■引き続いて、椿本興業の社内調査委員会の報告書の後半を見てみましょう。
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3 不正取引に至る経緯、動機及び背景
社内において元SD長及び不正取引に関与した営業部員のヒヤリング、A社とのヒヤリング並びに提供資料の分析、さらには、特定取引先7 社とのヒヤリング等によって、不正取引に至る経緯、動機及び背景は以下のとおりと判断した。
(1) 個人的な遊興費・接待費の捻出
A社設立間もない平成10 年秋頃、元SD長は自身の遊興費や客先接待費及び部員慰労費などの捻出のために、A社元社長に、当社から発注したA社への仕入代金を水増しして支払い、この水増しして得た現金を一定の割合でA社元社長と元SD長で分けることを持ちかけた。A社も資金繰りが厳しかったことから受け入れ、A社元社長と元SD長の深い関係が始まった。
平成16 年頃からは、A社に賃貸マンションの賃借料も支払わせ、さらには、個人的な海外への複数回にわたる渡航費用も負担させていた。
(2) A社への資金支援
不正取引に関与した主な取引先の概要に記載したとおり、A社元社長が平成13年頃に事業に行き詰った際に元SD長に相談した。元SD長にとっては、仕入先であるA社製作の設備装置が未完となれば、客先納期までに設備装置が未納となり、客先に多大な迷惑をかけることを深く懸念し、同社の資金繰りを何としても支援する必要性が生じてしまったのを契機に、同社の資金繰りにつき深く関与することとなったと証言している。A社元社長は、銀行勤務経験があったものの資金繰りについてはドンブリ勘定であったため、また、A社現社長は技術者であったために元SD長が資金繰り全般を管理するようになっていった。
なお、A社からの資料によれば、上述の個人的な遊興費・接待費の捻出目的で水増し発注を
実施していたことから、A社が倒産するとそれまでの不正取引が全て発覚することを恐れて、A社の支援をし続ける必要性があったとも考えられる。
同社の資金繰り支援の方策として、平成13年頃の当初は、実物件の先行検収(前渡金支払い)を独断で行ったことから始まる。その後、A社元社長は、A社が持つ当社宛の実物件の売上債権を銀行にて流動化(資金化)することなどで急場を凌いだ。また、平成15 年頃にはプール金取引を開始し、現金着服と運転資金に利用していた。
平成17年頃、別の形での運転資金調達の必要性から、元SD長は、架空・循環取引を考案し、これに着手したものと思われる。架空・循環取引においては、A社は、当社や特定取引先7社のうちの4社から売上代金を回収して、その代金に特定取引先7社の利益(3%~5%程度)や当社の利益を上乗せして支払う必要があった。従って、A社の資金繰りを支援する目的で始めた架空・循環取引ではあったが、常にA社の資金を当社が補給する形となり、架空伝票上では、当社の立替資金がたな卸資産の形で経理処理されていった。このため、当社が架空・循環取引により生じた見掛け上の債権・債務の決済資金の振出し元となっていた。
(3) 中日本営業本部特有の社内環境とチェック体制の不備
(a) 人事異動の少なさ
中日本営業本部は、地理的に東日本営業本部と西日本営業本部に挟まれた位置にあり、営業規模も東日本・西日本に比べ小さい。また、名古屋地区を中心とした営業エリアであるため、顧客も東日本・西日本に無い、大手機械メーカーや大手自動車会社が独特の存在感を示す地域である。
このため、顧客密着型の営業スタイルをとる当社にとって、このような顧客と信頼関係を築くことによって、リピートオーダーの獲得などが実現できることとなる。このため特定の営業担当者が特定の顧客を担当することが、営業効率上ある程度必要となる。また、他地域には存在しない顧客特性上、他の地域の者に代替させることが容易にできない商習慣もあり、人事異動ができにくい環境にあった。
反面、このような環境では、顧客と密着できる可能性は高まるが同時に仕入先とも親密になる環境であり、このような環境が仕入先との癒着を生む一因となった。
(b) 日常の営業事務処理方法の悪用
当社における売上(受注)処理は、営業部門で注文を受け(注文書・注文に相当する書面)、営業担当者がオンラインシステムに受注入力をし、売上先に注文請書及びそれに相当する文書を発行、送付し、受注を受けた商品の手配(外部への商品の発送指示、製造指示)を行う。
また、購買(発注)においては、営業担当者がオンラインシステムを利用して発注入力を行う事で発行される注文書を仕入先に送付する。後日、当該仕入先より出荷完了後に納品書が経理部門に返送され、売上確認の証憑として利用される。
この間、客先要求能力に応じた仕入先選定から、客先への見積書提出、客先要望事項の仕入先への伝達、現場据付工事の立会い、客先への引渡しなどの営業活動や、さらには、売上後の売掛金回収状況の確認や仕入先への支払い指示など、担当営業部員がほぼ一人で営業事務処理を管理・実行するというスタイルが踏襲されてきた。
上記のとおり、中日本営業本部においては、この営業スタイルを、顧客と密着する手法に利用する以上に、仕入先との癒着のための仕組みとして利用していた営業部員が存在した。
当社では、現場据付工事などに際し、建設業法等の遵守に伴う監理技術者の派遣などを行うエンジニアリング子会社を所有しているが、当該子会社における中日本営業本部の案件を管轄する者は1 名だけであり、中日本営業本部の設備装置事業では、ビッグプロジェクトの案件に手をとられ、その他の案件にかかる営業面からの実在性の確認も手薄となっていた。また、過去に仕入先との癒着から、平成18 年2 月に発覚した、大阪装置部門のa 部長(当時)の不祥事につき、同種の不正行為が他に存在しないかどうかを綿密に調査していれば、この元SD長関与の取引も早期に発見できた可能性もあるだけに、悔やまれる。
(c) 小規模の事務所
中日本営業本部は、総人員が63 名(平成25 年3 月31 日現在)であり、ビルのワンフロアを占め、全体が見通せる範囲で全員が配置されている。従って、他地区に比べ家族的意識が強く、本部長やSD長の意向が全員に強く伝わりやすい環境にある。このため、今回の不正取引を主導した元SD長の行動・指示に対し異議を唱えるまでの者はいなかった。また、元SD長の指示で、架空仕入や水増し仕入を指示されたとしても、異議を唱えたり、命令を拒否できるような環境ではなかった。
さらには、小規模の事務所の特徴として、組織上の不完全さがあった。管理部門組織の内、コンプライアンス室、内部統制部門、人事部門及び総務部門の常駐者はおらず、大阪本社から該当業務の管理者が出張し対応していた。また、経理部門も可能な範囲で、それらの業務を代理処理していた。このため、経理部門の人数が手薄となり、管理部門全体の牽制力も不足しがちであった。
(d) 工事案件収益管理の甘さ
設備装置事業の展開に当たっては、物件の契約に至るまでの過程の中では、客先からの引合内容に応じ、仕入先との打合せ・協議の結果により仕入原価の見積りをし、それをもとに客先への見積書を作成し、客先へ提出する。
この間、特に、いわゆるビッグプロジェクトの遂行においては、仕入先も複数社存在し、各社ごとに業務分担の調整の必要性もあり、原価の査定には多大な労力を要する。この時点において、各工事案件の採算管理も営業部員にとっては重要な業務のひとつとなり、不測の事態を重視しすぎた原価算定を一部において実施してしまうと、原価管理の全体に対し甘い査定(予算上、原価を高めに設定)がされる場合がある。不正取引においては、この甘い収益管理を実施していた物件が存在した。
A社を通した発注取引のうち、実物件取引に付随する架空据付業務発注や甘い金額査定による水増し発注が発生してしまった原因は、この甘い収益管理の環境が中日本営業本部内に醸成されていたことによるものである。
(e) チェック体制の不備
当社においては、与信管理制度などにおいて売上・仕入行為や金額の管理は、書類上厳密にチェックされているが、たな卸資産等の現物確認については、現物が装置全体の中の一部に組み込まれていたり、また、海外を含む遠隔地への搬送物件等を理由に現物の確認を怠っていたケースも多く存在した。このため、1 件1,000 万円以上の売上物件については、担当SD長から、客先注文書を経理部門に提出させることで売上を確認しているが、実在性の確認までには至っていなかった。
また、1 件1,000 万円以上の売上物件については、客先注文書を提出させているものの、1,000 万円未満の物件については客先注文書の提出が不要であり、会社としてその実在性の確認は未実施であった。
今回の不正取引の1 件あたりの金額はそのほとんどが1,000 万円以下の案件であり、元SD長は、この制度のチェックをすり抜ける目的で、捏造金額を1,000 万円以下に設定したものと思われる。
4 不正取引の全体像
(1) 各取引先の架空・循環取引の時期と位置付け
特定取引先7 社からのヒヤリング、社内ヒヤリング及びA社提供資料の分析結果などから、不正取引は、大別して3 期に分けられる。
第Ⅰ期 A社設立からA社税務調査による元SD長の現金着服の指摘があるまで(平成10年10月~平成18年8月)
第Ⅱ期 J社への税務調査から波及したA社への税務調査で、元SD長の現金着服、架空・循環取引の指摘があるまで(平成18年9月~平成21年8月)
第Ⅲ期 現金着服の中止と、架空・循環取引の拡大、破綻まで(平成21年9月~平成25年3月)
上記の3期に区分した不正取引との件数・金額を組み合わせたものは下記の表のとおりである。
このうち、納入実態のある仕入取引については、社内ヒヤリングを行った結果、中日本営業本部にて、A社とH社を仕入先とする取引に関し、水増し発注と架空工事代金追加発注が行われていたことが判明したため、この2 社を仕入先とする全社の設備装置部門の仕入データについて担当者に再確認したことから、判明した金額である。
中日本営業本部の設備装置部門において、これらは「プール金」と称し、工事案件収益管理の甘い査定の中から、当社の差益分の大きい取引があった場合などに、追加工事費の名目で水増し発注と架空工事代金発注を行い、上記2社にこの代金をプールし、後日この2社の赤字取引等に充当させる目的であったとの証言を得た。しかし、社内調査の結果、実際にはこれらプール金の大部分が、元SD長及び一部の社内関与者の現金着服に利用されたものであったと判断した。
(単位:百万円)
納入実態のある仕入取引//納入実態のない仕入取引
水増し発注(件数・金額)/架空工事代金追加発注(件数・金額)//架空・循環工事代金(件数・金額)
第Ⅰ期 ①平成10年10月~平成14年3月/不明・不明/7・19//ー/-
②平成14年4月~平成18年8月/不明・不明/6・9//82・718
第Ⅱ期 ③平成18年9月~平成21年8月/9・3/51・109//259・1,903
第Ⅲ期 ④平成21年9月~平成25年3月/10・11/23・16//607・4,914
合 計/19・14/87・154//948・7,536
(注)これら件数ならびに金額は、当社資料をもとに、当社社員に対しての聞き取り調査により当社の買掛金支払い総額を集計したもので、この支払い金額のうちのどの程度の金額が元SD長ほか社内関与者の現金着服額となったかは、本人の自白とA社提供の資料から推定している。(後記6 社内関与者による現金着服額の推定参照)
(a) 第Ⅰ期 平成18年8月以前
(A社設立から税務調査による現金着服の指摘があるまで)
当初はA社の運転資金補給や、元SD長の遊興費捻出の目的で、A社及びA社関連会社を利用した実物件の水増し発注や架空仕入取引を行っていた。この時期の遊興費捻出については、A社そのものから現金を受領することに加え、A社の関連会社2 社を使ったルートでの現金捻出であった。
大体の期間と金額は当社の記録では、下記のとおりである。
① 平成10年10月(A社設立)~平成14年3月
7 件 当社の仕入金額 19百万円
但し、社内関与者の証言を得られた金額が上記のものであり、a 元部長は実行したものの、詳細に記憶していないということのため、詳細金額は不詳である。
② 平成14年4月~平成18年8月
A社を媒介にした架空・循環取引を始めた時期である。実在する仕入取引における水増し発注だけではA社の運転資金を賄うことができず、新たな資金調達手段として架空・循環取引を画策した。
82 件 当社の仕入金額 718百万円
また、当社の仕入先にA社を選定し、架空仕入を部下に指示し、仕入計上させることにより仕入代金を支払っていた。
6件 当社の仕入金額 9百万円
(b) 第Ⅱ期 平成18年9月~平成21年8月
(A社税務調査による、A社関連会社を経由した現金着服と架空・循環取引の指摘が行われるまで)
③ 平成 18 年9 月~平成21 年8 月
①、②の期間で発覚しなかったため、架空・循環取引によるA社への運転資金補給と遊興費捻出の目的の現金化に拍車がかかってくる時期である。
(図3 全体の資金フロー図 参照)
現金化については、A社の関連会社である、J社(A社現社長の弟の配偶者の運営企業)やK社を経由し、当社が支払った代金を当社の仕入先を経由させ、J社やK社への発注代金という名目で支払わせ、現金化をしていた。
この取引金額については、当社の資料からは明らかにできない。当社からは、設備据付代金名目やカタログ作成代金名目として当社の仕入先(M社とL社)に支払うのみであり、当社の仕入先の下位に位置するJ社やK社への支払金額や現金流用金額などは把握できないからである。当社が直接の仕入先(M社とL社)2社に支払った金額は、
20件 当社の仕入金額 32百万円
であるが、この金額は、下記の架空・循環取引の金額に含まれており、元SD長が着服した金額の特定は出来なかった。
また、架空・循環取引金額は、
259件 当社の仕入金額 1,903百万円
と増加している。
さらに、当社の仕入先にA社を選定し、納入実態のある仕入金額の査定を甘くすることによる水増し発注により仕入代金を支払っていたものは、
9件 当社の仕入金額 3百万円
であり、架空仕入を部下に仕入計上させることにより仕入代金を支払っていたもの
は、
51件 当社の仕入金額 109百万円
である。
(図3、全体の資金フロー図)
(c) 第Ⅲ期 平成21年9月以降
(現金着服の中止と架空・循環取引の拡大から破綻まで)
④ 平成21年9月以降
平成21年8月にA社に税務調査が行われて以降は、上記のような水増し・架空仕入取引による遊興費捻出を追加8社を経由して実行することが容易に出来なくなったため、A社に対する運転資金補給や元SD長他の遊興費捻出のために、架空・循環取引に注力していくことになる。
架空・循環取引金額は、
607件 当社の仕入金額 4,914 百万円
と増加している。
さらに、当社の仕入先にA社を選定し、納入実態のある仕入金額の査定を甘くすることによる水増し発注により仕入代金を支払っていたものは、
10件 当社の仕入金額 11 百万円
また、当社の仕入先にA社を選定し、架空仕入を部下に仕入計上させることにより仕入代金を支払っていたものは、
23件 当社の仕入金額 16百万円
である。
これらに加え、元SD長の証言によれば、上記のとおりA社を経由した現金着服が難しくなったため、カラ出張による出張旅費の水増し精算により、総額約2百万円を、また、R社への架空発注により約1 百万円を着服した。
(2) 架空・循環取引の破綻
架空・循環取引は、取引から付加価値を生み出すものではなく、単なる資金の循環であるため、各社で利益を上乗せした取引を繰り返すと、その利益相当額が資金の不足を生み出し、新たなファイナンスを行う必要がある。
当社がファイナンス機能を担っていたことから、資金不足を補うために、架空・循環取引に係る前渡(仕入れの先行、あるいはファイナンスの実行ということができる)が行われ、この結果として架空・循環取引に係る前渡金を意味するたな卸資産残高が平成24年3月期末には1,242百万円まで増加していた。平成24 年12 月末にはたな卸資産残高が1,302百万円にも上ったので、第2.1(1)「架空取引の疑いの浮上」に記載のとおり、当社として一連の取引を中止させることを決定したことから、ファイナンス機能を担う当社からの資金の還流がストップし架空・循環取引が破綻した。
(3) 架空・循環取引の総額及び破綻による各社の資金ポジション
当社及び調査対象会社8 社の間で行われた架空・循環取引と認定した取引数(売上取引と仕入取引の合計件数)は、約4,000件(うち当社の取引数、約2,000件)であった。これらの取引については、A社から入手した一連の不正取引を記録した資料及び当社の売上及び仕入データから集計及び分析を行い、特定取引先7 社から入手した各社取引明細との照合を行った。また、当社が関係する不正取引の金額は、当社の売上・仕入データに基づき集計及び分析を行った。
架空・循環取引において、売上計上をした会社における資金流入額及び仕入計上をした会社における資金流出額を算定するために、平成25年3月31日時点での各社の未回収債権・未払債務の残高額を調整し、各社における資金流入額及び流出額とそれらの差額としての資金ポジションを算定した。
以上の結果、取引総額として、資金流入総額(各社での売上取引による入金額の合計)は、約31,104百万円(うち当社の売上取引による資金流入総額約7,552百万円)であり、資金流出総額(各社の仕入取引による支出額の合計)は、約31,104百万円(うち当社の仕入取引による支出総額約8,671百万円)であった。
これらの取引の結果、平成25年3月31日現在における各社の架空・循環取引から生じた資金ポジションについて、プラスの資金残となったのは、A社630百万円、C社140百万円、B社72百万円、D社28百万円、E社41百万円、H社25百万円及びG社28百万円であったのに対し、マイナスの資金残となったのは、当社1,119百万円及びF社14百万円(但し未決済の債権債務の純額24百万円を、もし決済したと仮定すると資金残はプラス10百万円になる。)であった。
また、当社の不正取引に係るたな卸資産残高1,212百万円(第110期末、平成25年3月31日現在)は、不正取引の商流から考えて、一旦特定取引先7 社に資金が還流し、その後粗利調整後の金額がA社に還流していると仮定している。当社からたな卸資産分の資金約1,212百万円がA社に流れることによって、当社の資金ポジションはマイナス1,119 百万円となり、A社の資金ポジションはプラス630百万円となっている。なお、当社の不正取引に係るたな卸資産残高の推移は下記のとおりであり、当社が先行支払する形で不正取引におけるファイナンス機能を担っていた事実が伺える。
不正取引に係るたな卸資産残高の推移
(単位:百万円)
104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期
H社 - / – / – / 93/ 153/ 121/ 123
F社 80/ 117/ 186/ 228/ 222/ 202/ 288
A社 39/ - / 7/ 175/ 298/ 210/ 188
D社 - / 26/ 74/ - / 25/ 213/ 155
B社 191/ 313/ 317/ 385/ 419/ 494/ 457
合計 311/ 457/ 585/ 882/1,119/1,242/1,212
(4) 当社における修正すべき取引
これらの分析及び調査結果から、当社における修正の主な内容は、後述5 における架空・循環取引と認定した売上額及び仕入額を年度別に取消している。
5 当社における、不正取引に係る年度別取引額
不正取引売上額
(単位:百万円)
103期/104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期/合計
C社 67/ 203/ 280/ 350/ 444/ 629/ 819/ 702/ 3,498
B社 146/ 117/ 117/ 126/ 126/ 69/ 155/ 199/ 1,059
D社 - / - / - / 64/ 77/ 87/ 92/ 167/ 489
E社 43/ 43/ 26/ 59/ 72/ 78/ 139/ 147/ 611
F社 129/ 108/ 114/ 113/ 91/ 98/ 129/ 253/ 1,039
H社 - / - / - / - / - / 50/ 121/ 215/ 388
G社 74/ 67/ 86/ 102/ 71/ 76/ 109/ 172/ 760
合計 461/ 540/ 626/ 816/ 883/1,090/1,568/1,859/ 7,846
不正取引原価額
(単位:百万円)
103期/104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期/合計
架空・循環取引
A社 83/ 65/ 44/ - / 59/ 273/ 351/ 426/1,303
B社 107/ 161/ 358/ 443/ 392/ 489/ 606/ 533/3,091
D社 - / - / - / 42/ 86/ - / 141/ 574/ 844
E社 44/ 39/ - / - / - / - / - / - / 84
F社 35/ 173/ 174/ 228/ 223/ 217/ 245/ 158/1,454
H社 - / - / - / 38/ 68/ 68/ 168/ 100/ 443
その他 170/ 76/ 23/ 27/ 16/ - / - / - / 314
小計 439/ 516/ 600/ 779/ 845/1,048/1,512/1,792/7,536
上記以外の不正取引
- / 31/ 21/ 21/ 5/ 2/ 4/ 1/ 85
合計 439/ 547/ 621/ 800/ 850/1,050/1,516/1,793/7,621
6 社内関与者による現金着服額の推定
一連の不正な架空・循環取引及び水増し発注・架空発注を伴う仕入取引からの社内関与者の現金着服額については、A社より提供を受けた資料、社内の資料の分析、社内関与者の証言等をもとに、具体的な資料・証言により一定の合理性をもった算定が可能な金額について、現金着服額として推定集計した。
集計の結果、社内関与者による現金着服額は平成25年3月末時点において147 百万円であった。
第5 過年度決算への影響額
1 過年度決算訂正の方針
前述第4の調査結果に基づき、第105期(平成20年3月期)から第109期(平成24年3月期)までの5年間の過年度決算を訂正の範囲とすべきと判断した。決算訂正を行うにあたり、訂正に足る根拠と訂正数字の確認をして、各決算期において訂正を行った。また、第104期(平成19年3月期)は、平成20年3月期訂正報告書の比較年度としての決算数値であるため、訂正の範囲の年度と同様に行っている。なお、平成18年3月期以前の事象による影響は、平成19年3月期の期首の利益剰余金に反映した。
2 過年度決算訂正による内容及び影響額
前述の不正取引に関連し、過年度決算訂正による純資産の負の影響額は1,751 百万円となった(第105期期首から第110期の第3四半期末までの損益への影響累計額で、第104期以前の損益への影響額241百万円も含む)。
(1) 決算訂正の主な内容
決算訂正の主な内容は、次のとおりである。
(a) 架空・循環取引に関する「売上高」及び「売上原価」の取消を行った。また、当該取引に 関連する「売掛金」、「たな卸資産」及び「買掛金」の各期末残高及び関連する消費税等についても取消を行った。これらの取消処理に伴う貸借差額については、一連の架空・循環取引に関する当社の支払超過差額であるため、「長期未収入金」として計上した。同時に、この「長期未収入金」のうち回収不能な債権に対して「貸倒引当金」を設定した。
仕入水増し発注・架空発注による元SD長ほか社内関与者の現金着服部分は、上記処理に合わせ「売上原価」から「長期未収入金」に振替えると共に、回収不能な債権に対して「貸倒引当金」を設定した。
なお、架空・循環取引に関する「売上高」及び「売上原価」の取消及び「貸倒引当金」の計上に伴い、各期の利益も減少している。
(b) 架空取引に関連する「受取手形」及び「支払手形」の各期末残高については、通常の営業取引によるものではないため、営業外受取手形(流動資産の「その他」)及び営業外支払手形(流動負債の「その他」)へ振替えた。
(c) (a)及び(b)により消去された受取手形及び売掛金に関連し計上されていた貸倒引当金も合わせて消去し、各期の貸倒引当金繰入額・戻入額の調整を行った。
(d) 上記訂正による損益への影響に関連する税効果会計の適用による調整及び第110期第1四半期~第3四半期における法人税等計上額の調整(未払法人税等の減額)を行った。
(e) 第104期における期首利益剰余金に対し、第103 期以前に認識された架空・循環取引の訂正による損益影響累計額の調整を行った。
(2) 主要な財務諸表項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、総資産、純資産への影響額は、以下のとおりである。△は
損失を表す。
年度別不正取引影響額
(単位:百万円)
104期/105期/106期/107期/108期//109期
平成19年3月期/平成20年3月期/平成21年3月期/平成22年3月期/平成23年3月期/平成24年3月期//第1四半期・第2四半期・第3四半期///合計
売上高 △ 540/ △ 626/ △ 816/ △ 883/△ 1,090/△ 1,568// △ 523・ △ 522・ △ 501/// △ 7,073
売上総利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 33/ △ 40/ △ 51// △ 18・ △ 19・△ 17/// △ 194
営業利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 32/ △ 39/ △ 50// △ 18・ △ 19・△ 16/// △ 191
経常利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 32/ △ 39/ △ 50// △ 18・ △ 19・ △ 16/// △ 191
税引前利益 △ 244/ △ 208/ △ 150/ △ 208/ △ 168/ △ 303// △ 43・ △ 107・ △ 98/// △ 1,533
当期純利益 △ 244/ △ 208/ △ 150/ △ 208/ △ 168/ △ 304// △ 35・ △ 99・ △ 90/// △ 1,509
資産合計 △ 529/ △ 720/ △ 944/△1,162/△ 1,334/△ 1,676//△1,732・△ 1,918・ △ 1,933
負債合計 △ 43/ △ 26/ △ 99/ △ 109/ △ 113/ △ 150/ △ 171・ △ 257・ △ 182
純資産合計 △ 485/ △ 694/ △ 844/△1,052/△ 1,221/△ 1,525/△ 1,561・△ 1,660・ △ 1,751
第104期の純資産の影響額△485百万円には、第104期の訂正による影響△244百万円に加え、第103期以前の訂正による期首剰余金への累積的影響額△241百万円が含まれている。
(3) 連結損益計算書及び連結貸借対照表の主要項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による連結損益計算書及び連結貸借対照表の主要項目への影響及びそれらを反映した数値は以下のとおりである。
【連結財務諸表】
(単位:百万円)
連結会計年度 連結損益計算書
売上高/売上原価/経常利益/当期純利益
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 93,749/ 82,805/ 2,415/ 1,170
増減 / △ 540/ △ 547/ 6/ △ 244
訂正後/ 93,209/ 82,258/ 2,422/ 925
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 98,094/ 86,455/ 2,978/ 1,351
増減 / △ 626/ △ 621/ △ 4/ △ 208
訂正後/ 97,468/ 85,834/ 2,974/ 1,143
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 88,776/ 77,346/ 2,484/ 1,136
増減 / △ 816/ △ 800/ △ 15/ △ 150
訂正後/ 87,960/ 76,545/ 2,468/ 986
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 62,743/ 54,653/ 143/ 59
増減 / △ 883/ △ 850/ △ 32/ △ 208
訂正後/ 61,859/ 53,802/ 110/ △ 148
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 74,101/ 64,537/ 1,291/ 574
増減 /△1,090/△1,050/ △ 39/ △ 168
訂正後/ 73,010/ 63,486/ 1,251/ 406
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 81,665/ 70,717/ 2,003/ 858
増減 /△1,568/△1,516/ △ 50/ △ 304
訂正後/ 80,097/ 69,201/ 1,952/ 554
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 18,737/ 16,192/ 453/ 272
増減 / △ 523/ △ 505/ △ 18/ △ 35
訂正後/ 18,213/ 15,687/ 434/ 236
(第2四半期) 訂正前/ 42,585/ 37,111/ 1,086/ 567
増減 /△1,046/△1,008/ △ 37/ △ 134
訂正後/ 41,539/ 36,103/ 1,049/ 432
(第3四半期) 訂正前/ 59,459/ 51,672/ 1,205/ 601
増減 /△1,548/△1,492/ △ 54/ △ 225
訂正後/ 57,911/ 50,179/ 1,151/ 375
(単位:百万円)
連結会計年度 連結貸借対照表「資産」
受取手形及び売掛金/たな卸資産/長期未収入金/貸倒引当金(固定)/その他の資産/資産合計
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 37,439/ 7,476/ - / △ 126/20,861/ 65,650
増減 / △ 264/ △ 311/ 589/ △ 589/ 45/ △ 529
訂正後/ 37,175/ 7,165/ 589/ △ 715/20,906/ 65,121
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 32,787/ 5,282/ - / △ 121/14,495/ 52,443
増減 / △ 291/ △ 457/ 793/ △ 793/ 28/ △ 720
訂正後/ 32,495/ 4,824/ 793/ △ 915/14,524/ 51,723
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 28,502/ 3,942/ - / △ 295/11,197/ 43,346
増減 / △ 380/ △ 585/ 927/ △ 927/ 21/ △ 944
訂正後/ 28,122/ 3,356/ 927/△ 1,223/11,218/ 42,401
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,940/ 3,003/ - / △ 339/13,214/ 37,819
増減 / △ 301/ △ 882/1,102/△ 1,102/ 20/△ 1,162
訂正後/ 21,639/ 2,121/1,102/△ 1,442/13,235/ 36,656
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 26,706/ 3,552/ - / △ 160/13,602/ 43,701
増減 / △ 246/△1,119/1,231/△ 1,231/ 31/△ 1,334
訂正後/ 26,460/ 2,433/1,231/△ 1,391/13,633/ 42,367
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,472/ 4,477/ - / △ 125/15,423/ 53,248
増減 / △ 460/△1,242/1,484/△ 1,484/ 26/△ 1,676
訂正後/ 33,012/ 3,235/1,484/△ 1,609/15,449/ 51,572
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 31,117/ 5,300/ - / △ 126/15,653/ 51,945
増減 / △ 547/△1,228/1,510/△ 1,510/ 43/△ 1,732
訂正後/ 30,569/ 4,071/1,510/△ 1,636/15,697/ 50,212
(第2四半期) 訂正前/ 32,956/ 4,319/ - / △ 173/13,512/ 50,614
増減 / △ 644/△1,336/1,598/△ 1,598/ 62/△ 1,918
訂正後/ 32,312/ 2,982/1,598/△ 1,772/13,575/ 48,696
(第3四半期) 訂正前/ 29,274/ 4,765/ - / △ 126/14,667/ 48,581
増減 / △ 750/△1,302/1,740/△ 1,680/ 59/△ 1,933
訂正後/ 28,523/ 3,462/1,740/△ 1,806/14,726/ 46,647
(単位:百万円)
連結会計年度 連結貸借対照表「負債」//「純資産」
支払手形及び買掛金/その他の負債/負債合計//純資産/利益余剰金
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 40,163/ 12,160/52,324// 13,326/ 4,656
増減 / △ 219/ 176/ △ 43// △ 485/ △ 485
訂正後/ 39,943/ 12,336/52,280// 12,841/ 4,170
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 32,775/ 7,330/40,106// 12,336/ 5,653
増減 / △ 341/ 315/ △ 26// △ 694/ △ 694
訂正後/ 32,434/ 7,646/40,080// 11,642/ 4,958
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 26,632/ 6,408/33,040// 10,305/ 6,403
増減 / △ 352/ 252/ △ 99// △ 844/ △ 844
訂正後/ 26,279/ 6,661/32,940// 9,460/ 5,558
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,173/ 4,863/26,037// 11,782/ 6,173
増減 / △ 537/ 428/△ 109//△1,052/△1,052
訂正後/ 20,635/ 5,291/25,927// 10,729/ 5,120
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 25,245/ 6,629/31,874// 11,827/ 6,489
増減 / △ 472/ 359/△ 113//△1,221/△1,221
訂正後/ 24,772/ 6,988/31,760// 10,606/ 5,268
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,359/ 6,933/40,292// 12,955/ 7,090
増減 / △ 734/ 583/△ 150//△1,525/△1,525
訂正後/ 32,625/ 7,516/40,141// 11,430/ 5,565
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 32,671/ 6,757/39,429// 12,516/ 7,137
増減 / △ 731/ 560/△ 171//△1,561/△1,561
訂正後/ 31,939/ 7,317/39,257// 10,955/ 5,576
(第2四半期) 訂正前/ 31,421/ 6,539/37,960// 12,653/ 7,432
増減 / △ 873/ 615/△ 257//△1,660/△1,660
訂正後/ 30,547/ 7,155/37,703// 10,993/ 5,772
(第3四半期) 訂正前/ 28,506/ 6,900/35,407// 13,173/ 7,369
増減 / △ 748/ 565/△ 182//△1,751/△1,751
訂正後/ 27,758/ 7,466/35,224// 11,422/ 5,618
なお、一連の架空・循環取引に関連した取引先等から当社へ損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があるため、平成25 年3 月期の年度決算においては、将来の損失負担見込み額について、偶発損失引当金を計上する予定である。
(4) 損益計算書及び貸借対照表の主要項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による損益計算書及び貸借対照表の主要項目への影響及びそれらを反映した数値は以下のとおりである。
【個別財務諸表】
(単位:百万円)
事業年度 損益計算書
売上高/売上原価/経常利益/当期純利益
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 87,034/ 78,597/ 1,968/ 948
増減 / △ 540/ △ 547/ 6/ △ 244
訂正後/ 86,494/ 78,050/ 1,975/ 703
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 90,880/ 82,092/ 2,446/ 1,154
増減 / △ 626/ △ 621/ △ 4/ △ 208
訂正後/ 90,254/ 81,470/ 2,442/ 945
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 82,027/ 73,432/ 2,281/ 1,070
増減 / △ 816/ △ 800/ △ 15/ △ 150
訂正後/ 81,211/ 72,632/ 2,265/ 919
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 58,285/ 52,269/ 211/ 153
増減 / △ 883/ △ 850/ △ 32/ △ 208
訂正後/ 57,402/ 51,418/ 178/ △ 54
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 69,541/ 62,565/ 893/ 312
増減 /△1,090/△1,050/ △ 39/ △ 168
訂正後/ 68,451/ 61,514/ 853/ 143
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 76,074/ 68,069/ 1,556/ 695
増減 /△1,568/△1,516/ △ 50/ △ 304
訂正後/ 74,506/ 66,553/ 1,505/ 391
(単位:百万円)
事業年度 貸借対照表「資産」
受取手形及び売掛金/たな卸資産/長期未収入金/貸倒引当金(固定)/その他の資産/資産合計
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 36,949/ 6,606/ - / △ 96/18,777/ 62,237
増減 / △ 264/ △ 311/ 589/ △ 589/ 45/ △ 529
訂正後/ 36,685/ 6,295/ 589/ △ 685/18,822/ 61,707
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 31,581/ 4,649/ - / △ 95/12,523/ 48,659
増減 / △ 291/ △ 457/ 793/ △ 793/ 28/ △ 720
訂正後/ 31,290/ 4,191/ 793/ △ 889/12,552/ 47,938
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 27,738/ 3,306/ - / △ 160/ 9,753/ 40,636
増減 / △ 380/ △ 585/ 927/ △ 927/ 21/ △ 944
訂正後/ 27,357/ 2,721/ 927/ △1,088/ 9,774/ 39,692
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,689/ 2,597/ - / △ 191/11,434/ 35,529
増減 / △ 301/ △ 882/1,102/△ 1,102/ 20/△ 1,162
訂正後/ 21,388/ 1,714/1,102/△ 1,294/11,455/ 34,366
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 26,373/ 3,007/ - / △ 172/11,297/ 40,506
増減 / △ 246/△1,119/1,231/△ 1,231/ 31/△ 1,334
訂正後/ 26,126/ 1,888/1,231/△ 1,404/11,328/ 39,171
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,955/ 3,990/ - / △ 128/13,175/ 50,992
増減 / △ 460/△1,242/1,484/△ 1,484/ 26/△ 1,676
訂正後/ 33,495/ 2,747/1,484/△ 1,613/13,201/ 49,316
(単位:百万円)
事業年度 対策対照表「負債」//「純資産」
支払手形及び買掛金/その他の負債/負債合計//純資産/利益余剰金
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 38,096/ 12,423/50,520// 11,716/ 3,334
増減 / △ 219/ 176/ △ 43// △ 485/ △ 485
訂正後/ 37,876/ 12,599/50,476// 11,230/ 2,848
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 31,233/ 6,877/38,110// 10,548/ 4,134
増減 / △ 341/ 315/ △ 26// △ 694/ △ 694
訂正後/ 30,891/ 7,192/38,084// 9,854/ 3,439
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 25,540/ 6,364/31,905// 8,731/ 4,817
増減 / △ 352/ 252/ △ 99// △ 844/ △ 844
訂正後/ 25,188/ 6,617/31,805// 7,886/ 3,972
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 20,427/ 4,913/25,341// 10,188/ 4,680
増減 / △ 537/ 428/△ 109//△1,052/△1,052
訂正後/ 19,889/ 5,341/25,231// 9,135/ 3,628
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 24,195/ 6,254/30,449// 10,056/ 4,735
増減 / △ 472/ 359/△ 113//△1,221/△1,221
訂正後/ 23,722/ 6,613/30,335// 8,835/ 3,514
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 32,559/ 7,413/39,972// 11,019/ 5,173
増減 / △ 734/ 583/△ 150//△1,525/△1,525
訂正後/ 31,825/ 7,996/39,821// 9,494/ 3,648
なお、一連の架空・循環取引に関連した取引先等から当社へ損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があるため、平成25 年3 月期の年度決算においては、将来の損失負担見込み額について、偶発損失引当金を計上する予定である。
第6 内部規定及び内部統制に関する事項
1 不正取引に関する内部規定
(1) 職務権限及び業務分掌
元SD長が勤務していた東海東部SDは、営業総括本部下の中日本営業本部内の一つのSDとして位置付けをしており、平成23年10月より実施されたエリア営業戦略に基づき東海地区の東部エリアを担当とする営業部門である。SDにおいては、売上管理(見積り及び受注、発注(購買)等の決定)、納入管理を行うほか、取引先管理を行っている。なお、取引先の与信管理については営業部門とコンプライアンス室にて与信限度を設定し、その設定枠内での運用としている。
(2) 決裁権限
今回問題となった架空・循環取引の売上取引額は、そのほとんどが1 件あたり約500万円以上1,000万円未満の金額で設定されており、A社及び特定取引先7社の売上取引も決裁権限上、1件3,000万円未満であり、この金額は課長が決裁できるものであった。元SD長が当時の課長、営業部長の職位であったため、自ら担当し決裁することにより実行可能であった。
(3) 売上及び仕入に関する規定
商品の売上及び仕入については、決裁権限規定及び審査規定により売上先及び仕入先に対し、累積与信限度を設定することとなっており、営業課長または営業部長が継続取引先(売上・仕入)累積与信限度設定申請・報告書に信用調査情報等を添付の上起案し、審査規定に基づくコンプライアンス室の審査及び経理部門の取引条件確認後、累積与信限度額が設定される。
また、決裁権限規定により在庫仕入れに関しても、金額によってSD長決裁、本部長決裁と分かれている。
今回問題となった架空・循環取引の形態は、最終的なユーザーが異なる個別の工事物件であったために、いずれの取引も、決裁権限規定を遵守した決裁がなされていた。
特定取引先7社の内、架空・循環取引の売上額の約4割を占めるC社についても、営業部門から累積与信限度額の設定申請がなされており、累積与信限度設定額に対し累積債権残高は限度額内に収まっており、規定上問題はなかった。しかし、累積債権の概念を売掛金ベースで管理していたため、受注残高の管理が十分に出来ていないことによる運用上の問題はあったと考えられる。
なお、客先または仕入先に在庫を預託する事は原則認めないものの、工事物件等のたな卸資産は除くとしており、これに関し工事物件でのたな卸資産を管理する規定は存在していない。
2 内部統制の整備状況
当社では、コーポレート・ガバナンスの体制強化を、経営の最重要課題の一つと位置づけ、いわゆるJ-SOX法に適合するように組織体制や規程類の整備、内部通報制度の制定、リスクマネジメント委員会や内部統制委員会の設置等内部統制システムの整備に取り組んできたが、後記3 の内部統制上の問題もあり、整備、運用両面では必ずしも有効に機能していない事実が確認された。
なお、当社の全社的な内部統制状況(本社による中日本営業本部への統制状況を含む。)についての調査・検討は、第三者委員会の役割となっているため、社内調査委員会による調査では、その点に関する調査・検討までは行っていない。
3 内部統制上の問題
(1) 中日本営業本部内における実行
不正取引は、元SD長が長年に渡って常に部門管理者(課長、部長、SD長)の地位にあり、元SD長の主導・関与のもと、A社という社外の協力者を得ていたため、内部統制が有効に機能しにくい状況にあったと考えられる。
(2) 中日本営業本部内における特殊要因
また、中日本営業本部内に於ける特殊要因として、他の営業本部または地区との人事異動も少なく、社内・社外の人間関係の濃密さも相俟って、内部統制の機能の大きな柱である相互牽制及び業務処理の可視化が機能しない側面が存在していた。
(a) 元SD長も入社以来、中日本営業本部に勤務し、課長職になってからは装置営業部門一筋(20 年)であり、常に決裁権限を握っていた。
(b) 装置営業部門は、特に上記社内・社外の人間関係に加えて顧客の個別の要望によって製作するという商品の特殊性から仕入先と関係が濃密になり、それ故に癒着するという関係が醸成されやすい環境となっていた。
(c) 元SD長は社内・社外の評判もよく、装置営業部門のキーマンであり、営業本部の仲間意識も強く、不正取引発覚後も「まさか、あの人が。」という評価で満ちており、周囲からの批判は無かった。
(3) 内部統制を無力化させようとするための手段の存在
前記(1)のとおり、元SD長が内部統制を無力化させようとするために用いていた手段としては、以下のようなものが確認された。
(a) 業務の有効性及び効率性について
・当社の社内処理に義務付けられている書類(注文書、納品書、請求書)をA社と共謀、偽造し提出していた。
(b) 財務報告の信頼性について
・平成13 年頃は、実物件の先行検収(前渡金支払い)において、稟議書に因って前渡金処理すべきものを、虚偽の納品・請求書をA社より入手し、その時点ではまだ商品が実在しないことを知りながら会社に商品の代金支払をさせていた。
・取引において、自己で伝票処理をし、自己決裁であることを隠蔽するために、自己の社内優位性を利用し、部下の名義を使い社内報告をしていた。また、それに対して部下が意見できるような職場環境でもなかった。
・部下に指示し、架空発注や水増し発注を実行させた。
(c) 事業活動に関わる法令等の遵守について(コンプライアンス)
・社外への提出書類(注文書、監査法人の残高確認書、念書等)を偽造し提出した。
・遊興費を捻出するためにA社と共謀し、当社の資金流用を行っていた。
(d) 資産の保全について
・商品の実在性の現物確認を要求すると、偽の図面、工程表、写真等をA社と共謀、作成し提出したり、商品の保管場所への立入りを最終売上先との関係(当社は黒子
的な存在)、納入先の現場の危険性を主張し、言葉巧みに拒否していた。
以 上
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【ひらく会情報部:タゴ51億円事件18周年記念調査班・この項つづく】
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3 不正取引に至る経緯、動機及び背景
社内において元SD長及び不正取引に関与した営業部員のヒヤリング、A社とのヒヤリング並びに提供資料の分析、さらには、特定取引先7 社とのヒヤリング等によって、不正取引に至る経緯、動機及び背景は以下のとおりと判断した。
(1) 個人的な遊興費・接待費の捻出
A社設立間もない平成10 年秋頃、元SD長は自身の遊興費や客先接待費及び部員慰労費などの捻出のために、A社元社長に、当社から発注したA社への仕入代金を水増しして支払い、この水増しして得た現金を一定の割合でA社元社長と元SD長で分けることを持ちかけた。A社も資金繰りが厳しかったことから受け入れ、A社元社長と元SD長の深い関係が始まった。
平成16 年頃からは、A社に賃貸マンションの賃借料も支払わせ、さらには、個人的な海外への複数回にわたる渡航費用も負担させていた。
(2) A社への資金支援
不正取引に関与した主な取引先の概要に記載したとおり、A社元社長が平成13年頃に事業に行き詰った際に元SD長に相談した。元SD長にとっては、仕入先であるA社製作の設備装置が未完となれば、客先納期までに設備装置が未納となり、客先に多大な迷惑をかけることを深く懸念し、同社の資金繰りを何としても支援する必要性が生じてしまったのを契機に、同社の資金繰りにつき深く関与することとなったと証言している。A社元社長は、銀行勤務経験があったものの資金繰りについてはドンブリ勘定であったため、また、A社現社長は技術者であったために元SD長が資金繰り全般を管理するようになっていった。
なお、A社からの資料によれば、上述の個人的な遊興費・接待費の捻出目的で水増し発注を
実施していたことから、A社が倒産するとそれまでの不正取引が全て発覚することを恐れて、A社の支援をし続ける必要性があったとも考えられる。
同社の資金繰り支援の方策として、平成13年頃の当初は、実物件の先行検収(前渡金支払い)を独断で行ったことから始まる。その後、A社元社長は、A社が持つ当社宛の実物件の売上債権を銀行にて流動化(資金化)することなどで急場を凌いだ。また、平成15 年頃にはプール金取引を開始し、現金着服と運転資金に利用していた。
平成17年頃、別の形での運転資金調達の必要性から、元SD長は、架空・循環取引を考案し、これに着手したものと思われる。架空・循環取引においては、A社は、当社や特定取引先7社のうちの4社から売上代金を回収して、その代金に特定取引先7社の利益(3%~5%程度)や当社の利益を上乗せして支払う必要があった。従って、A社の資金繰りを支援する目的で始めた架空・循環取引ではあったが、常にA社の資金を当社が補給する形となり、架空伝票上では、当社の立替資金がたな卸資産の形で経理処理されていった。このため、当社が架空・循環取引により生じた見掛け上の債権・債務の決済資金の振出し元となっていた。
(3) 中日本営業本部特有の社内環境とチェック体制の不備
(a) 人事異動の少なさ
中日本営業本部は、地理的に東日本営業本部と西日本営業本部に挟まれた位置にあり、営業規模も東日本・西日本に比べ小さい。また、名古屋地区を中心とした営業エリアであるため、顧客も東日本・西日本に無い、大手機械メーカーや大手自動車会社が独特の存在感を示す地域である。
このため、顧客密着型の営業スタイルをとる当社にとって、このような顧客と信頼関係を築くことによって、リピートオーダーの獲得などが実現できることとなる。このため特定の営業担当者が特定の顧客を担当することが、営業効率上ある程度必要となる。また、他地域には存在しない顧客特性上、他の地域の者に代替させることが容易にできない商習慣もあり、人事異動ができにくい環境にあった。
反面、このような環境では、顧客と密着できる可能性は高まるが同時に仕入先とも親密になる環境であり、このような環境が仕入先との癒着を生む一因となった。
(b) 日常の営業事務処理方法の悪用
当社における売上(受注)処理は、営業部門で注文を受け(注文書・注文に相当する書面)、営業担当者がオンラインシステムに受注入力をし、売上先に注文請書及びそれに相当する文書を発行、送付し、受注を受けた商品の手配(外部への商品の発送指示、製造指示)を行う。
また、購買(発注)においては、営業担当者がオンラインシステムを利用して発注入力を行う事で発行される注文書を仕入先に送付する。後日、当該仕入先より出荷完了後に納品書が経理部門に返送され、売上確認の証憑として利用される。
この間、客先要求能力に応じた仕入先選定から、客先への見積書提出、客先要望事項の仕入先への伝達、現場据付工事の立会い、客先への引渡しなどの営業活動や、さらには、売上後の売掛金回収状況の確認や仕入先への支払い指示など、担当営業部員がほぼ一人で営業事務処理を管理・実行するというスタイルが踏襲されてきた。
上記のとおり、中日本営業本部においては、この営業スタイルを、顧客と密着する手法に利用する以上に、仕入先との癒着のための仕組みとして利用していた営業部員が存在した。
当社では、現場据付工事などに際し、建設業法等の遵守に伴う監理技術者の派遣などを行うエンジニアリング子会社を所有しているが、当該子会社における中日本営業本部の案件を管轄する者は1 名だけであり、中日本営業本部の設備装置事業では、ビッグプロジェクトの案件に手をとられ、その他の案件にかかる営業面からの実在性の確認も手薄となっていた。また、過去に仕入先との癒着から、平成18 年2 月に発覚した、大阪装置部門のa 部長(当時)の不祥事につき、同種の不正行為が他に存在しないかどうかを綿密に調査していれば、この元SD長関与の取引も早期に発見できた可能性もあるだけに、悔やまれる。
(c) 小規模の事務所
中日本営業本部は、総人員が63 名(平成25 年3 月31 日現在)であり、ビルのワンフロアを占め、全体が見通せる範囲で全員が配置されている。従って、他地区に比べ家族的意識が強く、本部長やSD長の意向が全員に強く伝わりやすい環境にある。このため、今回の不正取引を主導した元SD長の行動・指示に対し異議を唱えるまでの者はいなかった。また、元SD長の指示で、架空仕入や水増し仕入を指示されたとしても、異議を唱えたり、命令を拒否できるような環境ではなかった。
さらには、小規模の事務所の特徴として、組織上の不完全さがあった。管理部門組織の内、コンプライアンス室、内部統制部門、人事部門及び総務部門の常駐者はおらず、大阪本社から該当業務の管理者が出張し対応していた。また、経理部門も可能な範囲で、それらの業務を代理処理していた。このため、経理部門の人数が手薄となり、管理部門全体の牽制力も不足しがちであった。
(d) 工事案件収益管理の甘さ
設備装置事業の展開に当たっては、物件の契約に至るまでの過程の中では、客先からの引合内容に応じ、仕入先との打合せ・協議の結果により仕入原価の見積りをし、それをもとに客先への見積書を作成し、客先へ提出する。
この間、特に、いわゆるビッグプロジェクトの遂行においては、仕入先も複数社存在し、各社ごとに業務分担の調整の必要性もあり、原価の査定には多大な労力を要する。この時点において、各工事案件の採算管理も営業部員にとっては重要な業務のひとつとなり、不測の事態を重視しすぎた原価算定を一部において実施してしまうと、原価管理の全体に対し甘い査定(予算上、原価を高めに設定)がされる場合がある。不正取引においては、この甘い収益管理を実施していた物件が存在した。
A社を通した発注取引のうち、実物件取引に付随する架空据付業務発注や甘い金額査定による水増し発注が発生してしまった原因は、この甘い収益管理の環境が中日本営業本部内に醸成されていたことによるものである。
(e) チェック体制の不備
当社においては、与信管理制度などにおいて売上・仕入行為や金額の管理は、書類上厳密にチェックされているが、たな卸資産等の現物確認については、現物が装置全体の中の一部に組み込まれていたり、また、海外を含む遠隔地への搬送物件等を理由に現物の確認を怠っていたケースも多く存在した。このため、1 件1,000 万円以上の売上物件については、担当SD長から、客先注文書を経理部門に提出させることで売上を確認しているが、実在性の確認までには至っていなかった。
また、1 件1,000 万円以上の売上物件については、客先注文書を提出させているものの、1,000 万円未満の物件については客先注文書の提出が不要であり、会社としてその実在性の確認は未実施であった。
今回の不正取引の1 件あたりの金額はそのほとんどが1,000 万円以下の案件であり、元SD長は、この制度のチェックをすり抜ける目的で、捏造金額を1,000 万円以下に設定したものと思われる。
4 不正取引の全体像
(1) 各取引先の架空・循環取引の時期と位置付け
特定取引先7 社からのヒヤリング、社内ヒヤリング及びA社提供資料の分析結果などから、不正取引は、大別して3 期に分けられる。
第Ⅰ期 A社設立からA社税務調査による元SD長の現金着服の指摘があるまで(平成10年10月~平成18年8月)
第Ⅱ期 J社への税務調査から波及したA社への税務調査で、元SD長の現金着服、架空・循環取引の指摘があるまで(平成18年9月~平成21年8月)
第Ⅲ期 現金着服の中止と、架空・循環取引の拡大、破綻まで(平成21年9月~平成25年3月)
上記の3期に区分した不正取引との件数・金額を組み合わせたものは下記の表のとおりである。
このうち、納入実態のある仕入取引については、社内ヒヤリングを行った結果、中日本営業本部にて、A社とH社を仕入先とする取引に関し、水増し発注と架空工事代金追加発注が行われていたことが判明したため、この2 社を仕入先とする全社の設備装置部門の仕入データについて担当者に再確認したことから、判明した金額である。
中日本営業本部の設備装置部門において、これらは「プール金」と称し、工事案件収益管理の甘い査定の中から、当社の差益分の大きい取引があった場合などに、追加工事費の名目で水増し発注と架空工事代金発注を行い、上記2社にこの代金をプールし、後日この2社の赤字取引等に充当させる目的であったとの証言を得た。しかし、社内調査の結果、実際にはこれらプール金の大部分が、元SD長及び一部の社内関与者の現金着服に利用されたものであったと判断した。
(単位:百万円)
納入実態のある仕入取引//納入実態のない仕入取引
水増し発注(件数・金額)/架空工事代金追加発注(件数・金額)//架空・循環工事代金(件数・金額)
第Ⅰ期 ①平成10年10月~平成14年3月/不明・不明/7・19//ー/-
②平成14年4月~平成18年8月/不明・不明/6・9//82・718
第Ⅱ期 ③平成18年9月~平成21年8月/9・3/51・109//259・1,903
第Ⅲ期 ④平成21年9月~平成25年3月/10・11/23・16//607・4,914
合 計/19・14/87・154//948・7,536
(注)これら件数ならびに金額は、当社資料をもとに、当社社員に対しての聞き取り調査により当社の買掛金支払い総額を集計したもので、この支払い金額のうちのどの程度の金額が元SD長ほか社内関与者の現金着服額となったかは、本人の自白とA社提供の資料から推定している。(後記6 社内関与者による現金着服額の推定参照)
(a) 第Ⅰ期 平成18年8月以前
(A社設立から税務調査による現金着服の指摘があるまで)
当初はA社の運転資金補給や、元SD長の遊興費捻出の目的で、A社及びA社関連会社を利用した実物件の水増し発注や架空仕入取引を行っていた。この時期の遊興費捻出については、A社そのものから現金を受領することに加え、A社の関連会社2 社を使ったルートでの現金捻出であった。
大体の期間と金額は当社の記録では、下記のとおりである。
① 平成10年10月(A社設立)~平成14年3月
7 件 当社の仕入金額 19百万円
但し、社内関与者の証言を得られた金額が上記のものであり、a 元部長は実行したものの、詳細に記憶していないということのため、詳細金額は不詳である。
② 平成14年4月~平成18年8月
A社を媒介にした架空・循環取引を始めた時期である。実在する仕入取引における水増し発注だけではA社の運転資金を賄うことができず、新たな資金調達手段として架空・循環取引を画策した。
82 件 当社の仕入金額 718百万円
また、当社の仕入先にA社を選定し、架空仕入を部下に指示し、仕入計上させることにより仕入代金を支払っていた。
6件 当社の仕入金額 9百万円
(b) 第Ⅱ期 平成18年9月~平成21年8月
(A社税務調査による、A社関連会社を経由した現金着服と架空・循環取引の指摘が行われるまで)
③ 平成 18 年9 月~平成21 年8 月
①、②の期間で発覚しなかったため、架空・循環取引によるA社への運転資金補給と遊興費捻出の目的の現金化に拍車がかかってくる時期である。
(図3 全体の資金フロー図 参照)
現金化については、A社の関連会社である、J社(A社現社長の弟の配偶者の運営企業)やK社を経由し、当社が支払った代金を当社の仕入先を経由させ、J社やK社への発注代金という名目で支払わせ、現金化をしていた。
この取引金額については、当社の資料からは明らかにできない。当社からは、設備据付代金名目やカタログ作成代金名目として当社の仕入先(M社とL社)に支払うのみであり、当社の仕入先の下位に位置するJ社やK社への支払金額や現金流用金額などは把握できないからである。当社が直接の仕入先(M社とL社)2社に支払った金額は、
20件 当社の仕入金額 32百万円
であるが、この金額は、下記の架空・循環取引の金額に含まれており、元SD長が着服した金額の特定は出来なかった。
また、架空・循環取引金額は、
259件 当社の仕入金額 1,903百万円
と増加している。
さらに、当社の仕入先にA社を選定し、納入実態のある仕入金額の査定を甘くすることによる水増し発注により仕入代金を支払っていたものは、
9件 当社の仕入金額 3百万円
であり、架空仕入を部下に仕入計上させることにより仕入代金を支払っていたもの
は、
51件 当社の仕入金額 109百万円
である。
(図3、全体の資金フロー図)
(c) 第Ⅲ期 平成21年9月以降
(現金着服の中止と架空・循環取引の拡大から破綻まで)
④ 平成21年9月以降
平成21年8月にA社に税務調査が行われて以降は、上記のような水増し・架空仕入取引による遊興費捻出を追加8社を経由して実行することが容易に出来なくなったため、A社に対する運転資金補給や元SD長他の遊興費捻出のために、架空・循環取引に注力していくことになる。
架空・循環取引金額は、
607件 当社の仕入金額 4,914 百万円
と増加している。
さらに、当社の仕入先にA社を選定し、納入実態のある仕入金額の査定を甘くすることによる水増し発注により仕入代金を支払っていたものは、
10件 当社の仕入金額 11 百万円
また、当社の仕入先にA社を選定し、架空仕入を部下に仕入計上させることにより仕入代金を支払っていたものは、
23件 当社の仕入金額 16百万円
である。
これらに加え、元SD長の証言によれば、上記のとおりA社を経由した現金着服が難しくなったため、カラ出張による出張旅費の水増し精算により、総額約2百万円を、また、R社への架空発注により約1 百万円を着服した。
(2) 架空・循環取引の破綻
架空・循環取引は、取引から付加価値を生み出すものではなく、単なる資金の循環であるため、各社で利益を上乗せした取引を繰り返すと、その利益相当額が資金の不足を生み出し、新たなファイナンスを行う必要がある。
当社がファイナンス機能を担っていたことから、資金不足を補うために、架空・循環取引に係る前渡(仕入れの先行、あるいはファイナンスの実行ということができる)が行われ、この結果として架空・循環取引に係る前渡金を意味するたな卸資産残高が平成24年3月期末には1,242百万円まで増加していた。平成24 年12 月末にはたな卸資産残高が1,302百万円にも上ったので、第2.1(1)「架空取引の疑いの浮上」に記載のとおり、当社として一連の取引を中止させることを決定したことから、ファイナンス機能を担う当社からの資金の還流がストップし架空・循環取引が破綻した。
(3) 架空・循環取引の総額及び破綻による各社の資金ポジション
当社及び調査対象会社8 社の間で行われた架空・循環取引と認定した取引数(売上取引と仕入取引の合計件数)は、約4,000件(うち当社の取引数、約2,000件)であった。これらの取引については、A社から入手した一連の不正取引を記録した資料及び当社の売上及び仕入データから集計及び分析を行い、特定取引先7 社から入手した各社取引明細との照合を行った。また、当社が関係する不正取引の金額は、当社の売上・仕入データに基づき集計及び分析を行った。
架空・循環取引において、売上計上をした会社における資金流入額及び仕入計上をした会社における資金流出額を算定するために、平成25年3月31日時点での各社の未回収債権・未払債務の残高額を調整し、各社における資金流入額及び流出額とそれらの差額としての資金ポジションを算定した。
以上の結果、取引総額として、資金流入総額(各社での売上取引による入金額の合計)は、約31,104百万円(うち当社の売上取引による資金流入総額約7,552百万円)であり、資金流出総額(各社の仕入取引による支出額の合計)は、約31,104百万円(うち当社の仕入取引による支出総額約8,671百万円)であった。
これらの取引の結果、平成25年3月31日現在における各社の架空・循環取引から生じた資金ポジションについて、プラスの資金残となったのは、A社630百万円、C社140百万円、B社72百万円、D社28百万円、E社41百万円、H社25百万円及びG社28百万円であったのに対し、マイナスの資金残となったのは、当社1,119百万円及びF社14百万円(但し未決済の債権債務の純額24百万円を、もし決済したと仮定すると資金残はプラス10百万円になる。)であった。
また、当社の不正取引に係るたな卸資産残高1,212百万円(第110期末、平成25年3月31日現在)は、不正取引の商流から考えて、一旦特定取引先7 社に資金が還流し、その後粗利調整後の金額がA社に還流していると仮定している。当社からたな卸資産分の資金約1,212百万円がA社に流れることによって、当社の資金ポジションはマイナス1,119 百万円となり、A社の資金ポジションはプラス630百万円となっている。なお、当社の不正取引に係るたな卸資産残高の推移は下記のとおりであり、当社が先行支払する形で不正取引におけるファイナンス機能を担っていた事実が伺える。
不正取引に係るたな卸資産残高の推移
(単位:百万円)
104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期
H社 - / – / – / 93/ 153/ 121/ 123
F社 80/ 117/ 186/ 228/ 222/ 202/ 288
A社 39/ - / 7/ 175/ 298/ 210/ 188
D社 - / 26/ 74/ - / 25/ 213/ 155
B社 191/ 313/ 317/ 385/ 419/ 494/ 457
合計 311/ 457/ 585/ 882/1,119/1,242/1,212
(4) 当社における修正すべき取引
これらの分析及び調査結果から、当社における修正の主な内容は、後述5 における架空・循環取引と認定した売上額及び仕入額を年度別に取消している。
5 当社における、不正取引に係る年度別取引額
不正取引売上額
(単位:百万円)
103期/104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期/合計
C社 67/ 203/ 280/ 350/ 444/ 629/ 819/ 702/ 3,498
B社 146/ 117/ 117/ 126/ 126/ 69/ 155/ 199/ 1,059
D社 - / - / - / 64/ 77/ 87/ 92/ 167/ 489
E社 43/ 43/ 26/ 59/ 72/ 78/ 139/ 147/ 611
F社 129/ 108/ 114/ 113/ 91/ 98/ 129/ 253/ 1,039
H社 - / - / - / - / - / 50/ 121/ 215/ 388
G社 74/ 67/ 86/ 102/ 71/ 76/ 109/ 172/ 760
合計 461/ 540/ 626/ 816/ 883/1,090/1,568/1,859/ 7,846
不正取引原価額
(単位:百万円)
103期/104期/105期/106期/107期/108期/109期/110期/合計
架空・循環取引
A社 83/ 65/ 44/ - / 59/ 273/ 351/ 426/1,303
B社 107/ 161/ 358/ 443/ 392/ 489/ 606/ 533/3,091
D社 - / - / - / 42/ 86/ - / 141/ 574/ 844
E社 44/ 39/ - / - / - / - / - / - / 84
F社 35/ 173/ 174/ 228/ 223/ 217/ 245/ 158/1,454
H社 - / - / - / 38/ 68/ 68/ 168/ 100/ 443
その他 170/ 76/ 23/ 27/ 16/ - / - / - / 314
小計 439/ 516/ 600/ 779/ 845/1,048/1,512/1,792/7,536
上記以外の不正取引
- / 31/ 21/ 21/ 5/ 2/ 4/ 1/ 85
合計 439/ 547/ 621/ 800/ 850/1,050/1,516/1,793/7,621
6 社内関与者による現金着服額の推定
一連の不正な架空・循環取引及び水増し発注・架空発注を伴う仕入取引からの社内関与者の現金着服額については、A社より提供を受けた資料、社内の資料の分析、社内関与者の証言等をもとに、具体的な資料・証言により一定の合理性をもった算定が可能な金額について、現金着服額として推定集計した。
集計の結果、社内関与者による現金着服額は平成25年3月末時点において147 百万円であった。
第5 過年度決算への影響額
1 過年度決算訂正の方針
前述第4の調査結果に基づき、第105期(平成20年3月期)から第109期(平成24年3月期)までの5年間の過年度決算を訂正の範囲とすべきと判断した。決算訂正を行うにあたり、訂正に足る根拠と訂正数字の確認をして、各決算期において訂正を行った。また、第104期(平成19年3月期)は、平成20年3月期訂正報告書の比較年度としての決算数値であるため、訂正の範囲の年度と同様に行っている。なお、平成18年3月期以前の事象による影響は、平成19年3月期の期首の利益剰余金に反映した。
2 過年度決算訂正による内容及び影響額
前述の不正取引に関連し、過年度決算訂正による純資産の負の影響額は1,751 百万円となった(第105期期首から第110期の第3四半期末までの損益への影響累計額で、第104期以前の損益への影響額241百万円も含む)。
(1) 決算訂正の主な内容
決算訂正の主な内容は、次のとおりである。
(a) 架空・循環取引に関する「売上高」及び「売上原価」の取消を行った。また、当該取引に 関連する「売掛金」、「たな卸資産」及び「買掛金」の各期末残高及び関連する消費税等についても取消を行った。これらの取消処理に伴う貸借差額については、一連の架空・循環取引に関する当社の支払超過差額であるため、「長期未収入金」として計上した。同時に、この「長期未収入金」のうち回収不能な債権に対して「貸倒引当金」を設定した。
仕入水増し発注・架空発注による元SD長ほか社内関与者の現金着服部分は、上記処理に合わせ「売上原価」から「長期未収入金」に振替えると共に、回収不能な債権に対して「貸倒引当金」を設定した。
なお、架空・循環取引に関する「売上高」及び「売上原価」の取消及び「貸倒引当金」の計上に伴い、各期の利益も減少している。
(b) 架空取引に関連する「受取手形」及び「支払手形」の各期末残高については、通常の営業取引によるものではないため、営業外受取手形(流動資産の「その他」)及び営業外支払手形(流動負債の「その他」)へ振替えた。
(c) (a)及び(b)により消去された受取手形及び売掛金に関連し計上されていた貸倒引当金も合わせて消去し、各期の貸倒引当金繰入額・戻入額の調整を行った。
(d) 上記訂正による損益への影響に関連する税効果会計の適用による調整及び第110期第1四半期~第3四半期における法人税等計上額の調整(未払法人税等の減額)を行った。
(e) 第104期における期首利益剰余金に対し、第103 期以前に認識された架空・循環取引の訂正による損益影響累計額の調整を行った。
(2) 主要な財務諸表項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、総資産、純資産への影響額は、以下のとおりである。△は
損失を表す。
年度別不正取引影響額
(単位:百万円)
104期/105期/106期/107期/108期//109期
平成19年3月期/平成20年3月期/平成21年3月期/平成22年3月期/平成23年3月期/平成24年3月期//第1四半期・第2四半期・第3四半期///合計
売上高 △ 540/ △ 626/ △ 816/ △ 883/△ 1,090/△ 1,568// △ 523・ △ 522・ △ 501/// △ 7,073
売上総利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 33/ △ 40/ △ 51// △ 18・ △ 19・△ 17/// △ 194
営業利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 32/ △ 39/ △ 50// △ 18・ △ 19・△ 16/// △ 191
経常利益 6/ △ 4/ △ 15/ △ 32/ △ 39/ △ 50// △ 18・ △ 19・ △ 16/// △ 191
税引前利益 △ 244/ △ 208/ △ 150/ △ 208/ △ 168/ △ 303// △ 43・ △ 107・ △ 98/// △ 1,533
当期純利益 △ 244/ △ 208/ △ 150/ △ 208/ △ 168/ △ 304// △ 35・ △ 99・ △ 90/// △ 1,509
資産合計 △ 529/ △ 720/ △ 944/△1,162/△ 1,334/△ 1,676//△1,732・△ 1,918・ △ 1,933
負債合計 △ 43/ △ 26/ △ 99/ △ 109/ △ 113/ △ 150/ △ 171・ △ 257・ △ 182
純資産合計 △ 485/ △ 694/ △ 844/△1,052/△ 1,221/△ 1,525/△ 1,561・△ 1,660・ △ 1,751
第104期の純資産の影響額△485百万円には、第104期の訂正による影響△244百万円に加え、第103期以前の訂正による期首剰余金への累積的影響額△241百万円が含まれている。
(3) 連結損益計算書及び連結貸借対照表の主要項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による連結損益計算書及び連結貸借対照表の主要項目への影響及びそれらを反映した数値は以下のとおりである。
【連結財務諸表】
(単位:百万円)
連結会計年度 連結損益計算書
売上高/売上原価/経常利益/当期純利益
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 93,749/ 82,805/ 2,415/ 1,170
増減 / △ 540/ △ 547/ 6/ △ 244
訂正後/ 93,209/ 82,258/ 2,422/ 925
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 98,094/ 86,455/ 2,978/ 1,351
増減 / △ 626/ △ 621/ △ 4/ △ 208
訂正後/ 97,468/ 85,834/ 2,974/ 1,143
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 88,776/ 77,346/ 2,484/ 1,136
増減 / △ 816/ △ 800/ △ 15/ △ 150
訂正後/ 87,960/ 76,545/ 2,468/ 986
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 62,743/ 54,653/ 143/ 59
増減 / △ 883/ △ 850/ △ 32/ △ 208
訂正後/ 61,859/ 53,802/ 110/ △ 148
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 74,101/ 64,537/ 1,291/ 574
増減 /△1,090/△1,050/ △ 39/ △ 168
訂正後/ 73,010/ 63,486/ 1,251/ 406
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 81,665/ 70,717/ 2,003/ 858
増減 /△1,568/△1,516/ △ 50/ △ 304
訂正後/ 80,097/ 69,201/ 1,952/ 554
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 18,737/ 16,192/ 453/ 272
増減 / △ 523/ △ 505/ △ 18/ △ 35
訂正後/ 18,213/ 15,687/ 434/ 236
(第2四半期) 訂正前/ 42,585/ 37,111/ 1,086/ 567
増減 /△1,046/△1,008/ △ 37/ △ 134
訂正後/ 41,539/ 36,103/ 1,049/ 432
(第3四半期) 訂正前/ 59,459/ 51,672/ 1,205/ 601
増減 /△1,548/△1,492/ △ 54/ △ 225
訂正後/ 57,911/ 50,179/ 1,151/ 375
(単位:百万円)
連結会計年度 連結貸借対照表「資産」
受取手形及び売掛金/たな卸資産/長期未収入金/貸倒引当金(固定)/その他の資産/資産合計
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 37,439/ 7,476/ - / △ 126/20,861/ 65,650
増減 / △ 264/ △ 311/ 589/ △ 589/ 45/ △ 529
訂正後/ 37,175/ 7,165/ 589/ △ 715/20,906/ 65,121
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 32,787/ 5,282/ - / △ 121/14,495/ 52,443
増減 / △ 291/ △ 457/ 793/ △ 793/ 28/ △ 720
訂正後/ 32,495/ 4,824/ 793/ △ 915/14,524/ 51,723
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 28,502/ 3,942/ - / △ 295/11,197/ 43,346
増減 / △ 380/ △ 585/ 927/ △ 927/ 21/ △ 944
訂正後/ 28,122/ 3,356/ 927/△ 1,223/11,218/ 42,401
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,940/ 3,003/ - / △ 339/13,214/ 37,819
増減 / △ 301/ △ 882/1,102/△ 1,102/ 20/△ 1,162
訂正後/ 21,639/ 2,121/1,102/△ 1,442/13,235/ 36,656
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 26,706/ 3,552/ - / △ 160/13,602/ 43,701
増減 / △ 246/△1,119/1,231/△ 1,231/ 31/△ 1,334
訂正後/ 26,460/ 2,433/1,231/△ 1,391/13,633/ 42,367
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,472/ 4,477/ - / △ 125/15,423/ 53,248
増減 / △ 460/△1,242/1,484/△ 1,484/ 26/△ 1,676
訂正後/ 33,012/ 3,235/1,484/△ 1,609/15,449/ 51,572
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 31,117/ 5,300/ - / △ 126/15,653/ 51,945
増減 / △ 547/△1,228/1,510/△ 1,510/ 43/△ 1,732
訂正後/ 30,569/ 4,071/1,510/△ 1,636/15,697/ 50,212
(第2四半期) 訂正前/ 32,956/ 4,319/ - / △ 173/13,512/ 50,614
増減 / △ 644/△1,336/1,598/△ 1,598/ 62/△ 1,918
訂正後/ 32,312/ 2,982/1,598/△ 1,772/13,575/ 48,696
(第3四半期) 訂正前/ 29,274/ 4,765/ - / △ 126/14,667/ 48,581
増減 / △ 750/△1,302/1,740/△ 1,680/ 59/△ 1,933
訂正後/ 28,523/ 3,462/1,740/△ 1,806/14,726/ 46,647
(単位:百万円)
連結会計年度 連結貸借対照表「負債」//「純資産」
支払手形及び買掛金/その他の負債/負債合計//純資産/利益余剰金
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 40,163/ 12,160/52,324// 13,326/ 4,656
増減 / △ 219/ 176/ △ 43// △ 485/ △ 485
訂正後/ 39,943/ 12,336/52,280// 12,841/ 4,170
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 32,775/ 7,330/40,106// 12,336/ 5,653
増減 / △ 341/ 315/ △ 26// △ 694/ △ 694
訂正後/ 32,434/ 7,646/40,080// 11,642/ 4,958
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 26,632/ 6,408/33,040// 10,305/ 6,403
増減 / △ 352/ 252/ △ 99// △ 844/ △ 844
訂正後/ 26,279/ 6,661/32,940// 9,460/ 5,558
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,173/ 4,863/26,037// 11,782/ 6,173
増減 / △ 537/ 428/△ 109//△1,052/△1,052
訂正後/ 20,635/ 5,291/25,927// 10,729/ 5,120
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 25,245/ 6,629/31,874// 11,827/ 6,489
増減 / △ 472/ 359/△ 113//△1,221/△1,221
訂正後/ 24,772/ 6,988/31,760// 10,606/ 5,268
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,359/ 6,933/40,292// 12,955/ 7,090
増減 / △ 734/ 583/△ 150//△1,525/△1,525
訂正後/ 32,625/ 7,516/40,141// 11,430/ 5,565
第110期 平成25年3月期
(第1四半期) 訂正前/ 32,671/ 6,757/39,429// 12,516/ 7,137
増減 / △ 731/ 560/△ 171//△1,561/△1,561
訂正後/ 31,939/ 7,317/39,257// 10,955/ 5,576
(第2四半期) 訂正前/ 31,421/ 6,539/37,960// 12,653/ 7,432
増減 / △ 873/ 615/△ 257//△1,660/△1,660
訂正後/ 30,547/ 7,155/37,703// 10,993/ 5,772
(第3四半期) 訂正前/ 28,506/ 6,900/35,407// 13,173/ 7,369
増減 / △ 748/ 565/△ 182//△1,751/△1,751
訂正後/ 27,758/ 7,466/35,224// 11,422/ 5,618
なお、一連の架空・循環取引に関連した取引先等から当社へ損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があるため、平成25 年3 月期の年度決算においては、将来の損失負担見込み額について、偶発損失引当金を計上する予定である。
(4) 損益計算書及び貸借対照表の主要項目への影響額
上記第4の5「不正取引にかかる年度別取引額」に基づき、上記(1)の決算訂正による損益計算書及び貸借対照表の主要項目への影響及びそれらを反映した数値は以下のとおりである。
【個別財務諸表】
(単位:百万円)
事業年度 損益計算書
売上高/売上原価/経常利益/当期純利益
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 87,034/ 78,597/ 1,968/ 948
増減 / △ 540/ △ 547/ 6/ △ 244
訂正後/ 86,494/ 78,050/ 1,975/ 703
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 90,880/ 82,092/ 2,446/ 1,154
増減 / △ 626/ △ 621/ △ 4/ △ 208
訂正後/ 90,254/ 81,470/ 2,442/ 945
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 82,027/ 73,432/ 2,281/ 1,070
増減 / △ 816/ △ 800/ △ 15/ △ 150
訂正後/ 81,211/ 72,632/ 2,265/ 919
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 58,285/ 52,269/ 211/ 153
増減 / △ 883/ △ 850/ △ 32/ △ 208
訂正後/ 57,402/ 51,418/ 178/ △ 54
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 69,541/ 62,565/ 893/ 312
増減 /△1,090/△1,050/ △ 39/ △ 168
訂正後/ 68,451/ 61,514/ 853/ 143
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 76,074/ 68,069/ 1,556/ 695
増減 /△1,568/△1,516/ △ 50/ △ 304
訂正後/ 74,506/ 66,553/ 1,505/ 391
(単位:百万円)
事業年度 貸借対照表「資産」
受取手形及び売掛金/たな卸資産/長期未収入金/貸倒引当金(固定)/その他の資産/資産合計
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 36,949/ 6,606/ - / △ 96/18,777/ 62,237
増減 / △ 264/ △ 311/ 589/ △ 589/ 45/ △ 529
訂正後/ 36,685/ 6,295/ 589/ △ 685/18,822/ 61,707
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 31,581/ 4,649/ - / △ 95/12,523/ 48,659
増減 / △ 291/ △ 457/ 793/ △ 793/ 28/ △ 720
訂正後/ 31,290/ 4,191/ 793/ △ 889/12,552/ 47,938
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 27,738/ 3,306/ - / △ 160/ 9,753/ 40,636
増減 / △ 380/ △ 585/ 927/ △ 927/ 21/ △ 944
訂正後/ 27,357/ 2,721/ 927/ △1,088/ 9,774/ 39,692
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 21,689/ 2,597/ - / △ 191/11,434/ 35,529
増減 / △ 301/ △ 882/1,102/△ 1,102/ 20/△ 1,162
訂正後/ 21,388/ 1,714/1,102/△ 1,294/11,455/ 34,366
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 26,373/ 3,007/ - / △ 172/11,297/ 40,506
増減 / △ 246/△1,119/1,231/△ 1,231/ 31/△ 1,334
訂正後/ 26,126/ 1,888/1,231/△ 1,404/11,328/ 39,171
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 33,955/ 3,990/ - / △ 128/13,175/ 50,992
増減 / △ 460/△1,242/1,484/△ 1,484/ 26/△ 1,676
訂正後/ 33,495/ 2,747/1,484/△ 1,613/13,201/ 49,316
(単位:百万円)
事業年度 対策対照表「負債」//「純資産」
支払手形及び買掛金/その他の負債/負債合計//純資産/利益余剰金
第104期 平成19年3月期 訂正前/ 38,096/ 12,423/50,520// 11,716/ 3,334
増減 / △ 219/ 176/ △ 43// △ 485/ △ 485
訂正後/ 37,876/ 12,599/50,476// 11,230/ 2,848
第105期 平成20年3月期 訂正前/ 31,233/ 6,877/38,110// 10,548/ 4,134
増減 / △ 341/ 315/ △ 26// △ 694/ △ 694
訂正後/ 30,891/ 7,192/38,084// 9,854/ 3,439
第106期 平成21年3月期 訂正前/ 25,540/ 6,364/31,905// 8,731/ 4,817
増減 / △ 352/ 252/ △ 99// △ 844/ △ 844
訂正後/ 25,188/ 6,617/31,805// 7,886/ 3,972
第107期 平成22年3月期 訂正前/ 20,427/ 4,913/25,341// 10,188/ 4,680
増減 / △ 537/ 428/△ 109//△1,052/△1,052
訂正後/ 19,889/ 5,341/25,231// 9,135/ 3,628
第108期 平成23年3月期 訂正前/ 24,195/ 6,254/30,449// 10,056/ 4,735
増減 / △ 472/ 359/△ 113//△1,221/△1,221
訂正後/ 23,722/ 6,613/30,335// 8,835/ 3,514
第109期 平成24年3月期 訂正前/ 32,559/ 7,413/39,972// 11,019/ 5,173
増減 / △ 734/ 583/△ 150//△1,525/△1,525
訂正後/ 31,825/ 7,996/39,821// 9,494/ 3,648
なお、一連の架空・循環取引に関連した取引先等から当社へ損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があるため、平成25 年3 月期の年度決算においては、将来の損失負担見込み額について、偶発損失引当金を計上する予定である。
第6 内部規定及び内部統制に関する事項
1 不正取引に関する内部規定
(1) 職務権限及び業務分掌
元SD長が勤務していた東海東部SDは、営業総括本部下の中日本営業本部内の一つのSDとして位置付けをしており、平成23年10月より実施されたエリア営業戦略に基づき東海地区の東部エリアを担当とする営業部門である。SDにおいては、売上管理(見積り及び受注、発注(購買)等の決定)、納入管理を行うほか、取引先管理を行っている。なお、取引先の与信管理については営業部門とコンプライアンス室にて与信限度を設定し、その設定枠内での運用としている。
(2) 決裁権限
今回問題となった架空・循環取引の売上取引額は、そのほとんどが1 件あたり約500万円以上1,000万円未満の金額で設定されており、A社及び特定取引先7社の売上取引も決裁権限上、1件3,000万円未満であり、この金額は課長が決裁できるものであった。元SD長が当時の課長、営業部長の職位であったため、自ら担当し決裁することにより実行可能であった。
(3) 売上及び仕入に関する規定
商品の売上及び仕入については、決裁権限規定及び審査規定により売上先及び仕入先に対し、累積与信限度を設定することとなっており、営業課長または営業部長が継続取引先(売上・仕入)累積与信限度設定申請・報告書に信用調査情報等を添付の上起案し、審査規定に基づくコンプライアンス室の審査及び経理部門の取引条件確認後、累積与信限度額が設定される。
また、決裁権限規定により在庫仕入れに関しても、金額によってSD長決裁、本部長決裁と分かれている。
今回問題となった架空・循環取引の形態は、最終的なユーザーが異なる個別の工事物件であったために、いずれの取引も、決裁権限規定を遵守した決裁がなされていた。
特定取引先7社の内、架空・循環取引の売上額の約4割を占めるC社についても、営業部門から累積与信限度額の設定申請がなされており、累積与信限度設定額に対し累積債権残高は限度額内に収まっており、規定上問題はなかった。しかし、累積債権の概念を売掛金ベースで管理していたため、受注残高の管理が十分に出来ていないことによる運用上の問題はあったと考えられる。
なお、客先または仕入先に在庫を預託する事は原則認めないものの、工事物件等のたな卸資産は除くとしており、これに関し工事物件でのたな卸資産を管理する規定は存在していない。
2 内部統制の整備状況
当社では、コーポレート・ガバナンスの体制強化を、経営の最重要課題の一つと位置づけ、いわゆるJ-SOX法に適合するように組織体制や規程類の整備、内部通報制度の制定、リスクマネジメント委員会や内部統制委員会の設置等内部統制システムの整備に取り組んできたが、後記3 の内部統制上の問題もあり、整備、運用両面では必ずしも有効に機能していない事実が確認された。
なお、当社の全社的な内部統制状況(本社による中日本営業本部への統制状況を含む。)についての調査・検討は、第三者委員会の役割となっているため、社内調査委員会による調査では、その点に関する調査・検討までは行っていない。
3 内部統制上の問題
(1) 中日本営業本部内における実行
不正取引は、元SD長が長年に渡って常に部門管理者(課長、部長、SD長)の地位にあり、元SD長の主導・関与のもと、A社という社外の協力者を得ていたため、内部統制が有効に機能しにくい状況にあったと考えられる。
(2) 中日本営業本部内における特殊要因
また、中日本営業本部内に於ける特殊要因として、他の営業本部または地区との人事異動も少なく、社内・社外の人間関係の濃密さも相俟って、内部統制の機能の大きな柱である相互牽制及び業務処理の可視化が機能しない側面が存在していた。
(a) 元SD長も入社以来、中日本営業本部に勤務し、課長職になってからは装置営業部門一筋(20 年)であり、常に決裁権限を握っていた。
(b) 装置営業部門は、特に上記社内・社外の人間関係に加えて顧客の個別の要望によって製作するという商品の特殊性から仕入先と関係が濃密になり、それ故に癒着するという関係が醸成されやすい環境となっていた。
(c) 元SD長は社内・社外の評判もよく、装置営業部門のキーマンであり、営業本部の仲間意識も強く、不正取引発覚後も「まさか、あの人が。」という評価で満ちており、周囲からの批判は無かった。
(3) 内部統制を無力化させようとするための手段の存在
前記(1)のとおり、元SD長が内部統制を無力化させようとするために用いていた手段としては、以下のようなものが確認された。
(a) 業務の有効性及び効率性について
・当社の社内処理に義務付けられている書類(注文書、納品書、請求書)をA社と共謀、偽造し提出していた。
(b) 財務報告の信頼性について
・平成13 年頃は、実物件の先行検収(前渡金支払い)において、稟議書に因って前渡金処理すべきものを、虚偽の納品・請求書をA社より入手し、その時点ではまだ商品が実在しないことを知りながら会社に商品の代金支払をさせていた。
・取引において、自己で伝票処理をし、自己決裁であることを隠蔽するために、自己の社内優位性を利用し、部下の名義を使い社内報告をしていた。また、それに対して部下が意見できるような職場環境でもなかった。
・部下に指示し、架空発注や水増し発注を実行させた。
(c) 事業活動に関わる法令等の遵守について(コンプライアンス)
・社外への提出書類(注文書、監査法人の残高確認書、念書等)を偽造し提出した。
・遊興費を捻出するためにA社と共謀し、当社の資金流用を行っていた。
(d) 資産の保全について
・商品の実在性の現物確認を要求すると、偽の図面、工程表、写真等をA社と共謀、作成し提出したり、商品の保管場所への立入りを最終売上先との関係(当社は黒子
的な存在)、納入先の現場の危険性を主張し、言葉巧みに拒否していた。
以 上
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【ひらく会情報部:タゴ51億円事件18周年記念調査班・この項つづく】
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