■スラグ(鉱滓)はもともと産業廃棄物です。このスラグは安全性をきちんと確認し、品質的にあらゆる観点から評価して、環境や高齢の観点から問題がないと誰もが納得した場合に有効利用されることは、社会経済にとって決してマイナスではありません。しかし、利益追求主義がはびこり、コスト低減至上主義が叫ばれる昨今の風潮は、最近多発するスラグ不法投棄の背景になっていると考えられます。こうした中、またもや大量の鉄鋼スラグが造成工事に紛れて不法投棄されていたことが、スクープ報道されました。
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/095000c
スラグ 24万トン無断埋設 地権者が撤去要求 千葉
千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡り、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設されていることが分かった。スラグは水と反応して膨張する性質があり、これ以前に宅地造成に使用された例はないとされる。地権者は不安視し、スラグの全面撤去を要求。同法を所管する国土交通省も調査を始めた。
この事業はJR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)が受注した。2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する約50ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成し、17年度末の完成後には約3700人が居住する計画。総事業費は約78億円で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられる。
毎日新聞が入手した資料や地権者によると、当初はスラグの使用計画はなかったが、JV側は12年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手。地盤改良材として新日鉄住金(東京都千代田区)の君津製鉄所(千葉県君津市)から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。
JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた14年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。
スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。
搬入されたスラグは15年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「14年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前だった。資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。
スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。国交省市街地整備課は1月12日、JV側に対して改善を求めた。【杉本修作】
奥村組と竹中土木の話 国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく。
新日鉄住金広報センターの話 ジオタイザーは2011年5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、15年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく。
【ことば】製鋼スラグ
鉄を作る際に出る鉄くずの「鉄鋼スラグ」のうち、特殊鋼などを精製する際に排出されるもの。石や砂の形状をしており、強度があるために道路の路盤材などに使われる。
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/096000c
スラグ無断埋設 「我々の土地、実験台か」地権者ら憤り
↑JR内房線の線路左側に広がる千葉県袖ケ浦市の区画整理事業地。右奥には袖ヶ浦駅が見える=2016年1月21日、阿部義正撮影↑
千葉県袖ケ浦市の大規模な区画整理事業を巡り、地権者の承認を得ずに鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が大量に埋設されていたことが明らかになった。スラグには水と反応して膨張する性質があり、地盤の不安定化が懸念される上、専門家は植物などに影響を及ぼす強アルカリ水が溶出する可能性も指摘。地権者からは「我々の土地を実験台にしているのか」と批判する声が上がった。
施工した共同企業体(JV)のトップで中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)が地権者らに説明した内容によると、JVはスラグの排出元となった新日鉄住金(東京都千代田区)と2011年5月に、スラグの利用について協議していたという。奥村組が正式に施工業者に決まったのは同年7月。その2カ月も前から協議が進められていたことになる。
奥村組の担当者は翌12年1月、区画整理事業組合の理事に「地盤の強度が出なかった(低かった)。地盤改良のためスラグを使う」と報告したが、費用や工事の詳細は報告しなかった上、この時点で既にスラグは納入されていたという。
15年2月、組合の意思決定機関である「総代会」から、同会の承認を得ないまま工事を進めた理由を問われた奥村組の担当者は「いろいろと不都合があった。地権者に不安を与えるといけないと思った」と回答。被害が出た場合の保証期間を尋ねられると「完了後2年」と答えたという。
事業を監督する千葉県の指示を受けたJVは15年9月、外部の検査機関に委託し、施工が正しく行われたかを調べるボーリング調査を実施。これによると、スラグを混ぜて地盤改良したとされる層の厚さは数センチから2メートル超まで大きな幅があり、一切使用されていない場所もあった。施工に不安を感じた地権者の有志が地盤を掘削したところ、土と混ぜられることなく固まっている数十センチのスラグの塊も次々と見つかった。
男性地権者は「こんな欠陥だらけの土地を子や孫に引き継げない」。別の男性地権者は「我々の土地が実験台かゴミ捨て場にされたのではないか」と憤った。県は先月18日、土地区画整理法に基づき改善を勧告した。
一方、スラグには雨水などと反応して膨張する性質があり、道路で利用されるスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1・5%以下)が設けられているが、宅地利用での基準はない。別メーカーのスラグをもらい受けて盛り土に使った群馬県榛東村の民家では床が隆起する問題も起きている。
また、袖ケ浦市の現場のスラグを地権者の許可を得て毎日新聞が環境省指定の第三者機関で鑑定したところ、水素イオン濃度(pH)が12前後の強アルカリ水が検出された。【杉本修作】
★スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。大量に発生するスラグの扱いは鉄鋼メーカー共通の問題で、処分に苦慮した可能性もある。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し、地盤が安定しなくなることは十分考えられる。
**********毎日新聞2016年1月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160122/ddm/041/040/164000c
千葉・袖ケ浦のスラグ無断埋設
地盤不安定化の恐れ スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
アルカリ水溶出も
使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し地盤が安定しなくなることは十分考えられる。また、強アルカリ水は植物や人の皮膚に影響があり、地下水の位置などの条件によってはアルカリ水が地上に溶出することもあり得る。
**********
■このように、またまた大量のスラグが不法投棄された事件がスクープされました。千葉県の大規模な宅地開発に24万トンものスラグが不法投棄されたのです。いつものようにスラグ報道のポイントをまとめてみましょう。
①国や地方自治体の補助金が投入された土地区画整理事業にスラグが不法投棄されている問題であること。
②地権者や地域住民に説明のないこと
③スラグが地盤改良材として偽装されて土と混合されていること
◆ポイント①「行政補助金事業へのスラグ不法投棄」について
「総事業費約78億円の住宅や大規模マンションの造成事業で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられている」ことがこの報道の冒頭で紹介されています。群馬県の危険スラグ問題でも国土交通省のスタンス・考え方に疑問の声が上がっていますが、千葉県においてもお役人様の不作為・違法行為がある可能性を強く示唆しています。
◆ポイント②「ステークホルダーに説明なし」について
群馬県の危険スラグ事件は、今のところ道路工事に用途外・違法使用された問題として被害者は国や群馬県、渋川市などとなっているので、文字通り他人事で問題解決が長引いています。この報道の最大のポイントは直接の被害者として、地権者が紹介されています。なんの説明もないままスラグが不法投棄されたのでは、事業に賛同して土地を提供した地権者の方々はたまったものではありません。スラグが全量撤去されるべく、遠隔地ながら同じ首都圏に住む者として応援してまいりたいと存じます。
◆ポイント③「スラグを地盤改良材として偽装」について
群馬県の危険スラグ問題では、危険スラグを「公共工事から排出されたコンクリートなどの建設廃材をリサイクルした正規の再生砕石や盛り土材などの天然石だ」などと偽ることで、不法投棄されました。
今回報道された千葉県の問題では土質改良材に偽装しスラグを不法投棄した疑惑事件であることが紹介されています。スラグなのに悪乗りして、商品名までつけて「有価物」と偽装しているようです。その名も「ジオタイザー」。かなり強そうな語感ですが、実態は単なるスラグのようです。
■強アルカリが指摘され有害物性も有するスラグですが、土質改良材という謳い文句からすると、軟弱な土にスラグを混合してしまったことが容易に想像できます。
果たして、スラグにセメントと同じように土質を改良する効果があるのでしょうか?確かにうどんを捏ねる時のように、水分が多い材料に乾いた粉を足せば水分調整をすることはできるでしょう。しかし、スラグでは膨張する性質はあっても固まる性質は弱いと考えられることから、土質改良材として、どうして土地区画整理に使用されたのでしょうか?国などが認可しているのでしょうか?そうだとすれば、そこに癒着等スラグマネーの暗躍が想像できます。
報道では「地権者約400人で作る区画整理組合が、奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)にスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。」と報道されていることから、逆有償取引の疑いがあることが、紙面から伝わってきます。
逆有償取引は、有価物の購入とみせかけ、裏で多額の金がキックバックされる取引のことで、産廃処分の形を表面上、取り繕うだけなので、この取引形態が指摘できれば、産業廃棄物の不法投棄である疑いが極めて濃厚です。
■この問題の当事者でもある竹中土木は、多額な使途不明金問題でも世間を騒がせています。スラグマネーがお役人様や政治家の皆様に渡っている可能性も考えられます、スラグ問題は新たなステージに突入したと言えるでしょう。
**********毎日新聞2016年1月21日
http://mainichi.jp/articles/20160121/k00/00m/040/138000c
http://mainichi.jp/articles/20160121/ddm/041/040/090000c
竹中土木 所得隠し 「使途秘匿金」1億円超 12〜13年 東京国税局認定
東京都江東区の大手土木会社「竹中土木」が、東京国税局から2013年12月期までの2年間で1億数千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。複数の工事で外注費としての実態が不明な支出があったことが税務調査で判明した。同社は国税局の調査に支出先や支払い理由を明らかにしなかったため、1億円を超える支出について「使途秘匿金」と認定され、約5000万円の制裁課税を受けた模様だ。
他に経理ミスも見つかり、所得隠しを含めた申告漏れ総額は2億円超に上るとみられる。重加算税を含めた追徴税額は約8000万円。同社は既に修正申告を済ませ、納税したという。
関係者によると、問題を指摘されたのは、竹中土木が12〜13年に費用計上した関西方面での土木工事に関わる外注費。工事台帳や請求書などから外注した内容が明らかな正規支出とは別に、一部で支出先や目的が不明だったり業務に関係あるかはっきりしなかったりする支出があることが税務調査で分かった。
不明瞭な支出の資金は、工事の現場ごとに経費の中に架空の外注費を計上することで工面し地元対策に充てていたとみられるが、竹中土木は支出先などを明らかにしなかったという。同国税局はこうした業界特有ともいえる裏金作りについて、仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う悪質な所得隠しに当たると判断した模様だ。
竹中土木は、大手ゼネコン「竹中工務店」(大阪市中央区)の子会社で1941年設立。資本金70億円、14年度の売上高772億円。毎日新聞の取材に対し、竹中土木管理本部総務部は「国税当局と一部見解の相違もあったが、修正申告を行い納付した」と回答した。【太田誠一】
○ことば「使途秘匿金」
法人による金銭の支出や資産の引き渡しのうち、相当な理由がなく相手方の名称や所在地などを帳簿に記載していないもの。支出先を記載していても実際の支出先でなければ同様に使途秘匿金と認定される。税額は通常の法人税に加えて、制裁として支出額の40%を上乗せして算定される。政治家へのヤミ献金やリベートなど違法な支出につながりやすいため、ゼネコン汚職事件(1993〜94年)を機に導入された。
**********
■「ジオタイザー」についても調べてみました。国土交通省HPの「NETIS:新技術情報提供システム」の中で、「技術名称:ジオタイザーによる軟弱度改良」として紹介されています。
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=KT-150041
20160122_netis_newtechnologyinformationsystem_geotizer.pdf
この中に開発年:2014、登録年月日:2015.08.11という記載があり、開発会社は新日鉄住金㈱の設備・保全技術センター土木建築技術部です。したがって、毎日新聞の報じているように、土地開発事業の現場に持ち込まれたのが、登録年月日よりも2年以上前だということになると、明らかに奥村組と竹中土木のJVと、新日鐵住金との間で、密約があったものと考えられます。
しかも、現在もなお、このジオタイザーと称する胡散臭いスラグは「事後評価未実施技術」とされており、直轄工事等にて活用された後の「試行実証評価」及び「活用効果評価」が実施されていない技術という分類に位置づけられています。
ゼネコン側にとっては、逆有償付きのサンパイ・スラグを土木資材として使うことによりコストを低減でき、新日鐵住金側にとっては、サンパイの処理費用が大幅に節約できるというメリットがあったはずです。
■スラグ(鉱滓)はそもそも産業廃棄物です。とくに鉄鋼業界から製鉄・製鋼の副産物として排出される鉄鋼スラグは、膨大な量に上ります。これまでは、有害性がないことを確認した上で、主に沿岸の埋立てに使用されてきました。しかし、排出側にとっては、スラグ等サンパイの処理には、安全・安心に処理しようとすればするほどコストが嵩むため、少しでもコストを減らし、あわよくば付加価値を付けて、安くても有償で引き取ってもられば、それに越したことは有りません。
一方で、サンパイを大量に処理する場合、もっとも手頃なのは造成工事に紛れて不法投棄をする方法です。県土の至る所が今やサンパイ埋立場と化しつつある群馬県では、以前から「サンパイのトライアングル」と称して、次の3者関係が取りざたされてきました。
①「埼玉県の農地の下に賦存する砂利」
②「首都圏の土建工事から生ずる廃棄物」
③「群馬県の山林に賦存する山土」
これは、①を首都圏の土建工事用の資材として利用し、砂利掘削後に農地にぽっかり空いた穴に③から持ってきた山土を搬入し、③で山土を掘り取った跡を掘るために、、②の首都圏の土建工事から排出される廃棄物を、群馬県に持ち人で不法投棄するという構図です。
今回の千葉県袖ケ浦市での大規模土地開発事業を巡る約24万トンものスラグの不法投棄問題は、大同有毒・危険スラグ不法投棄問題にも大きく影響をあたえる予感がいたします。事件の類似性に注目して、引き続き関心を寄せ続けて参ります。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/095000c
スラグ 24万トン無断埋設 地権者が撤去要求 千葉
千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡り、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設されていることが分かった。スラグは水と反応して膨張する性質があり、これ以前に宅地造成に使用された例はないとされる。地権者は不安視し、スラグの全面撤去を要求。同法を所管する国土交通省も調査を始めた。
この事業はJR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)が受注した。2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する約50ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成し、17年度末の完成後には約3700人が居住する計画。総事業費は約78億円で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられる。
毎日新聞が入手した資料や地権者によると、当初はスラグの使用計画はなかったが、JV側は12年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手。地盤改良材として新日鉄住金(東京都千代田区)の君津製鉄所(千葉県君津市)から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。
JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた14年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。
スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。
搬入されたスラグは15年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「14年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前だった。資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。
スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。国交省市街地整備課は1月12日、JV側に対して改善を求めた。【杉本修作】
奥村組と竹中土木の話 国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく。
新日鉄住金広報センターの話 ジオタイザーは2011年5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、15年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく。
【ことば】製鋼スラグ
鉄を作る際に出る鉄くずの「鉄鋼スラグ」のうち、特殊鋼などを精製する際に排出されるもの。石や砂の形状をしており、強度があるために道路の路盤材などに使われる。
**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/096000c
スラグ無断埋設 「我々の土地、実験台か」地権者ら憤り
↑JR内房線の線路左側に広がる千葉県袖ケ浦市の区画整理事業地。右奥には袖ヶ浦駅が見える=2016年1月21日、阿部義正撮影↑
千葉県袖ケ浦市の大規模な区画整理事業を巡り、地権者の承認を得ずに鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が大量に埋設されていたことが明らかになった。スラグには水と反応して膨張する性質があり、地盤の不安定化が懸念される上、専門家は植物などに影響を及ぼす強アルカリ水が溶出する可能性も指摘。地権者からは「我々の土地を実験台にしているのか」と批判する声が上がった。
施工した共同企業体(JV)のトップで中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)が地権者らに説明した内容によると、JVはスラグの排出元となった新日鉄住金(東京都千代田区)と2011年5月に、スラグの利用について協議していたという。奥村組が正式に施工業者に決まったのは同年7月。その2カ月も前から協議が進められていたことになる。
奥村組の担当者は翌12年1月、区画整理事業組合の理事に「地盤の強度が出なかった(低かった)。地盤改良のためスラグを使う」と報告したが、費用や工事の詳細は報告しなかった上、この時点で既にスラグは納入されていたという。
15年2月、組合の意思決定機関である「総代会」から、同会の承認を得ないまま工事を進めた理由を問われた奥村組の担当者は「いろいろと不都合があった。地権者に不安を与えるといけないと思った」と回答。被害が出た場合の保証期間を尋ねられると「完了後2年」と答えたという。
事業を監督する千葉県の指示を受けたJVは15年9月、外部の検査機関に委託し、施工が正しく行われたかを調べるボーリング調査を実施。これによると、スラグを混ぜて地盤改良したとされる層の厚さは数センチから2メートル超まで大きな幅があり、一切使用されていない場所もあった。施工に不安を感じた地権者の有志が地盤を掘削したところ、土と混ぜられることなく固まっている数十センチのスラグの塊も次々と見つかった。
男性地権者は「こんな欠陥だらけの土地を子や孫に引き継げない」。別の男性地権者は「我々の土地が実験台かゴミ捨て場にされたのではないか」と憤った。県は先月18日、土地区画整理法に基づき改善を勧告した。
一方、スラグには雨水などと反応して膨張する性質があり、道路で利用されるスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1・5%以下)が設けられているが、宅地利用での基準はない。別メーカーのスラグをもらい受けて盛り土に使った群馬県榛東村の民家では床が隆起する問題も起きている。
また、袖ケ浦市の現場のスラグを地権者の許可を得て毎日新聞が環境省指定の第三者機関で鑑定したところ、水素イオン濃度(pH)が12前後の強アルカリ水が検出された。【杉本修作】
★スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。大量に発生するスラグの扱いは鉄鋼メーカー共通の問題で、処分に苦慮した可能性もある。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し、地盤が安定しなくなることは十分考えられる。
**********毎日新聞2016年1月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160122/ddm/041/040/164000c
千葉・袖ケ浦のスラグ無断埋設
地盤不安定化の恐れ スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
アルカリ水溶出も
使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し地盤が安定しなくなることは十分考えられる。また、強アルカリ水は植物や人の皮膚に影響があり、地下水の位置などの条件によってはアルカリ水が地上に溶出することもあり得る。
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■このように、またまた大量のスラグが不法投棄された事件がスクープされました。千葉県の大規模な宅地開発に24万トンものスラグが不法投棄されたのです。いつものようにスラグ報道のポイントをまとめてみましょう。
①国や地方自治体の補助金が投入された土地区画整理事業にスラグが不法投棄されている問題であること。
②地権者や地域住民に説明のないこと
③スラグが地盤改良材として偽装されて土と混合されていること
◆ポイント①「行政補助金事業へのスラグ不法投棄」について
「総事業費約78億円の住宅や大規模マンションの造成事業で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられている」ことがこの報道の冒頭で紹介されています。群馬県の危険スラグ問題でも国土交通省のスタンス・考え方に疑問の声が上がっていますが、千葉県においてもお役人様の不作為・違法行為がある可能性を強く示唆しています。
◆ポイント②「ステークホルダーに説明なし」について
群馬県の危険スラグ事件は、今のところ道路工事に用途外・違法使用された問題として被害者は国や群馬県、渋川市などとなっているので、文字通り他人事で問題解決が長引いています。この報道の最大のポイントは直接の被害者として、地権者が紹介されています。なんの説明もないままスラグが不法投棄されたのでは、事業に賛同して土地を提供した地権者の方々はたまったものではありません。スラグが全量撤去されるべく、遠隔地ながら同じ首都圏に住む者として応援してまいりたいと存じます。
◆ポイント③「スラグを地盤改良材として偽装」について
群馬県の危険スラグ問題では、危険スラグを「公共工事から排出されたコンクリートなどの建設廃材をリサイクルした正規の再生砕石や盛り土材などの天然石だ」などと偽ることで、不法投棄されました。
今回報道された千葉県の問題では土質改良材に偽装しスラグを不法投棄した疑惑事件であることが紹介されています。スラグなのに悪乗りして、商品名までつけて「有価物」と偽装しているようです。その名も「ジオタイザー」。かなり強そうな語感ですが、実態は単なるスラグのようです。
■強アルカリが指摘され有害物性も有するスラグですが、土質改良材という謳い文句からすると、軟弱な土にスラグを混合してしまったことが容易に想像できます。
果たして、スラグにセメントと同じように土質を改良する効果があるのでしょうか?確かにうどんを捏ねる時のように、水分が多い材料に乾いた粉を足せば水分調整をすることはできるでしょう。しかし、スラグでは膨張する性質はあっても固まる性質は弱いと考えられることから、土質改良材として、どうして土地区画整理に使用されたのでしょうか?国などが認可しているのでしょうか?そうだとすれば、そこに癒着等スラグマネーの暗躍が想像できます。
報道では「地権者約400人で作る区画整理組合が、奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)にスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。」と報道されていることから、逆有償取引の疑いがあることが、紙面から伝わってきます。
逆有償取引は、有価物の購入とみせかけ、裏で多額の金がキックバックされる取引のことで、産廃処分の形を表面上、取り繕うだけなので、この取引形態が指摘できれば、産業廃棄物の不法投棄である疑いが極めて濃厚です。
■この問題の当事者でもある竹中土木は、多額な使途不明金問題でも世間を騒がせています。スラグマネーがお役人様や政治家の皆様に渡っている可能性も考えられます、スラグ問題は新たなステージに突入したと言えるでしょう。
**********毎日新聞2016年1月21日
http://mainichi.jp/articles/20160121/k00/00m/040/138000c
http://mainichi.jp/articles/20160121/ddm/041/040/090000c
竹中土木 所得隠し 「使途秘匿金」1億円超 12〜13年 東京国税局認定
東京都江東区の大手土木会社「竹中土木」が、東京国税局から2013年12月期までの2年間で1億数千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。複数の工事で外注費としての実態が不明な支出があったことが税務調査で判明した。同社は国税局の調査に支出先や支払い理由を明らかにしなかったため、1億円を超える支出について「使途秘匿金」と認定され、約5000万円の制裁課税を受けた模様だ。
他に経理ミスも見つかり、所得隠しを含めた申告漏れ総額は2億円超に上るとみられる。重加算税を含めた追徴税額は約8000万円。同社は既に修正申告を済ませ、納税したという。
関係者によると、問題を指摘されたのは、竹中土木が12〜13年に費用計上した関西方面での土木工事に関わる外注費。工事台帳や請求書などから外注した内容が明らかな正規支出とは別に、一部で支出先や目的が不明だったり業務に関係あるかはっきりしなかったりする支出があることが税務調査で分かった。
不明瞭な支出の資金は、工事の現場ごとに経費の中に架空の外注費を計上することで工面し地元対策に充てていたとみられるが、竹中土木は支出先などを明らかにしなかったという。同国税局はこうした業界特有ともいえる裏金作りについて、仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う悪質な所得隠しに当たると判断した模様だ。
竹中土木は、大手ゼネコン「竹中工務店」(大阪市中央区)の子会社で1941年設立。資本金70億円、14年度の売上高772億円。毎日新聞の取材に対し、竹中土木管理本部総務部は「国税当局と一部見解の相違もあったが、修正申告を行い納付した」と回答した。【太田誠一】
○ことば「使途秘匿金」
法人による金銭の支出や資産の引き渡しのうち、相当な理由がなく相手方の名称や所在地などを帳簿に記載していないもの。支出先を記載していても実際の支出先でなければ同様に使途秘匿金と認定される。税額は通常の法人税に加えて、制裁として支出額の40%を上乗せして算定される。政治家へのヤミ献金やリベートなど違法な支出につながりやすいため、ゼネコン汚職事件(1993〜94年)を機に導入された。
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■「ジオタイザー」についても調べてみました。国土交通省HPの「NETIS:新技術情報提供システム」の中で、「技術名称:ジオタイザーによる軟弱度改良」として紹介されています。
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=KT-150041
20160122_netis_newtechnologyinformationsystem_geotizer.pdf
この中に開発年:2014、登録年月日:2015.08.11という記載があり、開発会社は新日鉄住金㈱の設備・保全技術センター土木建築技術部です。したがって、毎日新聞の報じているように、土地開発事業の現場に持ち込まれたのが、登録年月日よりも2年以上前だということになると、明らかに奥村組と竹中土木のJVと、新日鐵住金との間で、密約があったものと考えられます。
しかも、現在もなお、このジオタイザーと称する胡散臭いスラグは「事後評価未実施技術」とされており、直轄工事等にて活用された後の「試行実証評価」及び「活用効果評価」が実施されていない技術という分類に位置づけられています。
ゼネコン側にとっては、逆有償付きのサンパイ・スラグを土木資材として使うことによりコストを低減でき、新日鐵住金側にとっては、サンパイの処理費用が大幅に節約できるというメリットがあったはずです。
■スラグ(鉱滓)はそもそも産業廃棄物です。とくに鉄鋼業界から製鉄・製鋼の副産物として排出される鉄鋼スラグは、膨大な量に上ります。これまでは、有害性がないことを確認した上で、主に沿岸の埋立てに使用されてきました。しかし、排出側にとっては、スラグ等サンパイの処理には、安全・安心に処理しようとすればするほどコストが嵩むため、少しでもコストを減らし、あわよくば付加価値を付けて、安くても有償で引き取ってもられば、それに越したことは有りません。
一方で、サンパイを大量に処理する場合、もっとも手頃なのは造成工事に紛れて不法投棄をする方法です。県土の至る所が今やサンパイ埋立場と化しつつある群馬県では、以前から「サンパイのトライアングル」と称して、次の3者関係が取りざたされてきました。
①「埼玉県の農地の下に賦存する砂利」
②「首都圏の土建工事から生ずる廃棄物」
③「群馬県の山林に賦存する山土」
これは、①を首都圏の土建工事用の資材として利用し、砂利掘削後に農地にぽっかり空いた穴に③から持ってきた山土を搬入し、③で山土を掘り取った跡を掘るために、、②の首都圏の土建工事から排出される廃棄物を、群馬県に持ち人で不法投棄するという構図です。
今回の千葉県袖ケ浦市での大規模土地開発事業を巡る約24万トンものスラグの不法投棄問題は、大同有毒・危険スラグ不法投棄問題にも大きく影響をあたえる予感がいたします。事件の類似性に注目して、引き続き関心を寄せ続けて参ります。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
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