市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

メリークリスマス!本日14回目のプレゼントを貰った群馬銀行と今後89年間受難の安中市民との明暗

2012-12-25 17:15:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■きょう12月25日は子ども達にとっても大人にとっても楽しいクリスマスの日です。クリスマス・プレゼントのやり取りも盛んに行われていることでしょう。日本でクリスマスが広まったのは、大正天皇の崩御が1926年(大正15年)12月25日だったことから、戦前はこの日が休日だったため、クリスマスの習慣が一気に我が国に定着したと言われています。しかし、きょうは安中市民だけは顔色がすぐれません。安中市土地開発公社の巨額横領事件の和解金103年ローンの本年分の支払額2000万円が、安中市が保証人となって、公社から群馬県信用組合(けんしん)をわざわざ経由して群馬銀行に振り込まれるからです。本来、このカネは市民のために使われる浄財ですが、元職員タゴ及びその関係者らによる横領と散財の尻拭いのために、安中市はあと91年間支払い続けることになりかねないためです。

 おそらく、岡田市長は既に、けんしんの松井理事長に群馬銀行への支払い依頼を出したはずです。元職員の仕事を監査する立場にあった安中市の元市議(=現市長兼公社理事長)が、元職員の偽造書類を見破れず毎年盆暮れに中元・歳暮を欠かさず贈った群馬銀行の元安中市店長(=現けんしん理事長)を介して、元職員に多額の横領金をくれてやった地元金融機関の群馬銀行にクリスマス・プレゼントをあげたのです。

■安中市の広報あんなか2009年9月号によれば、安中市土地開発公社不祥事件(市民は“タゴ51億円事件”と呼んでいます。なお、当会では“不祥事件”ではなく“巨額横領事件”と表現しています)は、安中市土地開発公社元職員による有印公文書偽造、同行使、有印公文書変造、同行使、詐欺にかかる刑事事件で、不正取得に関わる32億3,000万円について起訴されました。平成7年8月21日の初公判を皮切りに計7回の公判が開催され、平成8年4月8日懲役14年の実刑判決があり14日間の控訴期間の終了を待って刑が確定した事件です。なお、上記の不正取得には、時効分と安中市から公社の正規口座に振り込まれたカネの横領分は含みません。これらを含むと51億円余となります。

 この刑事事件がまだ捜査の段階にあった平成7年10月19日、㈱群馬銀行は原告として、前橋地方裁判所に、安中市土地開発公社および安中市を被告とする「貸金・保証債務履行請求」の訴状を提出しました。請求の趣旨は、元金39億9,886万1,000円とこれに対する約定利息の請求でありましたが、元職員から6億1,267万8,575円の返済があり(実際には元職員タゴやその家族名義で総額1億円以上の隠し預金が見つかり返済に充てた。また大量の骨董品・絵画等をオークションで販売して得たカネを返済に充てた)、最終的には元金が33 億8,618万2,425円に縮減されました。平成7年12月22日から計21回の口頭弁論が行われ、平成10年12月9日に和解が成立し、この中で9億3,618万2,425円および発生した利息損害金全額相当額の支払いが免除され、㈱群馬銀行に対して、主債務者を安中市土地開発公社、連帯保証人を安中市として、24億5,000万円の債務が確定いたしました。その和解条項は次のとおりです。
(出典:http://www.city.annaka.gunma.jp/kouhou/pdf/pdf2102/P7-6.pdf

<和解条項>
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引を通じて、よりよい地域社会づくりの実現に向け努力することを目的とし、本件事案の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金三三億八六一八万二四二五円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金九億三六一八万二四二五円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金二四億五〇〇〇万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号○○○○○○○に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成一〇年一二月二五日限り金四億円
2 平成一一年から一〇年間は、毎年一二月二五日限り金二〇〇〇万円宛
3 前号後の一〇年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済みまで同様とする。
五 被告らが前項の1及び2の各分割金の支払いを一回でも一か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払済みまで年一四パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解条項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は各自の負担とする。

■安中市の広報の記述や、和解条項を読むと、なにやら、落ち度のある方は安中市・公社側で、群馬銀行は被害者であるにもかかわらず、和解交渉の過程で、「9億3,618万2,425円」を棒引きしてくれて、さらに「発生した利息損害金全額相当額の支払い」も免除してくれ、さらに「和解条項で確定された24億5,000万円の債務」についても、103年間の分割払いにしてもらった、というふうに、群銀の温情に感謝すべきだという錯覚に陥る市民もおられるかもしれません。

 事実、群馬銀行の関係者は、「もし和解に応じず、裁判をすれば群馬銀行の勝訴は間違いなかった。しかし、それでは、我が国の自治体の一つがつぶれてしまうことになる。そうすれば行政機能が麻痺してしまい大変な事態になる。それを避けるために群銀としては苦渋の選択をした」という趣旨の談話を当時表明していました。

 しかし、本当に群馬銀行は温情心など持ち合わせているのでしょうか。103年ローンという異常な返済方法の持つ意味を、私たち市民・納税者はきちんと理解しなければなりません。

■元職員タゴ及びその関係者らの懐に消えた巨額横領金は警察の捜査にもかかわらず14億円余が使途不明金として残っています。元職員は安中市役所のすぐ目の前に住んでいて、ゴルフはシングルプレーヤーで、無類のギャンブル好きでした。市役所内で競馬のノミ行為をしていたほどです。だから、群馬銀行が被害者で、安中市が加害者のような気がしてしまうのです。

 103年ローンというのは、和解条項で初回和解金4億円を平成10年(1998年)12月25日に支払ったあと、平成11年(1999年)12月25日から、残りの20億5000万円を、毎年2000万円を下回らない金額で支払うことになっているため、計算上は、103年かかることになるため、市民の間では「103年ローン」とか、数を丸めて「百年ローン」などと呼んでいるのです。

■具体的には、民法により10年ごとに債権債務関係を確認する意味もあり、返済の約束を延長するかたちになります。そのため、平成20年(2008年)12月25日で最初の1ラウンド10年の返済を完了し、平成21年(2009年)12月25日から次の2ラウンドがスタートし、今年の今日、平成24年(2012年)12月25日は2ラウンド目の4年目、即ち103年ローンのうち14回目の支払いとなります。

 今後、10年毎の見直しは、平成30年(2018年)、平成40年(2028年)、平成50年(2038年)、平成60年(2048年)、平成70年(2058年)、平成80年(2068年)、平成90年(2078年)、平成100年(2088年)、平成110年(2098年)の12月25日に行われることに理論的にはなります。そして、平成111年(2099年)12月25日に101回目の支払い(2000万円)、平成112年(2100年)12月25日に102回目の支払い(2000万円)が行われ、22世紀に突入することになる平成113年(2101年)の12月25日に残り1000万円の支払いをもって、ようやく和解条項が完遂することになります。

■まさに、子々孫々に至るまで、我々の世代の不始末を押し付けることになりますが、群銀に支払う為には安中市土地開発公社も存続させなければなりません。岡田市長は、市とは別法人である市土地開発公社が和解金を支払う義務を負っているのであり、安中市には損害がないのだから、安中市民に被害はなく、住民訴訟でも裁判所がそれを認めて、当時公社理事監事だった岡田市長に裁判所は軍配を上げました。

 だから、土地開発公社が存続せずに、保証人の安中市が支払いをすることになると、安中市が直接損害を被ることになるわけで、そのときは安中市が倒産し、群馬銀行の管理下に置かれかねない状況に陥る可能性もあります。

■さて、和解といっても、安中市・公社は和解金を支払う義務を負った債務者であり、群馬銀行は和解金を受け取れる権利を持った債権者であることには相違ありません。債務者の岡田市長兼公社理事長としては、103年もの長期ローンで支払い易くしてもらい、市・公社は破滅から救われた、などと思っているのかもしれません。

 ここでよく考えて見ましょう。103年間、毎年2000万円ずつクリスマス・プレゼントを受け取る権利を保有する債権者である群馬銀行としては、非常に有利な話だからです。

 たとえば、市公社から毎年2000万円ずつ受け取る群馬銀行が2%の利回りで投資をしていった場合の複利計算をしてみましょう。
   1年目 平成 11年(1999年)12月25日      2,000(単位:万円)
   10年目 平成 20年(2008年)12月25日      21,899
   20年目 平成 30年(2018年)12月25日      48,595
   50年目 平成 60年(2048年)12月25日     169,159
  100年目 平成110年(2098年)12月25日     624,465
  103年目 平成113年(2101年)12月25日     668,808
 これをみると、20億5000万円の金額が、103年間で3.26倍になることがわかります。

 もちろん、市公社から20億5000万円を一括で支払ってもらえれば、それを群馬銀行が2%の利回りで投資をしていった場合、103年目の平成113年(2101年)の金額を複利計算で示すと、1,568,368万円となります。最初の金額の7.54倍になり、この方が銀行には有利ですが、虎の子を生かさず殺さずコントロールする関係上、これは非現実的です。

■一方、債務者の市・公社にとっては、群馬銀行に対してカネを預けていても、利回りは普通預金で0.020%程度であり、1000万円以上の定期預金で長期に預けたとしても、利回りはせいぜい0.15%に過ぎません。この場合、平成113年(2101年)になっても最初の金額が238,056万円と最初の16.6%増にしかなりません。

 このことは、20億5000万円を定期預金の利率0.15%で113年間預けても、毎年2000万円ずつ102.5年間投資して2%の利率で運用したほうが、はるかに儲かることを意味します。群馬銀行は、まさに103年ローンで焼け太ったということができるでしょう。なにしろ、公社が行き詰っても、安中市が保証人となってくれており、安中市を支えているのは構成員である市民や法人だからです。まさに絶対に安泰なカネヅルだからです。

 おそらく、群馬銀行にとっては、12月25日は祈念すべき“よき日”でしょう。忌まわしい事件で、一時期対応に苦慮し、事件に関係した安中支店や本店監査部の担当責任者を左遷したりしましたが、今から考えれば、“災い転じて福と為す”ことができたのですから、報償モノです。しかも、群馬銀行で冷や飯を食うのを嫌って、いち早く群銀を飛び出した松井支店長などは、すぐさま地元の群馬県信用組合の理事長に納まり、地域金融界でさらに雄飛をしているのです。

 単独犯とされた元職員や、その関係者も、使途不明金14億円余については、晴れて堂々と費消できることになり、これまたハッピーな今を謳歌しています。

■結局、一番酷い目にあい続けるのは、あと89年間、市・公社が群馬銀行にクリスマス・プレゼントをするための原資の担保にさせられる市民納税者ということになります。このような状態を作ってしまった我々の世代は、次の世代はもちろんのこと、3世代後までの子孫には絶対に負のクリスマス・プレゼントを残してはなりません。

【ひらく会情報部】

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