■昨年3月、富岡市桑原地区にある砕石場の跡地に突然、アスベスト無害化処理施設建設計画が持ち上がりました。事業者は、戸田建設と西松建設が共同で出資した中央環境資源開発㈱です。しかし、この会社のホームページを見ても、パスワードが掛けられていて情報開示を制限しています。こうした会社は注意する必要があります。
http://www.cerco-home.net/protected/?comeFrom=http%3A%2F%2Fwww.cerco-home.net%2F&
↑JRさいたま新都心駅の西口。左手が関東地方環境事務所の入っている明治安田生命さいたま新都心ビル。↑
さて、その実態のよく分からない会社が突然発表した計画によると、石綿含有産業廃棄物(非飛散性アスベスト)を過熱蒸気連続加熱処理方式で無害化処理するための中間施設を富岡市に設置するというもので、全体計画では、廃石綿等(飛散性アスベスト)の無害化も含め事業化を予定しています。
国は、今後大量に発生するアスベスト廃棄物の処理を促進するため、特例制度として「アスベスト無害化処理認定制度」を創設し、無害化処理認定された場合には、廃棄物処理業の許可、処理施設の設置許可が不要とされ、アスベスト廃棄物の処理ができるとしています。
■アスベストは、非常に細い繊維状の物質で、繊維1本の細さは大体髪の毛の5,000分の1程度の細さです。耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ、安価であるため、「奇跡の鉱物」として重宝され、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されてきました。
わが国のアスベストの大半は輸入によるもので、これまでに輸入された石綿は1000万トンに達しています。2004年当時の主な輸入元は、カナダ(65.9%)、ブラジル(19.5%)、ジンバブエ(10.6%)でした。
アスベストは、1970年から90年にかけて年間約30万トンという大量の石綿が輸入され、その多くは(8割以上は)建材に使用されたと診られます。ところが、今後それらの建築物の耐用年数が過ぎて、解体・改修工事の増加が予想されています。
■このように産業界で広く使われてきたアスベストですが、空中に飛散した繊維を長期間大量に吸入すると、肺ガンや中皮腫の誘因となることが指摘されるようになったのです。現在では有害物質として製造や使用が禁止されており、WHO(世界保健機関)はアスベストを発がん物質と断定しています。
アスベストの危険性は、以前から指摘されており、日本では1975年9月に吹き付けアスベストの使用が禁止されました。その後、1995年にアスベストのうち有害性の高い茶石綿(アモサイト)と青石綿(クロシドライト)の製造等が禁止となり、白石綿(クリソタイル)についても近年代替化が進んできたことから、2004年10月に労働安全衛生法施行令が改正され、白石綿等のアスベストを含有する建材、摩擦材、接着剤の製造等、またアスベストを1%以上含む一切の製品の出荷が禁止となりました。
さらに2006年9月1日以降は、代替が困難な一定の適用除外製品等を除き、アスベストを0..1%以上含有む全ての物の製造等が禁止されました。同時にアスベストは全面的に輸入禁止になりました。それまでアスベストの輸入量は2004年8162トン、2005年110トンでしたが、2006年に0トンとなったのでした。
■それまでに日本に輸入された約1000万トンもの膨大なアスベストは、同処理されているのでしょうか。実際には、ゼネコンなどの土建業者の手で解体されたアスベスト含有廃棄物は、そのまま野放図に産業廃棄物として最終処分場に持ち込まれて埋立てられているというのです。
そこで、ゼネコンの戸田と西松が、この状況に着目して、アスベスト無害化技術を開発し、環境省のお墨付きを得て、その実証施設を群馬県富岡市の山間部に設置し、アスベスト無害化事業をスタートさせることを計画しているのです。
もともと、このアスベスト無害化技術は、高知県の大旺建設がPCB/ダイオキシン類汚染土壌対策のために、環境省の「平成18年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」に応募して、実証調査の対象技術の一つとして選定された「過熱蒸気による還元分解法」を応用したものです。
■しかし、今後、首都圏で大量に建物等の解体で排出されるアスベストを、首都圏から遠路はるばる高速道路を運ばれて来て持ち込まれるほうにとってはたまりません。この計画が公表された昨年3月にいち早く地元住民らが反対の声を上げ、昨年4月23日の定例記者会見で、岡野光利富岡市長は、地元の意向を尊重する立場から反対することを明らかにしました。
その後、事業者は、平成24年9月6日(木)に施設設置予定地で、地元説明会を開催しましたが、同日、アスベストによる健康被害を懸念する住民らも建設反対集会を同時間帯に開きました。業者は10月下旬にも施設の認定を国に申請する方針で、理解を求めるため説明会を実施しましたが、この日の出席者はゼロでした。その一方で反対集会には住民や地元選出の県議、市議ら約200人が集まって建設反対の気勢を上げました。
当会はその2日後に業者の地元説明会に顔を出しました。その際のやり取りの詳細については、当会のブログをご覧ください。
■事業者が地元説明会を予定地で開催したため、地元住民らの危機感はますます高まりました。そのため、富岡市の岡野光利市長は平成24年9月25日の記者会見で、アスベストの無害化処理施設建設について「地元の皆さんが反対している。市としても『反対』ということで出したい」と述べ、県に対し建設反対の意見書を9月末に提出する考えを明らかにしました。
岡野市長は、群馬県から10月1日までに意見書を提出するよう求められていることに言及し、「地元の人たちからは県に二十数件の意見が出され、ほとんど反対だったと聞いている。現状をみれば、(反対は)地元住民の総意と考える」と指摘しました。
■しかし、事業者は予定通り平成24年10月29日に無害化処理認定申請書を長浜博行環境大臣に提出したのでした。
これを踏まえて、環境省は、平成24年11月29日に、無害化処理施設を建設する事業者の中央環境資源開発(東京都)が提出した認定申請書などの縦覧を告示しました。
施設の種類は加熱処理施設。処理する産業廃棄物は石綿含有産業廃棄物(スレート波板、住宅屋根用化粧スレート、ケイ酸カルシウム板で石綿含有率18%以下のもの)。縦覧期間は12月28日まで。縦覧場所は環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館26階)▽同省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課(埼玉県さいたま市中央区新都心11-2 明治安田生命さいたま新都心ビル18階)▽群馬県西部環境森林事務所廃棄物係(群馬県高崎市台町4-3)▽富岡市役所経済環境部環境課(群馬県富岡市富岡1460-1)▽安中市役所市民部碓氷川クリーンセンター(群馬県安中市原市65)。
■そして、この無害化処理認定に係る施設の設置に関して利害関係を有する者は、上記の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに、すなわち平成25年1月11日(金)必着で、環境大臣に生活環境の保全上の見地から意見書を提出することができるというので、当会は、平成23年12月11日に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課(TEL03-5501-3156)に電話をし、担当の胡桃沢博司氏に連絡をとって、約600ページを超える縦覧資料の閲覧を行いました。
↑縦覧資料。↑
↑無害化処理承認申請書。↑
↑施設周辺。↑
↑環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部。↑
そして、それに基づき、意見書を作成し、提出期限である平成25年1月11日(金)の午前10時に、提出先の環境省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課に提出しました。
意見書の内容は次の通りです。
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意 見 書
提出日: 平成25年1月11日(金)
提出先: 〒330-6018 埼玉県さいたま市中央区新都心11-2
明治安田生命さいたま新都心ビル18階
環境省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課
FAX:048-600-0517
提出者:住所; 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
氏名: 小川 賢
1. 利害関係を有する理由
提出者は、群馬県安中市岩野谷地区に居住しており、無害化処理の用に供する施設の設置の場所である群馬県富岡市桑原七曲り579番地の北西方向約900メートルの地点に面積約3500㎡余の山林を所有している。
戸田建設・西松建設のJVである中央環境資源開発㈱が計画中の当該施設は、安中市と富岡市の境界付近にあり、岩野谷地区の直ぐ南に位置している。
また、岩野谷地区には、現在、平成19年4月から稼動しているサイボウ環境㈱の一般廃棄物管理型最終処分場が存在しており(当該施設の北西約1330メートル)、さらに、大和建設㈱による産業廃棄物中間処理施設(当該施設の東約580メートル)が稼働中である。また、東邦亜鉛㈱安中製錬所では、石綿含有物質を含む産業廃棄物安定五品目を投棄するための最終処分場が造成され、現在群馬県による最終検査中である。計画中の最終処分場としては、環境資源㈱の一般・産業廃棄物管理型最終処分場(計画予定場所は当該施設の東約430メートル)及びアーバン環境サービス㈱の一般・産業廃棄物管理型最終処分場(計画予定場所は当該施設の北東約500メートル)の設置に関わる事前協議がそれぞれ進行中であり、いわゆるサンパイ銀座の呈を為している。また、岩野谷地区の北側の東邦亜鉛安中製錬所の周辺や、岩井川流域の一部地域は、東邦亜鉛から長年にわたり排出されたカドミウム等の重金属汚染地帯であり、依然として除染対策が講じられていない。
さらに広域で見れば、安中市岩野谷地区、高崎市上奥平地区、富岡市桑原地区には、多数の廃棄物中間処理施設及び最終処分場が計画されていたり、稼動していたりしており、全国的に見ても、廃棄物処理に関する施設が集中している地域の一つとなっており、地元及び下流住民の生活環境、自然環境、営農環境等に対して脅威を及ぼしている。
今回の無害化処理認定申請にかかる当該施設は、こうした地域の中に設置が計画されており、しかもアスベストを集中的に、かつ、大量に取り扱うことから、さらに環境面で脅威を増大させることになる。
2. 生活環境保全上の見地からの意見
(1)既にサンパイ銀座の観を呈していること
前項で述べたとおり、既にこの地区は廃棄物処理関連施設のオンパレードで、サンパイ銀座ともいうべき状況になりつつある。
平成5年当時は、岩野谷地区内を流れる岩井川が注ぐ碓氷川が、烏川に合流する高崎市野附町に、高崎市水道局の野附浄水場があった。この浄水場では、烏川の伏流水を汲み上げて、高崎市西部及び安中市岩野谷地区にある大谷及び東野殿の一部に水道水を供給していた。当時は水質が良好で、塩素を必要最小限添加するだけでよかったが、その後、次第に碓氷川水系の水質が悪化し、平成10年代末までに廃止とされ、現在は貯水タンク施設のみ残っている。
これは、岩野谷地区を含む安中市内のゴルフ場乱開発とも無縁ではないと考えられ、その後、廃棄物処分場が次々と計画され、稼動し始める現況に、水源地で生活する住民として、下流に住む大勢のかたがたに対する安全な水源地の保全について、責任を痛感する。事実、昨年7月に首都圏の利根川水系で発生したホルムアルデヒド汚染水道水事件は記憶に新しいところである。
こうした環境行政の無策に起因する状況下で、このうえさらに、アスベスト(石綿)含有廃棄物を大量にこの地区に搬入することは、地元の生活環境、自然環境、営農環境等に対して壊滅的なイメージダウンを与えることになる。また、実際にイメージダウンを被っており、今回も、事業者である戸田・西松JCの中央環境資源開発㈱は、「本来、環境省がこうした施設の適地を用意すべきところ、役人はなにもせずに、我々業者に適地を探させる。日本中、候補地を探したが、人家から離れて、しかも首都圏に近く、アクセスに便利な場所となると、廃棄物処理施設の集中しているこの地区しか見当たらない」と、環境省の対応をこき下ろしつつ、自分たちの努力の成果を強調しながら、地元住民説明会で、なぜ当地を設置予定場所として選定したのか、の経緯について縷々説明した。
地元住民として心配なのは、大量のアスベストを搬入して無害化処理をするとしているが、さまざまな石綿含有廃棄物を、連続してメッシュコンベアに載せて炉内を通過させるだけで、全量無害化できるのかどうかであり、さらに処理後の無害化した廃棄物を破砕処理するというが、その後、本当にリサイクルするのかどうか、である。
前項で述べたとおり、当該施設の周囲にはたくさんの一般・産業廃棄物の最終処分場が存在しており、さらに計画中のものもたくさん存在している。リサイクルせずに、そのまま近隣の処分場で埋立処分されることが懸念されている。
事実、「2-8 無害化処理生成物の種類、性状、数量及び処理方法」で、事業者は「セメント材料、土木・建築用途の材料」として再資源化するとしているが、一方で「再資源化できない場合でも、埋立処分できる最終処分場を確保して対応する」と述べており、リサイクルできない場合を想定している。100%安定的にリサイクルしようとする姿勢の欠如が見え見えである。
(2)大量の石綿含有廃棄物が首都圏をはじめ広域から集中すること
アスベストの無害化処理の基本は、発生地での処理が原則である。このことによって、運搬、保管中のアスベスト飛散リスクが解消されるとともに、運搬コストも不要となるからである。このことに関して、地元住民として、本件意見書提出者は、昨年8月の現地での住民説明会で、事業者に対して、無害化処理施設を車載型ユニット式設備に改良して、容易に建物解体現場に設置できるようにして、石綿含有廃棄物が発生したら現場において、車載型ユニット式設備を使用して無害化処理をする方式にコンセプトそのものを変更するように提案した。しかし、業者は耳を傾けようとせずに、終始、予定場所での固定式施設にこだわった。
首都圏等で発生する石綿含有廃棄物は、関越自動車道から上信越自動車道を経て、主に富岡ICを経て、当地に搬入されるものと思われる。平均100キロ以上の距離を運搬して、大量の石綿含有廃棄物が当地に集積されることになるため、運搬中及び保管中、そして処理中の正規面含有廃棄物から飛散するアスベストの脅威が沿道及び当該施設周辺住民に及ぶことになる。
(3)搬入される石綿含有廃棄物が判然としないこと
縦覧資料によれば、当該施設が処理することとしている廃棄物は、「石綿含有廃棄物(レベル3)」で「スレート波板」「住宅屋根用化粧スレート」「ケイ酸カルシウム板(第1種)」とあるが、本当にこれだけなのかも疑わしい。なぜなら、現場で処理する場合と異なり、長距離を運搬されてくることから、得体の知れない有害物質が混入する可能性もあるためだ。
とくに「ケイ酸カルシウム板(第1種)」と規定しているが、第1種と第2種の区別が判然としない。軽量のケイ酸カルシウム板の場合、第2種に規定されるというが、アオリのついたサンパイ運搬用トラックで搬入される為、住民にとって確認のしようがなく、安全性制の担保が保証されていない。レベル2に相当する石綿含有ケイ酸カルシウム板(第2種)は、建築物の柱、はり、壁等に耐火被覆材として、貼り付けられていることから、これを現場で仕分けした結果、レベル3として適正に処分されたと事業者がいくら自信満々で言ったとしても、住民には全くそのことを確認する術がない。
しかも、縦覧資料の「2-1 事業計画書」の項目に、事業者は「更新期を迎えた建設物の補修・改修あるいは解体に伴い、膨大な石綿廃棄物(廃石綿等および石綿含有廃棄物)の排出が見込まれる。しかし、石綿含有建材の主な受け入れ先である最終処分場における周辺住民の不安等を背景として受け入れ忌避に加え、破砕設備の屋内設置や高度集塵装置の設置義務付け等による処理基準の強化等により、今後、一層アスベスト廃棄物の処理が滞り、不法投棄等の不適正処理に繋がることが懸念される」として、「関東地域では石綿廃棄物の排出量が最も多く見込まれるので、石綿含有廃棄物(石綿含有建材)の滞留を防止し、住民の安全・安心に結びつく適正処理を実現させることが目的」などと記述しているが、きわめて欺瞞に満ちている。
これまで、石綿含有建材をズサンに最終処分場に捨ててきた元凶であるゼネコンの一員でもある戸田建設・西松建設が、当該施設の運用によって、そうした不適正な処理を防止する、と述べても、全く信用することはできない。
事業者は「住民の安全・安心に結びつく適正処理の実現」のために必要な事業だというなら、本来、そのためには、石綿含有建材を排出する現場で無害化処理をすることが不可欠であり、わざわざ未処理の石綿含有建材(最大石綿含有量18%)を、水源地であり、住民のかけがえのない生活環境、自然環境、営農環境の舞台となっている当地に大量に搬入し集積することは、「住民の安全・安心に結びつく適正処理の実現」とは相容れない愚行である。
更に事業者は「無害化処理後の廃棄物は再利用可能だ」と自画自賛しているが、どのように再資源化するのかについて具体的な記述が見られない。
(4)収集運搬について事業者が責任を負わないこと
呆れてしまうのは、事業者が「事業範囲は無害化処理業のみであり、収集運搬業は行わない」と明言していることである。これは、運搬中の責任を負わないことを意味しており、提出者は住民として、無害化処理は、首都圏の建設物補修・改修・解体現場で実施することこそが、事業者の言う「住民への安全・安心に結びつく適正処理の実現」であると信じている。
事業者が平成24年9月8日(土)午後1時30分から3時ごろまでにかけて、当該施設の建設予定地で行った説明会においても、無害化処理認定制度で認定されると廃棄物処理業(収集運搬・処分)の許可が不要となったり、廃棄物処理施設の設置許可が不要になったりするという。さらに、都道府県または政令都市の条例に縛られず、条例による事前協議等が不要になるという。
事業者は、その説明会で、「スレートの波板、住宅屋根用の化粧スレート、ケイ酸カルシウム板など石綿含有廃棄物を取り扱う時、運搬する時は、こう長いもの、スレートの長いもの、スレートの波板のように長いものはシートで巻くような格好で、屋根のようなバラ材はそういうフレコンバッグで、まあ、詰める。まずは飛散しないように梱包して、なおかつ、トラックで運ぶ時はシート掛けと、法に基づいたそういう飛散防止の処理は当然行う」と述べて、自らもゼネコンのJV会社として、解体や運搬時にも責任をもって石綿含有廃棄物が周辺に飛散しないように行うのだと、住民らに信じ込ませた。しかし、縦覧資料では、収集運搬は行わないのだという。しかも、無害化認定手続で認定されれば、一切規制を適用されないのだという。これほど危険なことはない。
アスベストを取り扱い場合や輸送する場合には、周囲と隔離をして、特殊な容器に入れて運搬することは常識であるが、説明会の際に事業者から例として見せられた運搬トラックは、通常のあおりの付いたサンパイ運搬用のトラックの写真であった。これでは、運搬ルート沿道の住民らの安全や安心を担保することは不可能である。
(5)石綿含有廃棄物の取扱いの安全性に疑問があること
縦覧資料のフローチャートを見ると、「搬入→受付計量→荷卸し(→再梱包→受入・一時保管エリア)→バッファーエリア→開梱→・・加熱処理・・→排出放冷(←不良品再処理)→粗破砕→払出し一時保管(ホッパー)→金属探知→フレコンバッグ充填→トラック積載」とある。
また、加熱処理のために、石綿含有廃棄物は、長さ2.5m、幅1.3m、厚さ2mmのステンレス製トレーに収められ、それを蚕棚のようにパレットにして、加熱処理をするようだ。事業者は、現場で仕分けをするわけではないため、別の建物補修・改修・解体業者が回収して搬入してきた石綿含有廃棄物を、当該施設で受け入れ後、はじめて確認することになり、それらが、きちんと所定のレベル3の廃棄物であるかどうかは、その時点まで判然としていないことになる。
当然、レベル2やレベル1のような飛散性の高いアスベスト入り廃棄物が含まれていた場合には、受け取りを拒否しなければならないが、おそらくそのようなことはするつもりもないであろう。適当に処理したことにして、近隣のサンパイ処分場に埋立処理を引受さようとする誘惑に果たして抗しきれるのだろうか。
さらに、雑多な形状、サイズの石綿含有廃棄物を、加熱処理に際して事前に、縦横2.5m×1.3m、厚さ2mmのステンレス製トレーに収める為には、受け入れ後、再度、切断や破砕などにより寸法調整を当地で行う必要が生じることになる。縦覧しようにはこれをどのようにするのか、どのようにこの際に発生する石綿含有の粉塵の処理を行うのかが、明記されていない。単に、「建物内部で実施する」という表現しか、記述がない。
(6)加熱分解方式に不安があること
事業者は「2-1 事業計画書」で「本事業で採用する過熱蒸気式加熱炉による加熱分解方式の大きな特長は、「間接加熱炉に過熱蒸気を吹き込むことで、950℃という従来の溶融方式と比較して、極めて低い温度で含有アスベストを非結晶質・非繊維質の無害化物質へと変質させることにある」と述べている。溶融方式では、固体から液体への相変化を伴う為、確実にアスベストの無害化を確認できるが、今回事業者が提案しているのは相変化を伴わない方式である為、きちんと無害化処理が廃棄物全体に対して均等になされたかどうかを確認する必要がある。
しかし、フローチャートをみても、そのような検査をどのように実施して、全量無害化処理が完了したことを担保するのかが、全く不明である。
縦覧資料のフローチャートを見ると、「搬入→受付計量→荷卸し(→再梱包→受入・一時保管エリア)→バッファーエリア→開梱→・<加熱処理>・→排出放冷(←不良品再処理)→粗破砕→払出し一時保管(ホッパー)→金属探知→フレコンバッグ充填→トラック積載」とある。
ここで、「排出放冷」直後に「不良品再処理」として、フィードバックするようになっているが、どのようにして不良品を検出するのか、どの程度であれば再処理を必要とするのか、その方法や基準等について詳しい記載がない。縦覧資料によれば、生成物の表面温度を放射温度計又はサーモカメラで計測して処理後の無害化処理が完了したかどうかを間接的に確認するだけのようだ。つまり、全量、顕微鏡でチェックするわけでもない。
表面温度の計測についても、おそらく、実験室レベルで実施した、過熱蒸気雰囲気のデータだけをもとに、間接的に石綿含有廃棄物の無害化を推測するだけのようである。となると、本当に、全量が非結晶質化・非繊維質化したのかどうかを確認するわけではないので、処理中及び処理後の安全性についても疑問符が付くことになる。
縦覧資料によれば、生成物が安全かどうかを確認する為に、光学顕微鏡を用いて測定するのは、半年に1回程度だという。稼動直後でも、最初の1年間ほどは、3ヶ月に1回程度しか測定しないのだという。おそらくこれも、ほんの少しのサンプリングしかやらないのであろう。誠に不安であり遺憾である。
(7)全量を絶対にリサイクルするのだ、という強い決意に欠けていること
事業者には、「無害化処理後の生成物を、100%、安定的に絶対にリサイクルするんだ」という強い姿勢が欠如している。
この点について、事業者は、縦覧資料に、「セメント原料」として埼玉県T社、栃木県S社、埼玉県M社を搬入先として挙げている。また「土木用途材料」として、埼玉県T社を搬入先として挙げている。「建築用途材料」としては、愛知県N社、岐阜県I社を挙げており、一番心配な「最終処分場(管理型及び安定型)」として群馬県F社と千葉県S社を埋立処分先に挙げている。
このうち、例として、無害化処理後の生成物の売却先として、土木用途材料(固化材原料)向けに、埼玉県三郷市上口3-1の㈱立花マテリアルを挙げている。同社の埼玉の事業所にはシールド環境事業部があることから、おそらくシールドマシンによるトンネル工事の裏込め材として納入するようだが、本当に裏込め材料として利用できるのかどうか定かでない。
また、タイル原料の増量材料として、愛知県知多郡武豊町大字富貴字黒山1-9のニッタイ工業㈱を売却先の例として挙げている。しかし、本当に中部地方の愛知県までわざわざコストをかけて運ぶのかどうか、極めて疑問である。
さらに問題なのは、最終処分場に持ち込む可能性は初めから示唆していることだ。
既に述べたとおり、当該施設の周囲にはたくさんの一般・産業廃棄物の最終処分場が存在しており、さらに計画中のものもたくさん存在している。リサイクルせずに、そのまま近隣の処分場で埋立処分されることが懸念される。
事実、「2-8 無害化処理生成物の種類、性状、数量及び処理方法」で、事業者は「セメント材料、土木・建築用途の材料」として再資源化するとしているが、一方で「再資源化できない場合でも、埋立処分できる最終処分場を確保して対応する」と述べており、リサイクルできない場合を想定している。
事業者は、最終処分場の具体的な場所として、管理型千葉県市原市万田野26番地にある杉田建材㈱の産業廃棄物最終処分場(千葉県許可番号第1240018681号)を確保している旨記載している。しかし、この処分場の許可の有効期限は平成26年6月5日であり、この時期には、まだ当該施設の建設工事中である。本当に、この処分場に、関東平野を横断して輸送コストをかけて、無害化処理をしたものを運んで、有効期限のない処分場に埋め立てることが現実的なのかどうか、極めて疑問である。
また、最終処分場として群馬県F社も挙げている。リサイクルしない場合には、一番輸送コストのかからない最寄の最終処分場に持ち込んで埋立処分するのがもっとも儲かる。したがって、当該施設の立地する周辺にいくつもあるサンパイ場に持ち込む可能性が非常に高く、このことからも、この周辺地区のサンパイ銀座化に拍車がかかってしまうことになる。
(8)220トンもの石綿含有廃棄物をストックすること
事業者は、法令に基づき1日あたり最大処理量の14日分のアスベスト含有廃棄物220トンを、当該施設内にストックするという。これら廃棄物の最大石綿含有量は18%というので、アスベスト量にすると最大39.6トンを持ち込んで留保しておくことになる。このような大量の有害物質の存在自体、生活環境上の脅威である。
(9)土曜日や祝祭日もアスベスト含有廃棄物の持込が行われること
事業者は「2-7 搬入出時間及び方法」で、「日曜日を除く毎日、搬入出を行う」としている。せっかく、週末や休日に、自然環境の豊かな地元で、いい空気を吸って鋭気を養おうとする地元住民に対して、こうした搬入出作業が行なわれることは、そのこと自体、地元住民の生活環境に対する挑戦でもあり、到底容認できない。
(10)異常発生の防止システムが自動制御で果たして可能なのか疑問であること
異常発生の防止対策として事業者は「安全運転のため、前処理、加熱処理、後処理及び排ガス処理の設備等は殆ど自動制御とし、集中運転監視により早期に異常を発見し対応をとるシステムを構築する」と述べている。しかし、構築されたシステムではなさそうだ。つまり、実績のある、或いは実証済み(Proven)なシステムではないということになる。これでは、自動制御にかまけて、異常発生時の対応が後手後手になる恐れが大きい。
(11)実証試験のデータの再現性に疑問があること
縦覧資料によれば、当該施設の「実証試験におけるエネルギーは全て電力で賄った」と述べている。しかし、当該施設は実際には天然ガスをエネルギー源にするという。となれば、本当に実証試験の結果を再現できるのかどうかが疑問となる。
(12)南南東の風が卓越しており異常発生時には、もろにアスベストの脅威に晒されること
地元住民として提出者の所有する山林は既に述べたとおり、当該施設の北西約900メートルの地点に存在する。「3-21 生活環境影響調査書」によれば、表4-1-2の風配図(現地調査時)のとおり、卓越風はNNW~N、及びS~SEが5%以上となっている。このため、夏場に当該施設で異常発生した場合、ただちに提出者の所有する山林が影響を被ることになる。
当該施設の設置予定場所の北側の広大な山林は岩野谷地区に残された唯一の土壌汚染されていない貴重な場所である。既に述べたように、岩野谷地区の北端部に位置する東邦亜鉛安中製錬所が長年にわたり排出してきた重金属を含む降下煤塵により、この地区の住民や農業者らは土壌汚染に悩まされている。しかも、東邦亜鉛では除染対策を採ろうとせずに、このような汚染状態が次代に引き継がれようとしている。そこに、今度は南側に大規模な廃棄物処分場が目白押しで、挙句の果てには首都圏のアスベストを大量に持ち込もうとする今回の戸田・西松JVの無謀な計画が浮上する始末である。
東邦亜鉛安中製錬所は、鉱山保全法改正の寸前の駆け込みで、平成19年に自社用の産業廃棄物最終処分場を造成したが、平成22年12月の住民説明会では一言の説明もなかった石綿含有物質を含む産業廃棄物を投棄することを前提に群馬県に設置許可を平成23年4月に申請して、平成24年秋までにはいつのまにか許可が出された。地元住民として提出者は現在、この許可の無効を東邦亜鉛と群馬県に申し入れているが、両方とも当事者意識に欠けており真剣に対策をとろうとしない。まさに、岩野谷地区の住民は前門のトラ、後門のオオカミ状態に置かれているのである。
以上のとおり、生活環境保全上の観点から、当該施設の設置許可を出さないよう、貴課の英断を強く望む次第である。
以上
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■さいたま市にあるJR京浜東北線のさいたま新都心駅を降りて、西口方向に向かって歩くと道路の左側に高層ビルがあります。それが明治安田生命さいたま新都心ビルです。提出先の環境省関東地方環境事務所はこのビルの18階にあります。
↑明治安田生命さいたま新都心ビルの吹抜けホール。↑
↑関東地方環境事務所は18F。↑
↑眼下にJR線路を一望。↑
↑関東地方環境事務所入口。↑
受付で呼び出しのベルを鳴らすと女性事務員が出て来ました。要件を告げて待合室で待っていると、廃棄物・リサイクル対策課(TEL048-600-0814)の田代忠彦・廃棄物対策等調査官と同課の課長補佐の池田稔・主席廃棄物対策調査官の2名が応対にやってきました。
当会から、意見書の内容の趣旨を説明しましたが、二人とも「技術的なことは審査会で慎重に検討する予定であり、自分らは技術的なことはわからない」というだけでした。また、「既に、連名で1通の意見書が出されているが、それ以外は今のところ、当会の意見書だけだ」とのことでした。なお、審査会は非公開だとのことでしたので、当会から「それでは、密室で決められしまうことになる」とクレームをしておきました。「いずれにしても、相当時間をかけて審議を行うので、直ぐ結論が出るという心配はいらない」と言う返事でした。
しかし、いつまでに、どのような議論を経て、結果が出されるのかについては、なにもコメントはありませんでした。そこで、当会としては、時々、調査官に電話を入れて進捗を確認していくことにしています。
【ひらく会情報部】
http://www.cerco-home.net/protected/?comeFrom=http%3A%2F%2Fwww.cerco-home.net%2F&
↑JRさいたま新都心駅の西口。左手が関東地方環境事務所の入っている明治安田生命さいたま新都心ビル。↑
さて、その実態のよく分からない会社が突然発表した計画によると、石綿含有産業廃棄物(非飛散性アスベスト)を過熱蒸気連続加熱処理方式で無害化処理するための中間施設を富岡市に設置するというもので、全体計画では、廃石綿等(飛散性アスベスト)の無害化も含め事業化を予定しています。
国は、今後大量に発生するアスベスト廃棄物の処理を促進するため、特例制度として「アスベスト無害化処理認定制度」を創設し、無害化処理認定された場合には、廃棄物処理業の許可、処理施設の設置許可が不要とされ、アスベスト廃棄物の処理ができるとしています。
■アスベストは、非常に細い繊維状の物質で、繊維1本の細さは大体髪の毛の5,000分の1程度の細さです。耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ、安価であるため、「奇跡の鉱物」として重宝され、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等、様々な用途に広く使用されてきました。
わが国のアスベストの大半は輸入によるもので、これまでに輸入された石綿は1000万トンに達しています。2004年当時の主な輸入元は、カナダ(65.9%)、ブラジル(19.5%)、ジンバブエ(10.6%)でした。
アスベストは、1970年から90年にかけて年間約30万トンという大量の石綿が輸入され、その多くは(8割以上は)建材に使用されたと診られます。ところが、今後それらの建築物の耐用年数が過ぎて、解体・改修工事の増加が予想されています。
■このように産業界で広く使われてきたアスベストですが、空中に飛散した繊維を長期間大量に吸入すると、肺ガンや中皮腫の誘因となることが指摘されるようになったのです。現在では有害物質として製造や使用が禁止されており、WHO(世界保健機関)はアスベストを発がん物質と断定しています。
アスベストの危険性は、以前から指摘されており、日本では1975年9月に吹き付けアスベストの使用が禁止されました。その後、1995年にアスベストのうち有害性の高い茶石綿(アモサイト)と青石綿(クロシドライト)の製造等が禁止となり、白石綿(クリソタイル)についても近年代替化が進んできたことから、2004年10月に労働安全衛生法施行令が改正され、白石綿等のアスベストを含有する建材、摩擦材、接着剤の製造等、またアスベストを1%以上含む一切の製品の出荷が禁止となりました。
さらに2006年9月1日以降は、代替が困難な一定の適用除外製品等を除き、アスベストを0..1%以上含有む全ての物の製造等が禁止されました。同時にアスベストは全面的に輸入禁止になりました。それまでアスベストの輸入量は2004年8162トン、2005年110トンでしたが、2006年に0トンとなったのでした。
■それまでに日本に輸入された約1000万トンもの膨大なアスベストは、同処理されているのでしょうか。実際には、ゼネコンなどの土建業者の手で解体されたアスベスト含有廃棄物は、そのまま野放図に産業廃棄物として最終処分場に持ち込まれて埋立てられているというのです。
そこで、ゼネコンの戸田と西松が、この状況に着目して、アスベスト無害化技術を開発し、環境省のお墨付きを得て、その実証施設を群馬県富岡市の山間部に設置し、アスベスト無害化事業をスタートさせることを計画しているのです。
もともと、このアスベスト無害化技術は、高知県の大旺建設がPCB/ダイオキシン類汚染土壌対策のために、環境省の「平成18年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査及びダイオキシン類汚染土壌浄化技術等確立調査」に応募して、実証調査の対象技術の一つとして選定された「過熱蒸気による還元分解法」を応用したものです。
■しかし、今後、首都圏で大量に建物等の解体で排出されるアスベストを、首都圏から遠路はるばる高速道路を運ばれて来て持ち込まれるほうにとってはたまりません。この計画が公表された昨年3月にいち早く地元住民らが反対の声を上げ、昨年4月23日の定例記者会見で、岡野光利富岡市長は、地元の意向を尊重する立場から反対することを明らかにしました。
その後、事業者は、平成24年9月6日(木)に施設設置予定地で、地元説明会を開催しましたが、同日、アスベストによる健康被害を懸念する住民らも建設反対集会を同時間帯に開きました。業者は10月下旬にも施設の認定を国に申請する方針で、理解を求めるため説明会を実施しましたが、この日の出席者はゼロでした。その一方で反対集会には住民や地元選出の県議、市議ら約200人が集まって建設反対の気勢を上げました。
当会はその2日後に業者の地元説明会に顔を出しました。その際のやり取りの詳細については、当会のブログをご覧ください。
■事業者が地元説明会を予定地で開催したため、地元住民らの危機感はますます高まりました。そのため、富岡市の岡野光利市長は平成24年9月25日の記者会見で、アスベストの無害化処理施設建設について「地元の皆さんが反対している。市としても『反対』ということで出したい」と述べ、県に対し建設反対の意見書を9月末に提出する考えを明らかにしました。
岡野市長は、群馬県から10月1日までに意見書を提出するよう求められていることに言及し、「地元の人たちからは県に二十数件の意見が出され、ほとんど反対だったと聞いている。現状をみれば、(反対は)地元住民の総意と考える」と指摘しました。
■しかし、事業者は予定通り平成24年10月29日に無害化処理認定申請書を長浜博行環境大臣に提出したのでした。
これを踏まえて、環境省は、平成24年11月29日に、無害化処理施設を建設する事業者の中央環境資源開発(東京都)が提出した認定申請書などの縦覧を告示しました。
施設の種類は加熱処理施設。処理する産業廃棄物は石綿含有産業廃棄物(スレート波板、住宅屋根用化粧スレート、ケイ酸カルシウム板で石綿含有率18%以下のもの)。縦覧期間は12月28日まで。縦覧場所は環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館26階)▽同省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課(埼玉県さいたま市中央区新都心11-2 明治安田生命さいたま新都心ビル18階)▽群馬県西部環境森林事務所廃棄物係(群馬県高崎市台町4-3)▽富岡市役所経済環境部環境課(群馬県富岡市富岡1460-1)▽安中市役所市民部碓氷川クリーンセンター(群馬県安中市原市65)。
■そして、この無害化処理認定に係る施設の設置に関して利害関係を有する者は、上記の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに、すなわち平成25年1月11日(金)必着で、環境大臣に生活環境の保全上の見地から意見書を提出することができるというので、当会は、平成23年12月11日に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課(TEL03-5501-3156)に電話をし、担当の胡桃沢博司氏に連絡をとって、約600ページを超える縦覧資料の閲覧を行いました。
↑縦覧資料。↑
↑無害化処理承認申請書。↑
↑施設周辺。↑
↑環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部。↑
そして、それに基づき、意見書を作成し、提出期限である平成25年1月11日(金)の午前10時に、提出先の環境省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課に提出しました。
意見書の内容は次の通りです。
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意 見 書
提出日: 平成25年1月11日(金)
提出先: 〒330-6018 埼玉県さいたま市中央区新都心11-2
明治安田生命さいたま新都心ビル18階
環境省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課
FAX:048-600-0517
提出者:住所; 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
氏名: 小川 賢
1. 利害関係を有する理由
提出者は、群馬県安中市岩野谷地区に居住しており、無害化処理の用に供する施設の設置の場所である群馬県富岡市桑原七曲り579番地の北西方向約900メートルの地点に面積約3500㎡余の山林を所有している。
戸田建設・西松建設のJVである中央環境資源開発㈱が計画中の当該施設は、安中市と富岡市の境界付近にあり、岩野谷地区の直ぐ南に位置している。
また、岩野谷地区には、現在、平成19年4月から稼動しているサイボウ環境㈱の一般廃棄物管理型最終処分場が存在しており(当該施設の北西約1330メートル)、さらに、大和建設㈱による産業廃棄物中間処理施設(当該施設の東約580メートル)が稼働中である。また、東邦亜鉛㈱安中製錬所では、石綿含有物質を含む産業廃棄物安定五品目を投棄するための最終処分場が造成され、現在群馬県による最終検査中である。計画中の最終処分場としては、環境資源㈱の一般・産業廃棄物管理型最終処分場(計画予定場所は当該施設の東約430メートル)及びアーバン環境サービス㈱の一般・産業廃棄物管理型最終処分場(計画予定場所は当該施設の北東約500メートル)の設置に関わる事前協議がそれぞれ進行中であり、いわゆるサンパイ銀座の呈を為している。また、岩野谷地区の北側の東邦亜鉛安中製錬所の周辺や、岩井川流域の一部地域は、東邦亜鉛から長年にわたり排出されたカドミウム等の重金属汚染地帯であり、依然として除染対策が講じられていない。
さらに広域で見れば、安中市岩野谷地区、高崎市上奥平地区、富岡市桑原地区には、多数の廃棄物中間処理施設及び最終処分場が計画されていたり、稼動していたりしており、全国的に見ても、廃棄物処理に関する施設が集中している地域の一つとなっており、地元及び下流住民の生活環境、自然環境、営農環境等に対して脅威を及ぼしている。
今回の無害化処理認定申請にかかる当該施設は、こうした地域の中に設置が計画されており、しかもアスベストを集中的に、かつ、大量に取り扱うことから、さらに環境面で脅威を増大させることになる。
2. 生活環境保全上の見地からの意見
(1)既にサンパイ銀座の観を呈していること
前項で述べたとおり、既にこの地区は廃棄物処理関連施設のオンパレードで、サンパイ銀座ともいうべき状況になりつつある。
平成5年当時は、岩野谷地区内を流れる岩井川が注ぐ碓氷川が、烏川に合流する高崎市野附町に、高崎市水道局の野附浄水場があった。この浄水場では、烏川の伏流水を汲み上げて、高崎市西部及び安中市岩野谷地区にある大谷及び東野殿の一部に水道水を供給していた。当時は水質が良好で、塩素を必要最小限添加するだけでよかったが、その後、次第に碓氷川水系の水質が悪化し、平成10年代末までに廃止とされ、現在は貯水タンク施設のみ残っている。
これは、岩野谷地区を含む安中市内のゴルフ場乱開発とも無縁ではないと考えられ、その後、廃棄物処分場が次々と計画され、稼動し始める現況に、水源地で生活する住民として、下流に住む大勢のかたがたに対する安全な水源地の保全について、責任を痛感する。事実、昨年7月に首都圏の利根川水系で発生したホルムアルデヒド汚染水道水事件は記憶に新しいところである。
こうした環境行政の無策に起因する状況下で、このうえさらに、アスベスト(石綿)含有廃棄物を大量にこの地区に搬入することは、地元の生活環境、自然環境、営農環境等に対して壊滅的なイメージダウンを与えることになる。また、実際にイメージダウンを被っており、今回も、事業者である戸田・西松JCの中央環境資源開発㈱は、「本来、環境省がこうした施設の適地を用意すべきところ、役人はなにもせずに、我々業者に適地を探させる。日本中、候補地を探したが、人家から離れて、しかも首都圏に近く、アクセスに便利な場所となると、廃棄物処理施設の集中しているこの地区しか見当たらない」と、環境省の対応をこき下ろしつつ、自分たちの努力の成果を強調しながら、地元住民説明会で、なぜ当地を設置予定場所として選定したのか、の経緯について縷々説明した。
地元住民として心配なのは、大量のアスベストを搬入して無害化処理をするとしているが、さまざまな石綿含有廃棄物を、連続してメッシュコンベアに載せて炉内を通過させるだけで、全量無害化できるのかどうかであり、さらに処理後の無害化した廃棄物を破砕処理するというが、その後、本当にリサイクルするのかどうか、である。
前項で述べたとおり、当該施設の周囲にはたくさんの一般・産業廃棄物の最終処分場が存在しており、さらに計画中のものもたくさん存在している。リサイクルせずに、そのまま近隣の処分場で埋立処分されることが懸念されている。
事実、「2-8 無害化処理生成物の種類、性状、数量及び処理方法」で、事業者は「セメント材料、土木・建築用途の材料」として再資源化するとしているが、一方で「再資源化できない場合でも、埋立処分できる最終処分場を確保して対応する」と述べており、リサイクルできない場合を想定している。100%安定的にリサイクルしようとする姿勢の欠如が見え見えである。
(2)大量の石綿含有廃棄物が首都圏をはじめ広域から集中すること
アスベストの無害化処理の基本は、発生地での処理が原則である。このことによって、運搬、保管中のアスベスト飛散リスクが解消されるとともに、運搬コストも不要となるからである。このことに関して、地元住民として、本件意見書提出者は、昨年8月の現地での住民説明会で、事業者に対して、無害化処理施設を車載型ユニット式設備に改良して、容易に建物解体現場に設置できるようにして、石綿含有廃棄物が発生したら現場において、車載型ユニット式設備を使用して無害化処理をする方式にコンセプトそのものを変更するように提案した。しかし、業者は耳を傾けようとせずに、終始、予定場所での固定式施設にこだわった。
首都圏等で発生する石綿含有廃棄物は、関越自動車道から上信越自動車道を経て、主に富岡ICを経て、当地に搬入されるものと思われる。平均100キロ以上の距離を運搬して、大量の石綿含有廃棄物が当地に集積されることになるため、運搬中及び保管中、そして処理中の正規面含有廃棄物から飛散するアスベストの脅威が沿道及び当該施設周辺住民に及ぶことになる。
(3)搬入される石綿含有廃棄物が判然としないこと
縦覧資料によれば、当該施設が処理することとしている廃棄物は、「石綿含有廃棄物(レベル3)」で「スレート波板」「住宅屋根用化粧スレート」「ケイ酸カルシウム板(第1種)」とあるが、本当にこれだけなのかも疑わしい。なぜなら、現場で処理する場合と異なり、長距離を運搬されてくることから、得体の知れない有害物質が混入する可能性もあるためだ。
とくに「ケイ酸カルシウム板(第1種)」と規定しているが、第1種と第2種の区別が判然としない。軽量のケイ酸カルシウム板の場合、第2種に規定されるというが、アオリのついたサンパイ運搬用トラックで搬入される為、住民にとって確認のしようがなく、安全性制の担保が保証されていない。レベル2に相当する石綿含有ケイ酸カルシウム板(第2種)は、建築物の柱、はり、壁等に耐火被覆材として、貼り付けられていることから、これを現場で仕分けした結果、レベル3として適正に処分されたと事業者がいくら自信満々で言ったとしても、住民には全くそのことを確認する術がない。
しかも、縦覧資料の「2-1 事業計画書」の項目に、事業者は「更新期を迎えた建設物の補修・改修あるいは解体に伴い、膨大な石綿廃棄物(廃石綿等および石綿含有廃棄物)の排出が見込まれる。しかし、石綿含有建材の主な受け入れ先である最終処分場における周辺住民の不安等を背景として受け入れ忌避に加え、破砕設備の屋内設置や高度集塵装置の設置義務付け等による処理基準の強化等により、今後、一層アスベスト廃棄物の処理が滞り、不法投棄等の不適正処理に繋がることが懸念される」として、「関東地域では石綿廃棄物の排出量が最も多く見込まれるので、石綿含有廃棄物(石綿含有建材)の滞留を防止し、住民の安全・安心に結びつく適正処理を実現させることが目的」などと記述しているが、きわめて欺瞞に満ちている。
これまで、石綿含有建材をズサンに最終処分場に捨ててきた元凶であるゼネコンの一員でもある戸田建設・西松建設が、当該施設の運用によって、そうした不適正な処理を防止する、と述べても、全く信用することはできない。
事業者は「住民の安全・安心に結びつく適正処理の実現」のために必要な事業だというなら、本来、そのためには、石綿含有建材を排出する現場で無害化処理をすることが不可欠であり、わざわざ未処理の石綿含有建材(最大石綿含有量18%)を、水源地であり、住民のかけがえのない生活環境、自然環境、営農環境の舞台となっている当地に大量に搬入し集積することは、「住民の安全・安心に結びつく適正処理の実現」とは相容れない愚行である。
更に事業者は「無害化処理後の廃棄物は再利用可能だ」と自画自賛しているが、どのように再資源化するのかについて具体的な記述が見られない。
(4)収集運搬について事業者が責任を負わないこと
呆れてしまうのは、事業者が「事業範囲は無害化処理業のみであり、収集運搬業は行わない」と明言していることである。これは、運搬中の責任を負わないことを意味しており、提出者は住民として、無害化処理は、首都圏の建設物補修・改修・解体現場で実施することこそが、事業者の言う「住民への安全・安心に結びつく適正処理の実現」であると信じている。
事業者が平成24年9月8日(土)午後1時30分から3時ごろまでにかけて、当該施設の建設予定地で行った説明会においても、無害化処理認定制度で認定されると廃棄物処理業(収集運搬・処分)の許可が不要となったり、廃棄物処理施設の設置許可が不要になったりするという。さらに、都道府県または政令都市の条例に縛られず、条例による事前協議等が不要になるという。
事業者は、その説明会で、「スレートの波板、住宅屋根用の化粧スレート、ケイ酸カルシウム板など石綿含有廃棄物を取り扱う時、運搬する時は、こう長いもの、スレートの長いもの、スレートの波板のように長いものはシートで巻くような格好で、屋根のようなバラ材はそういうフレコンバッグで、まあ、詰める。まずは飛散しないように梱包して、なおかつ、トラックで運ぶ時はシート掛けと、法に基づいたそういう飛散防止の処理は当然行う」と述べて、自らもゼネコンのJV会社として、解体や運搬時にも責任をもって石綿含有廃棄物が周辺に飛散しないように行うのだと、住民らに信じ込ませた。しかし、縦覧資料では、収集運搬は行わないのだという。しかも、無害化認定手続で認定されれば、一切規制を適用されないのだという。これほど危険なことはない。
アスベストを取り扱い場合や輸送する場合には、周囲と隔離をして、特殊な容器に入れて運搬することは常識であるが、説明会の際に事業者から例として見せられた運搬トラックは、通常のあおりの付いたサンパイ運搬用のトラックの写真であった。これでは、運搬ルート沿道の住民らの安全や安心を担保することは不可能である。
(5)石綿含有廃棄物の取扱いの安全性に疑問があること
縦覧資料のフローチャートを見ると、「搬入→受付計量→荷卸し(→再梱包→受入・一時保管エリア)→バッファーエリア→開梱→・・加熱処理・・→排出放冷(←不良品再処理)→粗破砕→払出し一時保管(ホッパー)→金属探知→フレコンバッグ充填→トラック積載」とある。
また、加熱処理のために、石綿含有廃棄物は、長さ2.5m、幅1.3m、厚さ2mmのステンレス製トレーに収められ、それを蚕棚のようにパレットにして、加熱処理をするようだ。事業者は、現場で仕分けをするわけではないため、別の建物補修・改修・解体業者が回収して搬入してきた石綿含有廃棄物を、当該施設で受け入れ後、はじめて確認することになり、それらが、きちんと所定のレベル3の廃棄物であるかどうかは、その時点まで判然としていないことになる。
当然、レベル2やレベル1のような飛散性の高いアスベスト入り廃棄物が含まれていた場合には、受け取りを拒否しなければならないが、おそらくそのようなことはするつもりもないであろう。適当に処理したことにして、近隣のサンパイ処分場に埋立処理を引受さようとする誘惑に果たして抗しきれるのだろうか。
さらに、雑多な形状、サイズの石綿含有廃棄物を、加熱処理に際して事前に、縦横2.5m×1.3m、厚さ2mmのステンレス製トレーに収める為には、受け入れ後、再度、切断や破砕などにより寸法調整を当地で行う必要が生じることになる。縦覧しようにはこれをどのようにするのか、どのようにこの際に発生する石綿含有の粉塵の処理を行うのかが、明記されていない。単に、「建物内部で実施する」という表現しか、記述がない。
(6)加熱分解方式に不安があること
事業者は「2-1 事業計画書」で「本事業で採用する過熱蒸気式加熱炉による加熱分解方式の大きな特長は、「間接加熱炉に過熱蒸気を吹き込むことで、950℃という従来の溶融方式と比較して、極めて低い温度で含有アスベストを非結晶質・非繊維質の無害化物質へと変質させることにある」と述べている。溶融方式では、固体から液体への相変化を伴う為、確実にアスベストの無害化を確認できるが、今回事業者が提案しているのは相変化を伴わない方式である為、きちんと無害化処理が廃棄物全体に対して均等になされたかどうかを確認する必要がある。
しかし、フローチャートをみても、そのような検査をどのように実施して、全量無害化処理が完了したことを担保するのかが、全く不明である。
縦覧資料のフローチャートを見ると、「搬入→受付計量→荷卸し(→再梱包→受入・一時保管エリア)→バッファーエリア→開梱→・<加熱処理>・→排出放冷(←不良品再処理)→粗破砕→払出し一時保管(ホッパー)→金属探知→フレコンバッグ充填→トラック積載」とある。
ここで、「排出放冷」直後に「不良品再処理」として、フィードバックするようになっているが、どのようにして不良品を検出するのか、どの程度であれば再処理を必要とするのか、その方法や基準等について詳しい記載がない。縦覧資料によれば、生成物の表面温度を放射温度計又はサーモカメラで計測して処理後の無害化処理が完了したかどうかを間接的に確認するだけのようだ。つまり、全量、顕微鏡でチェックするわけでもない。
表面温度の計測についても、おそらく、実験室レベルで実施した、過熱蒸気雰囲気のデータだけをもとに、間接的に石綿含有廃棄物の無害化を推測するだけのようである。となると、本当に、全量が非結晶質化・非繊維質化したのかどうかを確認するわけではないので、処理中及び処理後の安全性についても疑問符が付くことになる。
縦覧資料によれば、生成物が安全かどうかを確認する為に、光学顕微鏡を用いて測定するのは、半年に1回程度だという。稼動直後でも、最初の1年間ほどは、3ヶ月に1回程度しか測定しないのだという。おそらくこれも、ほんの少しのサンプリングしかやらないのであろう。誠に不安であり遺憾である。
(7)全量を絶対にリサイクルするのだ、という強い決意に欠けていること
事業者には、「無害化処理後の生成物を、100%、安定的に絶対にリサイクルするんだ」という強い姿勢が欠如している。
この点について、事業者は、縦覧資料に、「セメント原料」として埼玉県T社、栃木県S社、埼玉県M社を搬入先として挙げている。また「土木用途材料」として、埼玉県T社を搬入先として挙げている。「建築用途材料」としては、愛知県N社、岐阜県I社を挙げており、一番心配な「最終処分場(管理型及び安定型)」として群馬県F社と千葉県S社を埋立処分先に挙げている。
このうち、例として、無害化処理後の生成物の売却先として、土木用途材料(固化材原料)向けに、埼玉県三郷市上口3-1の㈱立花マテリアルを挙げている。同社の埼玉の事業所にはシールド環境事業部があることから、おそらくシールドマシンによるトンネル工事の裏込め材として納入するようだが、本当に裏込め材料として利用できるのかどうか定かでない。
また、タイル原料の増量材料として、愛知県知多郡武豊町大字富貴字黒山1-9のニッタイ工業㈱を売却先の例として挙げている。しかし、本当に中部地方の愛知県までわざわざコストをかけて運ぶのかどうか、極めて疑問である。
さらに問題なのは、最終処分場に持ち込む可能性は初めから示唆していることだ。
既に述べたとおり、当該施設の周囲にはたくさんの一般・産業廃棄物の最終処分場が存在しており、さらに計画中のものもたくさん存在している。リサイクルせずに、そのまま近隣の処分場で埋立処分されることが懸念される。
事実、「2-8 無害化処理生成物の種類、性状、数量及び処理方法」で、事業者は「セメント材料、土木・建築用途の材料」として再資源化するとしているが、一方で「再資源化できない場合でも、埋立処分できる最終処分場を確保して対応する」と述べており、リサイクルできない場合を想定している。
事業者は、最終処分場の具体的な場所として、管理型千葉県市原市万田野26番地にある杉田建材㈱の産業廃棄物最終処分場(千葉県許可番号第1240018681号)を確保している旨記載している。しかし、この処分場の許可の有効期限は平成26年6月5日であり、この時期には、まだ当該施設の建設工事中である。本当に、この処分場に、関東平野を横断して輸送コストをかけて、無害化処理をしたものを運んで、有効期限のない処分場に埋め立てることが現実的なのかどうか、極めて疑問である。
また、最終処分場として群馬県F社も挙げている。リサイクルしない場合には、一番輸送コストのかからない最寄の最終処分場に持ち込んで埋立処分するのがもっとも儲かる。したがって、当該施設の立地する周辺にいくつもあるサンパイ場に持ち込む可能性が非常に高く、このことからも、この周辺地区のサンパイ銀座化に拍車がかかってしまうことになる。
(8)220トンもの石綿含有廃棄物をストックすること
事業者は、法令に基づき1日あたり最大処理量の14日分のアスベスト含有廃棄物220トンを、当該施設内にストックするという。これら廃棄物の最大石綿含有量は18%というので、アスベスト量にすると最大39.6トンを持ち込んで留保しておくことになる。このような大量の有害物質の存在自体、生活環境上の脅威である。
(9)土曜日や祝祭日もアスベスト含有廃棄物の持込が行われること
事業者は「2-7 搬入出時間及び方法」で、「日曜日を除く毎日、搬入出を行う」としている。せっかく、週末や休日に、自然環境の豊かな地元で、いい空気を吸って鋭気を養おうとする地元住民に対して、こうした搬入出作業が行なわれることは、そのこと自体、地元住民の生活環境に対する挑戦でもあり、到底容認できない。
(10)異常発生の防止システムが自動制御で果たして可能なのか疑問であること
異常発生の防止対策として事業者は「安全運転のため、前処理、加熱処理、後処理及び排ガス処理の設備等は殆ど自動制御とし、集中運転監視により早期に異常を発見し対応をとるシステムを構築する」と述べている。しかし、構築されたシステムではなさそうだ。つまり、実績のある、或いは実証済み(Proven)なシステムではないということになる。これでは、自動制御にかまけて、異常発生時の対応が後手後手になる恐れが大きい。
(11)実証試験のデータの再現性に疑問があること
縦覧資料によれば、当該施設の「実証試験におけるエネルギーは全て電力で賄った」と述べている。しかし、当該施設は実際には天然ガスをエネルギー源にするという。となれば、本当に実証試験の結果を再現できるのかどうかが疑問となる。
(12)南南東の風が卓越しており異常発生時には、もろにアスベストの脅威に晒されること
地元住民として提出者の所有する山林は既に述べたとおり、当該施設の北西約900メートルの地点に存在する。「3-21 生活環境影響調査書」によれば、表4-1-2の風配図(現地調査時)のとおり、卓越風はNNW~N、及びS~SEが5%以上となっている。このため、夏場に当該施設で異常発生した場合、ただちに提出者の所有する山林が影響を被ることになる。
当該施設の設置予定場所の北側の広大な山林は岩野谷地区に残された唯一の土壌汚染されていない貴重な場所である。既に述べたように、岩野谷地区の北端部に位置する東邦亜鉛安中製錬所が長年にわたり排出してきた重金属を含む降下煤塵により、この地区の住民や農業者らは土壌汚染に悩まされている。しかも、東邦亜鉛では除染対策を採ろうとせずに、このような汚染状態が次代に引き継がれようとしている。そこに、今度は南側に大規模な廃棄物処分場が目白押しで、挙句の果てには首都圏のアスベストを大量に持ち込もうとする今回の戸田・西松JVの無謀な計画が浮上する始末である。
東邦亜鉛安中製錬所は、鉱山保全法改正の寸前の駆け込みで、平成19年に自社用の産業廃棄物最終処分場を造成したが、平成22年12月の住民説明会では一言の説明もなかった石綿含有物質を含む産業廃棄物を投棄することを前提に群馬県に設置許可を平成23年4月に申請して、平成24年秋までにはいつのまにか許可が出された。地元住民として提出者は現在、この許可の無効を東邦亜鉛と群馬県に申し入れているが、両方とも当事者意識に欠けており真剣に対策をとろうとしない。まさに、岩野谷地区の住民は前門のトラ、後門のオオカミ状態に置かれているのである。
以上のとおり、生活環境保全上の観点から、当該施設の設置許可を出さないよう、貴課の英断を強く望む次第である。
以上
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■さいたま市にあるJR京浜東北線のさいたま新都心駅を降りて、西口方向に向かって歩くと道路の左側に高層ビルがあります。それが明治安田生命さいたま新都心ビルです。提出先の環境省関東地方環境事務所はこのビルの18階にあります。
↑明治安田生命さいたま新都心ビルの吹抜けホール。↑
↑関東地方環境事務所は18F。↑
↑眼下にJR線路を一望。↑
↑関東地方環境事務所入口。↑
受付で呼び出しのベルを鳴らすと女性事務員が出て来ました。要件を告げて待合室で待っていると、廃棄物・リサイクル対策課(TEL048-600-0814)の田代忠彦・廃棄物対策等調査官と同課の課長補佐の池田稔・主席廃棄物対策調査官の2名が応対にやってきました。
当会から、意見書の内容の趣旨を説明しましたが、二人とも「技術的なことは審査会で慎重に検討する予定であり、自分らは技術的なことはわからない」というだけでした。また、「既に、連名で1通の意見書が出されているが、それ以外は今のところ、当会の意見書だけだ」とのことでした。なお、審査会は非公開だとのことでしたので、当会から「それでは、密室で決められしまうことになる」とクレームをしておきました。「いずれにしても、相当時間をかけて審議を行うので、直ぐ結論が出るという心配はいらない」と言う返事でした。
しかし、いつまでに、どのような議論を経て、結果が出されるのかについては、なにもコメントはありませんでした。そこで、当会としては、時々、調査官に電話を入れて進捗を確認していくことにしています。
【ひらく会情報部】
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とりいそぎ、御礼まで。