市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…原告住民全面敗訴判決から見える裁判官の一分(いちぶん)とは

2019-11-01 23:40:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■10月31日に言い渡された判決文の内容は、ご覧いただきましたように、被告群馬県の主張を100%そのまま鵜呑みにした内容であり、原告住民の主張や反論はことごとく否定したかたちとなっています。

正面入口脇や構内の植え込みにペンペン草が繁茂する前橋地裁。

 興味深いのは、2ページ以降の「事実及び理由」の構成が次のとおりになっていることです。

**********
第1 請求<P2>
第2 事案の概要<P2~P18>
1 関係法令の定め(p2-7)
 (1) 補助金に関する定め
 (2) 環境影響評価に関する定め
2 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)(p7-10)
 (1) 当事者等
 (2) 本件前橋バイオマス事業の経緯
 (3) 本件補助金交付の経緯
 (4) 本件訴えに至る経緯
 (5) 本件訴え提起後の経緯
3 争点(p11)
4 争点に対する当事者の主張(p11-17)
 (1) 争点1(本件事業の補助事業としての適格性)
 (2) 争点2(条例アセスメント不履行の違法性)
 (3) 争点3(本件補助金の金額の妥当性)
第3 当裁判所の判断<P18~P35>
1 認定事実(p18-27)
 (1) 当事者等
 (2) 本件前橋バイオマス事業計画の経緯
 (3) 本件前橋バイオマス事業の概要
 (4) 本件運用策定の経緯
 (5) 本件補助金交付の経緯
2 事実認定の補足説明(p27-29)
 (1) 本件運用の策定について
 (2) 排ガス量について
3 争点1(本件事業の補助事業としての適格性)(p29-34)
 (1) 前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電について
 (2) 放射能汚染について
 (3) 木質チップの調達について
 (4) 環境配慮計画について
 (5) 以上によれば、本件事業の内容は、補助金交付事業として不適格であるとは認められない。
4 争点2(条例アセスメント不履行の違法性)(p34-35)
 (1) 上記3(1)アのとおり、上記発電事業の不適格性は、本件補助金の交付決定の違法性を基礎づけるものではない・・・。
 (2) 上記1(3)イ(イ)で認定したとおり、・・・排ガス量は・・・該当しない。そのため、前橋バイオマス発電が本件発電事業に関して条例アセスメントを行っていないことに違法性は認められない。
5 争点3(本件補助金の金額の妥当性)(p35)
 (1) 上記1(5)エないしカで認定したとおり、・・・・本件補助金の金額が妥当であると認められる。
 (2)ア これに対し、原告らは、・・・本件プレス機・・・主張する。
  イ しかしながら、上記1(3)ア(イ)で認定した通り、・・・原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (3)ア また、原告らは、・・・・本件補助金の金額は過大である旨を主張する。
  イ しかしながら、本件各証拠によっても、・・・・事実は認められず、原告らの上記主張は、その前提において主張がないから採用することができない。
6 以上によれば、前橋バイオマス燃料に対する本件補助金の交付が違法であるとは認められない。
第4 結論<P35>
 よって原告らの請求はいずれも理由がないから棄却する・・・。
**********

 そもそも、放射線レベルの高い地域から、汚染された物質を外部に持ち出すこと自体、法律で禁じられているはずです。また、補助金で物品を調達する場合は、価格の妥当性が求められるため、特定のメーカーの特殊な製品を随契で調達することも原則できないことになっています。ところがが、そうした関係法令等の定めは、被告を勝たせるためには都合が悪いため、裁判所は全て黙殺しています。

 そして、本文35ページの判決文のなかで、p18以降が裁判所の判断として記されています。つまり、判決文の半分に相当する18ページが裁判所の判断となっています。

 さらに、そのうちの、p18-27が認定事実とされています。つまり10ページが事実認定に割かれています。さらに、p27-29が事実認定の補足説明となっています。合計すると12ページとなり、裁判所の判断の実に3分の2を占めています。

 こうして、認定事実として、すべて被告の主張をそのまま引き写しているため、原告の主張は、裁判所の独自の認定事実をもとに、すべて否定されてしまいました。原告が主張した群馬県外からの木質チップの搬入など、被告の都合の悪いものは、全て黙殺されていることは言うまでもありません。

 しかも、前橋バイオマス発電と前橋バイオマス燃料は誰がどうみても、不可分な事業組織であるにもかかわらず、法人として別登記だから、という理屈で、原告の主張を否定しています。しかし、さすがに環境アセスメントについての原告の主張について触れざるをえないことから、争点2(条例アセスメント不履行の違法性)について、僅かに10行ですが、「満たさず」「該当しない」「違法性は認められない」を連発しています。

■不思議なのは、なぜこれほどまでに原告住民の主張をことごとく否定したのか、ということです。

 それは、ひとつでも原告の主張を認めてしまうと、全体の構成が崩れ、被告を勝たせるための論理が構築できなくなるためです。裁判所は行政に立てつくわけにはいきません。実際に住民訴訟を提起した場合、裁判所が、原告住民側の訴訟適格や公訴時効など、あらゆる観点からなんらかの不備がないか、実際に裁判に入らせないための手段を行政と一緒に検討するケースを当会は知っています。

 この背景には、裁判官(裁判長を含む)として、行政を敗訴させることは、その後の自らの出世に大きく影響をするため、行政に対して恐怖心を抱いているためです。

 事実、人数的に言っても、裁判官は合議制の場合でも3名までですが、一方の行政側は、群馬県の場合でも6000名あまりの職員を擁していると言われています。ですから、言うなれば、3対6000というわけです。これでは勝ち目などなく、あとの仕返しが怖い、というわけです。

 しかも、裁判所の予算は総務省が牛耳っており、結局、役人や官僚、公務員によって、裁判官は、給与という生殺与奪の根っこを抑えられています。そのため、ひとたび行政側に不利な判決を出してしまうと、あとで出世=給与に悪影響を被り、行政に不利な判決をしたということで「烙印」を押されてしまうのではないか、という不安に襲われるのです。

■今回の判決を見る限り、これまで3年半を振り返ると、とても裁判官らが本気でしたためた文章とは信じられません。おそらく、群馬県の訴訟代理人である法律事務所弁護士が素案を作り、群馬県の職員に校正させた後(あるいはその逆かもしれませんが)、裁判所に下書きを提出し、それを裁判官が不本意ながらも自筆で署名し、裁判所からの判決文として原告に交付したと考えると、このあまりにも酷い判決文の作成の由来について腑に落ちます。

 ということで、仮に控訴する場合には、控訴状は,判決正本を受領した日を入れないで,2週間の最終日までに提出する必要があります。したがって、今回の事件の控訴期限は11月14日木曜日が最終日となります。

 いちおう控訴状だけは簡単なので予め準備しておき、関係者で11月13日までじっくりと対応策を検討することにしたいと思います。

【11/14追記】
 10月31日の地裁判決のあと、11月5日18:34に上毛新聞の村上記者から電話がありました。同記者によると、原告の敗訴判決について記事にしたいとのことでした。また、控訴についても意向を聞かれましたが、11月10日に予定している地元住民の皆さんとの対策会議を経てから検討する旨、伝えました。なお、「本件の記事化について、編集デスクの了解はとってある」とのことで、どのような記事が出たのか気になっていたところ、本日、14日9:56に同記者に電話をしたところ、あのあとまもなく記事にして社会面に掲載したとのことで、さっそく確認したところです。
 同記者は「(被告の)群馬県にも取材する」と言っていたことから、記事の後段に記されている原告請求棄却理由については、群馬県から訊いたコメントを参考にしたのかもしれません。なにしろ棄却理由は、被告の言い分を正しいとして認めたうえでの全面完全敗訴なので、とくにこれといった特定の棄却理由はないからです。
 なお、別のブログ記事で報告した通り、11月14日付で控訴状を前橋地検に提出しました。
○2019年11月14日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…前橋バイオマス訴訟一審敗訴を受け原告が控訴状提出!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3073.html
**********上毛新聞2019年11月7日
バイオマス訴訟 原告側請求棄却 前橋地裁判決
 前橋市苗ヶ島町で稼働している木質バイオマス発電所を巡り、市民団体が、県が建設業者に支払った補助金を返還させるよう求めた住民訴訟の判決言い渡しが6日までに前橋地裁であり、渡辺和義裁判長は原告側の請求を棄却した。
 判決によると、県は2016年8月~17年5月、木質バイオマス発電の燃料製造施設の整備費として業者に4億8千万円を補助。原告側は、環境に及ぼす影響を事前に調べる「アセスメント」を県が実施せずに補助を決めたことを「業者の圧力に屈した」と主張したが、業者が14年に県を訪問した時点で発電規模など具体的な内容が決まっていなかったため、圧力をかけようがなかったとして訴えを退けた。
**********

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項終わり】


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1 コメント

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Unknown (無題)
2019-11-07 14:12:44
週刊誌で原発の稼働差し止めを求めた裁判が多数起こされておるが、稼働差し止めを認めた判決を出した例もある。判決を出した裁判官はことごとく地方に飛ばされたと書かれてた。国に逆らう判決を出すと人事で制裁があるようである。週刊誌によると裁判官の人事は最高裁が握っているようである。これでは三権分立とは言えない。
これも東電が絡んでてきな臭く感じる。
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