↑6月16日昼過ぎに高専機構を相手取った第一次訴訟控訴審判決言渡しのあった東京高裁のある裁判所合同ビル。↑
■高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報の数々について、悪質な不開示処分の取消しを求めて高専機構を2019年10月に提訴した第一次訴訟。卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えて辿り着いた東京地裁の第一審判決は、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通ししたあからさまな不当判決でした。高専関係者らの憤りとエールに押され、当会が本件を東京高裁に控訴すると、高専機構は相変わらず強弁まみれの杜撰な控訴答弁書を寄こしてきました。
3月17日に開かれた初回口頭弁論では、同高裁の裁判官らが機構側の藍澤弁護士を始終質問責めで突っつき回し、異例の審理継続となりました。裁判の公平性が疑われるレベルで妙に至れり尽くせりの「アドバイス」を経て、機構側はまたも杜撰な補充書面を出してきました。そこで、当会から詳細に証拠資料を提示しつつ主張の穴を突いた反論書面を提出して第二回期日に臨もうとしていたところ、機構側はなんと期日2日前になって誤字まみれの杜撰書面を投げ込んできて、滅茶苦茶な主張を言い立ててきました。4月14日の第二回口頭弁論では、高裁側の裁判官は特にこうしたマナー違反や論理破綻を咎める様子も無く、「とりあえず言うだけ言ってもらった」というムードで結審しました。
○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html
○2021年3月24日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と3/17初回弁論(審理継続)の様子↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3290.html
○2021年4月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】反撃試みる機構と書面応酬の末、4/14第2回弁論で結審!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3304.html
そして、第一次訴訟控訴審の判決言渡し日である6月16日を迎え、当会担当者が東京高裁に向かいました。
■2021年6月16日、当会担当者は午前10時50分に自宅を出発し、25分で高崎駅に着きました。少し待って、11時36分発の上越新幹線Maxとき316号に乗車することにしました。平日の昼下がりでしたが、緊急事態宣言が効いているのか、車内はガラガラでした。群馬出発時は晴れ間も見えていましたが、東京に近づくと雲が厚くなっていました。
↑Maxの2階席。↑
↑鴻巣市付近の水田。田植えの真っ最中。↑
当会担当者の乗ったMaxとき316号は東京駅21番ホームに12時28分定刻通り到着しました。幸い雨は降っていませんでした。
ちなみに、E4系と呼ばれる2階建て車両のMax号は、今年秋ごろ引退する予定になっており、ラストラン企画のキャッチフレーズのロゴが車体にラッピングされています。筆者は1994年の初代2階建て車両として登場したE1系や、その後1997年にデビューしたE4系には東京への通勤でこれまで何千回もお世話になっています。そのため、2階席から眺める車窓風景は頭に染みついており、居眠りをしていても、目を開ければ瞬時にどこを走行しているか把握できるほどです。
東京駅の丸の内中央口の地下改札口を経由して、徒歩で地下鉄東京駅に移動し、12時41分発の荻窪行に乗車して、2駅目の霞ヶ関で下車をしました。地上に出ると、歩道は濡れていましたが、雨は降っておらず傘を取り出す必要はありませんでした。
■裁判所の前の歩道では、何名かの若者がチラシを配布していました。受け取ったところ、共同親権制度の実現をアピールする内容でした。「日本では毎年約21万人の子どもたちが、親の離婚を経験しています」というロゴは衝撃でした。我が国社会において、配偶者によるDVやモラハラ、親による虐待といった家庭内人権侵害の問題は深刻であり、被害者の迅速な保護と救済が図られなければなりません。他方において、一方的な子の連れ去りと親権剥奪、一方的な離婚宣告と銭ゲバな財産処理・養育費請求による泥沼のトラブル、そしてこれらをビジネスチャンスと捉えたハイエナ弁護士達もまた社会問題化しており、離婚当事者らとその子供にとってベストな着地点を探れるような社会的枠組みの構築は急務です。
※裁判所前で配布されていたチラシ ZIP ⇒ 20210616ozzv.zip
12時50分、いつものとおり裁判所の玄関のアルコール消毒液で手指を清めて、手荷物検査のためカバンを預けました。そして身体検査のため金属探知ゲートを通り抜けようとしたところ、赤色ランプが点滅して警報ブザーが鳴り響きました。当会担当者の前に並ぶ方も同様にひっかかっていましたが、まさか自分もという気持ちになりました。なぜならこの場所で、これまで一度もブザーを鳴らした経験がないためです。
係員が手持ちの金属探知機を当会担当者の体中に添わせてチェックをしました。どうやらベルトのバックルの金属に反応したようです。しかし、同じベルトを付けてきてても、これまで一度も金属探知ゲートが反応したことはありません。そこで係員に「今回初めてランプが付きましたが、感度を上げたのではないのですか?」と尋ねてみましたが、無言で返されました。
■手荷物検査担当者から荷物を受け取ると、さっそくエレベーターで8階に上り、812号法廷の開廷表をチェックしました。
*****6/16・東京高裁812号法廷開廷表*****
812号法廷(8階)開廷表
令和3年6月16日 木曜日
●開始/終了/予定:10:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1050号/受信料請求控訴事件
○当事者:立花孝志/日本放送協会
●開始/終了/予定:10:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1030号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:高沢芙二子/梅島昭夫
●開始/終了/予定:11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第853号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:株式会社明成建設/セイエドネシャド・メディ
●開始/終了/予定:11:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4497号/所有権移転仮登記の本登記手続等請求控訴事件
○当事者:株式会社マドカホーム/株式会社土門 外
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3346号/敷金返還、損害賠償等反訴請求控訴事件
○当事者:有限会社カンギン/株式会社ローソン
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3728号/資料等請求控訴事件
○当事者:中谷明/旭化成ホームズ株式会社
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3892号/損害賠償等請求控訴事件
○当事者:竹花龍 外/依田善永 外
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4059号/損害賠償(交通事故),求償金請求控訴事件
○当事者:須田玲子 外/中島運輸株式会社 外
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4099号/建物明渡等、修繕費用等反訴請求控訴事件
○当事者:佐藤正俊/山田繁行
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第169号/裁決取消請求控訴事件
○当事者:有限会社東亜電機/国/立花竜一
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構
●開始/終了/予定:14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第471号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:井田正彦/寺尾基
●開始/終了/予定:14:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第827号/損害確定請求控訴事件
○当事者:森田産業株式会社/高橋誠
●開始/終了/予定:15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第675号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:株式会社フードジャパン/株式会社エヌ・コーポレーション
●開始/終了/予定:16:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第575号/預け金返還等請求控訴事件
○当事者:友山晶子/寒川国見
**********
開廷表の右側には担当裁判官らの名札が掛けてありました。
*****本日の事件*****
東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 矢 尾 渉
裁判官 橋 本 英 史
裁判官 三 浦 隆 志
裁判官 今 井 和佳子
裁判官 田 中 一 隆
裁判所書記官 石 橋 一 郎
**********
上記開廷表のとおり、13時10分から7件の控訴事件について判決言渡しが行われることになっていました。当会の事案は言渡しの順番では一番後となっています。実はその時、当会担当者は13時10分からの判決言渡しの事件数を6件だと数え間違いをしており、当会の控訴事件の判決は最後の6件目だとその時思いこんでしまいました。そのため、あとでちょっとしたハプニングが起きることになりました。
■開廷までにまだ15分程時間があったので、窓側の左手奥にある待合室に入ると、すでに男性が一人待機していました。13時あたりに812号法廷の傍聴席の入口のカギが開けられるかと思い、時計の長針が0を指した頃合で法廷の覗き窓に目をやりましたが、まだ中は真っ暗でした。
再び待合室に戻り、また10分ほど待機していると、待合室にいた男性が開廷5分前になって腰を上げました。そこで当会担当者も再び812号法廷に行ってみると、数名の男女が前の廊下で待機していました。まもなく中から鍵が開けられたので、当会担当者が真っ先に傍聴席に入りました。いちおう出頭簿に署名をしようとしましたが、どこにも見当たりませんでした。
開廷するころには、傍聴席には10名ほどの傍聴人が座り、判決の言渡しを待っていました。
■定刻の午後1時ちょうどに矢尾渉裁判長と陪席裁判官2名(向かって右側は女性)が正面の扉から入って着席し、さっそく判決言渡しが始まりました。
男性の書記官が事件番号を坦々と読み上げ、矢尾裁判長が次々に判決文を読み上げます。
「令和2年(ネ)第3346号」
「控訴人、有限会社カンギン、被控訴人、株式会社ローソン。主文、本件控訴を棄却する。控訴人の当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用をすべて控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3728号」
「控訴人、えー、中谷明、被控訴人、旭化成ホームズ株式会社。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3892号」
「えー、控訴人兼被控訴人(当会注:お互いに控訴し合っている場合はこのように呼びます)、竹花龍、被控訴人……、ああ、外(ほか)、被控訴人、えー、依田、あー、善永、外。主文、本件各控訴を棄却する。2、控訴費用は一審原告龍、えー、一審原告ミサトおよび一審被告善永、に生じた費用を、一審原告龍および一審原告ミサトの負担とし、一審原告モトナリに生じた費用を、同一審被告の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4059号」
「控訴人、須田玲子、外、えー、被控訴人、中島運輸株式会社、外。主文、本件控訴をいずれも棄却する。控訴人アクサの当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用はすべて控訴人らの負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4099号」
「控訴人、佐藤正俊、被控訴人、山田繁行。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(行コ)第169号……」
と、ここで、裁判の進行事件数を数えていた当会担当者が、「行コ」の言葉を聞くないなや、最後の6件目に本件の晩が来たと信じ込んで、傍聴席から、条件反射的に「すいません。判決を法廷内で謹んで拝聴してもよろしいでしょうか? オンブズマンとして、群馬県からこのためにやってきたので、ちょっと法廷の中に入って謹んで拝聴したいのですが」と傍聴席から手を挙げて発言しました。
すると、男性書記官が反射的に当会担当者を制しようとする仕草を見せました。裁判所では、秩序重視という観点から、傍聴席からの発言にはかなり敏感なためです。裁判長は落ち着いた様子で「当事者ですか」と尋ねてきました。当会担当者が「はいそうです」と返事すると、裁判長は「それではどうぞ」と法廷内に入ることを許可しました。やりとりを聞いていた男性書記官が、「行コの事件番号が251号の当事者です」と裁判長に伝えました。
裁判長が「あなたの事件はこの次です」と告げてきたので、当会担当者はようやくフライングだったことに気付きました。当会担当者が「すいません。どうぞ続けてください」というと、裁判長は直ちに判決文の読み上げを再開しました。
「控訴人、有限会社東亜電機、被控訴人、国。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
■そして次に、当会が出訴した控訴事件の判決言渡しの順番となりました。事務官が「はい、どうぞ」と当会担当者を促しました。当会担当者は、傍聴席と法廷を区切る木製格子の左端にある開閉板を押して、法廷内の控訴人席に着座しました。
事務官が「令和2年(行コ)第251号」と告げたので、当会担当者は「では、どうぞお願いします」と裁判長に声を掛けました。
矢尾裁判長は、「控訴人・市民オンブズマン群馬、被控訴人・独立行政法人国立高等専門学校機構。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」と当会全面敗訴の判決を読み上げました。
行政側勝訴ありきの負かされ判決は実に聞き慣れたものとはいえ、1年8か月に及ぶ果てしない奮闘の末にこうもあっさり斬り捨てられると、やはり相当な落胆と脱力感を伴います。
当会担当者が一応、「はい、ありがとうございました」と丁重に礼を言うと、矢尾裁判長はそれに対しては何も反応を見せずに、陪席裁判官と共にそそくさと席を立って奥に引っ込んでいきました。
当会担当者が、男性書記官に向かって「では、出頭カードに署名します」と告げると、書記官はようやく出頭カードを出してきました。当事者が法廷内で判決言渡しを聞くことなどないだろうと最初から思い込み、形式的にすら出頭カードを事前提示していなかったわけです。高裁での控訴審の判決言渡しが、いかにべルトコンベアのような流れ作業であるかを示す象徴的な対応のように感じられました。当会担当者は、控訴人氏名欄の印刷した氏名に○を付けるのではなく、いつものとおり、大きな字で氏名を自署しました。
■すると、書記官は気を利かせて「判決正本は上の方で受け取れます」と伝えてきました。「14階でしたっけ?」と訊くと、「16階の北側です」と教えてくれました。
ということで、僅か4分余りの判決言渡しが終わり、16階北側にある第17民事部に判決文を取りにいくため、人が一斉にエレベーターの方へ歩いていきました。傍聴者は、一気に7件の判決、それもおしなべて控訴棄却の判決を聞かされたことになります。当会担当者が流れを止めなければ、確実に3分以内で終わっていたベルトコンベア言渡しぶりでした。このとき、13時14分を少し回ったところでした。
当会担当者は、どうせ窓口が混むだろうと思い、待合室で少し休み、トイレを済ませてから16階に上がりました。第16民事と第17民事部の窓口はいずれも並んでいました。第16民事部の方から声を掛けると、すぐ隣の第17民事部の事務担当の渡邊職員がすぐに当会担当者に気付き、既に用意してあった判決正本を持ってきました。
そして受領証に押印をし、予納切手6000円のうち、500円切手8枚中2枚使用、100円切手10枚中2枚使用、84円切手5枚中0枚使用、50円切手4枚中1枚使用、20円切手10枚中0枚使用、10円切手10枚中0枚使用、5円切手10枚中1枚使用、2円切手10枚中0枚使用、1円切手10枚中0枚使用ということで、1255円を差し引いた4745円分の切手が戻されました。
■こうして判決正本と余った予納郵券を受け取り、渡邉書記官には「またお世話になります」と挨拶をして、裁判所をあとにしました。
↑以前から裁判所合同ビル内のアスベスト除去工事が断片的に施工されてきているが、今回、裁判所の1階ロビーの壁や天井にかけて、広い範囲が白い遮蔽板やシートで覆われている。どうやら天井のアスベスト除去を鹿島建設が請け負って今年10月末まで施工する予定であることが、裁判所前の標識から解る。↑
外に出ると、幸いまだ雨が降り出してはいませんでした。裁判所のまえには相変わらず、不当判決に抗議する看板を立てかけたハイエースが駐車してありました。そして、上の方ばかりみるヒラメ裁判官による不当判決への批判が大書きしてありました。当会担当者が先程言い渡された不当判決についても、ぜひ並べて掲載していただきたいと思いましたが、いつものように掲示している方の姿は見当たりませんでした。
その後、地下鉄丸ノ内線に乗って東京駅に戻りました。帰りは急ぐ必要もなかったため、東京上野ラインの高崎行に乗車し、ゆったり鈍行に揺られて16時18分に高崎駅に着きました。
↑もうすぐ高崎駅。空模様が怪しい。↑
■2021年6月16日に東京高裁で言い渡された第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の全面棄却判決の内容は以下のとおりです。
*****6/16第一次訴訟控訴審判決*****ZIP ⇒ 1ij.zip
令和3年6月16日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 渡邊万倫子
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第515号)
口頭弁論終結日 令和3年4月14日
判 決
前橋市文京町一丁目15-10
控 訴 人 市民オンブズマン群馬
同 代 表 者 代 表 小 川 賢
東京都八王子市東浅川町701番2
被 控 訴 人 独立行政法人国立高等専門学校機構
同代表者理事長 谷 口 功
同訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人が平成31年4月16日付けで控訴人に対してした法人文書開示決定のうち,本判決別紙記載の各部分に係る情報を不開示とした部分を取り消す。
第2 事案の概要(以下,略称は,原判決の例による。)
1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(法)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,被控訴人から,一部を開示し,その余を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから,本件決定のうち,原判決別紙 1 記載の各部分を不開示とした部分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。
2 原判決は,控訴人の請求のうち,本件決定中,原判決別紙1記載1の文書(本件文書1) の項目名及び整理Nоに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める請求を認容し,その余の請求を棄却した。控訴人は,原判決の控訴人敗訴部分のうち,本判決別紙記載の各情報についての控訴人の請求を棄却した部分を不服として,控訴を提起した。なお,被控訴人は,原判決の被控訴人敗訴部分に対して控訴及び附帯控訴の提起をしておらず,本件決定中原判決が取消し請求を認容した部分について,情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人にこれを開示した。
3 法の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,後記4のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1から4まで(2頁5行目か ら18頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
4 原判決の補正
(1) 3頁8行目末尾を改行して以下のとおり加える。
「(4) なお,被控訴人は,令和2年11月24日,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧)のうち「項目名及び整理Nоに係る情報」を不開示とした部分が違法であるとして,その部分を取り消した原判決の言渡しを受け,同年12月14日付けで,当該不開示部分に係る情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人に対して同決定を通知するとともに,当該情報を開示した新たな開示文書(以下「再開示文書」という。)を送付した(甲47, 弁論の全趣旨)。」
(2) 原判決別紙1の5のうち 「事件・事故発生状況報告書【最終報】(4枚のもの)」を「事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの)」に改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,原判決のとおり,控訴人の請求は,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧。以下,本件各候補者一覧のうち個別の年の候補者一覧を「平成23年候補者一覧」などという。)について,項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,後記2のとおり原判決を補正し, 後記3のとおり控訴人の当審における新たな主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の1から5まで(18頁6行目から28頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 原判決の補正
(1) 21頁6行目から7行目にかけての「群馬高専内の者や群馬高専の関係者」を「群馬高専内の者,これらの者の関係者(当該個人の関係者を含む。) 及び群馬高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
(2) 21頁7行目の「個人を識別することが可能であるもの」を「個人を識別することを可能にする個人に関する情報(法5条1号本文による保護を要するプライバシーに係る情報)である」に改める。
(3) 22頁3行目の「群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者」を「群馬高専内の者,これらの者と関係のある者(当該個人と関係のある者を含む。)及び群馬高専と関係のある者等の不特定多数の者」に改める。
(4) 26頁12行目の「弁護士法人が,」の次に「訴訟案件(特に,被控訴人を依頼者とし,当該事件ないし本件と同種の案件のもの)について,」を加える。
(5) 26頁23行目の「「配分金額」欄に記載された情報は,」の次に「「支払金額」欄のみに記入されたものを含め,」を加える。
(6) 27頁14行目の「長野高専内の者や長野高専の関係者」を「長野高専内の者,これらの者の関係者(当該学生の関係者を含む。)及び長野高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
(7) 28頁9行目末尾に改行の上以下のとおり加える。
「控訴人は,当審において, 控訴人に開示された資料(甲53~55)を組み合わせる方法によって,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報をおおまかには確定することができ,したがって,当該情報は,すでに公衆が知り得る状態に置かれているから,法5条1号ただし書イに該当する旨を主張する。
しかし,控訴人の上記主張を踏まえても,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報は,控訴人に開示された資料を組み合わせることによって初めておおまかには推知し得る状態となるにとどまるものであって,上記事件発生の年月日や時刻を特定し得る情報はいまだに公開ないし公表されていないことが認められ(弁論の全趣旨),また,当該情報が将来公開ないし公表されることが予定されていることを認めるに足りる証拠もない。したがって,当該情報は,法5条1号ただし書イ所定の「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するものとは認めることができない。これに反する控訴人の主張は,採用することができない。」
(8) 28頁16行目の「対照文書」を「対象文書」に改め,同19行目の「当該情報が」の次に「,「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」として,」を加える。
3 控訴人の当審における新たな主張に対する判断
(1) 控訴人の主張
本件文書1(本判決別紙記載1の本件各候補者一覧)のうち,平成23年ないし平成31年候補者一覧が扱う「推薦機関の種別」の情報は,開示されるべきである。その理由は,以下のとおりである。
ア 被控訴人は,再開示文書(甲47)によって,本件各候補者一覧のうち, それまで不開示としていた項 目名及び整理Noに係る情報を新たに明らかにした。
原審での被控訴人の主張によれば,本件各候補者一覧は,各候補者を推薦機関の種別ごとに区分して一覧表としてまとめたものであるところ,平成23年から平成28年までの候補者一覧には,右上に資料番号が付されており,更にその細目番号が二つ(①及び②ないし1及び2)に区分されており,それぞれの細目番号が付された一覧表の項目欄の最初の項目には, それぞれ「推薦機関」(細目番号が①ないし1のもの)又は「学校名」(同じく②ないし2のもの)と記載されているから,細目番号が②ないし2の一覧表が高等専門学校(以下「高専」という。)や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を,細目番号①ないし1の一覧表がその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者をそれぞれまとめたものであることが推知できる。そうすると,少なくとも上記細目番号により二つに区分される一覧表がそれぞれ扱う「推薦機関の種別」は,事実上おおまかなものとして既に明らかになっているといえるから,これを開示しても,被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとはいえず, 法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当しない。
イ 再開示文書の平成29年候補者一覧は,1又は2の細目番号が付された二つの一覧表と細目番号が付されず候補者が1名のみ記載された一覧表とから成っている。各一覧表の各項目欄の最初の項目にはいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。控訴人に開示された資料(甲51)と,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成29年4月付け高専の校長の人事に係る文書(甲52)から判明する各校長の前職とを組み合わせてみると,細目番号1の一覧表に「国立大学」からの推薦者を,同2の一覧表に「高専」からの推薦者を,細目番号の記載のない一覧表に「高専」からの追加の推薦者がそれぞれ記載されていることが明らかである。
ウ 再開示文書の平成30年候補者一覧は,平成29年候補者一覧と同じく,各一覧表の各項目欄の最初の項目にいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。各一覧表の整理Noによると,細目番号1の一覧表に6名,細目番号2の一覧表に4名の候補者が記載され,細目番号が付されていない一覧表3枚に,それぞれ1名,2名,1名の候補者が記載されていることが分かる。一方で,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成30年4月 付け高専の校長の人事に係る文書(甲48)により判明する各校長の前職を見ると,高専教員4名,大学(院)出身者5名,文部科学省2名,国立教育政策研究所1名となっている。ある区分における就任者数が候補者数を上回ることはありえないことも考慮すると,細目番号1が大学(院)出身者,同2が高専出身者, 細目番号なしの一覧表のうち候補者2名のものが文部科学省出身者であることが推知される。平成31年候補者一覧の各一覧表についても,平成30年候補者一覧のものと同様に区分けされているから,同様の手法でそれぞれの区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。
エ 以上のとおり,本件文書1に含まれる情報のうち,各一覧表が取り扱う大まかな「推薦機関の種別」は,既に開示されている情報から推知可能な情報であり,法5条4号ヘ所定の不開示情報でないことが明かである。
(2) 被控訴人の反論
控訴人の主張は,いずれも争う。
ア 控訴人が主張する「推薦機関の種別」とは,再開示文書(甲47)の各一覧表(本件各候補者一覧)の標題中の「国立高等専門学校長候補者一覧」との文字の右側に続く不開示部分を指すと解される(以下,上記不開示部分に係る情報を「標題部不開示情報」という。)。
高専の校長の前職は,高専や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所の職員といったように複数あり(甲48),これらの出身者が再開示文書の各一覧表のどこに掲載されているかは明らかになっておらず,平成30年度の高専の校長の人事文書(甲48)に記載されている各人が,再開示文書のどの整理Noの箇所に記載されているかはもちろん,控訴人のいう二つの細目番号のいずれが付された一覧表に記載されているかも具体的に特定することはできない。控訴人の主張は,控訴人個人による単なる推測にすぎない。
イ また,上記「推薦機関の種別」に係る情報(標題部不開示情報)が開示されると,控訴人が指摘するように,候補者の人数(再開示文書の各一覧表の整理Noの数)と実際に校長に就任した者の人数(甲48の校長の人数)との比較により,ある程度の精度で推薦機関ごとの校長採用の割合を 推測することが可能となる。これにより,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれがある。
ウ なお,年度によっては,校長候補者の人数や構成が比較的少数,単純であり,一覧表に記載された校長候補者の推薦母体が推測しやすい年度が生じ得ることは避けられないが,このことを理由に当該年度における推薦母体の分類内容やその表現(例えば「国立大学法人」や「外部推薦分」といった表記)を明らかにした場合には当該年度のみならず他年度の候補者一覧の分類方法や一覧表の構成をより正確に推測することが可能となるおそれがある。これにより,候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができるようになり,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどのおそれがあり,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることになる。
エ したがって,再開示文書を前提としても,上記「推薦機関の種類」の情報(表題部不開示情報)は,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するものである。
(3) 当裁判所の判断
当裁判所は,本件文書1の本件各候補者一覧(平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,控訴人の当審における新たな主張を勘酌しても,いずれも法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当し,これを不開示とした本件決定の部分は適法であるから,この取消しを求める控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
ア 上記引用に係る原判決(18頁7行目から11行目まで)が説示するとおり,本件各候補者一覧は,いずれも被控訴人において各国立高等専門学校の校長を選考する際に用いられる資料であり,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No, 推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴及び現職(被控訴人に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ないしその種別ごとに一覧表にまとめて記載されているものと認められる(弁論の全趣旨)。
イ 再開示文書(甲47)及び弁論の全趣旨によると,控訴人が開示を求める「推薦機関の種別」とは,本件各候補者一覧の標題部不開示情報であると認められるところ,平成23年ないし平成31年候補者一覧は,いずれも控訴人主張のとおり細目番号の有無や相異により区別された各一覧表から成るものであり,各一覧表の各項目欄の最初の項目には,控訴人主張のとおり「推薦機関」及び「学校名」(平成23年ないし平成28年候補者一覧)又は「推薦機関」(平成29年ないし平成31年候補者一覧)と記載されていることが認められる。
ウ そして, 弁論の全趣旨によると,平成23年ないし平成31年候補者一覧の標題部不開示情報の全部を開示する場合はもちろん,その一部を開示した場合でも,各一覧表の区分ごとの候補者の人数(再開示文書の各一覧表記載の整理Noの数)と,各年度の実際に校長に就任した者の人数等の情報 (例えば甲48から判明する校長の人数やその前職)を組み合わせて考察することや,各年度における上記の考察の結果を比較して更に考察を加えることなどの方法によって,ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別(例えば,高専,国立大学法人,文部科学省,国立教育政策研究所など)ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められ,現に控訴人も,その正確性は別にして,一部の年度について,具体的な推薦機関やその種別を推測する主張をしているところである。
したがって,本件各候補者一覧の標題部不開示情報が開示され,これが確定した情報として公開されることになれば,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じるものというべきである。以上によれば,本件各候補者一覧 (平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,いずれの年度のものも,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するから,本件決定中これを不開示とした部分は適法であり,当該部分についての控訴人の取消請求は理由がない。
4 控訴人は,本判決別紙記載の各部分が法5条所定の不開示事由ないし不開示情報に該当しないとして,当審においても原審と同様に縷々主張するが,その主張を勘酌しても,上記引用に係る原判決(前記2の補正後のもの)の認定判断及び前記3の当裁判所の認定判断は左右されない。
5 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 矢 尾 渉
裁判官 橋 本 英 史
裁判官 今 井 和佳子
(別紙)
1 平成23年4月1日付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成24年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成25年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成26年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成27年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成28年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成29年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成30年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧及び平成31年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧の不開示部分のうち,原判決が開示を命じた「項目名及び整理No」に加えて更に「各一覧表が扱う推薦期間の種別の表示」,「選考通過者のうち実際に校長に就任した者に係る記載情報の全て」及び「各候補者の推薦機関及びその種別」の各部分
2 西尾典眞の平成29年3月15日付け辞職願の不開示部分のうち辞職理由が記載された部分【原判決別紙1記載2に同じ】
3 群馬工業高等専門学校「校報」第129号から第131号までの表紙及び人事関係の不開示部分のうち,同校職員の全てについて,「人事前後の同校における所属・職名に係る情報」,特に同校職員のうち教育研究支援センター所属の技術補佐員については,「氏名および人事前後の同校における所属・職名に係る情報」
4 平成28年度支払決議書,平成29年度支払決議書及び平成30年度支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」
5 事件・事故等発生状況報告書【第一報】」(報告日時の時刻が1時40分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(6枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(7枚のもの),事件・事故等発生状況報告書【第一報】(報告日時の時刻が15時0分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(2枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの),事件・事故等発生状況報告書及び故■■■■君に関する報告書の不開示部分のうち,年月日や時刻に関する記載【原判決別紙1記載5に同じ】
以上
これは正本である。
令和3年6月16日
東京高等裁判所第17民事部
裁判所書記官 渡 邊 万倫子
東京(高)19-004378
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■以上のとおり、高専機構側にかなり不利とみられた2つ3つの争点や不開示箇所に関してだけは一応言及するだけした上で機構側の主張をフリーパスで素通し採用し、その他の主張や争点は「原審と同じ」として言及すらしない、というお見事な斬り捨て判決です。
予期せず控訴審の焦点となった「高専校長候補者一覧」については、せめて大まかにどういったまとめ方をしているか、各文書のタイトル程度は明かされるだろうと考えていたのですが、それすら甘い予測でした。東京高裁は、一覧表のタイトルですら、「高専機構の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる情報」などとあまりに不条理な認定をしてきたのです。
それも、この馬鹿げた認定のベースとなっている主張は、明らかに当会からの具体的な反論に慌てた田中・木村弁護士事務所が第二回口頭弁論の2日前に駆け込み提出してきた例の無茶苦茶書面のものです。まさに、「どんな主張でもとりあえず出してさえおけば採用される」入れ食い状態です。
■それにしても、高専校長候補者一覧表の徹底不開示に関するアクロバティックな三段論法は、あまりに噴飯モノです。すなわち、高専校長候補者一覧表の黒塗りを一ミリも剥がさせまいと高専機構側がひたすら強弁し、そして東京地裁・東京高裁が素通しで認めてしまった以下の「ロジック」です。
●高専校長候補者一覧表にかかる情報を、タイトルですらも開示すると……
①「ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められる」
⇒②「推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇する」
⇒③「多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる。よって不開示が妥当な情報である」
しかしこの主張自体、国立高専機構が校長選考において「『推薦機関』による特定校長候補者の優遇や差別を行っています!」ということを公に堂々認めるも同然の代物です。その「優遇と差別」の最たるものが、文科省が自省キャリア官僚を高専校長に「推薦」したときの100%フリーパスであることは言を俟ちません。
この致命的問題点については、当会が再三にわたって指摘し続けてきました。それにも関わらず東京地裁・東京高裁は、この単なる不条理な暗部を「高専機構の公正かつ円滑な人事」と有無を言わさず認定してしまったのですから、開いた口が塞がりません。そもそも、「円滑」はともかくとして、一体どこが「公正」な人事なのか、地裁審と高裁審を担当した裁判官らのご優秀な脳回路に問い質してみたいものです。
■また、長野高専の連続自殺事件の発生年月日についても、事実上明らかになっている情報でありながら、年レベルでの開示すら一切認められなかったのは極めて遺憾というほかありません。
これでは、連続自殺問題について、長野高専と正面から向き合い、当時の学校側の体質や対応に問題点はなかったか、原因究明と再発防止はしっかり行ったのかといった事実追及を行おうとしても、「不開示情報(発生時期)を明らかにしてしまう」などとして一切回答拒否にされてしまうことは目に見えています。
したがって、約10年前の長野高専連続自殺問題について、学校側と向き合って紐解いていくという方向での活動は厳しいものとなってしまいました。今後は、当会独自の情報収集に基づき、独立して事態の解明を進めていくことになります。
そして、不開示取消を求めて数年来闘い続けてきていたその他の情報、すなわち西尾校長(当時)の手によって抜け目なく公開停止させられた群馬高専校報の人事情報や、高専機構の“守護神”である田中・木村弁護士事務所のポンコツ弁護士陣に国費から湯水のごとく注いだ弁護士費用の情報などに関する請求は、ほとんど言及すらされずに「不開示の認定判断は左右されない」と一刀両断されてしまいました。まったく遺憾としか言いようがありません。
■今回の第一次訴訟控訴審を振り返ってみて思い出されるのは、第一回口頭弁論の時に裁判長と右陪席裁判官がやたらしつこく釈明権を行使して、藍澤弁護士に「主張の抜け」を懇切丁寧に教えていたこと、そして高専機構側から杜撰な書面が出た第二回口頭弁論では態度が打って変わって、当会の反論にも関わらずあっさり結審させにかかったことです。
口頭弁論中からある程度危惧はしていたものの、あらためて思い返すと、やはり高専機構側を勝たせることありきの裁判であったことを痛感します。東京高裁としては最初から高専機構側を勝たせるつもりではあったものの、その訴訟代理人である田中・木村法律事務所の弁護士陣が、重要なポイントの数々にそもそも反論すらしてこないという想像以上のポンコツであったため、第一回口頭弁論で急遽「お膳立て」をしてあげたものと推察されます。
すなわち、当事者が言っていない主張まで裁判所が勝手に忖度して代弁するわけにはいかないので、とりあえず「内容がなんであれ反論はした」という既成事実だけは作らせるべく、「釈明権の行使」の形で、どう反論すべきかのアドバイスを仔細に行ったものと考えられます。そして、田中・木村弁護士事務所側も東京高裁の意図を察し、期日2日前の強行提出になってでも「とにかく主張を出すこと」を優先してきたと考えられます。あとは、控訴人当会が何を言おうが結審し、どれほど無茶苦茶であろうと高専機構側の言い分をそのまま判決に仕立てるだけの楽な作業、というわけです。
このように、「とにかくバットを振りさえすれば全部ホームラン」という忖度お膳立てぶりが、今の日本の行政裁判の実情です。
■当会では、高専組織の異常な情報隠し体質に少しでも歯止めをかけようと、2019年10月に「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトをスタートさせました。
このプロジェクトは、第一次訴訟・第二次訴訟にわたる二つの裁判を軸とするもので、高専機構側が次々仕掛けてくる卑怯な法廷戦術の嵐と、新型コロナ禍による前代未聞の裁判所機能停止をなんとか乗り越え、1年半以上に及ぶ激闘を遂行してきました。
しかし、徹底的に行政/公機関側に立って判断し、下手をすればスクラムまで組んで、悪意に満ちた判決すら平然と下してくる我が国司法の悲しい実情という厚い壁に阻まれ、残念ながらいずれも当会側のほぼ完敗に終わってしまいました。
なお、4月に下された第二次訴訟控訴審の判決については次の記事をご覧ください。
○2021年4月29日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第二次訴訟控訴審で曰く付き白石裁判長が案の定・問答無用の全面棄却判決!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3310.html
よって残念ながら、今回の取り組みを経て、高専組織の情報不開示体質に歯止めをかけることは叶いませんでした。むしろ、何が何でも裁判所が勝たせてくれるという身も蓋もない現実に自信を得て、より一層、問題の隠蔽と揉み消しのための無茶苦茶なノリ弁不開示を加速させてくる事態も危惧されます。もちろん、当会としてそのような事態を認めるわけにはいきません。
当会では今後、悪化の一途を辿る高専組織の異常な情報隠し体質を打ち破り、闇のベールを引き裂いて腐敗の実態を白日の下に晒すべく、更なる多角的な調査追及方式をもって対抗していく構えです。
■さて、今回の判決をもって、1年8か月に及ぶ「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトは一応の区切りということになります。
とはいえ、この闘いを経て収穫がなかったわけではありません。得たもののひとつは、高専機構・各高専とその御用達代理人である田中・木村法律事務所の面々が、どれほどまでに汚い手段を平気で使い、呆れるほどに杜撰な主張を平気で言い立ててくるか、というケーススタディが十分に蓄積されたことです。
今後とも、何らかの事情によって高専組織と闘わなければならなくなった方々は、日本中で次々と生まれてくることでしょう。そうした際に、今回の訴訟経過の記録を、高専機構という腐敗を極めた組織の「手の内」を示す有用なライブラリとして少しでも活用していただければ、まさに幸甚の至りです。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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