(市民オンブズマン群馬事務局鈴木)あて:FAX 027-224-6624
*****原告準備書面(8)*****
事件番号 平成28年(行ウ)第27号 補助金返還履行請求事件
原告 小 川 賢 外1名
被告 群馬県知事 大澤正明
平成30年6月13日
前橋地方裁判所民事1部合議係 御中
原告準備書面(8)
原告 小 川 賢 ㊞
原告 羽 鳥 昌 行 ㊞
平成30年6月6日付の被告第6準備書面および乙12号証と乙13号証に関して、原告らは次のとおり反論する。
はじめに排ガス量に関する被告の主張およびその裏付けとしている関電工作成の算定式(乙12)に示されている排ガス量に関する不整合性について指摘するとともに、求釈明を行い、次に被告の第6準備書面への反論を述べる。
第1 求釈明
乙12号証の排ガス量の計算式等について、明らかに整合性が欠けているため、原告らは次の求釈明を行う。
1 含水率の前提条件の疑義
関電工が作成した環境配慮計画には、使用燃料として、低位発熱量9,278kJ/㎏、2,216kcal/㎏との説明がある。しかし、全国木材チップ工業連合会が示している方程式に基づき、今回の乙12号証で示された含水率43.125%を用いて再計算してみると、低位発熱量7,669kJ/㎏、1,833kcal/㎏となり、メガジュール値もカロリー値も、含水率を計算すると36%となる。このことにより、関電工は、排ガス量の計算の際に、含水率を数%上乗せし、燃料となる木材の重量を減少させ、環境アセスメントの実施基準である、40,000㎥/h以下になるように偽装した疑いがある。
(参考)低位発熱量の方程式(全国木材チップ工業連合会報告資料より)
低位発熱量(Q)の計算式(カロリー値:kcal/kg)
Q = -55.75M + 4238 = -55.75*43.125+4238 = 1,833 kcal/kg
M : 湿量基準含水率(%):43.125%【乙12号証より】
低位発熱量(Q)の計算式(メガジュール値:MJ/kg)
Q = -0.2326M + 17.7 = -0.2326*43.125+17.7 = 7,669 kJ/kg
M : 湿量基準含水率(%):43.125%【乙12号証より】
上記の方程式から関電工がいう含水率を再計算すると、
① カロリー値計算 2,216=-55.75*X+4238
X=(2,216-4238)/55.75=36.3%(含水率)
② メガジュール値計算9,278=-232.6*X+17.7
X=(9,278-17,700)/232.6=36.2%(含水率)
したがって、関電工の環境配慮計画書に書かれている使用燃料は、低位発熱量をカロリー値及びメガジュール値で分析すると、木質バイオマス発電に使用する木質バイオマスチップの含水率は、両者ともほぼ36%未満を示すことから、排ガス量の計算値で使用した含水率43.125%は、明らかに排ガス量を40,000㎥/h以下にするために偽装した数値の疑いがある。
求釈明1:上記の計算結果が示す含水率の相違による低位発熱量の矛盾について、被告の見解を求めたい。
2 使用燃料の使用量の疑義
(参考:前橋バイオマス 環境配慮計画より)
上記の関電工作成の環境配慮計画書によると、使用燃料の資料量は9,770㎏/hとある。一方、排ガス量の計算値(乙12)で使用した燃料使用量は9,300㎏/hとある。これは排ガス量を減らそうとした偽装値である疑いが濃厚である。
求釈明2:上記の使用燃料の使用量の矛盾について、被告の見解を求めたい。
3 前橋バイオマス燃料の木質燃料製造施設で取り扱う木質燃料の使用量と性状の疑義
前記(2)の疑義に関連して、前橋バイオマス燃料が隣接の前橋バイオマス発電に供給する木質燃料について、被告に提出された木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)(次ページ参照)(甲25-1)を見ると、次のことが分かる。
被告が原告に開示した表は黒塗りだらけのため、分かりやすく表にまとめてみる。
なお、含水率は湿量基準である。また、数字の下線部は黒塗り箇所を原告が連立方程式等を使って得た推定値である。
<購入>
含水率 取扱量(トン) 乾燥重量(トン)
未利用材原木 50% 18,000 ⇒↓ 9,000
未利用材チップ 50% 45,100 ⇒63,100 22,550
製材チップ 60% 21,000 ⇒21,000 8,400
合計 84,100 =84,100 39,950
<販売>
含水率 取扱量(トン) 乾燥重量(トン)
未利用材原木 45% 15,000 ⇒↓ 9,000
未利用材チップ 40% 41,000 ⇒56,000 22,550
製材チップ 40% 14,000 ⇒14,000 8,400
合計 70,000 =70,000 39,950
求釈明3:上記の表、とくに原告の推定値に誤りはないか、被告の確認を求めたい。
求釈明4:関電工は乙12号証で「使用する木質バイオマス燃料の中の全水分量(43.125%:計画値)」であるとしているが、上記の<販売>表では、
湿量基準含水率=(取扱量合計-乾燥重量合計)/取扱量合計
=(70,000-39,950)/70,000
=42.928%
となり、関電工の示す計画値と異なる。この理由について被告の見解を求めたい。
求釈明5:関電工は乙12号証で「燃料消費量(kg/h)」について、「9,300(kg/h)」をベースとして排ガス量を計算している。一方、前橋バイオマス燃料が前橋バイオマス発電に販売する木質燃料は湿量基準含水率平均が42.938%の場合、70,000トンであると計画している。
70,000トンの木質燃料を毎時9,300㎏(=9.3トン)した場合、
70,000/9.3=約7,527時間
約7,527時間/24時間=約314日
約314日/30日=約10.45カ月
となり、年間稼働日数からすると、ほぼ平均週6日稼働という計算になる。一方で、関電工は地元住民説明会において、発電設備は24時間運転を行うとしている。
毎年の定期点検のため1か月の運転休止期間を見込んでも、さらに半月間のアイドル期間が生じる。この矛盾について、被告の見解を求めたい。
求釈明6:仮に、関電工のいう「使用する木質バイオマス燃料の中の全水分量(43.125%:計画値)」が正しい場合、前橋バイオマス燃料の計画する木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)との整合性が問われるが、被告の見解を求めたい。
求釈明7:同じく、前橋バイオマス燃料の計画する木質燃料供給計画(仕入れ)及び同(販売)では、未利用材原木という分類が為されている。これは、購入の場合には、含水率50%の丸太状の状態の「未利用材原木」を指すとみられる。一方、販売の場合は、「未利用材原木」とは、どのような形態をしめすのか、理解に苦しむ。なぜなら、関電工が導入したBFBバブリング流動層(床)ボイラーは、乙13号証48ページの表Ⅲ.2-10に記されているように「燃料形状はコンベヤにて搬送するため、サイズは最大100㎜以下程度にする必要あり」とされているからである。この観点から、全量チップでなければならないはずの<販売>木質燃料に、なぜ「未利用材原木」という記述があるのか、この矛盾について被告の見解を求めたい。
求釈明8:前橋バイオマス燃料は、被告の斡旋により、群馬県議らが有権者の住民を伴い6月12日午前10時に施設見学会の開催を現地で予定していた。ところが、当日の朝になって突然キャンセルを県議団や被告に通告してきた。その理由は、前橋バイオマス燃料が、見学予定者名簿の提出を県議団に求めたところ、「提出された名簿に県議でない者がいる」ということだったという。このように住民の代表である県議らの要請に対して、平然と直前に視察を拒否するような不誠実な事業者について、多額の補助金を受け取る資格があるのかどうか、被告の見解を求めたい。
求釈明9:また、空気比を1.3と仮定して計算している点にも不審が募る。これほど水分量の多いチップを燃焼させるのだから、燃焼に必要な空気量は、1.5を遥かに超える可能性がある。この空気比が最大の争点の一つであり、被告や事業者は、明確な根拠と実測した空気比を示す必要がある。
第2 平成30年6月6日付の被告第6準備書面への反論
第2-1 争点整理に関する原告らの主張について
1 被告による争点のへの指摘について」
(1)被告は、「ア 争点1-(1)-ア」との部分について、本件発電事業と燃料製造事業とを分離したがっているが、乙第13号証の48ページの「表Ⅲ.2-10 ボイラーの燃焼方式の種類と特徴」の「BFBバブリング流動層ボイラ」に示されているとおり、このボイラに投入される燃料の形状は「コンベアにて搬送するため、サイズは最大100㎜程度にする必要がある」ので、間伐材や廃材などは必ずチッパーで全量粉砕して、最大100㎜以下の木質チップとして加工(製造)する必要がある。そのため、放射能汚染された廃材などが県内外から燃料製造施設内に搬入されれば、それらは全量、発電施設で使用されることになるのであり、被告の主張は失当である。
(2)被告は、「イ 争点1-(1)-イ」との部分について、本件事業とは木質バイオマス燃料製造施設等整備事業であり、環境アセスメント実施の問題は生じない」として、本件発電事業と燃料製造事業を分離したがっているが、前項のとおり、BFBバブリング流動層(流動床ともよばれる)ボイラという特殊な燃焼装置に適した木質チップを製造する必要があるため、発電事業と燃料製造事業は不可分であり、被告の主張は失当である。
(3)被告は、「ウ 争点1-(1)-イ-(ア)及び同(イ)」との部分について、排ガス量が問題となるのは、本件発電事業であり、燃料製造事業ではないなどとして、発電事業と燃料製造事業を分離したがっているが、前述の通り、木質チップのみを燃料とする発電事業においては、製造された木質チップの形状(最大100㎜以下)や含水率(湿量基準)(油圧プレス機により40%まで脱水。しかし今回乙12号証で事業者から初めて燃料中の全水分量(湿量基準)の計画値が43.125%であることが明らかにされた)を厳格に制御する必要があり、さもないと燃焼効率が設計どおりに行われず、排ガスの性状や量にただちに影響をあたえるため、バイオマス発電事業にとって、燃料製造事業は切っても切り離せないものである。したがって、被告の主張は失当である。
2 原告らの主張について
(1)「ア 争点1-(1)-ア、同イ、同イ-(ア)及び同(イ)の4箇所における「本件事業で製造された木質チップのみを使用する」との文言の挿入について、被告は「本件事業とはバイオマス燃料製造施設等整備事業であるから、同事業自体において木質チップを製造することはない」とか、「本件事業という単一の用語を複数の意味(発電と燃料のことらしい)で使用するものであり、適切ではない」と言っているが、前述の通り、本件発電施設で使用されるBFBバブリング流動層ボイラは、丸太をそのまま投入できるストーカ(格子炉)式ボイラと異なり、まさに木質チップ専焼で設計されている。したがって、発電事業と燃料製造事業は不可分であり、一体的な事業であり、被告の主張は不適切である。
第2-2 争点に関する主張
1 「(1)本件発電事業が放射能汚染された廃材などを用いて製造された燃料を使用するおそれがないこと」への反論
(1)被告はアの説明で、廃材を使用することはできないと断定するが、事業者のトーセンは定款に廃材も扱えると明記しており、被告が燃料製造事業で用いる木質原料の由来をすべて事業者の責任にゆだねている限り、放射能汚染された廃材を事業者が絶対に受け入れないなどと断言することはできない。
前述の求釈明8にも述べた通り、トーセンは不誠実な会社であることから、そうした懸念が払拭できないことは、被告にも分かるはずだ。
(2)被告はイの説明で、「この点につき,原告らは,環境省ガイドラインでは,『バックグラウンド測定値の平均値+バックグラウンド測定値の標準偏差の3倍以内とする。』とされており(甲67),本件環境配慮計画(「空間線量率がバックグラウンド値の3倍」)の欠陥を主張するが,同ガイドライン引用部分は,放射性廃棄物の保管揚所における敷地の境界線の測定結果に関する基準であるから,比較する対象として不適当であり,主張は失当である。」などと主張しているが、何を根拠にバックグラウンド測定値の平均値+バックグラウンド測定値の標準偏差の3倍以内を空間線量率がバックグラウンド値の3倍に設定したのか、その根拠を示さない限り40ベクレル/㎏以上の間伐材が持ち込まれないよう事業者による受入検査が万全に機能するなどとは断言できないはず。被告はその根拠を明確にする必要がある。
(3)物理学的に測定できるはずもないことは明白の事実である。それでは、被告が言うように、空間線量率がバックグラウンド値の3倍になるためには、どのくらいの放射性物質が持ち込まれた状態なのか、被告は物理学的に証明する必要がある。
(4)また被告は、環境配慮計画で、都合のよいところだけ、環境省ガイドラインの基準値を踏襲し、都合が悪くなると、放射性廃棄物の保管場所における敷地境界線の測定基準にすり替えて、言い逃れをしている。原子力発電所や放射性廃棄物の保管場所等に比べ、前橋バイオマス燃料や発電は、放射性物質が付着した間伐材を扱っているに過ぎず、どうして、環境省ガイドラインの管理基準を逆に緩めているのは全く理解できない。し、受入における40ベクレル/㎏を担保しておらず、これでは、放射能に対する住民の不安は募るばかりである。
2 「(2)放射性物質の拡散防止、土壌及び地下水の汚染防止のための対策等について」への反論
(1)被告は「さらに,本件発電事業及び本件燃料製造事業では,飛灰・燃焼灰の放射能自主管理基準を定め,排ガス及び排水について,同環境配慮計画(甲52)10頁及び11頁で,その管理基準,防止施設を設け,放射性物質の拡散防止を行うものとしている。」などと主張しているが、放射能に汚染されたチップを脱水し、その汚染水は浄化槽を経て、地下浸透されることになるにもかかわらず、浄化槽から排出された汚泥の放射能測定や、地下浸透された土壌や地下水など、事業者には全く測定しようとするつもりも、管理しようとする意図も全く有していない。
(2)それにもかかわらず、あたかも事業者らが放射能物質の拡散防止を図れるかのような妄想を軽々しく述べることは、きわめて遺憾である。
3 「2 争点1及び2-(1)-イ(「本件発電事業か群馬県環境影響評価条例所定に環境アセスメントを実施していない違法があるか」)について」への反論
(1)本件運用が有効でないこと
これまでにも原告らが主張したように、環境アセスメントの免除ありきで、手続きが進められており、およそ行政にあるまじき特定の事業者に対する独自の判断で、本来は設備そのものの定格能力で判断すべき排ガス量を、行政の一部署による勝手な理屈で議会にも諮らず、条例を捻じ曲げて特例措置を与えるという暴挙を行ったものであり、本件運用は無効であることは明らかである。
(2)本件発電事業における排ガス量の算定についての疑義
被告は「同計算書では,『水分』を43.125%として計算しており,これは前橋バイオマス発電所が用いる木質バイオマス燃料について,人工乾燥される燃料と天然乾燥される燃料とを利用量に応じて平均した水分量(計画値)である。また,同計算書では,『空気比』(「m」)を1.3と仮定して計算している。この値は,ボイラーのメーカーがその性能に基づいて示した値である。」などと述べているが、そもそも湿量基準含水率が43.125%ということは乾量基準含水率は約77%に相当し、木質チップとしては水分が多く、燃焼の際に空気が必要になり、また、発熱量が悪すぎる。
前橋バイオマス燃料らが被告に提出した事業計画によると、間伐後、9か月間、貯木すると説明している(甲25-1)。間伐材を9か月間貯木すれば、含水率は、10%以上下がるのは一般的であるにも関わらず、当該事業者や被告は、もともとの含水率を上げ、排ガス量の計算の際に間引きされる排ガス量を計算するためにかさ上げしている。事業者や被告は、貯木期間、木材の種類、木材の状態など、実際に使用する種類や量を具体的に示し、その配合量などを明確にしなければ、主張していることの根拠が全く分からない。
一般的に、2~3カ月の自然乾燥により水分は30~35%w.bまで低下し、9カ月間貯木する前橋バイオマス燃料においては、さらに低下することが予想されるにも関わらず、計画値で43.125%なんてことは物理的にも、木質バイオマス燃料的にもあり得ない数字である。
また、空気比を1.3と仮定して計算している点にも不審が募る。あれだけ水分量の多いチップを燃焼させるのだから、燃焼に必要な空気量は、1.5を遥かに超える可能性がある。この空気比が最大の争点の一つであり、被告や事業者は、明確な根拠と実測した空気比を示す必要がある。
4 その他
このほかにも被告は「3 争点1及び2-(1)-ウ(「前橋バイオマス燃料が,バイオマス燃料の乾燥方式として一般的でなく,実績もない大型プレス椴による脱水方式を採用し,意図的に過剰な事業費を見積もり,過大な補助金を不正に取得したか」)について」や、「ウ 契約方法について,群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金事務取扱要領では,原則一般競争入札としているが,それが困難な場合は,指名競争入札及び随意契約も可能とされている(乙3)。そして,本件事業では,事業主体の体制及び導入設備の特殊性から一般競争入札が困難であるため,随意契約とすることが可能である。」などと主張するが、いずれもこれまでの主張の繰り返しなので、原告側としても既に反論済みであることから、敢えてこれ以上の陳述を控える。
以上
**********
■当会ではは2016年4月7日に、関電工に対して「出資比率」「排ガスの量」「排水の量」について質問しました。
○2016年4月18日:東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…前橋バイオマス発電所に係る当会の公開質問に関電工が回答拒否!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1965.html
*****関電工への公開質問状(1)*****
平成28年4月7日
〒108-8533 東京都港区芝浦四丁目8番33号
株式会社関電工
取締役社長 水江 博 様
TEL(03)5476-2111 FAX(03)5476-3946
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
公 開 質 問 状 (1)
件名:前橋バイオマス発電事業に係る手続、計画内容、工事及び維持管理計画等について
拝啓 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
当会は税金の非効率的な使い方や行政の不当な処分で不利益を被った事例を正してゆくことを目的としている群馬県を拠点とする市民団体です。
さて、貴社が2016年3月26日及び同27日の午前10時から前橋市鼻毛石町にある前橋東部商工会で開催した質問への回答説明会及び第3回地元説明会で、説明者の福本雅邦氏らから、貴社が主体となって進めている表件事業について、主に工事の流れ等について、説明をいただきました。
このことに関して、次の質問があります。
質問1「出資比率について」
説明会の席上、前橋バイオマス燃料㈱と前橋バイオマス発電㈱の2つの法人における、出資各社の資本比率について質問を差し上げましたが、「自分で調査するように」として、とりあっていただけませんでした。
標記事業の出資比率は、この事業で裨益する者は誰かを特定するために重要な情報です。とりわけ前橋バイオマス燃料㈱には、群馬県から4億8000万円もの補助金が交付される予定になっています。この事業に関与する者とその関与度合いを正確に把握する必要があるため、次の情報をご教示ください。
① 前橋バイオマス燃料株式会社
㈱トーセン ___%
㈱関電工 ___%
群馬県森林連合組合 ___%
群馬県素材生産流通協同組合 ___%(※群馬県森林連合組合と同じ)
② 前橋バイオマス発電株式会社
㈱関電工 ___%
㈱トーセン ___%
質問2「排ガス量について」
第3回説明会の前日に、宮城公民館で開かれた地元市民団体からの質問項目に対する回答説明の席上、貴社は、木質バイオマス発電施設からの排ガス量について、毎時4万ノルマル立方メートル未満であると述べました。この根拠となる排ガス量の計算式と、それに用いた各種パラメーター(木質燃料の形状(破砕チップなのか、切削チップなのか、などなど)とそれらの投入量と比率、それぞれの燃料ごとの水分量、空気比(1次空気と2次空気のそれぞれの数値)の情報を含む)についてご教示ください。
質問3「木質燃料の計画サイトへの搬入量、燃焼施設への投入量、燃焼灰及び脱水プレスから出る排水の量について」
今回、群馬県では、前橋バイオマス燃料にかかる木材破砕・脱水・保管施設と、前橋バイオマス発電にかかる燃焼・発電・付帯施設は同一場所にあることから一体施設と見做しているようです。
しかし、前橋バイオマス燃料㈱に搬入される燃料の種類と量、および脱水され排出される水分量、それに前橋バイオマス発電㈱に供給される燃料の種類と量、および焼却残渣の種類と量が不明です。
群馬県の補助金申請書に記載の数値としては、次のとおりとなっているようです。
○未利用剤由来木質バイオマス63,100トン
○製材端材由来木質バイオマス21,000トン
他方、燃料供給事業体のデータとして、購入量=搬入量が「林地残材8.2万㎥/年(原木5.9万㎥、チップ2.3万㎥)+製材工場残材2.1万㎥/年」で、販売量=燃焼施設投入量が「燃料用木質チップ7.0万t/年(林地残材5.6万t、製材工場残材1.4万t)という数値もあります。
実際には、それぞれどうなっているのでしょうか?次の項目につき、最新の確定値をご教示ください。
○購入量:林地残材 __t/年(内訳:原木__t、チップ__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(原木__%、チップ__%)
製材工場残材 __t/年(内訳:材木__t、チップ__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(原木__%、チップ__%)
○販売量:燃料木質チップ __t/年(内訳:林地残材__t、製材工場端材__t)
及びそれぞれの水分量 ___%(林地残材__%、製材工場端材__%)
○焼却灰:合計____t/年(内訳:主灰___t、飛灰___t)
○脱水プレスからの排水量:合計____㎥/年
当会は、本質問状について貴社に提出する際に記者会見で明らかにし、また貴社のご回答を得た上で、あるいは得られなかったときに、再度記者会見で回答の有無及び内容を明らかにしてまいりたいと考えます。同時にその経過を含めて当市民オンブズマン群馬のホームページ上でも明らかにし広く群馬県民に広報してまいる所存です。
つきましては、平成28年4月13日(水)限り、下記に郵送又はFAXにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。
記
市民オンブズマン群馬 事務局長 鈴木 庸
〒371-0801 群馬県前橋市文京町1-15-10
電話 027-224-8567 FAX 027-224-6624
以上
**********
■関電工には4月13日までの回答期限を要請していましたが、当日までになしのつぶてでした。ところが、先週末に4月15日付で次の回答書が郵送されてきたのです。その回答がこれです。
*****関電工からの回答書***** PDF ⇒ 20160415dh.pdf
平成28年4月15日
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
株式会社関電工 戦略事業本部
木質バイオマス・プロジェクト
回 答 書
冠省
平成28年4月7日付文書「公開質問状(1)」にてご質問頂いた事項につき、以下のとおり回答致します。
記
質問1「出資比率について」
前橋バイオマス発電株式会社と前橋バイオマス燃料株式会社は、いずれも非上場の事業会社であるため、各社の出資比率の開示は控えさせていただきます。
質問2「排ガス量について」
前橋バイオマス発電所から排出される排気ガス量算出に関する具体的な計算式につきましては、発電プラント設備の設計ノウハウ等に関わる要素が含まれるため、開示は控えさせていただきます。
質問3「木質燃料の計画サイトへの搬入量、燃焼施設への投入量、燃焼灰及び脱水プレスから出る排水の量について」
本件バイオマス発電事業における搬入・供給燃料の種類・量、脱水・排水水分量、焼却残渣の種類・量などは、適時適切に見直していく事業計画によって常に変動するものであて正確な確定値を算出できる性質のものではなく、また、事業上の重要機密事項にもかかわる情報であるため、開示は控えさせていただきます。
ご質問に対する回答は以上でございますが、当社といたしましては、各種法令等を遵守することはもとより、地域のみなさまや行政機関とともに歩むバイオマス発電所を目指し、全社一丸となってまい進いたしてまいる所存であります。今後ともご支援ご理解のほど衷心よりお願い申し上げます。
早々
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■今回、2年2か月ぶりに関電工から「排ガス量」の計算式が提出されました。もう、実際に発電所が稼働したから、排ガス量の計算式を出してもかまわないだろうという判断のようです。だったら次は「使用燃料の量と含水率」についても、明らかにしてもらわなければなりません。
来たる6月20日の第9回弁論準備における裁判所の訴訟指揮が注目されます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】